2015年8月中旬
キアシナガバチ巣の定点観察@軒下#3
真夏の昼下がり、キアシナガバチ(Polistes rothneyi)の巣では在巣の蜂が静かに身繕いしたり育房を点検したりしていました。
すぐ近くの庭木で狩りに成功したワーカー♀を見つけました。
ハンディカムを近づけると怖がって逃げました。
木の葉に止まり直すと、芋虫を解体し肉団子を作っています。(@0:53〜)
葉縁がカールした木の葉に止まっているせいで、肝心の蜂の口元がよく見えません。
私が下手に動くと蜂が逃げそうな予感がするので、じっと我慢。
ようやく慎重に横へずれてアングルを確保した時には、既に獲物の原型は留めていませんでした。
したがって、獲物の正体は不明です。
蜂は肉団子を咥えて飛び去ると、軒下の巣に帰りました。(@5:27〜)
コロニーは数分前より騒然としています。
おそらく雄蜂や新女王に肉団子を分配して給餌しているのでしょう。
つづく→#4:キアシナガバチの巣:昼と夜の動静【暗視映像】
2015年10月下旬
峠道の道端に咲いたハッカの仲間にヒメアカタテハ(Vanessa cardui)が訪花していました。
花がほとんど散り終えていて、種名が分かりませんでした。
吸蜜シーンを撮ろうとカメラを向けると、残念ながらすぐに飛び立ってしまいました。
すぐ横の法面の土手に止まると、翅を全開で日光浴を始めました。
ときどき土手を少し飛んで移動します。
2015年8月上旬
キアシナガバチ巣の定点観察@軒下#2
11日ぶりに様子を見に行くと、キアシナガバチ(Polistes rothneyi)のワーカー♀だけでなく、顔が白く触角の長い雄蜂♂(触角の先がカールしている)も巣上に居ました。
なかなか大きく育った巣ですが、寄生蛾の幼虫による食害は発生していないようで、至って健康なコロニーに見えます。
ワーカー♀が狩りから戻る度に在巣の蜂が殺到して、餌(おそらく肉団子)の分配を求めます。
巣盤の下の方でも成虫間(片方は♂)で口づけを交わし、栄養交換しています。
ワーカー♀が巣から次々に飛び立ち外役に出かけます。
その一方、「頭隠して尻隠さず」状態で育房に潜り込みじっとしている個体は一体何をしているのでしょうね?
つづく→#3:キアシナガバチ♀の肉団子作りと給餌
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顔の白い♂が2匹@時計盤の3時と8時 |
2015年10月下旬
山麓の神社でアオクチブトカメムシ(Dinorhynchus dybowskyi)を見つけました。
側角がなで肩なので、ツノアオカメムシではなくアオクチブトカメムシです。
リンゴを丸ごと食べ終えた後の芯を試しに与えてみました。
初めは嫌がったものの、やがて口吻を伸ばして吸汁を開始。
しかし太い口吻を深く突き刺しているようには見えず、先端で果肉の表面に触れ探っているだけかもしれません。
(側面からも口針が見えないのはどうしてかな?)
