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2025/02/14

網にかかったトンボを捕食中のジョロウグモ♀と交接しようと何度も試みる臆病な♂(蜘蛛)

 

2023年9月下旬・午後12:10頃・晴れ 

里山の急斜面をつづら折れで登る山道の曲がり角(ヘアピンカーブ)で、ジョロウグモ♀♂(Nephila clavata)が同居する馬蹄形円網を見つけました。 
小型の♂は2匹います。 
♀は網に掛かったトンボ(種名不詳)を捕食中でした(獲物を噛んで体外消化)。 

♀の食事中に1匹の♂が網の上から(逆さまにぶら下がった♀の下から)忍び寄って♀の体に触れるものの、交接できずに慌てて逃げてしまいます。 
特に1回目の求愛が最も惜しくて、♂αが膨らんだ触肢を♀の外雌器になかなか挿入できずにもたついている間に、もう1匹の♂βが接近しました。 
♂αはライバル♂βを追い払うのかと思いきや、なぜか諦めて♀の元から立ち去りました。 
♂βに交接権を譲った訳ではなく、♂βも元の位置に戻りました。 
「色気より食い気」の♀は網上でほとんど静止しており、素人目には♀が嫌がって交尾(交接)拒否したようには見えません。 

同一個体の♂αが何度も♀に挑みますが、非常に慎重というか臆病で、なかなか交接してくれません。 
♂は必ず、網で下向きに占座した♀の後方から近づき、♂が逃げるときも必ず上に退散します。 
♂αは♀に共食いされるのをひどく恐れているようです。 
関連記事(15年前の撮影)▶ ジョロウグモの交接と性的共食い 
にもかかわらず、♂が♀に近づく前に網の糸を弾くなど、♀の攻撃性を宥める儀式的な求愛行動は何も見られませんでした。 

クモの種類によっては、♀と交尾(交接)できた♂は自分の触肢を自切して外雌器に残し、♀が次のライバル♂と交接(浮気)できないように物理的にブロックしてしまう者がいます。 
しかし、私が慎重に回り込んでこのジョロウグモ♀の外雌器にズームインしてみても、そのような貞操帯を付けてはいませんでした。 

同じ円網で2匹の成体♂が同居しているのに、交接相手の♀を巡る闘争にならないのが不思議でした。 
この2匹の♂の間では既に順位付けができていて、劣位の♂はライバル♂αが♀に共食いされるまで交接の順番を待っているのでしょう。 
♂αが♀と交尾できそうになったら邪魔して♀を挑発して共食いするようにしむける作戦なのかな?
もしも♂同士が激しく争う動物種なら、♂の方が♀よりも体格が大きくなるという、ジョロウグモとは逆の性的二型になるはずです。
非力なジョロウグモ♂は直接戦わなくても、ライバル♂を♀に早く殺してもらうように交尾を邪魔したり♀を苛立たせたりする作戦を進化させても不思議ではありません。
劣位の♂をよく見ると、触肢が未だあまり発達していないので、少し若いのかもしれません。 
平凡社『日本動物大百科8昆虫Ⅰ』によると、
ジョロウグモの♀の網には複数の♂がいることが多い。網をはさんで♀と向き合う位置にいる♂がふつういちばん大きく、交尾の優先権をもっている。網の周辺部にいる♂はまったく交尾できないわけではないが、確率は低い。(p18より引用)


関連記事(8年前の撮影)▶  


トンボの他には、1匹のオオハナアブPhytomia zonata)がジョロウグモ♀の円網に掛かって、弱々しく暴れていました(虫の息状態?)。 
多数の真っ黒い食べ滓が網上に残されたままになっています。 
ジョロウグモ♀の網にイソウロウグモの仲間を今回も見つけられませんでした。 

三脚を持参していれば、ジョロウグモ♀♂が交接に成功するまでじっくり長撮り・監視できたのですが、残念です。 
この日の山行でジョロウグモ♀の網を次々に見て回ると、♂が♀の網に同居している例はいくつも見つけたのですが、交接中の♀♂ペアは見つけられませんでした。 


