2023/01/28

夜の水場に現れた夏毛のニホンノウサギ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2022年9月上旬・午後19:10頃・(日の入り時刻は午後18:05) 

里山の泉を見張る監視カメラに夜行性のニホンノウサギLepus brachyurus angustidens)が写っていました。 
この水場で野ウサギは初見です。 

ある晩に夏毛のニホンノウサギが、対岸の草むらに座ってキョロキョロと油断なく周囲を警戒していました。 
暗闇ですから、視覚で様子を窺うというよりも、長い耳の向きを個別に変えて耳を澄ましているようです。 
水場には立ち寄らず、ピョンピョン跳んで左奥の林道へ姿を消しました。
野ウサギは池の水を飲みに来たのでしょうか? 
採食シーンも撮れず、残念でした。 

遅ればせながら、2023年(卯年)の干支を祝う年賀の動画としてご笑覧に供します。

垂直円網を完成直後に改めて張り直すワキグロサツマノミダマシ♀(蜘蛛)

 

2022年8月下旬・午後15:10〜15:23頃・晴れ 



ワキグロサツマノミダマシ♀(Neoscona melloteei)の造網作業を腹面から動画撮影した私は、背面の写真も撮ろうと用水路を渡って対岸へ行きました。 
驚いたことに、この間になぜかワキグロサツマノミダマシ♀はせっかく作ったばかりの網を張り直し始めました。 
造網性クモのそのような行動を今まで見たことがありません。 
網に下手に近づいた私がうっかり周囲の枠糸を切ってしまったという自覚はないのですが、最初の網の出来栄えが気に入らなかったのかな? 
破網の行動を見逃してしまったのが残念です。(網を壊しながら糸を食べてしまうのはあっという間なのでしょう。) 

今度は背面から造巣行動を動画で記録します。 
夏空を背景としたすっきり抜けたアングルなので、今回はカメラの自動焦点AFにお任せできます。 
せっかく腹背が美しい緑色なのに、逆光でクモの体のシルエットしか映りません。 
肝心のクモの糸や網がほとんど見えなくなりました。 
特に足場糸、縦糸が全く見えないのが致命的です。 
歩脚の動かし方で作業内容を想像するしかありません。 
放射状の縦糸は切らずに前回張った縦糸をそのまま再利用していました。 (再造網が早く終わったのは、そのためでしょう。)

網を張り直す際も一時的な足場糸をかけ直してから横糸を張るはずですが、この点が逆光でよく分かりませんでした。 
網を取り壊すついでに足場糸を張ったのだとすれば、無駄がなくて効率的です。
私が慌てて動画撮影を始めたときには既に粘着性のある横糸を張っていました。 
腹側から見て右回り(時計回り)で内側に向かって螺旋状に横糸を張っています。 
円網の外側の枠糸に雨の水滴が多数付着しています。
改めて横糸を張り終えると、中央部のこしきを丸く食い破りました。 
これも前回と同じ手順です。 
完成した垂直円網に下向きで占座し、網を歩脚で引き締めました。 
アングルを変更して横から狙うと、腹背の緑色および脇黒がよく見えるようになりました。 
ときどき網を歩脚で引き締めています。 

作り直した垂直円網のこしきから地面までの高さは約165cmでした。 
背後はスギ林(平地の防風林)で、網の下には用水路(幅140cm)が流れています。 
地面から深さ90cmに流水面があります。 
雨上がりのせいか、結構激しい流れでした。 
夕方から水路の上に集まる蚊柱や夜の林縁を飛ぶ蛾などを狙ってワキグロサツマノミダマシ♀はここに造網したのでしょう。

2023/01/27

深夜の溜め糞場ではしゃぎ回り格闘遊びをする2頭のホンドタヌキ幼獣【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2022年9月上旬・午後23:27頃・気温20℃ 

里山のスギ林道にある溜め糞場sを自動撮影カメラで監視していると、2頭のホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が右から縦列でやって来ました。 
共に「フサ尾」で、なんとなく若い(幼獣?)兄弟姉妹のような気がします。 
後続の個体はやや興奮しているのか、尻尾を斜め上にピンと伸ばしていました。 

ニホンアナグマMeles anakuma)が残した溜め糞場で立ち止まると、頻りに周囲の匂いを嗅いでいた 先頭個体が身震いしました。
先頭個体が急に左へ走り出すと、釣られてもう一頭もはしゃいだように駆け去りました。 
このとき、タヌキの溜め糞場は迂回して通り過ぎました。 

