2017年5月上旬
アカマツ樹上でのハシブトガラス営巣記録#3
私がどうしても帰巣シーンを撮りたくてしつこく粘っていると、ハシブトガラス(Corvus macrorhynchos)の親鳥が番(つがい)で飛来しました。
営巣地のアカマツ喬木に近づくも、私が見ていることに気づいたせいで急旋回して、右手の樹上に止まりました。
若葉が開きかけた大木の樹種は不明です。
ハシブトガラスの親鳥は頑として帰巣シーンを見られたくないし、ヒトに巣の位置を知られたくないのでしょう。
1羽が左に飛び立ったので流し撮りしたのですが、帰巣せず通り過ぎました。
樹上に残った個体が私に対して怒って威嚇を始めました。(@0:50)
強風で揺れる樹上で両翼を持ち上げながら苛立たしげにカーカー♪と繰り返し鳴いています。
やがて鳴きながらこちらに向かって飛んで来ました。
いかにも威嚇するかのように私の頭上を通り過ぎて、近くの電柱の天辺に止まりました。
明らかに私に対する威嚇の誇示行動ですね。
ただし今回は枝折り行動が見られなかったので、未だ激怒するほどではなかったようです。
▼関連記事(4年前の撮影)
木の枝を折って威嚇するハシブトガラス【野鳥】
松原始『カラスの教科書』によると、
カラスによる威嚇、攻撃の手順はどんなものだろうか。これを知っていると、カラスが「急に」襲ってくる、という印象はなくなるはずである。
まず、カラスは音声によって威嚇を行う。普段からカアカア鳴いていて区別できないと言われそうだが、普段が「カア、カア」だとすれば「カアカアカアカア!」くらい激しくなる。繰り返しの早い連続した鳴き方で、一声ずつも大きな声だ。ただ、この段階でビビる必要はない。あなたに対してではなく、その辺を通りかかったカラスに向かって鳴いている場合が大半だからである。
しかし、明らかに自分の方を向いているとか、後をついて来るとか、低いところまで来るとか、そういう場合は目をつけられている。つまり「そこのお前だよ、お前」と名指しされている状態だ。しゃがれ声で「ガララララ…」と言い出したら、かなり怒っている。時には「コラー!」と聞こえる声で鳴くこともある。(p289より引用)
※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。
つづく→#4:ハシブトガラス♀♂の求愛給餌と相互羽繕い(野鳥)
2017年5月下旬
川沿いの公園に植栽されたベニバナトチノキでクロマルハナバチ(Bombus ignitus)のワーカー♀が訪花していました。
複数個体を撮影すると、後脚の花粉籠が空荷の個体と、橙色の花粉団子を付けた個体とが居ました。
ピンクの花で吸蜜せず集粉に専念しているようです。
花蜜目当てのセイヨウミツバチ♀とは対照的でした。
小型のワーカーですけど、コマルハナバチの可能性もありますかね?
※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。
2017年5月下旬
川の堤防の歩道でガードレールの柵にホオジロ♂(Emberiza cioides)が止まっていました。
口元をよく見ると、嘴に2匹の黄色っぽいイモムシ(幼虫)を咥えています。
巣で待つ雛鳥に給餌する途中なのでしょう。
獲物を咥えながら鳴いていて驚きました♪(地鳴き? 警戒声?)
さすがにこの状況でリップシンクロは確認できないものの、この個体の鳴き声で間違いありません。
尾羽根を神経質そうに上下に動かしています。
最後は右から来た歩行者に驚いて、住宅地ではなく川の方へ飛んで逃げました。
実は土手のどこか近くに巣がありそうです。
もしかするとヒトに巣の位置を悟られたくないため、私に見られている間は帰巣しないのかもしれません。
ホオジロの繁殖期の育雛行動を見たのは初めてです。
次は巣を発見したいものです。
※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。
2017年5月下旬
農地の用水路沿いの草むらをキアゲハ♀(Papilio machaon hippocrates)が忙しなく飛び回っていました。
本種の食草はセリ科植物のはずなのに、セリ科以外の葉に止まって吟味していました。
腹端を曲げて白っぽい卵を一粒ずつ産みつけました。(@0:19)
残念ながらこの植物の名前が分かりません。
ご存知の方は教えてください。
実は私が知らないだけで、セリ科なのですかね?
