2022/11/05

スギ林道の溜め糞場で夜な夜な排便するホンドタヌキのペアは尻尾で見分けられる?#2【トレイルカメラ:暗視映像】

前回の記事:▶ 雨の夜明け前にスギ林道の溜め糞場で用を足すホンドタヌキ【トレイルカメラ:暗視映像】

2022年7月下旬〜8月上旬

里山のスギ林道に残された溜め糞場sを新しいトレイルカメラで監視しています。 
この時期に登場したホンドタヌキNyctereutes viverrinus)のシーンをまとめました。 


 シーン1:7/30・午後19:37・気温25℃ 
尻尾がフサフサした「フサ尾」が林道を右から登場。 
溜め糞の匂いを嗅いでから通り過ぎ、溜め糞を跨いでから立派な固形の大便を排泄しました。 
そのまま左に立ち去りました。 


シーン2:8/1・午後19:01・気温28℃ (@0:35〜) 
2日後の晩にもフサ尾が林道を歩いて右から登場。 
起動したカメラに少し驚いたようで、カメラ目線をくれました。 
いつものタヌキ溜め糞の上に跨って排便。 
用を足しながらチラッとカメラを見上げました。 
立派な固形の糞を残すと、左に走り去りました。 


シーン3:8/2・午後21:49・気温26℃ (@1:09〜) 
なぜか登場シーンが撮れていません。 
溜め糞に跨り、カメラの方を向いて脱糞中でした。 
今回は珍しく右に立ち去りました。 

この個体は負け犬のように尾が下向きにほぼ直角に折れ曲がっています。 
個体識別に使えそうなので、「垂れ尾」と名付けることにします。 
これは性差なのか、それとも先天的な異常(軽い奇形)なのかな? 
ニホンザルの♂成獣は群れ内の順位が上がると尻尾を高々と上げて堂々と闊歩します。
もしかすると、タヌキの垂れ尾は劣位個体の印なのでしょうか?
垂れ尾とフサ尾の性別を見分けられないのですけど、♀♂つがいではないかと考えています。 
溜め糞場に連続して登場したら番だろうと分かるのですが、繁殖期は一緒に夜出歩くことはないのでしょうか。
 


シーン4:8/3・午前2:25・気温24℃ (@1:38〜) 
約4.5時間後の深夜にまた「垂れ尾」が林道を歩いて右から登場。 
私はタヌキの顔で個体識別が未だ出来ないので、「垂れ尾」が複数いる可能性もあります。
緩い軟便をボトボトと溜め糞に追加してから左に歩き去りました。 

この溜め糞場sにはニホンアナグマもときどき通っています。
ニホンアナグマの溜め糞や匂い付け(スクワットマーキング)に対して、タヌキはいつも全く興味を示しません。 
アナグマの匂いを掻き消すように(対抗するように)自分の糞を重ねて残す、というような行動は見られませんでした。 
あくまでもタヌキ同士の嗅覚コミュニケーションとして、決まった場所に溜め糞をしています。



山中の池でトレイルカメラが捉えたオニヤンマ♂の縄張り巡回飛翔

 

2022年7月下旬 

山中の泉をトレイルカメラ(自動撮影カメラ)で監視していると、日中に飛び回る大型のトンボが頻繁に写るようになりました。 
トレイルカメラの映像だけではトンボの種類を見分けられませんが、後日現場入りしたときに改めて自分でも動画を撮り、オニヤンマ♂(Anotogaster sieboldii)と判明しました。(映像公開予定) 
昆虫は変温動物なので、トンボが横切ってもトレイルカメラのセンサーは反応しないはずなのに、不思議です。 
野鳥など昼行性の恒温動物が飛来したついでに、たまたまオニヤンマ♂が写った訳ではありません。 
もしかすると、巡回飛翔を長時間続けるオニヤンマの飛翔筋は激しい運動で発熱しているのでしょうか? 
サーモグラフィカメラで撮影してみたいのですが、高嶺の花です。 
一方、水場の水面を遊泳するアメンボにはトレイルカメラのセンサーが反応することはありません。 
アメンボは小さいですし、代謝も低くて体温が気温以上に上がらないからでしょう。 


