2016/10/15

腹部を全損しても歩き続けるクロオオアリ♀



2016年7月中旬

峠道の法面を補強する土留のコンクリートで変な虫(見慣れない奇妙なフォルム)が垂直の壁を登っていました。
よく見たら腹部を欠損したクロオオアリCamponotus japonicus)のワーカー♀で、ギョッとしました。
捕食者から命からがら逃げてきたのでしょう。
驚くべき生命力です。
出血は見られず、脚は胸部に付いているので歩行にさほど支障は無いようです。
腹部に近い後脚だけが動いておらず、引きずって歩いています。

壁面で別のアリとすれ違っても互いに没交渉でした。
瀕死のアリを狩るかと予想したのですが、外れました。



雨天でもムラサキツメクサを訪花するイチモンジセセリ



2016年7月中旬

小川沿いに咲いたムラサキツメクサ(=アカツメクサ)の群落でイチモンジセセリParnara guttata)が訪花していました。
ちょうど小雨が降り始めたのですが、傘をさして撮影を続けます。
イチモンジセセリは特にどこかへ隠れて雨宿りするでもなく、小雨が降る中でも元気に飛び回っています。
なぜか枯れかけの頭花でホバリング(停空飛翔)と着陸を繰り返しています。
花に止まっても口吻は伸びていないので、吸蜜ではありません。
なんとなく遊んでいるような、♂がムラサキツメクサの花に誤認求愛しているようにも見えました。
性別を見分けられていませんし、個人的な妄想です。



2016/10/14

サトジガバチの交尾拒否?2016



2016年7月上旬

里山の峠道(標高〜400m地点)でジガバチの一種が交尾していました。
私が知らずに歩いていたら、蜂のカップルが驚いて道端に飛び退いたのです。

道端に堆積した枯葉(スギ)や枯れ草(ススキ?)の上で交尾を続けています。
体長を比べると♀>♂。
顔の白い♂は♀の背後からマウントしながら♀の首を咥えているように見えます。
腹部を互いに絡ませるものの、いつまで経っても交尾器を結合しないので、見ていてもどかしくなります。
♂が必死に交尾器を結合しようとしても、♀の腹端まで届かないのです。
ジガバチの交尾を見る度にいつもこの状態なのですけど、♀が♂を選り好みしたり交尾に非協力的で交尾拒否しているのでしょうか?
交尾器をしっかり連結した本当に交尾中のジガバチをなぜか今まで見たことがありません。
同種でない可能性もあるのかな?(生殖的隔離)

『狩蜂生態図鑑』p24によると、

サトジガバチの産卵に必要な交尾は1回だけで、一度交尾の済んだ♀にとって飛びかかってくる♂は邪魔なようで、中脚を上に伸ばして♂を防いでいる。



ジガバチ♀♂は途中から舗装路に出てきてくれました。
アリ(お邪魔虫)との遭遇を嫌ったのかもしれません?
歩き回る際の主導権はジガバチ♀が握っているようです。
マウントしたまま飛んで移動する様子は撮り損ねました。
タンデム飛翔は♀♂どちらが主導権を握っているのか、興味があります。
路上から再び道端の落ち葉の上へ移動しました。
アスファルトは熱いのかもしれません。
次は反対側の道端まで飛ぶと、ミズナラ幼木の葉表に移動しました。


▼関連記事
ジガバチの交尾拒否?2012年
ジガバチの交尾未遂
ミカドジガバチ?の交尾


交尾が成就するまで最後まで成り行きを見届けるべきか迷いましたが、♀♂ペアで入手できる機会は滅多にないので、採集を優先しました。
サトジガバチかヤマジガバチか、正確に同定するには標本を精査する必要があるのです。
ありあわせのビニール袋を一気に被せて一網打尽にしました。
袋内でしばらく暴れていたものの、ようやく♂が♀を手放しました。
ビニール袋はすぐに噛み破られるので、タッパーウェアに閉じ込めて持ち帰りました。

以下は標本写真。

しかし写真で記録するのが億劫で放置していたら、お恥ずかしいことにひどくカビが生えてしまいました。
我流の復旧措置として消毒用エタノールを染み込ませた綿棒で清浄してから接写しました。
まずは小柄で顔の白い♂の標本。


