2022/12/31

深夜の水場で排便するハクビシン?【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2022年8月下旬 

里山で沢の源流となっている泉をトレイルカメラで監視していると、真夜中にハクビシン(白鼻芯、白鼻心;Paguma larvata)らしき謎の獣が2回登場しました。 
夏毛のホンドテンMartes melampus melampus)かと初めは思ったのですが、ハクビシンに訂正しておきます。
もし間違っていたら、ご指摘願います。

シーン1:午前2:37 
カメラの起動が少し遅れたようです。 
ハクビシンが対岸の水路から、草木で覆われた右岸に登るところでした。 

水場から居なくなって数秒後に、コウモリ(種名不詳)が奥の森から飛来しました。
今回のコウモリは池に着水することなく、すぐに飛び去りました。 
いつもなら、他の野生動物が水場に来るとコウモリの飛来はパタッと無くなります。 
空を敏捷に飛び回るコウモリにとって、他の哺乳類が(たとえ肉食獣であっても)脅威になるとは思えないのですが、それなりに警戒しているようです。 
暗闇での哨戒活動もエコロケーションで行っているのが我々には想像も出来ません。
それが今回、ハクビシンと入れ替わるようにコウモリがすぐ飛来した点が興味深く思いました。 


シーン2:午前3:44 
1時間前と同一個体なのか別個体なのか分かりませんが、再びハクビシンが写りました。 
池の水が流れ出る水路の出口で腰を屈め、横向きで脱糞しています。 
浅瀬の水中に排泄した軟便は、赤外線の暗視映像では白く見えました。 
排便の途中でカメラ目線になると、両目が白くギラギラと光ります。 


実は同じ水場で昼間にもホンドテンがオシッコに来ていました。 
このときは白昼の池畔に突っ立って撮影する私を警戒してそこに排尿したのかと思ったのですけど、夜に無人カメラで撮影すると今度はハクビシンが同じ場所に排便していました。
テンやハクビシンには水場を糞尿の匂いでマーキングする習性があるのでしょうか? 
しかし、流水に匂いが長時間残るとは思えません。
哺乳類のフィールドサインに関する本を読むと、テンは糞をサインポストとして縄張り内の目立つ場所に残す習性があるとしか書いてません。 (※追記2参照)
水洗トイレに排泄するということは、逆に自分の糞尿の匂いを残したくないことになります。 
その理由を色々と想像してみました。 
・他の強い個体の縄張り内でこっそり暮らしてる? 
・発情期以外の♀は♂につきまとわれると面倒なので、自分の匂いを残したくない? 
・里山の食物連鎖では上位の捕食者なので、縄張り内の獲物に悟られないよう匂いを消している?

登山中に辿り着いた泉や沢の水が澄んでいるとつい飲みたくなりますが、野生動物の糞尿で汚染されていることを知った私は飲む気が失せました。
逆に、テンやハクビシンは飲み水が自分の糞尿で汚染されても気にしないのでしょうか?(衛生観念の欠如)
水場の下流の端に排泄してくれたのが唯一の救いです。
池の水生生物にとっては、水質がきれいすぎるよりも糞尿で適度に富栄養化した方が生物多様性が増すのかもしれません。
「水清ければ魚棲まず」

排便後のハクビシンは一気に跳んで右岸に登ると、前回とほぼ同じく岸辺の斜面を斜行して姿を消しました。 
跳躍シーンをまずは1/3倍速のスローモーションでご覧ください。 
直後に等倍速でリプレイ。 
長い尻尾を鞭のように振ってジャンプする瞬間は、スポーツ用品メーカー「プーマ」のロゴとそっくりです。
 

ハクビシンが居なくなった後も、浅瀬の水中には新鮮な糞が残っています。

ハクビシンの姿が見えなくなった後に此岸の水面に波紋が広がりました。
ハクビシンが池の岸を回り込んでからブルルっと身震いして濡れた毛皮の水気を切ったか、あるいは崖を登った際に土砂が少し池に落ちたのかもしれません。 


【追記】 
まさかとは思いますが、もしかしてテンではなくてハクビシン(白鼻芯、白鼻心;Paguma larvata)ですかね? 
黒くて細長い尻尾がハクビシンっぽい気がするものの、ハクビシンなら顔の中央にあるはずの白い縦線が見えないので、悩ましいところです。
尻尾がフサフサではなくて細長く見えるのは、水に濡れたせいと考えれば、ホンドテンで良さそうです。

実は興味深いことに、水場から少し離れた林道に設置した別のトレイルカメラにも、同じ日に2回撮れていました。
しかも2回ともに撮影時刻が数分前なので、林道を歩いて水場に向かった同一個体の動向が2台のトレイルカメラに連続して記録されたことになります。

