2014/01/11

猿の死骸に来たハネカクシの仲間(黒)



2013年9月下旬

ニホンザルの死骸を土に還す者たち:#08

ハネカクシの仲間と思われる甲虫も何匹かニホンザルの死骸に来ていました。
素早く徘徊し、あちこちに潜り込んでいます。
屍肉を直接食べているのか、あるいは死骸に集まる他の虫を捕食するのか、不明です。
♀が毛皮の奥に産卵しているのかな?
とにかくハネカクシについて予備知識が全く無いため、観察ポイントや目の付け所が分かりません。

図鑑も持っていないので、「こんな虫も居ました」というだけの記録映像です。
後日、色の違うタイプのハネカクシも見つけました。
ここでは便宜上、黒タイプのハネカクシと呼ぶことにします。
もし名前が分かる方がいらっしゃいましたら教えて下さい。

交尾中のペアも一瞬だけ見ました。
交尾器を連結したまま一方が他方を引きずって歩き回っていました。
残念ながらすぐに地面の枯草に潜り込んで姿を消しました。

地面を歩いて来て、檻の中に侵入するシーンも撮れました。

「◯◯に集まる昆虫ハンドブック」のシリーズを刊行している文一総合出版あたりが、「動物の死骸や糞に集まる昆虫」編を出してくれないかなー?(おねだり)
きっと需要が少ないのでしょうけど、とっかかりとなる入門書の図鑑が欲しいです。

つづく→シリーズ#09





朽木で羽繕い、脱糞するアカゲラ♀(野鳥)♪



2013年9月下旬

林道脇の立ち枯れした高木で断続的にキョッキョッ♪と鳴いている啄木鳥を発見。
アカゲラ♀(Dendrocopos major)のようです。
あちこち朽木をつついて中の虫を探したり、羽繕いしたりしています。
望遠レンズで狙っているのですが、どうもこちらに気づいているようで、警戒して幹の陰に隠れようとしている印象を受けました。
やがて朽木の天辺まで登ると脱糞しました(@3:10)。
少し身軽になったアカゲラ♀は鋭く鳴きながら飛び去りました。

【追記】
『スズメの少子化、カラスのいじめ:身近な鳥の不思議な世界』p100によると、

尾羽で体を支えて幹にとまっているキツツキの仲間が用を足すときは体を幹に対して横向きにしたり、その瞬間だけ尾羽を上げるなど、尾羽にかからないようにしている。
今回の映像では後者のやり方で排便しました。





トリカブトを訪花するトラマルハナバチ♀



2013年9月下旬

鎮守の森(杉林)の暗い林床に咲いたトリカブトの群落でトラマルハナバチ♀(Bombus diversus diversus)が飛び回り訪花していました。
後脚の花粉籠に白い花粉団子が少しだけ付着しています。



トリカブトの仲間にも種類が色々とあるようですけど、私には見分けられません。
当てずっぽうでヤマトリカブト?

トリカブトは悪名高い有毒植物です。

蜜、花粉にも中毒例がある。このため、養蜂家はトリカブトが自生している所では蜂蜜を採集しないか開花期を避ける。(wikipediaより)
トリカブトの受粉を助ける蜂は平気なようですけど、脊椎動物に対してのみ毒性があるのかな?

実はこの直後、同一個体の蜂がサラシナショウマにも訪花しました。(映像はこちら。)



2014/01/10

ニホンザルの死骸に集まるミツバチの謎



2013年9月下旬

ニホンザルの死骸を土に還す者たち:#07

ここで意外なゲストの登場です。
死臭に引き寄せられるようにミツバチのワーカー♀が続々と飛来し、死顔の眼窩と鼻孔に出入りしています。
穴から出てきたミツバチは興奮したように定位飛行(ホバリングしながら扇状に飛ぶ)を繰り返して場所をしっかり記憶してから飛び去ります。
死顔の穴を気に入って同一個体の蜂が繰り返し訪れていることを示唆しています。
前回の記事#06で示したように、同じアングルで長時間の微速度撮影してみるとミツバチが何匹もしつこく繰り返し死骸の眼窩や鼻腔に出入りしている様子が記録されていました。
ミツバチの後脚の花粉籠は空荷でした。
腐乱死体にミツバチが一体何の用があるのでしょうか?