次は♀の標本です。



識別点である胸部の点刻や皺の状態を検討した結果、
採集地点は低山でしたが♀♂共にサトジガバチ(Ammophila sabulosa nipponica)だろうと判明しました。


ヨツバヒヨドリの花蜜を吸うヒメシジミ♀



2016年7月中旬

里山の峠道で道端に咲いたヨツバヒヨドリヒメシジミ♀(Plebejus argus)が訪花していました。
集合花を歩き回りながら一心不乱に吸蜜しています。
飛び立つ瞬間に翅表の色を確認しようと思ったのですが、なかなか飛んでくれません。
翅を閉じている僅かな隙間からちらっと見えた翅表は青くなかったので♀と判明。




ラベンダーの花で採餌するトラマルハナバチ♀



2016年7月中旬

山麓の民家の庭に咲いたラベンダートラマルハナバチBombus diversus diversus)のワーカー♀が訪花していました。
この組み合わせは初見です。
多数の個体がとにかく忙しなく飛び回っていて、見ている方も目が回りそうです。
蜂の羽音がワンワンと鳴り響いています。

褐色の薄い個体は白い花粉で汚れているだけなのか、それとも別種なのか不安です。





2016/10/13

カメラを舐めるオオハナアブ♀



2016年7月中旬

里山の峠道に三脚を立てて別の撮影をしていたらオオハナアブ♀(Phytomia zonata)が飛来して、カメラの本体およびストラップをぺろぺろ舐め始めました。
雨水や私の汗および皮脂が染み込んでいるはずなので、そのミネラル成分を摂取しているのでしょう。
味見してかなり気に入った様子で、軽く追い払ったぐらいではすぐに舞い戻って来ます。
ハンディカムのレンズを近づけても逃げずに、口吻を伸ばして一心不乱に舐めています。

オオハナアブは秋に出会う昆虫だと勝手に思い込んでいたのですけど、今期初見です。





2016/10/12

コガタスズメバチの古巣を餌にヤマトゴキブリの飼育は可能か?



【はじめに(実験の目的)】

昨年、ヤマトゴキブリがコガタスズメバチの巣に深夜侵入を試みている興味深い例を見つけました。

▼関連記事
コガタスズメバチの巣に居候するゴキブリ【暗視映像】
コガタスズメバチの巣材は樹皮ですから、朽木を好んで食べるヤマトゴキブリが居候しつつスズメバチの巣をこっそり食害していても不思議ではありません。
あるいは巣内のスズメバチの食べ残し(虫の死骸)や排泄物が目当てなのかもしれません。

中南米では蟻の巣に居候する「好蟻性ゴキブリ」が知られているそうなので(『裏山の奇人:フィールドの生物学14』p159より)、日本に「好雀蜂性ゴキブリ」が居ても良さそうだと思いました。


しかしゴキブリは物陰に潜む性質がありますから、「野外で夜に徘徊中のヤマトゴキブリが偶然コガタスズメバチの外被ポケットに迷い込んだだけ」という可能性があります。
この問題を検討するために素人でも出来そうな実験として、採集したスズメバチの古巣だけを餌にしてヤマトゴキブリを飼育できるかどうか、試してみることにしました。


【材料と飼育方法】

2016年6月下旬

ヤマトゴキブリ成虫♂(Periplaneta japonica)を室内の廊下で見つけたので、いそいそと生け捕りにしました。
とりあえず水分補給のためニンジンのへただけ給餌しておいて、その間に準備します。

まずゴキブリが勝手に脱出しないように、飼育容器の内壁の上部にバターを塗ります。(バタートラップ)

▼関連記事
ヤマトゴキブリの飼育容器にはバターを塗れ!(終齢幼虫)
最近バターは品薄で高いので、仕方なくマーガリンで代用しました。
(後々、これが問題になります。)
飼育容器の蓋にあるスリット状の通気口にセロテープを貼って塞いでおきます。

2015年12月上旬に軒下から採集したコガタスズメバチの古巣をこの日のために保管していました。
(冒頭で紹介した関連記事に登場する、まさに同一の巣です)
巣の内部構造を調べたときに外皮と巣盤を少し崩しました。
外皮と巣盤の両方を少量ずつ飼育容器に入れてやりました。
ゴキブリの飲水はペットボトルの蓋に入れて与えました。
最初の1日だけ与えたニンジンは取り除きました。
スズメバチの古巣と水だけで果たしてゴキブリは生き延びるでしょうか?