小田英智、難波由城雄『網をはるクモ観察事典 (自然の観察事典 21)』によれば、
ジョロウグモの♂の80%近くが、♀の脱皮の時に、結婚のための交接を行います。のこりの20%は、♀がえさをたべて油断しているときをねらって交接します。こうしたときをえらぶのは、不用意に♀に近づくと、♂だって捕らえられ、たべられてしまうからです。そのために♂はしばらく巣にとどまり交接後ガードを行う。(p22より引用)
ジョロウグモの♂は一生に一回しか交接しません。でも♀は、ほかの♂と、2回目の交接を行うことがあります。(p23より引用)


ところで、この動画を撮影中に周囲の茂みでひっそり鳴いていた虫(直翅目)が気になります。 
コオロギの仲間だと思うのですが、名前が分かりません。 
どなたか教えてもらえると助かります。 


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2025/02/11

雪が溶けた林床で落ち葉をめくって餌を探すカケス【冬の野鳥:トレイルカメラ】

 



2024年3月中旬・午後12:20頃・くもり・気温6℃ 

ニホンアナグマMeles anakuma)が冬眠する営巣地(セット)を見張る自動撮影カメラにカケスGarrulus glandarius)が写りました。 
昼下がりに、二次林の林床でカケスが残雪の上をホッピングしながら右へ移動します。 
画面の右端で立ち止まると、嘴で落ち葉を掻き分けて餌を探し始めました。 
越冬中の虫を探しているのでしょう。 
もしかすると秋に貯食したドングリを掘り出しているのかもしれない、と期待したのですが死角でよく見えず、右に姿を消しました。 

落ち葉めくり行動が見えやすいように、まずは1.5倍に拡大した映像をご覧ください。 
その後にオリジナル(等倍)の全景動画でリプレイ。(@0:47〜) 


つづく→ 


【アフィリエイト】 

2025/01/31

クモの網から救出したヒメクロホウジャク(蛾)が飛び去るまで【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2023年10月中旬・午後13:00頃・晴れ 

郊外で家庭菜園の花壇の手前に建てられた鉄パイプの柵(実際はアルミ管)にクモの円網が張り巡らされ、そこに1頭の蛾(スズメガ科)が捕らえられていました。 
花壇に訪花しようと飛来した蛾が道端の網にかかったようです。
ズグロオニグモYaginumia sia)などコガネグモ科が人工物の足場枠に張った垂直円網だろうと予想したのですが、なぜか網の主は見当たりませんでした。 
もしかすると夜行性のクモで、昼間は隠れているのかもしれません。
飛翔力の強いスズメガ類がクモの網に掛かって逃れられないでいるのは珍しいと思い、写真に撮りました。 
全く動かず粘着性の糸にぶら下がっているだけなので、てっきりこの蛾は死んでいるのかと思いました。 

蛾の腹面しか見えなかったので、同定用に背面の写真をしっかり撮るために、クモの網から手掴みで外してやりました。
途端に蛾は激しく羽ばたいて暴れ始めました。 
暴れ疲れて擬死(死んだふり)していただけと判明。 
そうと分かれば、クモの糸にぶら下がっていた状態も動画で記録すべきでしたね。 
すでに疲労困憊しているのか、すぐに私の掌の上で大人しく静止してくれました。 
翅の鱗粉はほとんど剥げ落ちてしまっていますが(まさか憧れのオオスカシバ?!)、胸背がウグイス色だったので、ヒメクロホウジャクMacroglossum bombylans)だろうと判明しました。 
図鑑で近縁種の前翅長を比べると、ヒメクロホウジャクが15〜18mm、クロスキバホウジャクが25mmなので、今回の小さな蛾はヒメクロホウジャクでしょう。 

救出した蛾は翅を小刻みに震わせて、飛び立つ前の準備運動をしています。 
手乗りヒメクロホウジャクが飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:31〜) 
しばらくすると、胸部飛翔筋による準備運動で体温が充分に上がったらしく、ようやく自発的に飛び去りました。 
私の体温で、手乗り蛾を少し温めてやれたかもしれません。
腹端付近に細い白帯が見えました。 


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2025/01/30

木に登って幹をつつくアカゲラ♀(冬の野鳥)

 