隣で横たわるもう一頭の死骸の眼窩にも同じようにウジ虫が湧いているのに、不思議なことになぜかミツバチは全く来ていません。
腐敗(生物分解)の進行度が微妙に異なり、ミツバチを強く誘引する物が片方の死骸Rにだけあってもう一方Lには無いのでしょう。
また、死骸Rの左右の眼窩の中でもミツバチが来ているのは右側だけです。
法医昆虫学では死体に集まる虫の種類を調べることで死因や死亡推定時刻などを解き明かす上で重要な手掛かりとなります(虫の知らせ)。
ミツバチが来ている猿の死骸は何を物語っているのでしょうか?

一匹だけなら「味覚のおかしいゲテモノ好きな蜂も居るもんだ(異常行動?)」と片付けられそうです。
しかし、何匹も集まって来るからには何か意味や目的があるはずです。
思いつく限りの可能性を絞り出してみました。

仮説1
ミツバチにしては余りにも想定外の行動なので、初めはもしかするとミツバチにベーツ擬態したハエなのか?と考えました。
残念ながら檻の外から観察するだけで、採集できませんでした。
しかし後日の定点観察で2匹サンプリングしてみた結果、やはり翅が4枚ある蜂でニホンミツバチでした。

仮説2
死骸の脳髄や体液を吸汁しに来た?
「腐りかけの食物は旨みが増す」原理が働き、ミツバチには禁断の蜜の味がするのかもしれません。
確か映画『インディージョーンズ』で開頭した猿の生首を食卓に供された考古学者が吐き気を催すシーンがありましたね(猿の脳みそを召し上がれ)。
それよりも更にグロい話です…。

YouTubeで米国の蜂屋さんに興味深いコメントを頂きました。
ミツバチ科ハリナシバチ亜科の中には訪花せず屍肉に集まる「vulture bee」という珍しい習性の蜂がいるそうです。
ただし日本には分布していないようです。
まさか新種の発見!…なんてね。(笑)

仮説3
ミツバチが頭蓋骨の中にコロニーごと引越すつもりなのかもしれません。
ウジ虫など屍肉掃除屋の仕事が済むのを待ち兼ねるように、気の早い斥候部隊が空き物件を物色している?
自らも頭蓋骨の内部を舐めて掃除しているのでしょうか。
死骸の眼窩から出た蜂は巣に戻って仲間を呼び寄せる有名な8の字ダンスを踊るのかもしれません。
野生のニホンミツバチは樹洞などに営巣するはずですが、最近は山でもよほどひどい住宅難なのでしょうか?
白骨化した頭蓋骨(髑髏・しゃれこうべ)の内部に自然営巣するニホンミツバチを想像しただけでシュールな(最高にイカシタ/イカレタ)光景です。
たとえば『マルハナバチの謎・上巻(ハリフマンの昆虫ウォッチング)』を読むと、森番の小屋でポインターという犬種の剥製の体内にマルハナバチが営巣し剥製の口から蜂が出入りしていた、という興味深い話がp36に登場します。



仮説4

日本産ニホンミツバチと種レベルでは同種のベトナム産トウヨウミツバチ(Apis cerana)で驚くべき習性が新たに報告されました。

獣糞を集めて巣口の周囲に塗りつけ、オオスズメバチの斥候が侵入しないよう忌避剤として使っている、というのです。(ミツバチの道具使用!)

ニホンミツバチが動物の腐乱死体に集まるのも、もしかすると不潔な汚物を巣に持ち帰って匂い付けするためだとしたら興味深い!と興奮しました。

もちろん関係ないかもしれませんが、あまりにも魅力的な仮説なので紹介しておきます。

今回、ニホンザルの死体に通って来るニホンミツバチの巣を突き止められなかったのが残念です。

原著論文の出典はこちら。(オープンアクセスで全文PDFをダウンロード可能)

Mattila HR, Otis GW, Nguyen LTP, Pham HD, Knight OM, Phan NT (2020) Honey bees (Apis cerana) use animal feces as a tool to defend colonies against group attack by giant hornets (Vespa soror). PLoS ONE 15(12): e0242668. https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0242668


日本語での解説記事はこちら。

・ミツバチ、動物のふんで外敵を「撃退」(@CNN日本語版

・ミツバチ、動物の糞でスズメバチを撃退、研究 ― 巣の入り口に糞を塗るとスズメバチが寄り付かない、道具使用を初確認か  (@ナショナルジオグラフィック日本語版

英語での詳しい解説記事はこちら。

Giant hornets on the attack? Try a little water buffalo poop (@Science誌

Science誌は動画も公開しています。

これに登場するスズメバチは、日本産ヒメスズメバチと見た目は似ているのに、養蜂巣箱を集団で襲う習性はまるでオオスズメバチのようです。

 


