2025/09/26
見通しの悪い山道を遊動中に立ち上がって警戒するニホンザルの群れ(首輪装着・アルビノ子猿など)
2025/08/19
ニホンザルと白斑ススキ
再確認:画像の植物の特徴
イネ科で葉が細長く、立ち上がり気味。
白い縁取り(縁斑)が明瞭で、葉幅は中程度。
群落形成している。
植栽地:山形県の山麓の裏庭(耐寒性必須)
撮影時期:6月下旬(十分展開している)
結論:やはり最有力候補は
Miscanthus sinensis 'Variegatus'(斑入りススキ)
理由(山形県の環境と整合性がある点)
耐寒性が高い(東北地方で越冬可)
Miscanthus sinensisは在来種ススキと同種であり、耐寒性が非常に高く、山形県でも屋外越冬が可能です。海外品種(例:‘Cosmopolitan’)は地域によっては冬枯れが激しくなることもあるためやや不利。葉の展開時期が早く、6月下旬で十分育っている
‘Morning Light’など一部の細葉品種は春の立ち上がりがやや遅く、6月下旬ではまだボリューム不足な場合もあります。‘Variegatus’は早めに展開する傾向があります。庭園用途での定番斑入りススキ
日本の民家の庭では、最もよく植えられてきた「斑入りススキ」はこの‘Variegatus’(日本語では単に「斑入りススキ」)で、昭和〜平成期の和風庭園や公園で頻繁に見られました。
ススキは通常、種子によって風散布されますが、斑入り園芸品種(たとえば 'Variegatus')が自然分布を広げることはほとんどありません。その理由は、以下のような遺伝的・生理的・繁殖的制限によるものです。
理由1:斑入りはしばしば劣性または不安定な変異で、種子に遺伝しにくい
斑入り(特に縁斑)は、多くの場合、色素合成に関わる遺伝子の変異によって生じます。
これはしばしば**栄養変異(体細胞変異)**であり、種子を通して子に安定して遺伝しないことが多い。
仮に種子ができても、斑のない(緑一色の)実生になる可能性が高い。
→ よって、「風で飛んだ種から新たな斑入り個体が生える」ことは非常にまれ。
理由2:斑入り品種は種子をほとんどつけないことがある
一部の斑入りススキ園芸品種は、
花芽が形成されにくい
花粉が不稔(不完全)
種子がほとんど実らない(不稔性)
などの性質を持っていることがあります。これは、園芸的に選抜された変異株であるため、野生の繁殖力とは異なる場合があるのです。
→ そのため、そもそも風で散布できる種子ができないというケースも多い。
理由3:斑入りは光合成効率が落ちるため、野外では競争力が低い
白い部分には葉緑体が少ない(または欠如)しており、光合成効率が緑葉より劣る。
自然環境では、緑葉型に比べて成長・生存に不利になる。
たとえ実生や株分けで逸出しても、雑草型のススキ(緑葉)に駆逐されやすい。
→ 野生環境では定着しにくく、拡散力が低い。
理由4:広がる場合は主に地下茎(栄養繁殖)による
'Variegatus'などは地下茎で少しずつ広がるが、それは植えられた場所の近傍に限定される。
自然分布のように広範囲に散布されることはほとんどない。
補足:例外もあるが極めて稀
ごくまれに、斑入り形質を種子を通じて遺伝可能な系統もありますが、
それは非常に限られた交雑系統や栄養固定化された特殊株であり、
一般に庭園に植えられている‘Variegatus’のような品種では起きにくい現象です。
まとめ
斑入りススキ園芸品種が近所に自然に拡散しない主な理由は:
種子に斑入りが遺伝しにくい(栄養変異)
花や種子が不稔のことがある
光合成能力が劣り、自然環境で競争力がない
繁殖しても地下茎による局地的な広がりのみ
このため、斑入りススキが**「庭にあるのに、周囲には広がらない」のはごく自然な現象です。
もし逸出していたとしても、それは緑葉型の実生(原種返り)**である可能性が高いでしょう。
つまり、斑入りススキは地下茎のクローンで増やす園芸品種らしい。