シーン1:7/26 
トレイルカメラが癖のある古い機種なので、昼間の映像は設置直後しか総天然色で記録されません。 
オニヤンマ♂は池から流れ出る水路の上空でホバリング(停空飛翔)してから林道の方へ飛び去りました。 
しばらくすると戻って来て、池の上空を往復します。 
オニヤンマ♂は朝から夕方までひたすら縄張り巡回を繰り返しています。 
産卵のために水場に飛来する♀を待ち伏せして、交尾するのが♂の目的です。 

池から流れ出た湧き水は、奥にある林道を横切って斜面を下り、沢になります。 
オニヤンマ♂はその水路を辿って往復巡回飛翔しているようです。 
そのコースだけでなく、水場の奥を通る林道に沿って左右に往復することもあります。 

シーン2:7/28 (@0:31〜) 

シーン3:7/29 (@0:47〜) 
オニヤンマ♂が疲れて休む際には、水面の落枝には止まらず、必ず池畔の灌木から水面に張り出した枝にぶら下がります。 
どうやらお気に入りの止まり木が何箇所かあるようです。 
止まり木にぶら下がって長時間休んでいるシーンは退屈なので、10倍速の早回し映像に加工しました。 

小雨が降り始めると、池の上を飛んで奥の林道の右奥に姿を消し、しばらく戻って来ませんでした。 どこかで雨宿りしているのでしょうか。 
戻って来たオニヤンマ♂が池をパトロールしてから、いつもの右岸の止まり木にぶら下がりました。 
小雨が降り続いています。 


シーン4:7/30 (@2:57〜) 
前日と同じ縄張り占有行動を繰り返しています。 

空腹になると池の上を飛び、空中で獲物を狩って捕食してるのかもしれませんが、狩りのシーンは一度も撮れていません。 
止まり木で休憩中に落ち葉がヒラヒラと舞い落ちると、反応して飛び立ちました。 
右岸の灌木に一瞬だけ着陸してすぐにまた離陸したのは、枯葉を獲物と誤認して狩ろうとしたのかな? 


同一個体の♂が水場を中心とした縄張りを占有していると思われます。 
しかし♂同士の縄張り争いは一度も撮れていません。 

関連記事(同所同時期の撮影)▶ 山中の水路に沿って縄張りを張りパトロールするオニヤンマ♂



雨が本降りになるとパトロール飛翔を止めて雨宿りしているようです。 
雨上がりにオニヤンマ♂は活動を再開するのですが、カメラのレンズに水滴が付着してまともな動画が撮れなくなるので、割愛しました。 
レンズの水滴が自然乾燥するまで待たないといけません。 
ワイパー機能があると便利なのになー。 

昼間はオニヤンマ、夜はコウモリが頻繁に飛来するため、この水場に設置したトレイルカメラの電池があっという間に消耗してしまいます。 
無駄撮りとは言いませんが、他の野生動物や野鳥が記録できなくなるのは困ります。 
(まるで迎撃システムに対するドローンの飽和攻撃みたいです。 )
乾電池ではなくソーラーパネルをトレイルカメラの電源とするオプションもあるのですけど、鬱蒼とした雑木林の山中では十分な日照を確保できない気がします。 
高い木に登って樹冠に太陽電池を設置しないといけないでしょう。
沢に小さな水車を設置して水力発電できるかな?



2022/11/04

ホオジロの喧嘩(野鳥)

 

2022年7月下旬・午後13:55頃・晴れ 

山麓の斜面の草むらで2羽の鳥が激しい喧嘩を繰り広げていました。 
2羽は鳴きながら♪同じ方向に飛び去りました。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると、ホオジロEmberiza cioide)の縄張り争いだったようです。 

※ 鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。

鳴きながら脱糞するヒガシキリギリス♂

 

2022年7月下旬・午前11:40頃・晴れ
前回の記事:▶ ヒガシキリギリス♂の鳴き声♪を声紋解析してみる

ヤブカンゾウの蕾に乗ってギー、チョン♪と繰り返し鳴いている ヒガシキリギリス♂(Gampsocleis mikado)の撮影を続けると、腹端の肛門がヒクヒクと動き、黒くて細長い乾いた固形糞をポロリと排泄しました。 
糞に植物の丸い種子が含まれているように見えるのですけど、どうでしょうか? 
排便中も休まずに鳴き続けています。 

せっかくなので、最後に跳んで逃げるシーンも撮影すればよかったですね。

2022/11/03

深夜タヌキの溜め糞場を跨いで通り過ぎるニホンカモシカ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2022年7月下旬・午前2:30頃・気温24℃
前回の記事:▶ 山のスギ林道を昼も夜も往来するニホンカモシカ【トレイルカメラ:暗視映像】