日本の牛舎で牛糞に群がるミツバチの動画↓が「田中畜産の和牛チャンネル」にて公開されていました。 



これは飲水行動だろうと、投稿者はブログでは推測しています。
ミツバチの巣の中に集められたハチミツは保存のために糖度が高くなっており、幼虫の餌として使う際に水で薄める必要があります。 また、巣の中の温度を下げるために水を使うこともあるそうです。 水たまりだと羽がぬれて飛べなくなるリスクがあるため、落ち葉や糞などに浸み込んだ水を集めているんですね。
しかし、私はタヌキの溜め糞など牛糞以外の獣糞に来ているミツバチを一度も見たことがありません。

私は現場のひどい腐臭も忘れてワクワクし、これは最後まで見届けねば!と定点観察を続ける覚悟を固めました。
ただし普通に考えれば、ニホンミツバチが巣別れ(分封)する時期はとっくに過ぎているはずです。
何らかの理由で巣を逃去したコロニーですかね?
また、これから巣作りする空間として頭蓋骨は狭過ぎる気もします。

【参考】 分蜂群が新たなすみかに入るときには、先着蜂がちゃんと外側に尻を向けて集合フェロモンを放出しながら扇風し、後続の仲間を誘導する。(佐々木正己『ニホンミツバチ:北限のApis cerana』p107より)
↑そのような行動は今回見られませんでした。



不都合な真実?
蜂の腹部の色を見ると、黒っぽいニホンミツバチに混じって明るい褐色帯をもつセイヨウミツバチらしき個体も来ていました。
(ただしこの見分け方は実は自信がなくて、採集した蜂の後翅の翅脈を調べてみないとはっきりと区別できません。)
どこの巣箱から通って来ているのか知りませんが、このコロニーの蜂蜜を味見するのはちょっと遠慮したいですね…。
ミツバチが屍肉に群がるという驚きの習性は、養蜂業者にとってはもしかすると「不都合な真実」なのかもしれません。
集めた花蜜の水分を飛ばして濃縮した蜂蜜は高い浸透圧で天然の殺菌効果があります。
例えば、古代エジプト人たちがミイラ作成とは別に屍体をハチミツ漬けにしたのは、ハチミツに強力な防腐作用があるからです。(『蜂は職人・デザイナー』p71より)


したがって、汚物に触れた不浄な蜂が巣箱に出入りしていても蜂蜜の品質には別に問題は無いと思います(知らぬが仏)。

むしろハチミツに独特の風味が出てきたりして…。
しかし、一般の消費者は「蜂蜜に汚物が混入した」と知ればヒステリックに不買運動を起こしそうです(風評被害)。
蜂蜜のブランド・イメージを守るために、巣箱の周囲、働き蜂の行動圏に動物の死骸が1匹でも見つかったら蜂蜜の出荷をしばらく停止する、なんていう対処は非現実的で神経質すぎる気がします。


 古代エジプトや中国では、ハチミツは、ミイラづくりの材料として、蜜蝋とともに用いられている。当方遠征の帰途に死亡したマケドニアのアレクサンドロス大王の遺体は、遺言にしたがって、黄金の柩の中でハチミツ漬にされ、バビロンからアレキサンドリアへ運ばれたという。これは、ハチミツの殺菌力が2000年以上も前から認識され、神聖視されていたことを物語っている。 (松浦誠『社会性ハチの不思議な社会』p246より引用)


余談ですが、さっきから映像でピーヒョロロ♪と聞こえるのは上空を飛ぶトビの鳴き声でしょうか。
トビがハゲタカのように死臭を嗅ぎつけて集まり屍肉を食べるなんて、聞いたことはないですけど私が勉強不足なだけかもしれません。
幸い鉄の檻で厳重に守られているので、放置された死骸がカラスや犬などに盗まれるおそれはありません。

日が経つと死骸に来たミツバチは更に奇妙な驚愕の行動を取り始めるのです。
お楽しみに。

つづく→シリーズ#08




【追記】
マディソン・リー ゴフ『法医昆虫学者の事件簿』を読むと、
死体を食べているウジを獲物としているアリやハチの成虫はしばしば見かけるが、腐敗中の死体はつかの間しか存在しないという性質をもつから、死体に社会性昆虫の丸ごとのコロニーを見かけることはまずありえない。(文庫版p155より引用)
本職(法医昆虫学者)の筆者が米国で見聞きした殺人事件の中で例外としては、頭蓋骨の中にアシナガキアリのコロニーが見つかった例(p154)と頭蓋の内部にアシナガバチの古巣があった例(p159)が記されていました。
本書にミツバチは登場しませんでした。