【追記2】
水場の水中に残された糞はすぐに溶けて原形を留めませんから、フィールドワーカーに気づかれにくく、フィールドサインとして記録されてこなかったのでしょう。
トレイルカメラで偶然撮れた排便シーンの証拠映像を見なければ、ハクビシンの糞とは認識できません。



溜め糞場で狩ったキンバエを隠れ家に持ち去り捕食するアカバトガリオオズハネカクシ

 

2022年8月中旬・午後12:10頃・くもり 

里山の尾根道から外れ、廃道状態の細い山道を辿って斜面を下り始めてすぐの地点に、ホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が残したと思われる溜め糞場kを前年から見つけています。 
ヒトが使わなくなって藪に覆われた廃道も、獣道として今も使われているようです。 
周囲は若い二次林で、薄暗い林床の山道にはノギランが点在しています。 


糞塊の真下で糞虫が活発に活動しているらしく、糞塊が上下にゆっくり動いています。 
糞虫が処理した後の地面には丸い穴がいくつも開いており、おそらくセンチコガネ類の巣穴だろうと考えています。(発掘調査は今後の課題) 


新鮮な糞塊にはメタリックグリーンに輝くキンバエLucilia caesar)の仲間が群がっていました。 


ここに比較的新しい糞が残されているのは珍しいので、立ち止まって観察していると、大事件が起こりました。 (映像はここから。) 

アカバトガリオオズハネカクシ(旧名アカバハネカクシPlatydracus brevicornis)が早足で溜め糞場から離れて行きます。 
その大顎にキンバエの一種を咥えていました。 
溜め糞場で待ち伏せしていた肉食性のアカバトガリオオズハネカクシが獲物を仕留める瞬間を、残念ながら撮り損ねてしまいました。 
これまでハエなど食糞性の昆虫に襲いかかっても狩りに失敗するシーンばかり見てきたので、まさか敏捷なハエ成虫の狩りに成功するとは驚きでした。 
仲間が襲われて必死に暴れているのに、他のキンバエ2匹は近くの糞上に留まって吸汁を続けています。

襲われた直後は激しく暴れていたのに、胸部を横から噛み付かれたキンバエはすぐにおとなしくなりました。 
毒液を注入されたのかな? 
獲物を咥えたハネカクシは林床を走り回り、落葉の下に隠れました。 
肉食性ハネカクシ類の生態について私は疎いのですが、獲物を自分の巣穴に搬入する(貯食)という習性は聞いたことがありません。 
おそらくライバルに獲物を横取り(強奪)されないように、安全な隠れ家に運んでからゆっくりと捕食するのでしょう。
糞食性の昆虫を目当てに溜め糞場に来て捕食する野鳥も居るので、私に対して警戒していたのかもしれません。
あるいは、♂から♀へのプレゼント(求愛給餌)だとしたら面白いのですが、落ち葉の下に隠れたアカバトガリオオズハネカクシの様子はほとんど見えません。
撮影アングルを確保しようと私が下手に動くと落ち葉を踏んでガサガサと音を立ててしまい、警戒したハネカクシに逃げられてしまいます。

この地点にもトレイルカメラを仕込んで、本当にタヌキの溜め糞かどうか確認したいところですが、台数が足りなくて後回しになっています。 

2022/12/30

夜にシナノキ灌木を駆け下りるヒメネズミ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2022年8月下旬 

里山の林道にある水溜り(ヌタ場?)をトレイルカメラで見下ろすように監視していると、深夜に野ネズミが登場しました。 

林道脇の斜面(法面)から若いシナノキがヌタ場に張り出すように湾曲しながら伸びています。 
これは豪雪地帯の斜面に生えた樹木に特有の樹形(成長様式)です。 
実生や幼木の時期に深い雪に埋もれてしまうと、その重い雪の層が重力に従って斜面をずり落ちるために、幼木は斜面に沿って谷側に倒伏してしまいます。 
雪解けまで耐えた個体がようやく幹を上方に伸ばすことができるのです。 
幹がしっかり太くなるまで、積雪による強烈な変形荷重が毎年冬になると繰り返されます。
その結果、根元付近の下部では幹が強く湾曲します。 
そのような不格好な樹形になるのを避けるには、庭木のように補強材で冬囲いして幼木を1本ずつ守るか、ある程度まっすぐに太く育った苗木を山に植えるしかありません。 
画角の外に見切れてしまっていますが、このシナノキ灌木は湾曲のロスを取り返すように結構な樹高があります。(3m以上?)