里山のスギ林道で溜め糞場sを監視するトレイルカメラ(自動撮影カメラ)を新しい機種に交換しました。 
すると早速、真夜中にニホンカモシカCapricornis crispus)が通りかかりました。 
新機種はセンサーが熱源を動体検知してから起動するまでの反応が見違えるほど早くなりました。
気温と月齢のデータが映像に焼き込まれているのも便利です。

林道を歩いて右から登場したカモシカが立ち止まり、スギ大木の幹の匂いを嗅ぎました。 
前日の午後にヒトが立ち小便したマーキングに反応したのかもしれません。 
それに対抗してカモシカが同じ場所に排尿したり眼下腺マーキングしたりすることはありませんでした。 

林道上に黒々と残るホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の溜め糞を踏まずに跨いで左に通過しました。 
カモシカの目には暗闇でもうっすらと見えているのか、それとも匂い(糞便臭)で糞塊の存在が分かるのでしょうか?

トリアシショウマの花を舐めるオオハナアブ♂

 

2022年7月下旬・午後12:20頃・晴れ

山道沿いに咲いたトリアシショウマの群落でオオハナアブ♂(Phytomia zonata)が訪花していました。 
口吻を伸縮させて花粉・花蜜を舐めています。 
この組み合わせは初見です。 
「大ハナアブ」という名前とは裏腹に、小型の個体でした。 
クロヤマアリ♀とのニアミスを嫌がって、隣の花穂へ飛んで移動しました。 

食餌の合間に身繕いしました。 
左右の前脚を擦り合わせ、複眼と口吻を拭い、花粉を落とします。 
次に左右の後脚を互いに擦り合わせます。 
後脚を持ち上げて胸背を掻きました。 

ウグイス♂の囀りさえずり♪とニイニイゼミ♂の鳴き声が聞こえますね。
   

2022/11/02

夜霧の立ち込める池畔を野ネズミが徘徊【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2022年7月下旬・午後20:00頃 

トレイルカメラで山中の泉を見張っていると、夜行性の野ネズミ(ノネズミ)が写りました。 
濃い霧が立ち込める対岸に登場した小動物の目だけが白く光って見えます。 
左岸の水際をチョロチョロと近づいて来たのは野ネズミでした。 
最後は左岸の斜面をピョンピョン登って姿を消しました。 

※ オリジナルのAVI動画ではなかなか趣のある夜霧だったのに、YouTubeにアップロードしてMP4に再エンコードしたら、画質がモザイク状に劣化してしまいました。 

フタモンアシナガバチの巣を襲い老熟幼虫を捕食するヒメスズメバチ♀

 

2022年7月下旬・午前9:45頃・晴れ 

民家の物置小屋の軒下に作られたアシナガバチの巣をヒメスズメバチVespa ducalis pulchra)のワーカー♀が襲撃していました。
木造の軒下からアシナガバチの巣柄が横向き(南向き)に伸びていて、六角形の育房がほぼ水平に作られています。 
巣盤の中央部には白い繭キャップで蓋をされた育房が見えます。 

ヒメスズメバチ♀は巣盤の外縁部の育房から丸々と太った老熟幼虫を引きずり出すと、その場で噛みほぐして体液を吸汁しました。 
他種のスズメバチ類とは異なり、ヒメスズメバチは獲物で肉団子を作りません。 
食べかけの獲物を惜しげもなく捨ててしまいます。 
もう満腹になったのか、ヒメスズメバチ♀は巣盤を触角で調べてから、飛び去りました。
自分の巣に帰って獲物の体液を吐き戻し、幼虫に給餌するのです。    
関連記事(3年前の撮影@今回の現場の近所)▶ フタモンアシナガバチの初期巣を襲うヒメスズメバチ♀

入れ替わりでフタモンアシナガバチ♀(Polistes chinensis antennalis)が帰巣しました。 
巣盤の被害状況を検分するでもなく、呆然としています。 
アシナガバチはヒメスズメバチに反撃しても勝ち目がありませんから、巣の主は一時退散していたのです。 (三十六計逃げるに如かず、逃げるが勝ち)
ちなみに、ヒメスズメバチがアシナガバチの成虫を襲って捕食することはありません。
コロニーを全滅させてしまうと、獲物がいなくなってしまうからです。
戻った個体はワーカー♀ではなく、創設女王と思われます。 
残った育房の状況を写真に撮って調べると、この初期巣からワーカー♀は未だ羽化していない可能性が高いです。 