2024年2月下旬・午後15:20頃・くもり 

郊外の雑木林で見つけたアカゲラ♀(Dendrocopos major)です。 
後頭部が赤くないのが♀の特徴です。 

落葉した木(樹種不明)の幹を登りながら、あちこちつついて中に潜む虫を探しています。 
左に少し飛ぶと、隣の木でもつつきました。 
この個体は全く鳴きませんでした。


【追記】
キツツキの足には4本の指があり、通常は2本が前を向き、2本が後ろを向いています。
このような足指の配置を、「外対趾足がいたいしそく」と呼びます。
第4指(通常は後ろ向き)が水平に動かせるのが特徴です。
これにより、木の幹を登る際には「外対趾足」の形態をとり、枝に止まる際には「対趾足」の形態に変化させることが可能です。
この足の構造は、キツツキが木に登ったり、垂直な幹に止まったりするのに適しています。
キツツキは両脚と硬い尾羽の三点で体を支えます。
特に尾羽は中央の4枚が太くて硬く、両端の2枚は柔らかいという特徴があります。
(Perplexity AIの回答より)

2025/01/29

晩冬の雪原で野ネズミを巣穴から外に追い出そうと頑張るホンドギツネ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年2月下旬

シーン0:2/20・午後13:10・くもり・気温23℃(@0:00〜) 
明るい昼間にたまたま撮れた現場の状況です。 
休耕地でホンドタヌキ♀♂(Nyctereutes viverrinus)が越冬する巣穴をトレイルカメラで監視しています。 
異常な暖冬で積雪量が少なく、あちこちで地面が露出しています。 
少なくとも3つの巣口(左から順にL、M、R)が点在しています。 
ホンドギツネVulpes vulpes japonica)の登場シーンをまとめました。 


シーン1:2/24・午後23:40・気温-4℃(@0:04〜) 
晴れて静かな深夜に監視カメラが誤作動したようです。 
新雪が積もり、雪原を往来するタヌキなど野生動物の足跡が残されています。 


シーン2:2/27・午前5:53・気温4℃(@0:11〜)日の出時刻は午前6:12。 
タヌキが巣穴Rに入ってからわずか1分後の夜明け前に、右から来たキツネが雪原に佇んでいます。 
尻尾がふさふさした健常個体(フサ尾)でした。 
やがて左へ足早に立ち去りました。 
雪原は凍っているようで、キツネの足跡が残りません。 

てっきりタヌキの営巣地には興味がないのかと思いきや、しばらくすると、画面の左上隅からキツネが再登場。 
警戒しながら雪原をジグザグに歩いて、タヌキの巣穴Mへ近づきます。 
巣口Mの手前で立ち止まったまま、動かなくなりました。 
この後どうなったのか気になりますが、1分間の録画が打ち切られました。 


シーン3:2/27・午前6:06・気温0℃(@0:56〜) 
「フサ尾」のキツネが右から再び手前の巣口Mに近づきました。 
匂いを嗅いだだけで、巣穴Mには侵入しませんでした。 
奥の巣口Mも点検した後、巣口Rに向かいました。 

巣口Rの窪地に入ると、前脚を揃えて着地しました。
おそらく野ネズミを狩る行動のようです。 
キツネの尻尾しか見えないのですが、凍った雪面?を揃えた前足で何度も割ろうとしているのでしょう。 
あるいは、地面にわざと振動を与えて野ネズミを巣穴Rから外に追い出そうとする作戦なのかな? 

巣内で寝ているタヌキの家族を立ち退かせようと、キツネが執拗に嫌がらせしている、という可能性はどうでしょう? 
まるで地上げ屋の嫌がらせみたいです。
巣穴Rの主であるタヌキが玄関(巣口)の内と外でキツネと対峙して威嚇し合っているのかもしれません。 
しかし、耳を澄ませても鳴き声が何も聞こえませんでした。 


シーン4:2/27・午前6:09・気温1℃(@1:56〜) 
「フサ尾」のキツネがまたもや手前にあるタヌキの巣口Mに右から近づきます。 
頭を突っ込んで強引に押し入ろうとしています。 
右上奥の巣口Rに戻り、そちらでも鼻面を巣内に突っ込みました。