すぐにまた1頭aが左から戻って来ました。 
タヌキの溜め糞場の手前で立ち止まり、しゃがみかけたら(排便姿勢?)、後ろからもう1頭bが全力疾走で駆け抜けました。 
bは林道上でUターンすると、排便中の個体aに跳びかかりました。 
幼獣bはとにかく元気があり余っているのか、はしゃいだようにaの周囲を跳ね回り、右へ走り去りました。 
aは林道に座り込んだまま、ポカンと見送っています。(暗闇でも相手が見えているのか?) 
もし排便中なら、腰を地面に落とさないはずです。 
bが再び右から駆け戻ると、座り込んだaの周囲を跳ね回ります。
 aの首筋に背後から噛みついたのは、群れ内で序列を決めるマウンティングのような優劣行動なのでしょうか? 
このとき、キュウ♪とか、カッ♪という短い鳴き声を発しました。 
短い映像からも2頭の性格の違いが伺えますが、私には性別が見分けられません。 
まさか交尾行動なのかと思って調べると、タヌキの発情期は冬らしい。
タヌキの繁殖期について説明すると、発情期になり共寝をするのは2月下旬~4月 (参考:タヌキ好きが集まるブログより引用)
やはり交尾や兄弟喧嘩というよりも、ふざけて遊んでいるだけでしょう。
組み伏せられたaが暴れてbを振りほどき、左へ走り去りました。 


※ 動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 
カメラ自体が一定のリズムで発するノイズがうるさくなるので、音声編集ソフトAudacityを使ってノイズを除去しました。




タラノキの花蜜を吸うミドリヒョウモン♂の群れ

 

2022年9月上旬・午後15:30頃・晴れ 

里山でタラノキの灌木を山菜として栽培している区画があります。 
白くて目立たない花が咲いていました。 
季節外れに狂い咲きしたのかと思いきや、調べてみるとタラノキはこの時期に咲くのが普通らしい。 
そこに複数のミドリヒョウモン♂(Argynnis paphia)が訪花していました。 
半開きの翅をゆるやかに開閉しながら吸蜜しています。 
なぜか♂ばかりが集まっているのに、互いに喧嘩(排斥)しませんでした。

2023/01/26

深夜の池を泳いで渡るヘビ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2022年9月上旬・午後23:45頃 

山中の泉をトレイルで監視していると、真夜中に蛇が現れました。 
対岸の草むらで白く光る目が動いています。 
水際でしばらく躊躇してから、鎌首をもたげました。 
水面を素早く泳いで右岸へ渡りました。 
蛇行による泳ぎはビックリするほど速いですね。 
草が生い茂る右岸の崖を蛇行して登って行きます。 

モノクロの暗視映像ではヘビの種類を見分けられません。 
しかし候補として、ヤマカガシが挙げられます。 
実は約3週間前の8月中旬の昼間に、この池の左岸でヤマカガシRhabdophis tigrinus)を目撃しているからです。 
池畔に育ったミズナラの根本を私が何気なく覗き込んだら、ヤマカガシが崖をスルスル登って逃げて行きました。 
証拠映像を撮り損ねた悔しさを鮮明に覚えています。 
この池にはオタマジャクシやカエル、野ネズミなどが豊富ですから、お気に入りの狩場なのでしょう。 
泳ぐヤマカガシも昔に見たことがあります。 
関連記事(6年前の撮影)▶ 水路を泳いで渡るヤマカガシ 


トレイルカメラの電池が消耗していて、設定した録画時間(1分間)よりも早く切れてしまいました。
池を渡り切ったところまで尺に収まってくれたのは奇跡です。
何よりも不思議なのは、なぜ自動撮影カメラでこの映像が撮れたか?ということです。 
爬虫類のヘビは変温動物ですから、いくら動き回ってもセンサーが反応して起動するはずはありません。 
動画には写っていませんが、対岸の草むらで夜行性の野ネズミを追跡中だったのかな?
あるいは、直前に飛来したコウモリが一瞬だけ横切ったのかもしれません。 

脱皮殻を食べるフクラスズメ(蛾)若齢幼虫

 