巣内に獲物が未だたくさん残っているのに、しばらく待っても同一個体のヒメスズメバチ♀が再襲撃に戻って来なかったのは意外でした。 

カメラを左にパンすると、同じ軒下の左隣に古巣が並んでいました(東向き)。
その巣盤にもヒメスズメバチ♀に噛みちぎられて全滅した形跡がありました。 
襲撃を受けた後にフタモンアシナガバチ創設女王が右隣に新しく巣を再建したのかな? 
造巣の向きが互いに90°違うので、二巣並行営巣ではないはずです。 
寄生蛾に食い荒らされたと思われる古巣の残骸も残っていました。

【追記】
4日後に営巣地を再訪すると、ヒメスズメバチに食い荒らされてコロニーは全滅しており、フタモンアシナガバチ創設女王は巣を見捨てて(廃巣)どこかに逃去していました。

天敵のヒメスズメバチがいることで、アシナガバチが増え過ぎずにバランスが保たれているのです。





2022/11/01

夜霧の林道をうろつくホンドタヌキ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2022年7月下旬・午後22:30頃 ・霧

トレイルカメラ(自動撮影カメラ)で監視している山中の泉に夜霧が立ち込め始めました。
水場の周囲はただでさえ湿度が高い上に雨季(梅雨)なので、夜に気温が下がると霧が頻繁に発生するのです。
霧が煙のように風で流されるおかげで、視界は未だ確保できています。 

雑草の生い茂った対岸の林道に登場したホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が地面の匂いを嗅ぎながら右往左往うろついています。 
目だけが白く光り、下草の揺れる動きでたぬきの行動を予測するしかありません。 
このタヌキは、池で水を飲んだり水浴したりしませんでした。 

トレイルカメラが捉えたオオセンチコガネの糞転がし行動【5倍速映像】

 

2022年7月下旬・午後13:45頃・晴れ
前回の記事:▶ タヌキの溜め糞場から糞の欠片を後ろ向きに転がして運ぶオオセンチコガネ

タヌキの溜め糞場sから私が立ち去る動きに反応して、横に設置してあるトレイルカメラが起動しました。 
その動画にたまたま、オオセンチコガネPhelotrupes (Chromogeotrupes) auratus auratus)の行動が引きの絵で記録されていました。 
赤い矢印の地点に残されたホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の糞塊に注目してください。 

赤紫の金属光沢に輝くオオセンチコガネが林床の巣穴から出て来ると、近くの糞塊を崩し、欠片を後ろ向きに転がして巣穴に運び入れました。 
5倍速の早回し映像でまずはご覧ください。 
つづいて等倍速でリプレイ。 
溜め糞をせっせと片付ける糞虫の活動を、次回は本格的に微速度撮影してみたくなりました。

変温動物の糞虫が動き回っても、トレイルカメラが動体検知することはありません。 
しかし恒温動物が獣道を通りかかった際に溜め糞上の糞虫の行動がついでに記録されることがあると分かりました。



2022/10/31

山林で美しくさえずる鳥の名前は?【野鳥:鳴き声の主を教えて】

 

2022年7月下旬・午後15:15頃・晴れ 

里山の林道を下っていると、野鳥の囀りさえずりが大音量で聞こえてきました。 
素晴らしく美声なので、思わず立ち止まって聞き入ってしまいました。 
鳴き声(囀り)の主は目の前のスギ林に潜んでいそうですけど、姿を見つけられませんでした。 
ちなみに、林道の左側は杉林と雑木林の混交林です。 
後半はヒグラシ♂の蝉しぐれ♪も加わり、豪華なコーラスになりました。 

これは何という鳥の鳴き声なのでしょうか? 
ご存知の方は教えていただけると助かります。 
現場は東北地方日本海側の多雪地帯で、ブナ帯よりも標高の低いミズナラ帯の山林です。(標高約380m地点) 
オオルリ、クロツグミ、キビタキなどを候補に検討しているのですけど、囀りさえずりのバリエーションが多いらしくて、図鑑のサンプルCDを聞き比べても分かりませんでした。 

謎の野鳥の囀りを声紋解析してみる? 
音量を上げて聞くと、鼻詰まりの私の鼻息が耳障りでガッカリ…。  


【追記】 
シロハラTurdus pallidus)の囀りさえずりと似ている気がしたのですが、冬鳥とされているので違いますよね…?