リンゴの皮が残っている部分からは吸汁出来ないようです。
家に帰ってから食性を調べてみると、本種は鱗翅目の幼虫を捕食するらしい。(『札幌の昆虫』p80より)
肉食性のアオクチブトカメムシが果実を吸汁するのがもし異例の出来事であれば、本当に摂取していることを実証するには胃内容物にリンゴ由来の果糖が検出されるかどうか調べるしかないでしょう。
(今回リンゴにカメムシが自発的に誘引されたのではなく、リンゴの上に乗せてから撮影しました。)
カメムシに指で軽く触れたら、ゆっくり逃避行動(移動)を始めました。
悪臭は放ちませんでした。
2015年7月下旬
キアシナガバチ巣の定点観察@軒下#1
東向きの軒下にキアシナガバチ(Polistes rothneyi)のコロニーを新たに見つけました。
結構大きく発達した巣ですが、残念ながら梯子がないと近づけない高さです。
在巣のワーカー♀はのんびり身繕いしたり、育房を点検したりしています。
巣盤中央の育房に上半身を深く突っ込んでいる蜂が居ますね。(栄養交換ではないようです)
帰巣した蜂に姉妹が殺到したので、もしかすると肉団子を分配したのかもしれません。
ズーム性能が弱いハンディカムでは、よく分かりません。
蜂の巣の近くに張られたクモの網が蜂の出入りを妨げているかどうか、興味があります。
つづく→#2:巣上で餌を分配するキアシナガバチ♀♂
2015年10月下旬
山間部の道端でカワミドリの群落に2頭のキタキチョウ(Eurema mandarina)が訪花していました。
花が散りかけで分かりにくいのですけど、時期を遡ってここに咲いている花を思い出すと、おそらくカワミドリだと思います。
この蝶は常に翅を閉じて止まり、滅多に翅表を見せてくれません。
翅裏が日光で白飛びしてしまうのが悩みです。
ハナバチの仲間も飛来してニアミスしました。
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翅表の紋様をチラ見せ(奇跡の写真)。 |
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葉で休むとき(日光浴?)も翅を閉じたままです。 |
2015年10月上旬
花を食べる造網性クモの謎#10:
ジョロウグモ♀(Nephila clavata)の網にアメリカセンダングサの花を給餌してみました。
頭花を網に投げつけたら、甑から急行したクモが毒液を注入するために噛みつきました。
歩脚の先で慎重に花を触れて調べています。
窓の外に店開きしているクモにとって、未知との遭遇のはずです。
しばらく噛み付いて味見した結果、どうやら花の味が気に入ってくれたようです。
捕帯を繰り出して梱包ラッピングを始めました。(@3:03〜)
甑に持ち帰る途中で花を再びラッピングし直します。(@6:10)
甑に戻ると、下向きに占座しました。
歩脚の先を舐めて身繕い。
ようやく落ち着いたジョロウグモ♀は花を手元に引き寄せ、クルクルと回しながら調べています。(@8:20〜)
やがて緑色の総苞(萼)に噛み付きました。
花粉や花蜜を本当に摂取しているのかどうか、見ているだけではどうしても分かりません。
ラッピングした糸を体外消化してタンパク質を回収しているだけかもしれません。
食べ滓の花を回収して状態を調べれば、何か手がかりが掴めるかもしれません。
私が少し目を離した隙に(数分後)、いつの間にかジョロウグモ♀は花を網から捨てていました。
やや風が強い日でピント合わせに苦労しました。
逆光のため途中ビデオカメラの補助照明として白色LEDを点灯しましたが、クモは気にしないようです。
実は今回給餌したアメリカセンダングサの花は2日前に採集した萎れかけのものでした。
花の鮮度が落ちた花でもクモは食べることがあるというのは意外で、また新たな謎が生まれました。
不思議なことに、同一個体のジョロウグモ♀に後日同じ実験(アメリカセンダングサの花を給餌)を繰り返しても再現性がありませんでした。
花の種類を変えてノコンギクを給餌しても食べてくれず、異物として捨てました。
野外でジョロウグモの網を見つける度にアメリカセンダングサの花を投げつけてみたのですけど、他に食べてくれる個体は見つかりませんでした。
アメリカセンダングサ花を捕食するのがイシサワオニグモだけの食性ではないことが判明したのは収穫です。
▼関連記事
アメリカセンダングサの花を食べるイシサワオニグモ♀(蜘蛛)の謎
花を食べてくれる個体は、梱包ラッピングに先立って長時間噛み付いていることが特徴かもしれません。
つづく→#11:
【追記】
吉田真『クモはどのようにして餌を捕らえるか?』によると、
ジョロウグモ属のクモでは、捕帯による固定はみられず、固定はもっぱら噛みつきによってなされます。 (ポピュラー・サイエンス『動物たちの気になる行動(1)食う・住む・生きる篇』p46より引用)
2015年10月下旬
ユカタヤマシログモの飼育記録#4