2022年9月上旬・午後21:25頃・室温28.3℃・湿度67% 

飼育していたアカタテハ幼虫のために採集してきた食草のクサコアカソフクラスズメArcte coerula)の幼虫が紛れ込んでいました。 
葉裏の主脈にしがみついた姿勢でいつの間にか脱皮していました。 
脱皮の過程を見逃したのは残念です。
脱皮したばかりのフクラスズメ幼虫が方向転換し、自身の抜け殻を食べていました。 
マクロレンズで口元を接写してみましょう。 
脱皮直後のフクラスズメ若齢幼虫の頭楯は、濁った赤茶色(オレンジ色?)でした。 
脱皮殻を完食したら、クサコアカソの葉裏で移動を始めました。 

過去の飼育経験では、脱皮後の終齢幼虫は抜け殻(脱皮殻)を全く食べませんでした。
関連記事(2年前の撮影)▶ 脱皮後の休息中に黒化が進むフクラスズメ(蛾)終齢幼虫【100倍速映像】

どうやら、抜け殻を食べるのは若齢幼虫だけのようです。 
失われたタンパク質を速やかに再摂取するための行動ですから、脱皮殻を食べるかどうかは、その個体の栄養状態によるのかもしれません。 (個体差?)
あるいは、齢が進むとクチクラが固くなり、抜け殻を消化できなくなるのかな? 

野外でフクラスズメの脱皮殻が食草上に見つかりますが、何齢の幼虫が残した抜け殻か調べたら面白いかもしれません。 
(齢数判定には、地面に落ちた頭楯の抜け殻を探し出して採寸する必要があります。)
機会があれば、卵から飼育して脱皮を繰り返す度に見届けたいものです。
 

2023/01/25

里に降りてきたニホンザルの群れは警戒心が強い

 

2022年8月下旬・午後15:50頃・晴れ 

山麓の神社周辺で野生ニホンザルMacaca fuscata fuscata)の群れと遭遇しました。 
里の集落では農作物を荒らす猿害に長年悩まされているために、ヒト(住民)とサルとの間に軋轢があります。 
最近では電気柵やモンキードッグなど効果的な猿害対策がようやく確立されつつあり、群れが里に降りて来る度に爆竹を鳴らしてすぐに山へ追い返しています。 
ほとぼりが冷めるとヒトの目を盗んでまた里に侵入して来るのでイタチごっこですけど、共存するためには仕方がありません。
山中では堂々としているニホンザルも里で出会うと非常に臆病で警戒心が強く、私の姿を見ると一目散に逃げてしまいます。 
猿の行動をじっくり観察したい私としては、あまり面白くありません。 
とりとめもない逃走動画をつないだだけです。 

ちょっと面白いのは最後のシーンです。 
墓地で遊んでいた子ザルの群れが、私に気づいて走り去りました。 
墓地の一角にはサルスベリ(百日紅)の花が咲いていました。 
雨不足なのか散りかけなのか、花のピンクが色褪せています。
和名サルスベリの語源は、木登りが上手なサルでも、滑り落ちるほど樹皮が滑らかという例えから名付けられている[3][4]。(wikipediaより引用)
ニホンザルがサルスベリで木登りできるかどうか検証できる、絶好のチャンスだったかもしれません。 
猿の群れにもっと慎重に近づくべきだったと反省しました。 
しかし採食などの用事がなければ、ニホンザルもわざわざサルスベリの木に登らないでしょう。
子ザルなら互いに追いかけっこしながら木登りするかな?
私は俗説には懐疑的で、サル対サルスベリの矛×盾対決は猿に軍配が上がる(平気で登れる)のではないかと予想しています。


【追記】
上野動物園で試してみたところ、猿は滑らなかったという話もある。(矢追義人『ミクロの自然探検: 身近な植物に探る驚異のデザイン』p82より引用)

夜の溜め糞場で活動する糞虫たち【5倍速暗視映像:トレイルカメラ】

 

2022年8月下旬 

里山の林道に残されたタヌキとアナグマの溜め糞場sをトレイルカメラで見張っていると、監視映像にときどき糞虫の活動が記録されています。 
本来、変温動物の糞虫がいくら動き回ってもカメラのセンサーは反応しないはずです。 
たまたま恒温動物(哺乳類と鳥類)が通りかかったときに、糞虫が写り込んでいるときがあるのです。 
引きの絵では糞虫の動きが遅過ぎて分かりにくいので、5倍速の早回し映像に加工しました。


シーン1:8/22・午後23:45・気温22℃ 
自動撮影カメラが何に反応して起動したのか不明です。 
別アングルのトレイルカメラをチェックすると、この時刻にカモシカが写っていたのですが、こちらのカメラの死角を通ったようです。 