キャットミントの花で採餌するクロマルハナバチ♀

 

2022年7月下旬・午後16:20頃・くもり 

山麓の農村部の道端に咲いたキャットミントの群落でクロマルハナバチBombus ignitus)のワーカー♀が訪花していました。 
シソ科の唇形花に忙しなく正当訪花を繰り返しています。 
口吻を伸ばして吸蜜する後脚を見ると、花粉籠は空荷でした。 
蜂が花にしがみつくと、その体重で茎が大きくしなります。
対生する葉の先をちぎって嗅ぐとミントの香りがしました。 
たぶんキャットミントだと思います。
 

 ↑【おまけの動画】 
Bumblebees enjoy playing with balls, according to study – BBC News 
「マルハナバチはボールで遊ぶ」という新発見を紹介するニュースです。 
特に若い個体がよく遊ぶのだそうです。

2022/10/30

スギ林道の溜め糞場で跛行しながらスクワットマーキングするアルビノのニホンアナグマ♂【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2022年7月下旬
前回の記事:▶ タヌキと同じ溜め糞場に排便するニホンアナグマ【トレイルカメラ:暗視映像】

里山のスギ林道に残された溜め糞場sを自動撮影カメラ(トレイルカメラ)で監視していると、ニホンアナグマMeles anakuma)が深夜に現れました。 

シーン1:7/23・午前4:08(日の出時刻は午前4:31) 
未明に登場したアナグマは、右後脚を負傷しているのか、怪我をかばうように不自然な跛行をしていました。 
「びっこを引く」という表現をヒトに対して使ってしまうと大問題の差別表現になりますが、野生動物の異常な歩行を正確に記述するのに必要なので、臆せず使わせてもらいます。 
暗闇の林床でトゲを踏んでしまい、痛がっているのかな? 
それとも生まれつき(先天性)股関節の奇形なのでしょうか? 

しかも、この個体はアルビノ(白毛)かもしれません。 
赤外線の暗視映像では顔の黒い縦縞模様が見えませんし、足も黒くありません。 
比較対象として、ノーマルタイプのアナグマを同じトレイルカメラで撮らないことには、単なる白飛び(露出オーバー)の可能性が否定できません。 

スギ大木の根元を通って林道を左へ立ち去りました。 
と思いきや、すぐに左から戻って来ました。 
素人目には排便したくて我慢しているように見えます。 

溜め糞場sで脱糞を試みたものの、林道上に転がっている細長いスギ落枝の存在に驚いて左へ走り去りました。 
暗闇で、今まで無かった異物に躓いたら警戒するのも当然です。 
ちなみに、この落枝には野ネズミも吃驚仰天して慌てて逃げていきました。
▼関連記事(同時期に同所で撮影) 
深夜の林道で野ネズミが跳び上がって驚いた訳とは?【トレイルカメラ:暗視映像】
どうもこの落枝のせいで、野生動物の排便シーンが撮影できてない気がします。 
後日、私が現場入りしたときに、この落枝を林道上から取り除いてやりました。 


シーン2:7/26・午前2:13 (@0:34〜) 
3日後の深夜、おそらく同一個体と思われるアナグマが登場。 
歩き方がきわめて特徴的(跛行)なので、個体識別が可能です。 
里山には天敵の捕食者(ニホンオオカミや野犬)が居ませんから、足が不自由でも生存可能なのでしょう。 
平凡社『世界大百科事典』でアナグマを調べると、面白い記述を見つけました。
アナグマの脚は山腹を歩きやすいように両側で長さが不ぞろいであるとの伝承があり,英語で badger-leggedといえば足の長さが違う人を指す。
跛行するアナグマは珍しくないのかもしれません。 
股間に大きな睾丸が見えたので、♂のようです。 

跛行アナグマ♂は溜め糞場sの周囲の匂いを嗅いだだけで、左へ立ち去りました。 
すぐにまた画面下からヌッと再登場すると、辺りをウロウロと徘徊しています。 
しゃがんでいかにも排便しそうな姿勢になっても、結局カメラの前では脱糞しませんでした。 
どこで排便するか決めかねてウロウロしているのでしょうか? 

