2024年5月上旬・午後12:30頃・くもり
里山の中腹をトラバースする細い山道を歩いているオオセンチコガネ♀(Phelotrupes (Chromogeotrupes) auratus auratus)を見つけました。
曇っていても、構造色で赤い金属光沢(メタリック)に輝いています。
頭部や頭楯に金属光沢がなくて黒いことから、♀と判断しました。
参考:舘野鴻『うんこ虫を追え』p10
前脚の腿節前面に橙色の毛束が密生している部分が目立ちます。
これはセンチコガネ科およびクワガタムシ科に性別を問わず見られ、フェロモンを分泌するらしい。
関連記事(13年前の撮影)▶ センチコガネの前脚にあるオレンジ色の付着物の正体
少し太い木の根っこ(落枝?)をなかなか乗り越えられずに苦労しています。
平べったい石の上に乗ったときによく見ると、右側だけ前脚、中脚、後脚すべての跗節が欠損していました。
歩行がぎこちなくて跛行しているように見える理由が、地面とのグリップが左右非対称になるためだと分かりました。
最後は石の隙間の地中に潜り込んで隠れてしまいました。
餌となる獣糞を目指して歩いていた訳ではなかったようです。
もしかすると、私がすぐ横に立っていたので警戒して隠れたのかもしれません。
【考察】
今季初見のオオセンチコガネ成虫です。
この個体で右側だけ全ての脚の跗節が欠損している理由を考えてみました。
まず、先天的な異常(奇形)である可能性はどうでしょうか。
エボデボ(進化発生生物学)の研究によって昆虫の形態形成に関わる遺伝子群が次々と解明されています。
聞きかじりですが、跗節の形態形成にはDistal-less(Dll)などの転写因子が重要な役割を果たしているそうです。
しかし、左右非対称な異常を説明するのが難しいです。
例えば脚原基の遠位端の形成を制御するDistal-less(Dll)遺伝子が体の右側だけ異常になったということは、発生初期に体の右側の細胞だけモザイク状に遺伝子が体細胞突然変異した結果というシナリオも理論的には考えられます。
しかしその発生確率はきわめて低い上に、幼虫の形態形成にも重篤な悪影響を及ぼすはずなので、成虫まで無事に育って羽化できるとは思えません。
したがって、後天的な欠損だと考えたほうが良さそうです。
捕食者に襲われかけたにしても、左右非対称に跗節だけ欠損するとは考えにくいです。
穴掘りで脚の爪先(跗節)が摩耗したにしても、左右非対称になる理由が分かりません。
調べてみると、オオセンチコガネは成虫で越冬するらしい。
地中で越冬中に、脚の跗節がたまたま右側だけ凍傷で欠損した、という可能性が一番あり得そうです。
この考察をする上で、Perplexity AIにかなり助けてもらいました。
(AIチャットとのブレインストーミングを、かなり省略して書きました。)
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