巣を食べる様子を観察できるかな?



この飼育容器にヤマトゴキブリ♂を投入し、様子を見ます。
夜行性の活動を赤外線の暗視カメラで撮影してみました。



バタートラップを過信して、蓋を外して撮影していたら、なんとゴキブリが脱走してしまい焦りました!
餌のスズメバチ古巣が大き過ぎて、ゴキブリがそれを踏み台としてバタートラップを易々と突破したのです。
もっと深い飼育容器を使うか、餌のスズメバチ古巣をもっと小さく砕いて与えるべきでした。
幸いヤマトゴキブリはおっとりした(のんびりした)性格なの
で、すぐに再逮捕できました。


【結果と考察】

飼い始めたものの私も他に色々と忙しくなり、その後じっくり腰を据えた観察ができなくなりました。
ヤマトゴキブリ♂がコガタスズメバチの古巣を食べているところは残念ながら一度も見ていません。
パリパリ♪と齧る音がすればすぐ気づくだろうと思ったのですが、いつ見ても物陰に潜んでいるだけでした。
以前ヤマトゴキブリを普通に飼育したときには、音を立てて朽木の樹皮を食べていたのです。

▼関連記事
朽木を食べるヤマトゴキブリ♀

7月上旬にもう一匹のヤマトゴキブリ♂成虫を追加で投入し、同居させました。
飲み水だけは切らさないように与えていたのですが、7月中旬までに二匹とも相次いで死にました。(私の印象では餓死)



素直に考えれば、「コガタスズメバチの古巣はヤマトゴキブリの餌にはならない」という結論になりそうです。
しかし単に♂成虫の寿命かもしれない(※追記参照)ので、次に機会があればゴキブリが幼虫の段階から飼育してスズメバチの古巣だけで成虫に育つかどうか調べる必要があります。
本種は♀だけで単為生殖が可能らしいので、♀成虫から始めてスズメバチの巣だけを餌に継代飼育ができるかどうか挑戦したかったのですけど、今季はヤマトゴキブリ♀を見つけられませんでした。

スズメバチの新鮮な巣を使えば結果は変わっていたでしょうか?
古巣を保管している間にゴキブリを誘引する匂いが飛んでしまった(揮発)とか、古巣に(目に見えない)カビが生えて栄養価が落ちたとか、可能性を考えだすと切りがありません。

結果の解釈を更にややこしくしているのは、バタートラップの代用にしたマーガリンの問題です。
私は全く知らなかったのですが、「植物性のマーガリンはトランス脂肪酸を含み、ゴキブリやアリも嫌うぐらいなので人体に有害である」という俗説が流布しているそうです。
飼育容器から脱走を試みる度に滑落したゴキブリは足の先や触角に付いたマーガリンを舐めて掃除するので、必然的にマーガリンを摂取することになります。
もし噂通りにマーガリンがゴキブリに対して多少なりとも経口毒性をもつのであれば、私の実験は台無しです。
次回はバタートラップをマーガリンで代用しないように気をつけます。
マーガリンの毒性の有無については私の本来の興味から外れるので、追求する余力はありません。

今年も決着はつきませんでしたが、「野外で夜間観察した事例は、ゴキブリがスズメバチの巣を食べに誘引されたのでは無さそうだ」という考えに傾きつつあります。(大発見かも?という興奮が冷めつつあります。)
それでも、来季以降も片手間にしつこく飼育・実験するつもりです。



※【追記】
辻英明『ゴキブリ、都市を語る ― 同居人と隣人』によると、
ゴキブリの成虫の寿命は長く、初夏に成虫になったヤマトゴキブリやクロゴキブリの両君は秋まで生存します。 (ポピュラー・サイエンス241『都市動物の生態をさぐる:動物からみた大都会』第6章 p157より引用)


アカショウマの花とセマダラコガネ



2016年7月中旬・午後17:18

峠道の横の斜面に咲いたアカショウマの群落でセマダラコガネExomala orientalis)が訪花していました。
白い花穂に潜り込んで、おそらく花粉や花蜜を食べているのでしょう。
しかし、あまり動きがなくて面白くありません。
夕刻は不活発なのでしょうか。
このまま花上で夜を過ごす(寝る)つもりだったのかもしれません。

警戒すると後脚を持ち上げます。

一時採集して手のひらに乗せ、飛び立ちをハイスピード動画に記録しようと長撮りを繰り返したのですけど、身繕いしたり触角を開閉したりするばかりで一向に飛んでくれませんでした。(映像無し)
夕方はもう飛ばないのかな?