林床の落葉を後ろ足で後方に掻き出す行動をしました。 
イヌの脱糞直後の行動と似ています。 
糞を土で埋める行動の名残なのかな? 

最後は林道を右に走り去りました。 
今回も溜め糞場で脱糞しなかったのは、細長い落枝の存在を嫌ったからでしょうか?

※ アナグマが画角から一時消えている間は、5倍速の早回し映像に加工しています。 


当時の私はアナグマの観察歴が浅かったために、この個体の行動が理解できずに、排便を我慢しているのかと勘違いしました。 
金子弥生『里山に暮らすアナグマたち: フィールドワーカーと野生動物』という本を読んでみると、第3-3章に「嗅覚によるコミュニケーション」として分かりやすくまとめてあり、勉強になりました。
肛門腺と臭腺の二つの器官を使って、アナグマは自分の巣穴の入口付近、けもの道の途中などにマーキングを行う。マーキングには「スクワットマーキング」と「アロマーキング」の二種類があることが知られている。スクワットマーキングは、アナグマがスクワットのような姿勢で腰をぺたんと地面や対象物に向けて落とし、尾を上げて臭腺を目的物にこすりつける動作である。アロマーキングとは、アナグマどうしのにおいつけであり、二匹のアナグマがおしりを向けて立ち、臭腺を直接たがいにこすりあう。(p64〜65より引用)

動画の個体は、溜め糞場の下草にスクワットマーキングして縄張り内の獣道に匂い付けしていたのだと初めて理解できました。 



つづく→溜め糞場で排便後にスクワットマーキングするニホンアナグマ♂(アルビノ?・跛行)【トレイルカメラ:暗視映像】

飛べないオオミズアオ♀(蛾)

 

2022年7月下旬・午後14:20頃・くもり 

低山の尾根道を縦走していたら、道端の幼木にオオミズアオ♀(Actias aliena)がしがみついてハタハタと弱々しく羽ばたいていました。 
きれいな翅は無傷で、羽化直後のようです。 
触角が羽毛状に発達せず、腹部が膨満していることから♀と判明。 
オオミズアオ幼虫の食樹はバラ科、ブナ科、カバノキ科、ミズキ科とされています。
この尾根道の周囲は雑木林なので、オオミズアオが生息していても不思議ではありません。

オオミズアオ♀は自分で勝手に暴れて止まり木から落ちては下の枝葉に引っかかり登り返す、を繰り返しています。 
地面に落ちても、枯れ茎を登り先端へ移動します。 
飛び立てる場所を探しているようにも見えます。
腹端に注目すると性フェロモンを放出中(コーリング)なのかな?と思うものの、定かではありません。 

目の前に左手を差し出して手乗りさせると、腕までどんどん登って来ます。
私の汗ばんだ腕の上で羽ばたいてくれたので、しばし涼風を感じました。 
オオミズアオ成虫の口吻は退化していますから、ヒトの汗を吸汁したりしません。 
すぐに力なく落下してしまいました。 
撮影する私の靴にまとわりつくように尾根道を歩き回るので、私は後退しながらも蛾を踏みつけそうになり焦りました。 
やがて疲れたのか、全開にした翅をペタンと広げて地面に静止。 

どうして飛べないのか、理由が分かりません。 
もし天敵に見つかったら、あっさり捕食されてしまうでしょう。 
♀は卵巣でいっぱいの腹部が重くて、念入りに準備運動をして体温を上げないと飛び立てないのかな?

【おまけの写真】 
2021年6月下旬 

同じ山系の麓でオオミズアオ♀が用水路のコンクリート蓋に止まって日光浴していました。 
翅の縁が少し破損しています。
お蔵入りしていた写真がようやく日の目を浴びました。

ランダムに記事を読む

  • ハクセキレイ♂(野鳥)の早朝散歩22/09/2016 - 0 Comments
  • 年末の雪山でツキノワグマの足跡を見つけた?07/08/2023 - 0 Comments
  • 山で泉の水を飲むニホンザルと群れの遊動【トレイルカメラ】29/10/2022 - 0 Comments
  • コガタスズメバチの初期巣とシダクロスズメバチによる謎の訪問02/01/2011 - 0 Comments
  • ノダケの花で食事するコアオハナムグリ12/12/2016 - 0 Comments