この草むらは頻繁に草刈りされてしまうため、花などの特徴が出るまで育つのを待てないのです。
この用水路沿いを少し歩くとオオハナウド(セリ科)の群落があり、後日キアゲハの幼虫を確認しています。
今回の謎の植物はオオハナウドではないと思うのですが…?
それから、同じ用水路沿いで少し離れたところにノダケ(セリ科シシウド属)が自生していたのを思い出しました。
▼関連記事
ミツバの葉に産卵するキアゲハ♀【ハイスピード動画】
【追記】
図鑑で調べると、キアゲハ♀は稀にミカン科の植物にも産卵することがあるそうです。
ここは雪国(寒冷地)なのでミカン科の植物はほとんど自生していませんし、サンショウならさすがに私にも見分けられます。
【追記2】
保育社『原色日本蝶類生態図鑑I』を紐解いてキアゲハの項目を調べてみると、幼虫の食餌植物として膨大な種類のセリ科植物が列挙してあり圧倒されました。そして更に、
このほか、キハダ、カラタチ、サンショウ、ミカン(ミカン科)、ベニバナボロギク(キク科)、ウスバサイシン(ウマノスズクサ科)、ミツバオウレン(キンポウゲ科)、ギョリュウ(ギョリュウ科)を食べる幼虫が自然状態で観察され、セリ科を食べたものと同じように成長し、正常の成虫が羽化した例が知られる。また、ガーベラ(キク科)への産卵例がある。(p100-101より引用)
この中ではベニバナボロギクが怪しそうです。(実際に用水路沿いに生えているのを思い出しました)
2017年5月下旬
川沿いの公園に植栽された庭木に見慣れないピンクの花が咲いています。
帰ってから調べてみると、ベニバナトチノキでした。
セイヨウミツバチ(Apis mellifera)のワーカー♀が訪花していました。
集粉は行わず、花蜜狙いですね。
当然ながら、後脚の花粉籠は空荷です。
花の咲く時期はもう終わりつつあるようで、雄しべの葯に花粉があまり残っていません。
来年、もう少し早い時期に観察してみたいものです。
ミツバチがときどき花の根元から盗蜜したようにも見えるのですが、花の形が狭い筒状でもないのに、不思議です。
正当訪花で潜り込めば蜜腺に届くはずです。
今回採餌行動を観察できたのは一匹だけですし、盗蜜行動の有無は保留にしておきます。
※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。
2017年5月下旬
郊外でコムクドリ♂(Sturnus philippensis)が電線に止まっていました。
暑そうに嘴を開けています。
撮られていることに警戒したのか、鳴きながら飛んで逃げました。
辺りをキョロキョロしながらときどき小声で鳴いています。
嘴を足元の電線に擦り付けています。
同じ日に時間を開けてほぼ同じ場所で撮った映像をまとめたものです。
てっきり同一個体♂かと思ったのですが、映像をよく見ると翼の肩?の辺りの白紋に違いがありますね。
少なくとも2羽の♂を撮ったことになります。
同じ縄張りでそんなことあり得るのかな?
近くで営巣するムクドリは雛への給餌で忙しそうだったのに、コムクドリ♂は雛のために虫を運んでいませんでした。
※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。
2017年5月下旬・午後22:30頃・晴れ
夜道を歩いていると自然度の低い市街地でも道端の側溝からジー♪というケラ(Gryllotalpa orientalis)の単調な鳴き声が響いてくることがあります。
田園地帯の畦道ならケラが鳴いていても別に不思議なことではありません。
しかし土や草もろくに無い人工的な水路で果たしてケラが生息できるのでしょうか?
