2023年7月下旬
ニホンアナグマ(Meles anakuma)の家族が転出した後の旧営巣地(セット)を自動センサーカメラで見張っていると、ある日に大事件が勃発しました。
シーン0:7/22・午後14:10頃・晴れ(@0:00〜)
明るい昼間にたまたま撮れた現場の様子です。
古いトレイルカメラの変な癖で、これ以降はなぜかフルカラーで録画してくれなくなります。
シーン1:7/25・午前9:40頃・晴れ(@0:03〜)
二次林に多くの小鳥が集まり、耳障りな警戒声を発しながら忙しなく飛び回っています。
何事かと思って動画をよく見直すと、アナグマの巣穴Rから2匹のヘビ(種名不詳)がニョロニョロと外に這い出て来ました!
林床の地面を手前に向かってゆっくり蛇行します。
ヘビの動きが緩慢で分かりにくいので、5倍速の早回し映像でリプレイします。(@1:03〜1:15)
そもそも林内で2匹のヘビが一緒にいること自体が珍しいです。
(私はこれまで単独行動のヘビしか見たことがありません。)
アナグマ家族が転出した後の空き巣にヘビの群れが住みついたというよりも、よく出入りしている野ネズミ(ノネズミ)の匂いを嗅ぎ取って巣穴に潜り込んでいたのでしょう(探餌行動)。
アオダイショウ(Elaphe climacophora)など木登りが得意なヘビは鳥の巣を襲い、卵や雛鳥を捕食しますから、野鳥の天敵です。 したがって、天敵のヘビを見つけると野鳥は特有の警戒声を発して仲間を呼び寄せ、騒ぎ立てます。
鳥たちは警戒して集まるだけで、ヘビを嘴でつつくなど直接的な攻撃をすることは一度もありませんでした。
安全な樹上から地面のヘビを見下ろして鳴き騒ぎ、止まり木から止まり木へ忙しなく飛び移っています。
縄張りからヘビが居なくなるまで、森に住む鳥たちは協力して、その動向を見張るのです。
野鳥にしてみれば、自分たちの巣や塒をヘビにこっそり奇襲されるのが一番困ります。
ヘビに対して直接攻撃しなくても、「そこに居るのは知ってるぞ!」としつこくアピールするだけで抑止効果があります。
動画内でジャージャー♪と耳障りな声で何度も鳴いているのは、シジュウカラがヘビに対して発する典型的な警戒声です。 (※ おまけの動画を参照)
ヘビに対するモビングに参加する鳥の群れは同種だけとは限らず、異種の鳥も集まってくるのが特徴です。
つまり、各種の鳥が発する「ヘビがいるぞ! 集まれ! 気をつけろ!」という種固有の警戒声を他種の鳥も理解した上で適切に振る舞っていることになります。
今回集まってきた小鳥はシジュウカラ(Parus minor minor)がメインのようですが、白黒映像では種類をしっかり見分けられません。
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他にはヒヨドリ(Hypsipetes amaurotis)やカラス類が鳴き騒ぐ声が聞こえるものの、姿は写っていません。 ヘビに対する鳥の集団モビング行動を実際に観察したのはこれが初めてで、とても感動しました。
フルカラーで録画できなかったのが、つくづく残念です…。
シーン2:7/25・午後12:40頃・晴れ・気温32℃(@1:17〜)
約3時間後の暑い昼下がりにトレイルカメラが再び起動すると、森はすっかり静まり返っていました。
ヘビに集団モビングしていた鳥たちは既に解散したようです。
1羽の猛禽(種名不詳)が飛来したようで、林縁の低い灌木に止まってキョロキョロと辺りを見回しています。(画面の赤丸)
私にはモノクロ映像から猛禽の種類を見分けられなくて残念ですが、後日にもまた登場します。(映像公開予定)
やがて、ヘビ(種名不詳)が1匹アナグマが掘った古い巣穴Rlから外に這い出てきたのでびっくりました。
どうやら、さっき鳥たちに集団モビングされて逃げ出した蛇のうち1匹がいつの間にか戻ってきたようです。
ヘビは変温動物の爬虫類ですから、ヘビが単独でいくら活発に動き回ってもトレイルカメラのセンサーは反応しません。
温血動物(恒温動物)の鳥や哺乳類と同時に現れたときにしかヘビの行動は記録されないことになります。
(実際、このヘビが木から降りるシーンは撮れていませんでした。)
等倍速ではヘビの動きが緩慢で分かりにくいので、まずは5倍速の早回し映像でご覧ください。(@1:17〜1:30)
セットの広場を蛇行して横切ると、林縁に生えた細い灌木(樹種不明)をスルスルとよじ登り始めました。
樹上に鳥の巣を探して求めているのかな?
木登りする蛇を見るのは、これが2回目です。
こんなに低い止まり木にじっとして居る猛禽を見るのは、珍しい気がします。
この猛禽はおそらく、カラスの大群にモビング(擬攻撃)されて林内に逃げ込み、ほとぼりが冷めるまで身を潜めているのでしょう。
枝葉が鬱蒼と生い茂った二次林の低層に隠れると、上空を飛ぶカラスの目からは見えなくなるようです。
この猛禽が近くで動き回るヘビに飛びかかって捕食しないのが不思議でした。
おそらくヘビは猛禽の死角に入り、見えてないようです。
それともカラスに追われる身の猛禽にしてみれば、ヘビを狩るどころではないのかもしれません。 (下手に動くとカラスに居場所がばれてしまう。)
あるいは、ニホンマムシ(Gloydius blomhoffii)など危険な毒蛇を忌避しているのかな? もし森の小鳥たちがこの猛禽を見つけたら、ヘビに対するのとは別の鳴き方で警戒声を発して猛禽への激しいモビングを始めるはずですが、まだ誰にも見つかっていません。
※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。
※ 鳥の鳴き声が聞き取れるように、動画の一部は編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。
↑【おまけの動画】
『【永久保存版】シジュウカラ語を一撃で理解できる最強の動画』by ゆる言語学ラジオ
シジュウカラの言語研究で名を挙げた鈴木俊貴先生が一般人にも分かりやすく直々に解説してくれています。
シジュウカラがジャージャー♪と鳴くのは、「天敵の蛇だ!」という意味です。
これを聞くと仲間の鳥は(シジュウカラに限らず)一斉に集まって地上のヘビを探します。
ちなみに、シジュウカラの雛は親鳥の警戒声「蛇だ!(ジャージャー♪)」を聞くと巣内から慌てて飛び出すらしい。
これは学習によらない本能行動なのだそうです。
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