赤丸で囲った画面の中央に注目して下さい。 
スギの落葉が敷き詰められた林道上を、黒っぽい糞虫(種名不詳:センチコガネの仲間か?)がアナグマの溜め糞に向かって歩いています。 
辿り着く前に、トレイルカメラの録画タイマーが切れてしまいました。 


シーン2:8/23・午後19:45頃・気温25℃ (@0:14〜) 
ニホンアナグマMeles anakuma)の顔黒個体が登場し、溜め糞場sをうろついてから帰りました。
関連記事(等倍速の映像はこちら)▶ 同じ日に溜め糞場を別々に訪れる2頭のニホンアナグマ(顔白、顔黒)【トレイルカメラ:暗視映像】

赤丸で囲ったホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の溜め糞の上を黒っぽい糞虫(種名不詳:センチコガネの仲間か?)が活発に動き回っています。 
後半(@0:36〜)になると、左から別の黒い甲虫がタヌキの溜め糞に向かって歩いて来ました。 
辿り着く前に尻切れトンボに終わったのは残念でした。 

糞虫は餌から発する糞便臭に誘引されてまっしぐらに集まってくるようです。
暗闇ですから、視覚頼りではなく触角の嗅覚による化学走性と思われます。
いつも歩いて溜め糞に向かっています。
本に書いてあるような、糞虫が飛来するシーンはなぜか一度も見たことがありません。

溜め糞に集まる糞虫を狙って捕食する動物や野鳥がいるのではないかと予想しているのですけど、決定的な捕食シーンの証拠映像がなかなか撮れません。


【追記】
中村圭一『たくましくて美しい 糞虫図鑑』を読んで知ったのですが、たとえばゴホンダイコクコガネという糞虫は夜行性なのだそうです。
私は未だ見つけたことがありません。


2023/01/24

ニホンイノシシのヌタ場を探せ(1)雨天の水溜りで泥浴びせず【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2022年8月下旬・午後 17:40頃・雨  (日の入り時刻は午後18:20

里山の林道でヌタ場らしき水溜りのある区間をトレイルカメラで見張っていると、待望のニホンイノシシSus scrofa leucomystax)が遂に登場しました。 
果たして泥浴びしてくれるでしょうか?

雨が降る夕方で暗く、霧も少し立ち込めています。 
動画の冒頭から至近距離でイノシシの横顔が写りました。
カメラを固定したシナノキの幹の匂いを嗅いでいるのか、近くで灌木の葉を採食したのか、とにかくレンズに近過ぎて何をしているのか不明です。 
ゴソゴソと物音が聞こえます。 
シナノキの幹で牙を研いだ可能性も考えましたが、後日現場検証しても研ぎ跡は見つかりませんでした。
幼獣(ウリ坊)ではなく成獣であることは間違いありませんが、口元の牙が見えないので性別が分かりません。 
この個体の毛皮にどのぐらい泥汚れが付いているのか、赤外線の暗視映像ではよく分かりません。(見える範囲では、きれいな体のような気がします。) 

ようやくイノシシが現れたのは嬉しいのですけど、水溜りで泥浴び(ヌタ打ち)をしてくれず、予想が外れました。 
おかしな異物(トレイルカメラ)の存在に匂いで気づいて、警戒したのでしょうか? 
雨の日は泥浴びする気が失せるのかな? 
林道上の水たまり(ヌタ場?)に立ち寄らずに法面を登ってきたのか、逆にカメラの背後にある斜面の獣道を下ってきた可能性もあります。 
マルチアングルで重点的に監視したいところですが、予算不足でトレイルカメラの台数を気軽に増やせません。
関連記事(3日前の撮影)▶ ニホンイノシシによる泥汚れ?(2)獣道の下草
この水溜りの前後で林道の下草が泥でひどく汚れていたことから、イノシシのヌタ場ではないかと予想して監視カメラを設置したのです。 
しかしイノシシがヌタ打ちするには、この水溜りはどうも小さ過ぎるかな?と早くも弱気になってきました…。
本当のヌタ場は別の所にあるのでしょうか? 
とりあえず、しばらくはここで粘って監視を続けます。 

※ 動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。



桑の葉を後食したキボシカミキリが食休み

 