シーン1:8/25・午後23:00頃 
状況説明が長くなりましたが、その若いシナノキのグィーンと曲がった細い幹を野ネズミが駆け下りてきました。 
1/3倍速のスローモーションでリプレイ。 
逆に木登りの様子が記録されていなかったのは残念です。 
これまで私は野ネズミの種類を外見で見分けられませんでしたが、これほど木登りが上手なのは、アカネズミではなくヒメネズミApodemus argenteus)です。 


シーン2:8/26・午前1:20頃 (@0:25〜) 
約2時間25分後、自動撮影カメラが再び起動すると、細かい雨が斜めに降り注いでいました。
体の小さな野ネズミは雨に濡れたら夏でもすぐに低体温症になりそうな気がするのですが、平気で活動しています。 
おそらく毛皮の撥水性が高くて雨水をよく弾くのでしょう。 
雨夜の暗闇で餌を探し回るヒメネズミは若いシナノキの根元に移動し、手前の死角に消えました。 


クサコアカソの群落でアカタテハ終齢幼虫の巣を見つけた!

 

2022年8月下旬・午後13:05頃・晴れ 

里山を下山中、道端に生えたクサコアカソ群落にアカタテハVanessa indica)の幼虫が作った巣を見つけました。 
クサコアカソの花粉が風で飛散しています。(風媒花)
関連記事(1年前の撮影)▶ 風媒花アカソの花粉が飛散する様子【HD動画&ハイスピード動画】
クサコアカソの株の最上部で数枚の若い葉を絹糸で綴り合わせて隠れ家が作られていました。 
花後の果穂も巣材の葉と一緒に巻き込まれています。 
成虫♀(母親)が子供のために作ったものではなく、幼虫自身が食草を綴って作ったものですから、この構造物を「巣」と呼ぶのは昆虫学の定義上は間違っています。 
正しくは隠れ家(シェルター)と呼ぶべきでしょう。 
しかし、「アカタテハ幼虫の巣」という俗称が世間に定着してしまっているので、私も不本意ながら巣と呼ぶことにします。 
アカタテハ幼虫の隠れ家は特徴的なので、予備知識さえあれば逆に探しやすくなってしまうのは皮肉です。

巣内に幼虫が排泄した黒い糞が大量に残されていました。 
糞の匂いで寄生蜂や寄生バエが誘引されそうなのに、どうして放置しておくのか不思議です。 

動画を撮りながら巣材の葉を1枚ペリペリとめくると、巣内に棘だらけの毛虫が現れました。
この棘は見掛け倒しで、ヒトが手で触れても全く痛くありません。 
巣を暴かれたアカタテハ幼虫は少し身動きしたものの、特に暴れたり威嚇したりしませんでした。 

巣ごと持ち帰って飼育してみましょう。 
クサコアカソという植物は今回初めて見つけたのですが、普通のアカソなら近所で調達可能ですし、食草として喜んで食べてくれるはずです。
採集した時点で終齢幼虫であったことが後に判明します。 

2022/12/29

明け方の溜め糞場で虫を探すクロツグミ?(野鳥)【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2022年8月下旬・

里山のスギ林道にあるアナグマとタヌキの共用溜め糞場sを自動撮影カメラ(トレイルカメラ)で見張っていると、新たな興味深い動きがありました。 

シーン1:8/22・午前4:56・気温20℃(日の出時刻は午前4:57) 
日の出直前の杉林はまだ暗く、暗視モードでの撮影になります。 
現場は東向きの斜面ですが、東の山並みから太陽が昇るので、公式の日の出時刻よりも遅れます。
2羽の黒い野鳥が林道上に来ていました。 
♀♂ペアなのでしょうか?
しかし、1羽が別個体を追い払っているように見えます。 
溜め糞場sに集まる糞食性の昆虫を独占して捕食するつもりなのかな? 
ちなみに、2日前の8/20にタヌキとアナグマがここで排便しています。 

黒い鳥は腹面が白っぽく、クロツグミTurdus cardis)ではないかと思うのですが、どうでしょうか?(自信なし) 
スギの落ち葉が敷き詰められた林道で餌を探し始めました。(探餌行動) 
アナグマが残した溜め糞のすぐ横で、クロツグミ?はスギの落葉を嘴で次々に持ち上げたり払いのけるようにめくったりして、下に隠れている虫を探しているようです。 
もしかして、逃げた個体に対して威嚇誇示する意味もあるのかな? 
残念ながら虫を捕食するシーンは撮れていません。 
ピョンピョン跳んで(ホッピング)林道を右に立ち去りました。 


シーン2:8/23・午前2:12・気温22℃ (@0:40〜) 
翌日の深夜未明にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が溜め糞場sに来て排便しました。 