ニホンミツバチ@死骸・眼窩
セイヨウミツバチ?@死骸・鼻腔

飛べ!ムクドリの群れ【野鳥:ハイスピード動画】



2013年6月中旬

街なかを流れる川沿いでムクドリSturnus cineraceus)が群れていました。
羽ばたいて飛ぶシーンを240-fpsのハイスピード動画で撮ってみました。
堤防の段差から横の地面に飛び降りて採食する者もいれば、左手の川底に飛び降りる者や、堤防に飛来する者もいます。

歩行は両足を交互に前へ出してトコトコ歩きます。
最後は一斉に飛んで右手へ逃げて行きました。


【追記】
ムクドリは群れで行動する習性があり、その名も“群れる鳥”に由来している。(『ネオン街に眠る鳥たち:夜鳥生態学入門』p99より)




2014/01/09

死後に生物分解が進むニホンザルの顔【微速度撮影】



2013年9月下旬

ニホンザルの死骸を土に還す者たち:#06

並行して別のニホンザルMacaca fuscata)の死骸Rの顔に注目し、微速度撮影してみました。
もう一台のカメラ(旧機種)を使い、金網越しに10秒間隔のインターバル撮影を行いました。
約3時間半撮り続けた計1,215枚の写真から早回し映像を作成しました。
自然光下では明るさが一定せず、どうしてもチラチラした映像になりますね。

顔中の穴という穴(口腔、鼻腔、眼窩)の奥で活発に屍肉(猿の脳)を食しているウジ虫がときどきドバーッと大量に穴から溢れ出る様子がなんとも凄まじいですね…。(※追記参照)

ところでこの早回し映像で、とても意外な虫が繰り返し死骸を訪れていることにお気づきでしょうか?
ハエやシデムシ類に混じり、なんとミツバチが何匹も集まって猿の眼窩や鼻腔に潜り込もうとしています。
この行動は全く予想外で、心底びっくりしました。(驚愕のミステリー!)
一体何が目的で腐乱した死骸に来ているのでしょうか?

つづく→#07(ニホンザルの死骸に集まるミツバチの謎)



※【追記】
川瀬七緒『潮騒のアニマ 法医昆虫学捜査官』というミステリを読んでいて非常に興味深い記述を見つけました。
もちろんフィクションですし、ヒトとサルの死骸で違いがあるのかもしれませんが、個人的な覚書として残しておきます。
口の中の損傷がひどかったのは、一斉に孵化したウジが集塊になったからだと思う。ウジが塊になると、真ん中は気温よりも20度は高い温度になる。ウジは50度を超えると熱死するから、塊をぐるぐる回りながら場所を移動して、体を冷やしながら食べたものを消化する習性があるの。



【追記2】
川瀬七緒の推理小説の元ネタと思われる本、Madison Lee Goff『法医昆虫学者の事件簿』(文庫版)を読んで出典を確認しました。
卵はすべてほぼ同じ時に産みつけられるので、ほぼ同じ時に孵化し、ウジは大きな塊をなして集結して摂餌するようになる。(中略)摂取する前に組織を破壊する点では、ウジの集塊は単独のウジよりもはるかに効率的である。こうしたウジの集塊はまとまりを失わず、死体のあいだを一つの部隊として動きまわる。 (文庫版 p65より引用)

三齢の前期には、ウジは活発に死体を食べ、ウジの摂餌活動に特徴的な緊密な集塊を形成しその状態を維持する。 (p74より)

ウジは自分で体温調節ができないから、周囲の温度が摂氏50度を超えると熱死の危険性があり、したがって、集塊の中心部であまり長く過ごさない。かわりに、ウジは集塊の中をぐるぐると巡回し、摂餌するときには内側に移動し、温度が危険なほど高くなると周辺部へ移動して体を冷やしながら食べたものを消化する。しばらく体を冷やしたあと、再び集塊に入っていってこのサイクルを繰り返す。この過程で、彼らはウジの集塊の中心部の温度よりも低い温度のところでかなりの時間を過ごすのである。 (p85-86より引用) 

サラシナショウマを訪花するトラマルハナバチ♀



2013年9月下旬

鎮守の森(スギ林)の林床に生えたサラシナショウマの群落でトラマルハナバチ♀(Bombus diversus diversus)が忙しなく訪花していました。
後脚の花粉籠に白い花粉団子を付けています。

実はこの個体は直前に、トリカブトにも訪花していました。(映像はこちら。)


2014/01/08

ニホンザルの死骸とエンマコガネの一種?