2022年8月下旬・午後15:45頃・晴れ 

平地の農道沿いに自生するヤマグワの群落でキボシカミキリPsacothea hilaris hilaris)が天辺の若葉に乗っていました。 
その若葉には食痕があり、萎れていました。 
キボシカミキリは食べ残した桑の葉の主脈に乗って休んでいました。 
隣の葉も萎れています。 
カミキリムシが後食した虫食い痕(食痕)の切り口は、鱗翅目幼虫による食痕よりも不規則で汚らしい印象になります。 
口元にズームインしても、食事中ではなく静止しているだけでした。 

私はカミキリムシの成虫が後食するシーンを観察したことがありません。
少し離れたところからしばらく見守ったのですけど、残念ながら食休み(私に対する警戒?)は解けませんでした。 
後で思うと、採集して持ち帰れば飼育下で後食シーンを撮影できたかもしれませんね。 
しかし当時は忙し過ぎて、新たに飼育ネタを増やす余力がありませんでした。 

桑の葉は傷口からアルカロイドを含む白い乳液を出して虫による食害を減らすように自衛します。 
それに対抗してキボシカミキリは摂食前にトレンチ行動するのかどうか、興味があります。 
今回、食痕の切り口に乳液は滲んでいませんでした。 
【参考】:クワは乳液で昆虫の食害から身を守る  @農業生物資源研究所からのプレスリリース



【追記】
新開孝『虫のしわざ観察ガイド—野山で見つかる食痕・産卵痕・巣』で本種の食痕について調べると、やはり成虫はトレンチ行動をするようです。
葉裏側の葉脈にかじった茶色の食痕と、葉を真ん中から雑にかじり空けた、大きな食痕が目立つようになる。(p96より引用)
クワの葉のつけ根側の葉脈をかじってから、葉脈を中心に葉を食べている。クワやイヌビワ、イチジクの場合、乳液が滲出するので、その予防策かと思う。  ※ 後食とは幼虫の摂食と区別して、成虫が摂食すること。(p97より引用)





2023/01/23

晩夏の昼間にスギ林道を行き交うニホンカモシカ【トレイルカメラ】

 



2022年8月下旬 

トレイルカメラで監視している里山のスギ林道を行き交うニホンカモシカCapricornis crispus)の記録です。 
明るい日中に登場した3回分をまとめました。 

シーン1:8/27・午後14:14・気温24℃ 
カメラの起動が遅れ、登場シーンが撮れていません。 
どうやら、画面奥にある斜面を登って来たようです。 
無風なのに、カモシカが通った直後には下草が揺れています。 
逆に、揺れている下草をつなぐとカモシカの通過経路を推理することが出来ます。 

タヌキとアナグマの溜め糞場sを跨ぐようにカモシカは林道を横断し、画面手前の死角に消えました。 
林道脇の法面斜面にある獣道を登ったようです。 
逆側からのアングルで狙う別のトレイルカメラを最近まで設置していたのですが、新たに気になる地点が見つかったので、撤去しました。 
少数の監視カメラでやり繰りするのは大変です。 


シーン2:8/29・午後12:55・気温22℃ (@0:08〜) 
林道を右から左へ通過しました。 
角が細く、体格が華奢なので、未だ若い個体のようです。 


シーン3:8/31・午後17:07・気温25℃ (@0:19〜) 
珍しくカモシカが画面の下端から登場しました。 
もし林道脇の法面斜面を降りてきたのなら、トレイルカメラのセンサーの反応がもっと遅れたはずです。
おそらく左から林道の右端を歩いて来たので、カメラに映らなかった(死角)のでしょう。 
ニホンカモシカは林道を横断すると、対面に立つスギ大木の横で立ち止まりました。 
そこに生えたコシアブラ幼木の細い枝に顔を擦り付けて眼下腺マーキングしたようです。 
肝心の顔上部が画角から切れてしまっています。 
その後、カモシカは林道を右へ立ち去りました。 

映像では下り斜面の少し奥に育つスギの細い幹にマーキングしたように見えるかもしれませんが、それは遠近感に乏しい監視動画による錯覚です。 
この撮影アングルでは対面のスギ大木の幹(胸高直径60.5cm)の陰に隠れてコシアブラ幼木が見えないだけです。 
後日、トレイルカメラの設置アングルを調節して、問題のコシアブラ幼木が見えるように変更しました。 
説得力のある眼下腺マーキング動画が撮れるでしょうか? 