シーン3:8/23・午前4:56・気温22℃(日の出時刻は午前4:58) (@0:54〜) 
2日連続で同じ時間帯(夜明け直前)に黒い鳥が登場しました。 
この辺りを縄張りとする同一個体なのかもしれません。 
約2時間40分前にタヌキが排泄したばかりの新鮮な糞塊の上にクロツグミ?が乗っていました。 
溜め糞から黒い糞虫?が慌てて這い出て来たのに、鳥は気づかず左に飛び降りて立ち去りました。 
今回は落葉めくりをしませんでした。



ヘリアンサス「レモンクイーン」の花粉を舐めるナミハナアブ♀

 

2022年8月下旬・午後16:05頃・晴れ 

山麓の農村部で裏庭に咲いたヘリアンサス「レモンクイーン」の群落でナミハナアブ♀(Eristalis tenax)が訪花していました。 
口吻を伸縮させて花蜜や花粉を舐めています。 
食餌の合間に身繕い(化粧)した花粉も舐め取ってしまいます。

2022/12/28

トレイルカメラ2台で連続撮影した夜行性ニホンカモシカの縄張り巡回行動【暗視映像】

 



2022年8月下旬・夜

トレイルカメラ2台で監視している里山のスギ林道を2夜連続して通りかかったニホンカモシカCapricornis crispus)の記録です。 

シーン1:8/25・午前1:06・気温20℃ 
深夜の真っ暗な林道をカモシカがゆっくり歩いて来ました。 
まずカメラ@ホオノキが起動した後に、対面に見えるカメラ@スギが起動し、赤外線LEDが点灯しました。 
互いに逆向きで狙うトレイルカメラ2台で連続撮影に成功しました。 

次に、カメラ@スギが録画した映像を見てみましょう。 
緩やかな坂になっている林道をカモシカが左からゆっくり下りて来ました。 
道端に立つスギ大木(胸高直径〜60.5cm)を右に回り込むと立ち止まりました。 
股間に揺れる睾丸が見えたような気がするのですけど、♂ですかね?
残念ながら頭部が画角の外に見切れてしまっているのですが、スギの横に生えたコシアブラ稚樹(樹高〜150cm)の枝葉に顔を擦りつけたようです。 
(後日、トレイルカメラのアングルを調整し直して、コシアブラ幼木への眼下腺マーキングを改めてしっかり動画に記録することが出来ました。映像公開予定)
カモシカが眼下腺マーキングする対象として、コシアブラが好みなのかな?
関連記事(10か月前に別の場所で撮影)▶ 夜にコシアブラ幼木の葉に眼下腺マーキングするニホンカモシカ【トレイルカメラ:暗視映像】
その後は林道を右へ立ち去りかけたものの、途中で少し立ち止まりました。(道草を食った?) 


シーン2:8/26・午後20:18・気温24℃ (@0:56〜) 
翌日の晩にカモシカが林道を歩いて右から登場しました。 
まずはカメラ@スギの暗視映像をご覧ください。 
私はカモシカの個体識別ができていないので、前日と同一個体が戻って来たのか別個体が登場したのか不明です。 
タヌキとアナグマが共有している溜め糞場sを素通りすると、カメラの真下の死角に消えました。 
以前見たように、林道脇の法面を登ったのでしょうか? 

続けて撮れたカメラ@ホオノキの映像を見てみましょう。 
予想は外れ、カメラ@スギの真下でカモシカが立ち止まっています。 
頭を下げているものの、下草を採食しているのではなく、林道の匂いを念入りに嗅いでいました。 
次に林道から左に逸れて、法面を右上に斜行し始めました。 
今回は崖を一気に登らず、斜めに緩やかに登って行きます。 

やがて対面に写っているカメラ@スギの赤外線LEDが消灯しました。(消灯まで10倍速) 
ということは、こちらのカメラ@ホオノキは対面のカメラ@スギの赤外線LEDの点灯にセンサーが反応したのではなく、登場したカモシカの体温を感知して起動したのだと判明しました。 

予算が潤沢にあれば、カモシカの通る獣道に沿ってトレイルカメラをたくさん並べてみたいものです。


ママコナの花蜜を吸うクロマルハナバチ♂

 

2022年8月中旬・午後13:10頃・晴れ 

里山の尾根道沿いに咲いたママコナの群落でクロマルハナバチBombus ignitus)の雄蜂♂が訪花していました。 
カラフルな雄蜂♂との組み合わせは初見です。
▼関連記事(1年前の撮影) 
ママコナの花で採餌するトラマルハナバチ♀【HD動画&ハイスピード動画】
ズームインしようとしたら無念のカメラトラブルとなり、蜂に逃げられてしまいました。 
一瞬しか撮れてなくてボツ(お蔵入り)にしようと思ったのですが、1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると、もしかすると…と思うところがありました。
やや遠くて吸蜜行動があまりよく見えないのですが、正当訪花ではなく穿孔盗蜜しているような気がします。 
宿題として来年に持ち越しです。