ユカタヤマシログモ(Scytodes thoracica)が獲物のオオヒメグモ(Parasteatoda tepidariorum)幼体を捕食する様子を微速度撮影してみました。
10倍速の早回し映像をご覧ください。
糸を吐いて獲物を仕留めたユカタヤマシログモは身繕いが済むと、獲物の歩脚に噛み付いて体外消化を始めました。
徘徊性のユカタヤマシログモが仕留めた獲物を安全な隠れ家に運んだりせずにその場で捕食してくれるのは、観察する側には助かります。
噛み付く部位は前回と同じなのが興味深く思いました。(すねかじり)
クモの食事は獲物を噛み砕いて飲み込み胃で体内消化するのではなく、強力な消化液を獲物の体内に注入して溶かしてからその肉汁を吸い込んで摂取します。
これを体外消化と呼びます。
今回餌食となったオオヒメグモの歩脚が細く半透明であるおかげで、ストローのように消化液が流動している往復運動が捉えられていました。
ユカタヤマシログモはときどき噛み付く場所を変え、獲物の全歩脚から順番に吸汁しています。
体内消化を行う我々ヒトがカニの脚を食べるときは固い外骨格を苦労して割り、中の身(筋肉)を丹念にほじくり出す必要があります。
一方、クモが食べた後は獲物の外骨格(クチクラ)はほぼ無傷のままで、中身は空っぽになるのでしょう。
体外消化なら、かに道楽でカニの脚をきれいに食べるのも楽そうです。
オオヒメグモの腹部がときどきゆっくりしたリズムで動いていることから、毒液で麻痺した後も未だ完全には死んでおらず、虫の息の状態なのかと初めは思いました。
しかしよく観察すると、噛まれている歩脚内の流動がオオヒメグモ腹部の膨張・収縮に同期しています。
したがって、体外消化液の注入・吸入に応じて獲物の腹部が風船のように受動的に伸縮しているだけなのでしょう。
結構な量の消化液を注入していることが伺えます。
獲物の頭胸部が伸縮しないのは、腹部よりも固いクチクラが発達しているためでしょう。
比較対照としてオオヒメグモ単独で安静時の歩脚を同様に接写して、血液の循環が透けて見えないことを確認する必要があります。
しかしよく考えてみると、ユカタヤマシログモに噛まれていない歩脚では体液の流動や循環が見られないので、改めて比較するまでもなく体外消化による流動で決まりですね。
後半ユカタヤマシログモが噛む場所を変えると(第1脚か?)、今度は獲物の腹部ではなく触肢が左右同時にゆっくり動きました。
もしかするとクモの触肢は普段から筋肉というよりも体液の水圧で駆動しているのかもしれません。
途中で噛む場所を何度も変更しました。
食餌の後半になるほど、その頻度が上がります。
捕食開始から約1時間45分後、満足したユカタヤマシログモは遂に獲物を手放し、離れて行きました。
食餌の時間は意外に短かったです。
餌食となり吸汁され尽くしたオオヒメグモ幼体は体全体が萎んでいました。
ユカタヤマシログモが獲物に噛みつく位置が歩脚に限定されていて(しかも膝関節付近が多い?)、獲物の頭胸部や腹部には最後まで一度も噛み付いていない点が興味深く思いました。
柔らかい腹部に噛み付いてしまうと、その後はパンクした風船のように注入した消化液が漏れてしまうのかもしれません。
それなら、あちこち噛み付いた歩脚から液漏れしないのは何故でしょう?!
必要に応じて一時的な凝固剤や糊を自由自在に注入するのかな?
通常の1倍速(リアルタイム)の映像ではこのような体外消化液の流動には気づきませんでした。
▼前回の記事
獲物を捕食・吸汁するユカタヤマシログモ(蜘蛛)
微速度撮影ならではの成果です。
これは全く予想外の発見でした。
当初の撮影プランとしてはユカタヤマシログモが噛む場所を変えて吸汁したり獲物を丸めて絞り尽くしたりする様子を長時間記録するつもりでした。
※ 動画編集時に自動色調補正を施してあります。(強拡大パートはコントラストを上げるためにHDR-ishのエフェクトをかけています。)
そのために、ユカタヤマシログモの体色が実際よりもかなりどぎつく強調されているのでご了承下さい。
つづく→#5:糸を吐いて獲物を仕留めるユカタヤマシログモ(蜘蛛)【HD動画&ハイスピード動画】
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食べ滓 |
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食後のユカタヤマシログモ |
2015年10月下旬
山間部の道端に咲いたヒメジョオンの群落でシロオビノメイガ(Spoladea recurvalis)が訪花していました。
口吻を伸ばし吸蜜しながら頻りに触角を動かしています。
花から花へ、あるいは草むらから飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画に撮ってみました。(@1:01〜1:51)
▼関連記事
ヒメジョオンの花蜜を吸うシロオビノメイガ(蛾)