今のトレイルカメラは安価で、設定した通り愚直に撮影してくれるものの、画角の点で一切融通が効かないのが困りものです。 
近未来のトレイルカメラはAIを搭載し、被写体を自動で追尾するためにカメラの向きがぐりぐり動けるように進化して欲しいものです。



羊歯の葉を伝って逃げるニホンカナヘビ

 

2022年8月下旬・午前10:25頃・晴れ 

前回の記事(11日前の撮影)▶ 羊歯の葉の上で日光浴するニホンカナヘビ幼体 

里山の林道沿いに生い茂るシダ(種名不詳)の葉にニホンカナヘビTakydromus tachydromoides)の成体が乗っていました。
私がマクロモードで接写しながらレンズをそっと近づけると、シダの葉を渡り歩いて素早く逃走しました。

苦手なシダの種類を見分けられるように、これから少しずつ勉強していきます。

2023/01/22

林道を掘り返した採食跡は誰のしわざ?【ニホンイノシシまたはニホンアナグマのフィールドサイン】

 

2022年8月下旬・午前9:35頃・晴れ 

里山の山腹を通るほぼ平坦な林道で不自然に土を掘り返した形跡がありました。 
現場はスギの植林地と雑木林に左右を挟まれた林道です。
下草が生い茂る林道の地面が浅く広範囲に掘り返されています。
土は乾いていて、鮮明な足跡・蹄跡は残されていませんでした。
ここは私が夏によく通った林道なので、最近新たに出来た掘り返しで間違いありません。 

私は初め、ニホンアナグマMeles anakuma)がミミズを捕食した跡なのかと想像しました。 
金子弥生『里山に暮らすアナグマたち: フィールドワーカーと野生動物』という本を読んだばかりだったからです。
アナグマにとっては、ミミズの潜んでいる坑道を掘ってミミズを一匹ずつさぐりあてるよりも、ミミズの地表活動が行われるところに行って、ミミズが地表に出ているときに採食を行うほうが効率が良い。ミミズの地表活動が行われる場所はその日の湿気に左右される。(中略)このミミズパッチは季節ごと、数日ごとに位置が変化する。(中略)ミミズパッチを見つけ出したアナグマは、一分あたり2〜3匹のミミズを採食することができるため、口を地表につけたまま掃除機のようにミミズを食べながら直線に進み、パッチの端までくると方向転換してパッチ内の別の直線を進み、一時間程度で要求量が満たされて採食が終了する。(p119-120より引用)
ただし、これは著者が留学先のイギリスでなされたフィールドワークに関する文脈ですが、ニホンアナグマも同様と想像されます。
ミミズ捕食の際に地面に穴を全く掘らずに吸い込むだけなのだとしたら、以下の考察は私の誤読によるものです。 

しかし、熊谷さとし、安田守『哺乳類のフィールドサイン観察ガイド』でアナグマの食痕について調べると、全く違うことが書いてありました。
アナグマの最も目立つフィールドサインといえば、林道脇やササやぶの中などで見つかる、地面に空いたお椀状の食痕だ。これは落葉や土に鼻先を突っ込み、ミミズ類など土壌動物を掘り出した跡で、鼻先を中心に円を描くように探ったことによるもの。(p67より引用)
むしろ、ニホンイノシシSus scrofa leucomystax) の食痕と酷似しています。
イノシシのフィールドサインといえば、派手に掘り返された食痕だ。休耕田やタケ林、畑や田んぼなどでよく見られる。(中略)林道のわだちで食べ物を探した跡。(同書p80〜81より引用)

ちなみに、今泉忠明『アニマルトラック&バードトラックハンドブック』p106では「イノシシのラッセル痕」と題したイラストで採食行動を描いています。
イノシシが鼻面で落葉をかき分け地面を浅く掘りながら前に進み、溝を掘っているイラストです。
動画の現場は掘り返した後に雨水が溜まっていないので、イノシシがヌタ場を作ったのではありません。

著者の業績を私はもちろんリスペクトしていますが、「〇〇の食痕」と題した写真の根拠について聞きたくなります。
果たしてどれだけがトレイルカメラによる証拠写真(または動画)によって裏付けられているのか、気になります。
「採食行動を描いたイラストは、ただの想像図(筆者の仮説、妄想、ファンタジー)ではないのか?」と疑い深い読者が意地悪な質問をしたときに、どのように反論するのでしょう? 
フィールドあるいは飼育下で採食シーンを直接観察した直後に食痕の写真を記録したのであれば、文句はありません。 
好意的に解釈すれば、おそらく2冊の本は共に部分的には正しくて(不完全)、アナグマは状況に応じて両方の採食行動をするのかもしれません。 