2022/12/27

林道のヌタ場?付近で下草を採食するヤマドリ4羽の群れ【野鳥:トレイルカメラ】

 

2022年8月下旬

里山の林道に、ほぼ常時水溜りができている区間があります。 
泥濘に蹄の足跡がときどき残っているので、イノシシが泥浴びに来る「ヌタ場」なのではないかと予想しました。 (カモシカの蹄跡かも?)
そこで、林道脇の法面から水溜りを見下ろすように、トレイルカメラを仕込んでみました。
当地でイノシシの生息密度は未だ低いようで、滅多に撮れません。 
それでも、トレイルカメラの設置場所を変えてみると意外なドラマが次から次へと記録されるので、飽きることがありません。 

シーン1:8/25・午後16:15頃 
昼間に2羽のヤマドリ(亜種キタヤマドリ:Syrmaticus soemmerringii scintillans)が登場しました。 
前後して歩きながら林道に生えた下草を啄んでいます。 
採食後は、林道脇の法面を登って姿を消しました。 
初めは♀♂つがいなのかと思いきや、実は右奥にもう1羽潜んでいました。 
若鳥の群れ、あるいは親子なのかな? 
音量を上げても、互いに鳴き交わす声は聞き取れませんでした。 

直後に監視カメラが再び起動すると、ヤマドリ1羽がヌタ場の近くで下草の葉を啄んでいます。 
やがて、更に別個体が林道の右端を通り左からひっそりと登場しました。 
立ち止まって頭を右足で掻いています。 

ヤマドリは非常に警戒心が強いので、山中で出会ってもすぐに飛び去ってしまうことが多く、まともに撮影できたことがありません。 
落ち着いて採食するシーンを初めて撮れたのは、トレイルカメラという文明の利器のおかげです。 
この林道区画に生えている下草はミゾソバがメインですが、採食メニューは他にもありそうです。(動画では植物種を見分けられず。) 

今回は少なくとも4〜5羽のヤマドリが行動を共にしていました。 
つがいよりも大きな群れ(家族?)も初見です。 
群れを作るメリットとして、メンバーが交互に周囲を見張れば、天敵への警戒を怠らずに安心して採食することができます。 
ちなみに、この辺りでヤマドリを襲って捕食者となり得るのは、ホンドテンぐらいでしょう。 
地味なヤマドリが動きを止めると、見事な保護色で見つけるのが困難です。 


シーン2:8/27・午前10:40頃 (@1:27〜) 
2日後に再びヤマドリの群れが登場しました。 
ヤマドリ4羽が林道に散開して採食しています。 
尾羽根が長い♂と短い♀が混じっています。 
下草の葉をついばむだけで、水たまりで飲水したり水浴したりすることはありませんでした。 
1羽が林道脇の斜面を登って画面右へ消えました。 
林道上に残った2羽は採食を続けています。 
最後に画面右上から新たに1羽が登場しました。 

おかしな癖のある(制御プログラムのバグ)旧機種のトレイルカメラをだましだまし使い続けているのですが、日中に撮れた映像の色調がおかしくなる症状が頻発します。 
赤っぽい色調が点滅してあまりにも不自然なので、動画編集時に自動色調補正すると、ほぼモノクロの映像になってしまいます。 



wikipediaでヤマドリについて調べると、
主に標高1,500メートル以下の山地にある森林や藪地に生息し、渓流の周辺にあるスギやヒノキからなる針葉樹林や下生えがシダ植物で繁茂した環境を好む[5]。冬季には群れを形成する[5][3]。

食性は植物食傾向の強い雑食で[7]、植物の葉、花、果実、種子、昆虫、クモ、甲殻類、陸棲の巻貝、ミミズなどを食べる[5][3][4]。

『やまがた野鳥図鑑』によれば、
同じ仲間のキジが、開けた場所を好むのに対し、ヤマドリは山地のよく茂った林の特に急斜面があるような場所を好む。地上で木の実などを探しているようだ。
(中略)薄暗い斜面のある林が狙い目?(p25より引用)
確かに現場はそのような環境でした。





ハリギリ倒木の幹の縦溝に産卵するミカドフキバッタ♀の群れ

 

2022年8月中旬・午前9:30頃・くもり 

里山でハリギリ(別名センノキ)の巨木が冬の大雪のため山腹に倒伏しました。 
その倒木にミカドフキバッタ♀(別名ミヤマフキバッタ;Parapodisma mikado)が集まって産卵していました。 
ハリギリの樹皮に特有の深い縦溝にミカドフキバッタ♀は腹端を突き刺した状態で静止しています。 