2013年9月下旬

ニホンザルの死骸を土に還す者たち:#05

ニホンザルの死骸Lに、エンマムシの仲間と思われる丸っこい小さな甲虫(エンマコガネの仲間)も来ていました。
映像前半では、ウジ虫が湧いていた死に顔の睫毛に引っかかってしばらく暴れていたエンマコガネが落下。
後半では毛皮の上を歩き回っています。

未採集、未採寸。
甲虫類にとにかく疎いので、もしどなたか写真鑑定で名前が分かるようでしたら教えて下さい。

エンマムシの仲間は、成虫・幼虫ともに死骸に群がるハエの幼虫を捕食するらしいのですが、その現場は見ていません。

【追記】

YouTubeのコメント欄で「エンマムシではなく、コガネムシ科エンマコガネの一種(Onthophagus sp.)だろう」とご教示頂きましたので訂正。

つづく→#06(死に顔の微速度撮影)





オカトラノオの花でシタキモモブトスカシバ(蛾)が吸蜜ホバリング【ハイスピード動画】



2013年7月中旬

山間部の道端に咲いたオカトラノオの群落でホバリング(停空飛翔)しながら訪花しているスカシバガ科の蛾がいました。
得意のホバリングで花の周りを回りながら長い口吻で吸蜜する様子を240-fpsのハイスピード動画で撮ってみました。
スローモーションで見ると、夏の強い日差しで影の羽ばたきも綺麗に写っていますね。

動画を優先したら同定用の写真を撮る暇もなく逃げられたのですが、オオモモブトスカシバMelittia sangaica nipponica )またはシタキモモブトスカシバMelittia inouei )でした。


関連記事→「シタキモモブトスカシバの吸蜜」(3年前の丁度同じ時期に撮影)

『擬態:だましあいの進化論〈1〉昆虫の擬態』という本によると、

(オオモモブトスカシバやシタキモモブトスカシバでは)後脚の脛節外側に黄色や橙黄色の長毛が密生して膨らんでおり、身体の一部分や色彩模様が擬態しているだけでなく、まるでミツバチ類やマルハナバチ類が後脚脛節の花粉バスケットに黄色の花粉を集めて膨らんでいる状態によく似ている。単に形態が類似しているというだけでなくミツバチ類やマルハナバチ類が花粉を集めた状態に似せているという、非常に特異な擬態である。(p67-68)
(オオモモブトスカシバやシタキモモブトスカシバは訪花の際に)前脚を花にかけて空中で翅をはげしく動かしてホバリングしながら、セイヨウミツバチやマルハナバチ類のように後脚を「く」の字に曲げて交互に動かして吸蜜しながら花から花へと移動していく。飛翔しながら後脚を「く」の字に曲げて交互に動かす行動は、ミツバチ類とまったく同じである。(p68-69)
今回の映像を見直すと、確かに後脚をそのように動かしていますね!(行動擬態)

2014/01/07

死んだニホンザルの顔に集まるハエと幼虫



2013年9月下旬

ニホンザルの死骸を土に還す者たち:#04

ニホンザルMacaca fuscata)の死骸Lです。
腐敗が進んだ死に顔にもハエがたかり、眼窩にウジ虫が出入りしています。
眼球や脳にも侵入して食い荒らしているようです。

つづく→#05(エンマムシの仲間)



ヤクシソウを訪花するセイヨウミツバチ♀



2013年9月下旬

道端でアカマツの木の下に咲いたヤクシソウの群落でセイヨウミツバチApis mellifera)のワーカー♀が飛び回り花蜜を吸っていました。
後脚の花粉籠は空荷のようです。



ヤクシソウ花
ヤクシソウ花・葉
ヤクシソウ花macro
ヤクシソウ花macro

2014/01/06

ニホンザルの死骸とベッコウヒラタシデムシ



2013年9月下旬

ニホンザルの死骸を土に還す者たち:#03

ニホンザルMacaca fuscata)の死臭を嗅ぎつけ、大型の見知らぬシデムシが来ていました。
これはベッコウヒラタシデムシNecrophila brunnicollis)ですかね?
もし間違っていたら、どなたかご指摘願います。
朱色の胸部の中央に黒紋が無いのは個体差?
勉強不足でシデムシ類にまるで疎いのですが、カバイロヒラタシデムシやビロウドヒラタシデムシの可能性は?