この掘り返しは一体誰のしわざなのでしょう?
本に頼って袋小路に陥り、あれこれ悩むよりも、監視カメラを設置して自分で真相を突き止めるべきですね。
現場に足跡があれば、簡単に解決する問題なのですけど…。
アナグマお気に入りのミミズパッチなのであれば、繰り返しやって来るはずです。
残念ながらトレイルカメラを買い足す予算が足りず、今季は実現しませんでした。
(トレイルカメラを設置しにくい場所という事情もあります。)
その後も定点観察に通うと、林道の下草が再生してからしばらくすると、また同じ地点が掘り返されていました。 
つまり、謎の野生動物による採食頻度は低い印象です。
カメラトラップ調査の結果、当地でイノシシの生息密度は未だ低いと推察しています。
つまりイノシシの採食痕でも一応辻褄は合います。
誰かヒトが山菜を掘り出した跡だとしたら、何度も掘り返す必要はないはずです。



【追記】
ポケット版学研の図鑑9『フィールド動物観察:足あと、食べあと、ふん』でも調べてみました。
 イノシシは、草の葉やくき、球根や根、いもや、地面にいる昆虫や落ちている果実やドングリを食べます。(中略)土をほりかえしたあとは、とてもよく目立ちます。
 きばと鼻の先を使ってほりおこしますが、まるでトラクターでほりおこしたようになります。(中略)はば1m以上になるようなあなもあります。 (p48より引用)

「アナグマがほったあな:土をほって、アリやミミズをさがしたあとです。」と題したカラー写真もp47に掲載されていました。

私が見つけた掘り返しは、どうやらイノシシの採食痕だったようです。

 




毛虫を運び、隠れて捕食するオサムシの一種【名前を教えて】

 

2022年8月下旬・午前11:55頃・晴れ 

里山の雑木林を通る林道でオサムシの仲間(種名不詳)を見つけました。 
毛虫の腹端付近を大顎で咥え、その長い体に跨って前方にせかせかと早足で運搬しています。 
つまり、獲物を前後逆向きにして運んでいました。 
細い落枝に毛虫が引っかかると、それを乗り越えるのに少し苦労しています。 

広葉樹の落ち葉の上に毛虫を置くと、捕食開始。 
毛虫の胴体の中央付近に噛み付いています。 
オサムシは落ち着いて捕食できるように、タニウツギ?幼木の葉の下(日陰)に隠れていました。 
そこに巣穴があるという訳ではなく、一時的な隠れ場所のようです。 

私がカメラをマクロモードに戻してレンズをそっと近づけると、衣擦れ音に警戒したオサムシが慌てて逃げ出しました。 
初めは獲物を持ち去ろうとしていたのに、身の危険を感じたらしく、咥えていた獲物を捨てて逃走開始。 
ほとぼりが冷めたら食べ残しの獲物を取りに戻るかと期待したのですが、落とし物を探しているようには見えません。 
餌食となった毛虫はなぜか初めから萎びた状態でグッタリしていて、身が詰まっているようには見えません。 
オサムシはもはや毛虫に未練は無いのか、次の餌を探し求めて林床を徘徊しているようです。 

関連記事(12年前の撮影)▶ キタアオオサムシが落とし物を奪還する話

さて、オサムシの餌食となった毛虫の正体は何でしょう? 
現場ではなんとなくマイマイガの幼虫かと思ったのですけど、頭楯にハの字模様がありません。 
胸脚が赤っぽいです。 

オサムシが木漏れ日の日光が当たると鞘翅の金属光沢(メタリックカラーの構造色)が綺麗ですね。 
このオサムシの種類を見分けられる方がいらっしゃいましたら、ぜひ教えていただけると助かります。 
実は撮影後にありあわせのビニール袋を使って採集を試みたものの、殺気を感じたオサムシに素早く逃げられてしまいました。 
手っ取り早く素手で捕獲すべきでしたが、うろ覚えの知識で毒ガスを噴射をするのでは?と躊躇してしまいました。 
私のフィールドではよく見かける普通種だと思います。
関連記事(1年前の撮影)▶ オサムシが渓流沿いの林床を徘徊【名前を教えて】

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