巨大な倒木のあちこちで(見える範囲で)計3匹も産卵していたので、産卵基質としてよほど気に入ったようです。 
フキバッタ類がハリギリの葉を食べるという話は見聞きしたことがありません(幼虫の食樹ではない)。 
樹皮の縦溝の中は適度な湿り気がありますし、冬に深い雪に埋もれても卵が無事に越冬できる安全な場所なのでしょう。 
土中に産卵するよりも卵が捕食される可能性が低そうです。 
倒木ではなく生きた状態のハリギリにもフキバッタ♀が木登りして樹皮の縦溝に産卵することはあるのでしょうか? 
ネット検索すると、「枯れ木や朽ち木に産卵します」と書いてあるサイトがヒットしました。
別のサイトでは「ミカドフキバッタは隙間に産卵することが好きみたいだ。木道の隙間、タイルの隙間の土、樹木の隙間で産卵するのを見たことがある」との記述がありました。
初めて見た私はちょっと驚いたのですが、ミカドフキバッタ♀では別に珍しい産卵行動ではないようです。

関連記事(13年前の撮影@砂利道)▶ フキバッタの産卵(未遂)

後半は通常マクロモードに切り替えて接写してみました。 
産卵中の♀にレンズをそっと近づけただけで2匹は警戒し、跳んで逃げました。 
フキバッタの仲間は翅が退化していますから、成虫でも飛ぶことが出来ません。
残る1匹は産卵に没頭しており、私が指で後脚に触れても逃げませんでした。 
産卵行動にも段階がありそうです。 

3匹ともハリギリ幹の縦溝に腹端を突っ込んでいたので、その行動から♀だろうと勝手に判断しました。 
逃げた2匹はもしかすると、交尾相手の♀を待ち伏せしていた♂という可能性もありますかね? 
私には外見で性別を見分けられませんでした。 


2022/12/26

夜のスギ林道で採食する子連れのニホンイノシシ♀【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2022年8月下旬・午後18:35頃・気温24℃(日の入り時刻は午後18:27) 

日没直後のスギ林道に子連れのニホンイノシシ♀(Sus scrofa leucomystax)が登場しました。 
現場は里山の東斜面なので、公式の日の入り時刻よりもずっと早く太陽が稜線に隠れて暗くなります。 
つまり、この時刻には真っ暗です。
林道を挟んで互いに逆から狙う2台のトレイルカメラで連続撮影に成功しました。 

まず現れたのは母親のイノシシ♀です。 
下腹に乳房と乳首が見えるので、♀と分かります。 
牙が短いのも♀の特徴です。 
林床に生い茂る下草や落葉を鼻で掻き分けて探餌採食しています。 

尻尾を絶えず左右に振っているのは、つきまとう吸血性のアブや蚊を追い払っているのでしょうか。
しかし、動画には夜行性の吸血昆虫は写っていません。

母親の後から縞瓜に似た縦縞模様の幼獣(通称「ウリ坊」)が2頭続けてやって来ました。 
既に乳離れしているようで、母親の周囲をうろちょろと自力で採食しています。 
幼獣が母親の腹の下をくぐり抜けたときも授乳しませんでした。 

音量を上げると、イノシシが低音でブーブー♪鳴く声が聞こえます。 
鳴き交わしているというよりも、母親が一方的に鳴いて幼獣に居場所を伝えているコンタクトコールなのかな?

※ イノシシの鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


トレイルカメラを設置したスギの根元にイノシシの母親が採食しながら近づきました。 
するとカメラのセンサーが感知して、赤外線LEDが点灯しました。(@1:26〜) 
イノシシの母子家族は上から照射する赤外線が見えてないようで、全く無反応・無関心で採食を続けています。 
カメラの真下で結構長時間、採食してくれました。 

続けて別カメラからの映像をご覧ください。(@1:54〜) 
緩やかな坂道となった林道をイノシシの家族群が左から降りてきました。 
まず登場したのは縞模様のウリ坊です。 
カメラの真下の死角で採食しているようです。 
続けて成獣♀(母親)も画面下の死角から現れました。 
地面に積もったスギの落葉を鼻で掻き分けながら餌を探しています。 
後からもう1頭の幼獣が追いつきました。 
イノシシの家族群は、母親を先頭に林道を右に立ち去りました。 
こちらのトレイルカメラ@スギではなぜかイノシシの鳴き声が録音されていませんでした。 
カメラに内蔵されたマイクの性能に差があるのかもしれません。