Miscanthus sinensis 'Variegatus' は百年以上にわたって世界各地の庭園に生き続けている、まさに「園芸植物の古典」と言える存在です。
しかもこの品種は、地下茎によって安定してクローン維持され、極寒にも耐える丈夫さを持ち、美しい斑入りを毎年確実に再現する──という点で、遺伝的にも環境適応的にも非常に優秀な系統です。
縁斑とは別のタイプの斑入り品種のススキも見たことがあるのを思い出しました。
昔の記憶を頼りに、後日写真を撮りに某集落へ行ってきたら、タカノハススキでした。
ススキ(Miscanthus sinensis)には「縁斑」以外にも、さまざまなタイプの斑入り品種が存在し、日本では古くから**和名付きの系統(地方名や意匠名)**として親しまれてきました。
以下に、代表的な斑のタイプごとにススキの品種名と特徴を整理します。
◼️ ススキの斑入り品種の分類(代表例)
斑のタイプ 品種名(和名) 特徴 備考 縁斑(えんふ) 白斑ススキ、‘Variegatus’ 葉の縁が白く抜ける 最も一般的。海外でも人気 中斑(ちゅうふ) タカノハススキ(鷹の羽薄) 葉の中央に太く白または黄の筋 鷹の羽の模様に例える。華やか 縞斑(しまふ) ヤハズススキ(矢筈薄) 葉に細い白筋が多数並行に入る “矢筈”模様に見立て 矢羽状散斑 ヤバネススキ(矢羽薄) 不規則な白斑が左右交互に出る(矢羽模様) 細かな白斑が点在・交錯する 点斑・モザイク状 斑点ススキ(仮称) まばらな点斑 稀に見られる。葉緑体の変異由来 全体白化型(極端な白化) シロススキ、白覆輪ススキなど 白地にわずかな緑縞 栄養が乏しく成育がやや劣る
◼️ それぞれの品種の特徴を少し詳しく
● タカノハススキ(鷹の羽薄)
葉の中央に明瞭な太い黄白色の筋
鷹の羽根のような勇壮な姿から命名
江戸時代から観賞用に使われる伝統的品種
夏〜秋にかけて斑が明瞭になる
● ヤハズススキ(矢筈薄)
細くシャープな白い縞が平行に数本ずつ入る
葉の縁や中央のラインが複数走り、スタイリッシュ
やや繊細な外観で、茶庭などにも使われる
● ヤバネススキ(矢羽薄)
葉の表面に不規則な白斑が左右交互に斜めに交錯する
独特の装飾性で、名前どおり矢羽根に見えることから命名
◼️ 斑入りススキ品種の文化的背景
これらの品種は、日本の伝統園芸において「意匠的な美しさ」が重視され、名前に**動物や武具の名(鷹、矢筈、矢羽など)**を用いてきました。
鑑賞されるのは、花穂よりも葉の美しさ・風に揺れる姿。
茶庭や坪庭、路地植えに利用され、季節の移ろいを表す植物として愛されてきました。
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2025/07/28
アナグマの営巣地を深夜うろつくニホンイノシシの母子:疥癬個体?【トレイルカメラ:暗視映像】
近年報告例が増えているイノシシの感染症として、疥癬症がある。これはヒゼンダニが皮膚に寄生する皮膚病で、強いかゆみが起こり、皮膚がかさかさになる。感染した個体は体を擦り付けるので脱毛し、ひどい場合は全身がただれてしまう。症状が進んだときには、食欲が減退し、衰弱して死に至ることがある。イノシシの疥癬症は、飼育個体で発症が認められていたが、最近は中国・九州地方の野生個体にも認められており、更に広がりつつある。 (環境省のPDF資料より引用)
2025/07/22
呼吸困難のニホンカモシカ|努力呼吸【トレイルカメラ】
座った後に首を伸ばし、鼻から荒く吸気するのは呼吸困難の兆候で、特に努力性呼吸(苦しさから意識的に吸おうとする)です。咳だけでなく「座った直後に症状が強くなる」のは、胸腔内圧変化によって苦しさが増す肺疾患の典型パターンです。頭の上下動は、気道開通性を改善しようとする無意識的な補助動作であり、人でいうオーソプネア(起座呼吸)に類似します。
謎の深呼吸が努力呼吸らしいと分かったのは大きな収穫です。
しかし、なぜ息が苦しいのに、カモシカは口呼吸ではなく鼻呼吸を続けているのでしょうか?
