2011年10月上旬
地面でセンチコガネ(Geotrupes laevistriatus)を発見。
触角が動いています。
前方から接写すると、左右の前脚腿節の前面にオレンジ色の部分があるのが目を引きました。
センチコガネでは見たことのないお洒落な色です。
初めはメタリックな構造色のいたずら(錯覚)なのかと思いました。
側面から見ると明らかに何か黄色い物質が前脚に付着しており、少し盛り上がっています。
左右対称というのも不思議です。
ダニではなさそうですし、何が付着しているのだろうか。
花粉のようなオレンジ色から連想したのはハナバチ♀の後脚脛節にある花粉籠です。
しかしセンチコガネが花粉を食べたり運んだりするなんていう話は聞いたことがありません。
オレンジ色のキノコや獣糞で食事していたのかもしれません。
それまで静止していたセンチコガネがおもむろに方向転換し、のそのそ歩いて立ち去りました。
採集してもっとしっかり調べればよかったかな…?
実はすぐ近くで見つけたもう一匹のセンチコガネにも似たような付着物を認めました。
【追記1】
関係ないかもしれませんが、『ファーブルが観た夢』という本を読んでいてとても興味深い記述を見つけたので覚え書き。
- ルリオトシブミ属は、菌のタネを運び、育てているらしい。
- 揺籃を作りながら糸状菌の胞子を植え付けていく。
- 出所は、なんと♀の身体である。後ろ脚のつけ根に、ちいさなポッケがあって、ここで培養しているのだという。
1. 「ルリオトシブミ属Euopsから新たに発見された胞子嚢と胞子の揺籃への伝搬方法(甲虫目 : オトシブミ科)」 (リンク)
2. 「カシルリオトシブミのゆりかご作りとカビとの共生」 (講演要旨リンク)
センチコガネも同様に、産卵用に獣糞を丸める際に菌糸を植え付けていたりして…と妄想したのでした。
キクイムシ以外にも菌を体のなかに保持し、それを新天地で栽培する昆虫は意外に多く、とくに微小な甲虫のなかまに多い。それらの甲虫は菌嚢と呼ばれる穴を体の一部に持ち、そこに菌を保持して移動することができる。(丸山宗利『昆虫はすごい (光文社新書)』p149~150より 引用)
【追記2】
YouTubeにて貴重な情報提供を頂きました。
センチコガネ科およびクワガタムシ科に性別を問わず見られる構造だそうです。
オレンジ色に見えるのは付着物ではなく密生した毛束で、その奥からフェロモンを分泌するらしい。
参考文献も紹介してもらいました。
Houston, W. W. K. "Exocrine glands in the forelegs of dung beetles in the genus Onitis F.(Coleoptera: Scarabaeidae)." Australian Journal of Entomology 25.2 (1986): 161-169.全文PDFが無料で閲覧できます。確かにクワガタムシでも同様の毛束を見つけることができました。(関連記事)
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