ニホンイノシシの母子は、林道の中央にあるタヌキとアナグマの溜め糞場sを迂回して通り過ぎました。 
好奇心が旺盛なはずの幼獣も溜め糞には近寄りませんでした。
嗅覚に優れるイノシシにとっては、臭い汚物という認識なのでしょう。 

私にとって、イノシシの採食シーンが初見というだけでなく、母親に引率された幼獣も初見です。 
この雪国の山域でニホンイノシシが繁殖しているという決定的な証拠映像が撮れました。 

通常4月から5月頃に年1回、平均4.5頭ほどの子を出産する。秋にも出産することがあるが、春の繁殖に失敗した個体によるものが多い。妊娠期間は約4か月。雄は単独で行動するが雌はひと腹の子と共に暮らし、定住性が高い。子を持たない数頭の雌がグループを形成することもある。
最近読んだ本:高橋春成『泳ぐイノシシの時代』によれば、
イノシシの子のウリ模様は、生後4か月ほどまでみられる。(p85より引用)
とのこと。







アナグマの溜め糞で吸汁するクロヒカゲ♂と肉食性ハネカクシの攻防

 

2022年8月中旬・午前10:25頃・晴れ・気温25℃
▼関連記事(前夜および前前夜の撮影) 
夜の溜め糞場に通い、排便およびスクワットマーキングするニホンアナグマ♂【トレイルカメラ:暗視映像】
ニホンアナグマMeles anakuma)が里山のスギ林道に残した溜め糞sを観察していると、クロヒカゲ♂(Lethe diana)が飛び回っていました。 
飛来シーンをまずは1/5倍速のスローモーションでご覧ください。 
直後に等倍速でリプレイ。 

左のやや軟便の小糞塊に着陸すると、クロヒカゲ♂は翅をしっかり閉じたまま、すぐに口吻を伸ばして一心不乱に吸汁し始めました。 
クロヒカゲが土を舐めてミネラル摂取するシーンは過去に何度も見ていますが、獣糞に来たのは初見です。
関連記事(1、2年前の撮影)▶  
土を舐めてミネラル摂取するヒカゲチョウの群れ【HD動画&ハイスピード動画】 
砂利道の土を舐めるクロヒカゲ♂

蝶が飛来したら、先客のキンバエは飛び去ってしまいました。 

やがて、溜め糞の右奥のスギ落ち葉の下から肉食性のアカバトガリオオズハネカクシ(旧名アカバハネカクシPlatydracus brevicornis)が忍び寄りました。(@1:17〜) 
ハネカクシに襲われそうになった寸前に、クロヒカゲは翅を素早く開閉して撃退しました。(@1:38〜) 
1/5倍速のスローモーションでまずはご覧ください。 
一瞬だけ全開したクロヒカゲの翅表を見ると、前翅の白帯が不明瞭なので♂と判明。

右隣の糞塊(しっかりした一本糞×3)にカメラをパンすると、別個体のアカバトガリオオズハネカクシに襲われかけたキンバエの一種が逃げていました。 

しばらくすると、クロヒカゲ♂は右の大きなアナグマ糞塊に移動して、吸汁を続けています。 
溜め糞で待ち伏せしていたサビハネカクシOntholestes gracilis)がクロヒカゲ♂に襲いかかろうとすると、蝶は素早く飛び退きました。(@3:16〜) 
まずは1/5倍速のスローモーションでご覧ください。 
直後に等倍速でリプレイ。 
狩りに失敗したサビハネカクシはすごすごと右へ立ち去りました。 

私は未だ肉食性ハネカクシの狩りが成功したシーンを見たことがありません。 
周囲の山林ではエゾゼミ♂とミンミンゼミ♂がやかましく鳴いています。 

クロヒカゲ♂は充分に吸汁して満足したらしく、私が他の昆虫を撮影している間にいつの間にかアナグマの溜め糞から飛び去り、二度と戻って来ませんでした。
糞塊の右下にサビハネカクシ
アナグマ溜め糞の全景

2022/12/25

山の泉で育つトウホクサンショウウオ幼生をすくって見る

 

2022年8月下旬・午後12:35頃・晴れ 

夏でも冷たい湧き水(地下水)が流れ込む山中の泉で、珍しい水生動物を見つけました。 
これまでアズマヒキガエル幼生(オタマジャクシ)の大群を定点観察していたのですが、変態が完了して池から全て居なくなるまでサンショウウオ幼生の存在に気づきませんでした。 
岸辺の浅いところに居たのを咄嗟に素手で掴み取りました。 
小魚のように逃げるかと思いきや、その動きは鈍かったです。 
透明プラスチックのお魚観察ケース(13.5×3.5×7.0cm)に移してから、じっくり観察してみましょう。 
(映像はここから) 