このシデムシは、どうも死骸が地面に接する部分を好んで徘徊している印象です。
触角を掃除して身繕い。
毛皮の奥にグイグイと潜り込んでいるのは、屍肉を食べているのか、それとも♀だとしたら死骸に卵を産み付けているのでしょうか。
映像後半で何か他の虫を捕食したようです。(ウジ虫?)
檻の外からだと撮影アングルが制限されてもどかしいのですが、獲物の正体が明らかになったのは、2日後の定点観察のことでした。(記事はこちら

図鑑『山渓フィールドブックス13:甲虫』p95によれば、

ベッコウヒラタシデムシは腐った動物質を食べ、成熟した幼虫は土中で蛹化する。

つづく→#04(死骸の顔に注目)



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飛べ!イチモンジセセリ【ハイスピード動画】



2013年7月下旬

堤防の草むらやアカツメグサの花からイチモンジセセリParnara guttata)が飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画で撮ってみました。
動きがあまりに速いので、全編を更に1/4倍速のスローモーションに編集し、時間を引き伸ばしています。
飛翔中は何度か羽ばたいてから翅を閉じて滑空していて、飛び方が独特です。

複数個体を撮影。


2014/01/05

ニホンザルの死骸に群がるハエと幼虫



2013年9月下旬

ニホンザルの死骸を土に還す者たち:#02

檻に捕らえられて死んだ2頭の若い野生ニホンザルMacaca fuscata)にハエの幼虫(蛆虫)が大量に群がり屍肉を貪っています。
次々に飛来するハエ成虫の同定は私の手に負えないのですが、ニクバエやクロバエ、キンバエの仲間など死肉食性の種類が来ているようです。
死骸から滲み出る体液を舐めたり産卵したりしています。


『日本動物大百科9昆虫II』p149によると、
腐肉に集まる代表はクロバエ科やニクバエ科のハエで、クロバエの♀は卵塊を、ニクバエは1齢幼虫を産みつける。



つづく→#03(ベッコウヒラタシデムシ)



石垣に産卵するミドリヒョウモン♀暗色型



2013年9月下旬

林縁で山裾を法面補強するコンクリートブロックの辺りを飛び回る暗色型のミドリヒョウモン♀(Argynnis paphia)が居ます。
石垣に止まると驚いたことに腹端を曲げて擦り付けるように産卵していました。
忙しなく飛んで石垣を横に移動しながら産卵を続けます。

その後は草むらに下りて産卵していました。(映像なし)
どうやら産卵基質は何でも良いみたいで、手当り次第あちこちに産んでいます。
しかし、よくよく見ると無機質なコンクリートブロックそのものではなく、その隙間に生えたコケ(地衣類?)を選んでその上に産卵しているようです。

本種の幼虫はスミレ類を食べて育つそうですが、食草に産み付ける親心も無い放任主義とは意外でした。
きわめて多産のr戦略なのでしょうか?
雪国で越冬するための知恵なのかもしれません。(本種は卵または若齢幼虫で越冬するとのこと。)

動き回る蝶を追っていると産卵場所を見失いがちで、卵そのものは確認していません。


【追記】
私が知らなかっただけで、実はこのような産卵行動は別に珍しくないのかもしれません。
『日本動物大百科9昆虫II』p48によると、
1卵ずつ産む産卵様式は大型ヒョウモンチョウ類でも見られるが、このグループでは卵は食草に産みつけられるのではなく、食草の自生する生息場所内の立木、枯れ枝、小石、コケ類、その他に産みつけられる。


【追記2】
『チョウのはなしII』p13より
ミドリヒョウモンは秋になって食草のスミレがありそうな樹林の中にやってくると、あたりの立木の樹皮などに卵を産むのです。春になって孵化した幼虫は、木を伝ってスミレにたどりつくのですが、わずか2mmくらいの仔虫にとって、ときには10m以上もの道のりは苦難の旅立ちといえましょう。



サラシナショウマを訪花するクロマルハナバチ♀



2013年9月下旬

鎮守の森(スギ林)の林床に生えたサラシナショウマの群落でクロマルハナバチ♀(Bombus ignitus)が飛び回り花蜜を吸っていました。
後脚の花粉籠に花粉団子の有無はよく見えませんでした。

背の高い茎の上部に咲いた白い花には強い芳香がありました。


サラシナショウマ花
サラシナショウマ葉
サラシナショウマ・全景

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