やはり数日後にはその鳴き声は聞こえなくなってしまいます。
また、側溝からケラの鳴き声が聞こえる地点は毎年違うのです。
実は去年の同じ時期に気になり始めた現象なのですが、去年は証拠映像を撮り損ねてしまいました。
今年は団地の横の側溝の中から二夜連続でケラが鳴いていました。
まず赤外線の暗視動画で鳴き声を記録してみます。
ケラは♀も鳴くそうなので、性別は不明です。
北海道大学出版会『バッタ・コオロギ・キリギリス生態図鑑』によると、
(ケラの)♀にも翅に発音器があるが、♂ほど発達していない。(中略)湿った草地や田畑などの土中にすみ、灯火に飛来する。♂は長くジーーーと鳴き、♀は短く断続的に鳴く。(p312より引用)
続けて白色LEDを点灯してもケラ♂は眩しい光を気にせず鳴き続けました。
残念ながらケラがどこに隠れているのか姿は見つけられませんでした。
天気は晴れ。
温度計を忘れてしまいましたけど、雨上がりのため体感の気温は高くなかったです。
幅50cmの側溝には水が流れておらず、暗渠の蓋が金網になっている部分の下には雑草が生い茂っていました。
先程まで降っていた雨の水滴が雑草に付着して光っています。
一方コンクリートで蓋された部分では光合成できないため草は生えていないはずです。
夏は大雨が降らない限り、この側溝は干上がってしまうのでしょう。
もしかするとケラが辛うじて生息できる安全な環境なのかもしれません。
しかし後日にまた再訪すると、ケラの鳴き声は聞こえなくなっていました。
この枯れ水路(支流?)を辿ると水の流れる側溝(融雪溝)につながっていました。
私が推理したシナリオは以下の通りです。(あくまでも個人的な作業仮説です)
ケラが道端の側溝で鳴き始めるのは、ちょうど近隣の田んぼに水を入れ代掻きした(今年は5月中旬)後である点に注目しました。
春まで田んぼの地中で暮らしていたケラが突然の増水に流されて農業用水路から更に下流の融雪溝に流されて来たのではないでしょうか?
ここ雪国では冬の除雪作業に備えて融雪溝が町中に縦横無尽に張り巡らされているのです。
各家庭が雪かきしたその雪を捨てて融かしたり大きな川まで流すための水路です。
ケラは泳ぎも達者らしいので、なんとか溺れずに水から上がれた地点でケラが途方に暮れて鳴いている、という推理です。
当然、そんな人工的な場所に単独で漂着しても繁殖できず、すぐに死に絶えてしまいます。
ケラの鳴き声が聞こえた側溝から上流にどんどん辿っていけば、私の予想では水田に行き着くはずです。
ところが実際に調べようとしたら、意外に難しいミッションでした。
側溝が交差点の下を暗渠(地下水路)でくぐる時にどの方角から流れているのか(交差点を直進するのか曲がるのか分岐しているのか)、素人には外から分からないのです。
役所で尋ねれば側溝や融雪溝の詳細な地図を閲覧させてもらえるのかな?
逆に、生きたケラに超小型の電波発信器やGPSを括り付けて田んぼから流れ出る用水路に放流し、街中の側溝まで辿り着けることを証明できればエレガントです。
必ずしも生体を使わなくても、小さな浮きや追跡機器を流してみるだけで充分かもしれません。
この方法論は、ポリネシア人の起源について南米渡来説を立証するために海洋人類学者のヘイエルダールが自作のイカダで南太平洋を漂流した壮大な実験(コンティキ号の冒険)と同じ発想です。
しかし水入れした田んぼから小型GPSを水路に流してもすぐに途中で引っかかったり紛失したりして、文字通りお金をドブに捨てる実験になるだけかもしれません。
もし私の仮説が正しいと分かれば、春に田んぼから流れ出る排水口に網や柵などを適切に設置すれば、ケラの犠牲を少なくすることができそうです。
ケラは未だ絶滅危惧種には指定されていませんし、田んぼで野鳥などの天敵に捕食される数に比べたら微々たるものかもしれません。(調べてみなければ分かりません)
別なシナリオも考えられます。
ケラは夜の灯火に向かって飛んでくるらしいので、自力で配偶者を探したり分布を広げようとしたり試行錯誤している最前線なのかもしれません。
路上を歩いてきたケラが側溝の金網から落ちた可能性もありますね。(側溝の横は団地の駐車場のケヤキ並木で、貧弱な自然が申し訳程度に残っています。)
今はケラが越冬から目覚めて活動を始める時期だとすれば、各地で鳴き始めるのは当然でしょう。
このシナリオBをどうすれば否定(または実証による肯定)できるのか、今のところアイデアが思いつきません。
何か良い案がありましたら教えてください。
先述のように、もし全ての田んぼの出水口にケラが入り込まないようにしっかり対策した結果として街中の側溝で鳴くケラが居なくなれば、シナリオAで間違いないでしょう。(言うは易く行うは難し)
つづく→#2
2017年5月上旬
アカマツ樹上でのハシブトガラス営巣記録#1
郊外でアカマツの樹幹にカラスの巣を新たに見つけました。
かなりの高木です。
巣材は多数の小枝を組み合わせてお椀状に作られています。
巣に座っている親鳥は、抱卵中の♀なのでしょう。
ところが在巣の♀が急に飛び立ち、旋回して左手の針葉樹に止まりました。
その枝には先客のカラス(恐らく番の♂)が居て、下で見ている私に対して「カァカァカァカァ♪」と切迫した警戒声を発していました。
澄んだ声なのでハシブトガラス(Corvus macrorhynchos)のようです。
なぜか♀はまたすぐに飛び立ち、アカマツの左横の雑木林の樹冠に止まり直しました。
他のカラスの領空侵犯があったのかもしれません。(縄張り防衛の行動?)