後で図鑑などで調べると、トウホクサンショウウオHynobius lichenatus)の幼生でした。
生まれて初めての出会いです。 
山中を流れる沢の源流となる、こんな池に居るとは知りませんでした。
尻尾に黒い斑点模様があります。 
四肢が伸びていて、胸部の横に外鰓が張り出しています。 

山渓ハンディ図鑑9『日本のカエル+サンショウウオ類』でトウホクサンショウウオを調べると、
幼生は、秋までに変態して上陸する。(p167より引用)
wikipedia:トウホクサンショウウオによれば、
幼生ははじめは12-14mm程度の大きさで、動物性プランクトンや川エビ、水棲昆虫などを捕食する[4][5][2][3]。共食いをすることもある[2]。 多くの個体は生まれた年の秋までに40mmほどになって成体へ変態するが、なかには越冬して翌春まで幼体のものもいる[4][5]。

容器の底でじっと静止していて、容器を揺らしても無反応。
私が指を水中に突っ込んでしつこく触れると、ようやく泳いで逃げました。 
尻尾を左右にくねらせて小魚のように泳ぎます。 

容器の側面には定規の目盛が刻んであるので、容器越しに採寸することができます。 
真夏でも湧き水の水温が低いために、プラスチック容器の表面がすぐに曇ってしまいます。 
邪魔な結露を布で何度も拭き取りながら撮影しました。 
この日は温度計を持参せず、池の水温を測れませんでした。 

観察した後はトウホクサンショウウオ幼生を池に戻してやりました。(再放流) 
いつか飼育してみたいものです。 
安易に採集しても、真夏に生かしたまま険しい山道を下山して家まで無事に持ち帰れる気がしません。







ミズナラの幹を登るトゲアリ♀の行列:仲間の成虫を運んで引っ越し

 

2022年8月中旬・午後13:10頃・くもり 

里山の尾根道の横に立つ朽ちかけたミズナラの幹にトゲアリPolyrhachis lamellidens)の行列ができていました。 
仲間の成虫を大顎で咥えて運んでいるワーカー♀が居たので、新しい巣へ引っ越し中なのだと分かりました。 
アリの死骸を餌として巣に運んでいるだけかと初めは思いましたが、運ばれているアリの胸から赤い棘が生えているのが見えたので、同種の成虫と分かります。 
運んでいるのは羽化直後の若い成虫だと思います。 
女王アリなら体長がもっと大きいはずです。 
互いに向かい合って大顎で噛み合い、怪力で持ち上げると前進で木登りしてます。 
荷物が樹皮にひっかかって登りにくいときは、少し登る向きを変えて角度をずらして障害を乗り越えます。 
空荷で登る後続の個体に追い越されたり、上から降りてくる個体とすれ違ったりしています。 
追い越す際には触角で触れて同じコロニーの仲間だと確認していました。 
コロニー引っ越し作業の序盤なのか終盤なのか分かりませんが、他に卵や幼虫・蛹を運んでいるワーカーは居ませんでした。 
ムネアカオオアリの引っ越しは過去によく見かけたのですけど、トゲアリでは初見です。
▼関連記事(0、11年前の撮影) 
仲間を運んで引っ越すムネアカオオアリ♀の行列 
仲間の成虫を咥えて引越しするムネアカオオアリ

トゲアリの行列は朽ちかけたミズナラの幹の洞を通り過ぎて更に登っていました。
新しい営巣地を突き止められませんでしたが、樹洞内にあるはずです。 
辺りでミンミンゼミ♂が鳴いています♪ 

マクロレンズを装着しようか迷いました。
もたもたしている間に成虫を運搬する個体が私の届かない高さまで登ってしまいそうだったので、通常のマクロモードで接写しました。 
レンズをあまり近づけ過ぎると、肝心の被写体が影になってしまいます。 

営巣には洞の出来るようなある程度太い、一定の樹齢のある樹木が必要なため、あまり若く細い樹木ばかりの林にはほとんど生息していない。 営巣 ある程度太い、樹齢のある樹木の根元近くにある洞等を巣に利用していることが多い。樹種はコナラを筆頭に、クヌギ、スダジイ、サクラ等が多い。原則としてこれらは即ち、後述の寄生対象である宿主アリが営巣していた場所ということになる。ただ、何らかの理由で環境が悪化すると、一旦乗っ取りに成功して繁栄した巣穴を捨てて、近距離の別所に引っ越す場合もある。 本種は他のアリのコロニーに一時的に寄生する一時的社会寄生を行う。wikipedia:トゲアリより引用)



関連記事(1年後の撮影)▶ 幼虫を運んで引っ越しをするトゲアリ♀の行列 

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