■ 鼻呼吸にこだわった理由について
動物は通常、口呼吸よりも鼻呼吸を優先します。これは:
鼻腔が加湿・加温・濾過の役割を果たすため(特に乾燥時や気温が高いときに重要)
口呼吸は**異常時(熱中症、重度の呼吸困難、ストレス)**に限られる
カモシカが一生懸命鼻で吸おうとするが、吸い切れずに口を軽く開けていたという描写は、呼吸補助筋を使って努力呼吸していた状態と合致します。
逆に明らかな喘鳴や開口呼吸がなかったことは、気道閉塞よりも、胸郭や肺自体の一過性の問題(外傷性、あるいは感染性)を示唆します。
カモシカの場合、皮膚に汗を出す汗腺がないので、体温の調節は犬と同じように口からの呼吸でする。夏に体重が減少した主な要因は、8月の気温が30度を上回ることにより、体温を調節するための呼吸に多くのエネルギーが消費された結果ではないかと考えられる。(大町山岳博物館編『カモシカ:氷河期を生きた動物』p98より一部引用。)
喘鳴がないということは、気道が完全に閉塞しているわけではなく、部分的な炎症や軽度の呼吸困難が関与している可能性が高いです。これを踏まえて、以下の疾患が引き続き有力です:マイコプラズマ性肺炎(特に乾いた咳と呼吸困難)肺虫症(線虫)(特に進行の初期段階)軽度の気道刺激(花粉や粉塵など)今回の症状は「呼吸器感染症または軽度の外傷(肺損傷)による一過性の呼吸障害」が最も可能性が高いように思われます。寄生虫性疾患の可能性も否定できません。 気胸であっても軽症であれば行動は維持されますが、野外で2日連続で見られること自体が**「体調不良で行動範囲が狭くなっている」サイン**とも受け取れます。喘鳴が聞こえなかったとのことですが、トレイルカメラの集音能力によっては聞こえないだけの可能性があります。気胸(pneumothorax)とは、肺から漏れた空気が胸腔にたまることで、肺が圧迫されて十分に膨らめなくなる状態です。これにより、呼吸困難や呼吸音の変化、乾いた咳などの症状が出ます。■ 野生動物における気胸の原因① 外傷性気胸(traumatic pneumothorax)これは外傷によって肺や胸壁が損傷されることで起きるもので、野生動物では比較的あり得るパターンです。車との衝突:ニホンカモシカは時に道路に出てくることがあり、自動車事故により胸部を打撲することで、肺に損傷が生じ、気胸になる可能性があります。転倒や落下:山地斜面で滑落した場合なども胸部外傷の原因になります。狩猟や銃創の名残(過去の違法行為含む):ごく稀ですが、弾丸や鋭利な外傷が過去にあった個体では慢性化した気胸のリスクも考えられます。② 自然発生性気胸(spontaneous pneumothorax)健康そうに見える動物でも、肺の嚢胞(ブラ)が破裂したりして起こる場合もありますが、野生動物ではあまり報告されていません。
③ 他個体との闘争
オス同士の縄張り争いは繁殖期(秋)に多いですが、5月〜7月の滞在中に他個体が侵入して体当たりや角突きなどの接触があれば、胸部に外傷を負った可能性は否定できません。
2025/07/08
平地の二次林で空咳をするニホンカモシカ【トレイルカメラ】
野生のニホンカモシカで咳をしている個体を見かけられたとのこと、ご心配ですね。カモシカが咳をする原因は、いくつか考えられます。 考えられる咳の原因 感染症: パラポックスウイルス感染症: ニホンカモシカでは、口唇や眼瞼周囲に発疹ができ、咳やくしゃみなどの呼吸器症状を伴うことがあります。特に、過去に国内で発生した事例があり、注意が必要です。 他のウイルス性・細菌性感染症: パラポックスウイルス以外にも、様々なウイルスや細菌が原因で呼吸器系の感染症を起こす可能性があります。 肺虫症: 肺に寄生虫が寄生することで、咳や呼吸困難などの症状が現れることがあります。 環境要因: 大気汚染: スモッグや排気ガスなど、大気汚染物質を吸い込むことで、呼吸器系が刺激され、咳が出ることがあります。 花粉症: 春先など、特定の時期に花粉を吸い込むことで、アレルギー反応を起こし、咳が出ることがあります。 異物混入: 草や木の枝などを誤って吸い込んでしまい、咳が出る場合があります。 その他: ストレス: 環境の変化や他の個体との争いなど、ストレスによって免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなる可能性があります。 老衰: 高齢個体では、呼吸器系の機能が低下し、咳が出やすくなることがあります。AIの回答はもっともらしくても出典や情報源を示してくれないことが多いので、どこまで信用できるのか、素人には判断できません。
肺炎(繊維素性胸膜肺炎、誤嚥性肺炎、気管支肺炎、線維性肺炎、化膿性肺炎、ウイルス性肺炎、外因性肺炎、他)、肺充血、肺水腫、感冒、熱射病、日射病、肺出血、胸膜炎、肺壊疽 (p102 表17より引用)