2016/10/11

路肩でミミズ?の死骸を食べるハシボソガラス(野鳥)



2016年7月中旬

郊外の車道でハシボソガラスCorvus corone)を発見。
いつものようにクルミ割り行動かと思ったら、どうも違うようです。
横っ飛びで車道を横断したカラスが路肩で何か虫の死骸?を拾い食いしました。
縁石の死角になり、よく見えないのが残念。
残りを嘴で咥えて飛び立つと、真上の電線に止まり直しました。
足で餌を押さえつけ、辺りをキョロキョロ見回しています。
何か針金のような物を嘴の力で伸ばしたので、おそらくミミズが干からびた死骸または車に轢かれた虫の死骸(ロードキル)ではないかと推測しました。
ときどき嘴を足元の電線に擦り付けています。
嘴を半開きにして静止しているのは、暑さに喘いでいるのでしょう。

▼関連記事
スズメ(野鳥)の耐暑法?
犬と同じように鳥類には発汗作用がなく、口を開けて暑さをしのぐ。(『銀座のツバメ』p78より)
最後、ハシボソガラスは水田の方へ飛び去りました。



【追記】
松原始『カラスの教科書』p321によると、
 白い鳥は赤外線が浸透しやすく、体温が上がりやすいという研究もあるので、一概に黒いから暑いとも言えない。黒い羽は光線で吸収してしまうので表面温度こそ上がるものの、羽毛の優れた断熱性によって体温自体はあまり上がらないのだとか。


カブラハバチの幼虫を狩るフタモンアシナガバチ♀



2016年7月上旬

▼前回の記事
イヌガラシの葉を食すカブラハバチの幼虫

水田の畦道に咲いたイヌガラシの群落で葉を食害する2匹のカブラハバチAthalia rosae japonensis)の幼虫を接写していたら、フタモンアシナガバチPolistes chinensis antennalis)のワーカー♀が飛来しました。
カブラハバチの幼虫にいきなり噛み付いて狩る瞬間が撮れました!
噛まれた傷口から青緑色の体液が滲んでいます。
(血が赤くないので、ヘモグロビンを含んでいないようです。)
難を逃れたもう一匹の幼虫は葉から擬死落下して緊急避難。
一方フタモンアシナガバチ♀は、落ち着いて肉団子を作れる場所を探して徘徊を始めました。
座っている私の足元に登って来たので窮屈な体勢になり堪らず私が動いたら、蜂は咥えていた獲物を離して飛び去ってしまいました。

刺される!とか身の危険を感じて動いた訳ではありません。(この状況で蜂の方から私を攻撃することはありません)
虎口を逃れたハバチの幼虫は、致命傷からの出血が激しく、助からないでしょう。

短時間に食物連鎖の実例を目の当たりにして、ちょっとした感動を味わいました。

逃げたアシナガバチも、獲物の豊富なこの狩場に繰り返し通って来ることでしょう。


2016/10/10

イヌガラシの葉を食すカブラハバチの幼虫



2016年7月上旬

水田の畦道に咲いたイヌガラシの群落で真っ黒なハバチの幼虫を見つけました。
葉縁にしがみついて齧っています。
激しい食害を受けた葉に食痕が残されていました。

幼虫図鑑サイトにて「ハバチ アブラナ科」で検索した結果、3件がヒットします。(セグロカブラハバチ、カブラハバチ、ニホンカブラハバチ)
見比べた結果、肉隆起が無いことからカブラハバチAthalia rosae japonensis)の幼虫だろうと判明。

つづく→天敵の登場:カブラハバチの幼虫を狩るフタモンアシナガバチ♀






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