その後は、怪しいヒト(=私)が見ている間は帰巣したくない(巣の位置をヒトに悟られたくない)というハシブトガラス♀の意志を感じました。(この日だけでなく後日の観察でもそのような印象を受けました。)
これだけ嫌がっているのにしつこく撮影して営巣放棄されては私も困るので、このまま撤退しました。
私のフィールドでカラスと言えば北方系のハシボソガラスの方が圧倒的に優占種で、南方系のハシブトガラスは滅多に見かけません。
同時期に営巣中のハシボソガラスよりもハシブトガラスの番(つがい)の方がバードウォッチャー(私)に対する警戒心がかなり強い印象を受けました。
これはカラスに関する本で読んでいた通りで、この後の定点観察でも毎回悩まされることになります。
例えば松原始『カラスの教科書』によると、
・特にハシブトガラスは巣が丸見えになるのを嫌うらしく、針葉樹・広葉樹を問わず常緑樹に営巣することが多い。(p47より引用)
・ハシブトガラスは巣の位置を秘匿することに非常に気を遣う。(p52より)
・カラスは巣や雛を見る視線に非常に敏感である。野生動物の世界にはバードウォッチャーとか研究者とかいうおかしな奴はいないので、巣をジロジロ見る者は「巣を狙っている敵」と見なして差し支えないからである。まして巣立ち雛の方を見ていたり、巣立ち雛の近くにいたりすれば、確実に「我が子に迫る危険」と認定される。(p287より)
※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。
つづく→#2:縄張り防衛に余念がない繁殖中のハシブトガラス♀♂(野鳥)
2017年5月中旬
橋の下にそびえ立つキリ(桐)の高木の花を更に観察すると、もう一匹のツマジロカメムシ(Menida violacea)が 枝先に止まって足を擦り合わせ身繕いしていました。
やがてせかせかと早足で徘徊を始め、太い枝に達すると一休み。
また少しだけ登り、枝の反対側に回りこむと、飛び立ちました。
枝からも吸汁していたのかどうか、不明です。
※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。
2017年5月下旬
川の中の枯木の天辺に鳥が止まっていたのでカワセミかと思い動画に撮ってみると、初見のイソシギ(Actitis hypoleucos)でした。
当地では夏鳥らしい。
それまで甲高い寂しげな声で鳴いていたのに、カメラを向けると鳴き止んでしまい残念。
▼関連記事
川岸で採食するイソシギの鳴き声を声紋解析してみる(野鳥)
川岸から斜め上に伸びた細い枯れ木の天辺に止まって下流を向き、川面をキョロキョロ見ています。
やがて羽繕いを始めました。
最後はなぜか急にその場で翼を大きく広げてくれて、翼下面がバッチリ見えました。
サービス精神旺盛で助かります。
羽根を伸ばした直後に飛び立ちました。
イソシギは飛翔法が独特らしいのですが、残念ながらすぐに見失ってしまい、確認できませんでした。
※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。
2017年5月中旬・午後18:37
だだっ広い公園の端っこでムクドリ(Sturnus cineraceus)の群れが芝生を啄んで虫を捕食していました。
仲間に獲物を取られないように、1羽が奥の舗装路へ逃げて行きました。
育雛中の親鳥なら、雛に給餌するため虫を飲み込まず咥えたまま採食するはずです。
巣立った幼鳥や若鳥の群れなのですかね?
しかし餌乞い行動はしませんでした。
この公園は木が少ないものの池も掘られていて、ムクドリにはお気に入りの採餌場なのかもしれません。
※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。(実際はもっと薄暗い)