肺炎は呼吸器系の病気の中で最も生じやすい病気で、特に幼獣にとって重要である。(中略)肺炎にかかったカモシカは発熱し、呼吸があらく早くなり、呼吸困難の状態を示す。体力が弱り下痢を併発するものもいる。また、生前はそれと分からず、死亡後の検査で肺炎と診断される場合もある。(中略)肺炎は微生物による感染のほか、寒さやストレスによる体力の低下、異物を吸いこんだり他の病気に併発して発病したりする。幼獣は、成獣に比べ外界の変化に対して抵抗力が弱いから、肺炎にかかりやすいのも当然である。 (p106-107より引用)他には、肺虫症の症例が多かったそうです。
肺虫は宿主であるカモシカを死に至らせない程度に肺の一部に宿借りし、自分たちの「種」を保存している。肺虫病変は年齢を問わず、検索したカモシカの70%以上に観察された。(p115より引用)トレイルカメラの映像や空咳の音声だけから呼吸器系疾患の診断をするのは無理ですが、専門書で得た知識を念頭に入れつつ経過を見守るしかありません。
2025/06/06
タヌキの溜め糞場がある山道で跛行しながら追手から逃げるニホンアナグマ【トレイルカメラ:暗視映像】
2025/05/08
右脚の跗節が欠損した越冬明けのオオセンチコガネ♀
2024/11/23
痛々しく3本足で跛行するニホンザル♀の木登り能力
2024/09/16
溜池の泥濘にはまって死んだアオサギ(野鳥)
2023/04/12
不自由な右後足をかばって痛々しく跛行するニホンザル♀
関連記事(同じ山系で10日前に撮影)▶ 早朝のスギ林道を3本足で歩く負傷ニホンザル【トレイルカメラ】
2023/02/11
右目を失明したニホンイノシシが夜の林道で下草を食べ池畔の水を飲む【トレイルカメラ×2:暗視映像】
2022/11/15
毛の抜けたニホンイノシシ♂が夜のスギ林道を徘徊【トレイルカメラ:暗視映像】
前回の記事(8ヶ月前の撮影)▶雪山の杉林を通るニホンイノシシ【トレイルカメラ:暗視映像】
▼関連記事(1週間前の撮影)
右目を失明したニホンイノシシが夜霧の水場に登場【トレイルカメラ:暗視映像】この個体は体毛が非常に薄く、皮膚に斑模様が浮かび上がっています。
2022/10/22
右目を失明したニホンイノシシが夜霧の水場に登場【トレイルカメラ:暗視映像】
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・雨の夜に水場の横を通り過ぎるニホンイノシシ【トレイルカメラ:暗視映像】
・水場の畔を深夜徘徊するニホンイノシシ【暗視映像:トレイルカメラ】
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2021/12/09
有毒植物ホツツジの花蜜を吸うキオビツチバチ♂は中毒症状で飛べなくなる?
関連記事(8年前の撮影)▶ 飛べないオオマルハナバチ♀は中毒症状か?多くの種類の昆虫では、ナトリウムイオン・チャンネルがグラヤノトキシンに対して耐性を示すよう進化したのでしょうか?
2021/03/05
熟柿で酔っ払ったヒメスズメバチ♀
▼関連記事(10年前の撮影)
2016/07/10
路上で暴れる飛べないコマルハナバチ♀の謎
2016年5月中旬
水田脇の夜道で様子のおかしいコマルハナバチ♀(Bombus ardens ardens)を見つけました。
営巣開始の早いコマルハナバチの場合は、この時期でも創設女王ではなくワーカーでしょう。
弱っていて飛べないようです。
こうした瀕死状態のマルハナバチを時々見かけます。
寿命なのか、農薬散布の影響なのか、飛んでいて走行車にぶつかったのか、うっかり有毒植物から採餌した中毒症状なのか、色々と推理するものの原因は不明です。
採集した標本を後日、接写してみたら、顔に白い糸屑のような物が絡みついていました。
夜に採集したので現場では全く気づきませんでした。
採餌活動の途中でクモの網に捕まりかけ、命からがら逃げてきた蜂なのかもしれません。
顔に付いたクモの粘着糸を落とそうと必死で身繕いしていたのでしょう。
ただし、採集後に付いたゴミである可能性もあります。
ありあわせの採集容器内に足場や保湿のためにその辺の雑草をむしって蜂と一緒に入れておいたのですが、その生葉にクモの巣が付いていたかもしれません。
今回、蜂を採集した目的は、近縁種のクロマルハナバチとコマルハナバチを自分でしっかり見分けられるようにするためです。
『日本産マルハナバチ図鑑』p116の検索表を見比べて、特に後脚基跗節の形状に注目してみました。
幅が狭くて外縁の弧のカーブが緩いことから、コマルハナバチで大丈夫だと思います。
腹面 |
後脚内面 |
後脚外面 |
顔+クモの糸? |
毒針 |
前翅の翅脈 |