巣口Mと巣口Rは内部のトンネルでつながっているのでしょう。 
キツネは両方の出口から交互に威嚇して、なんとか獲物を外に追い出そうとしているようです。
「モグラ叩きゲーム」のように、逆の巣口から獲物が顔を出すかと期待したのですが、キツネにいくらしつこく挑発されても一度も外に出てきませんでした。 
専守防衛の籠城作戦です。 

ようやく諦めたキツネは、身震いしてから雪原を右上へ立ち去りました。 


シーン5:2/27・午後17:45・気温3℃(@2:50〜)日の入り時刻は午後17:32。 
同じ日の日没直後の様子です。 
昼間はよく晴れて、急速に雪解けしました。 
林縁に近い手前の地面が完全に露出しています。 


シーン6:2/28・午後23:51・気温0℃(@2:59〜) 
翌日の深夜、尻尾がフサフサした健常個体が枯野の手前を左から右へ横切りました。 
タヌキの営巣地を通りすがりにちらっと見たものの、今回は立ち寄りませんでした。 


シーン7:2/29・午後19:23・気温3℃(@3:15〜) 
翌日の晩も「フサ尾」のキツネが枯野の手前を左から右へ横切りました。 
今回もタヌキの巣穴を素通りしました。 

実はこのとき、巣穴のひとつに別個体のホンドギツネ(「細尾」の疥癬感染個体)が潜り込んでいました。(映像公開予定) 
2頭のキツネの間で何も交渉がなかった(同じ巣穴に入って合流したり巣口で挨拶したりしなかった)のが意外でした。 
細尾とフサ尾は♀♂つがいの関係かと予想していたのですが、違うのかな? 
ペアでなければ、この2頭のキツネ同士で縄張り争いにならない点が疑問になります。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


【考察】 
タヌキの営巣地に通うキツネが次々に新しい行動をするので、どう解釈すべきか頭の整理がなかなか追いつきません。

今回のホンドギツネは、匂い転がり行動をやらずに野ネズミを狩ろうとしていました。
狙っている獲物はたぶんハタネズミMicrotus montebelli)かな?

日本の食肉類: 生態系の頂点に立つ哺乳類』第3章キツネによると、雪国のキツネにとって雪解けした春が野ネズミ狩りに最適のシーズンなのだそうです。
キタキツネの主要な餌は野ネズミ類であるが、もっとも多く野ネズミを捕食しているのは、その個体数が最多となる秋ではなく、逆に野ネズミがもっとも少ない春である(中略)。夏から秋に繁茂する草本類と冬の積雪が、野ネズミにとってキツネの捕食を避けるシェルターとなるが、春の雪解け時期はこのどちらもなく、キツネにとってネズミがもっとも捕獲しやすい時期である (p75より引用) 春だけはネズミを主とする哺乳類をもっとも頻繁に食べていた。(中略)雪が解け、草がまだ生えそろっていない春にネズミ類を捕獲しやすくなるため (p75より引用)

しぜんのせかい1『きつね』という、キタキツネの生態を紹介した古い児童書(写真集)を読むと、
隠れている餌を見つけると何度もジャンプして地面をゆらし、驚いて飛びだしたところをつかまえる技術も持っています。 @p22 
・キツネのジャンプ力はとても強く、軽々と1mくらいは飛び上がります。 @p23 
・キツネは聴覚と嗅覚がとても発達しています。雪の下に埋まった餌もほりあてて食べることができます。 @p29 
・子別れしたキツネは独立し、初冬に結婚の相手を見つけ、翌年の春には子を産みます。 @p25 
・キツネは冬眠しないで冬も活動します。この時はすでに冬毛で、とても太った感じに見えます。 @p28


つづく→疥癬に罹ったホンドギツネがホンドタヌキの巣穴を晩冬に乗っ取って住み着いた!【トレイルカメラ:暗視映像】

2025/01/26

根返りスギで年末年始に餌を探す雪国の小鳥たち:シジュウカラ、コガラ、ヤマガラなど【冬の野鳥:トレイルカメラ】

 



2023年12月下旬〜2024年1月上旬 

シーン0:12/27・午後14:21・晴れ(@0:00〜) 
明るい時間帯にたまたまフルカラーで撮れた現場の様子です。 
平地のスギ防風林で風倒木が何本も長年放置されています。 
画面の右下手前から奥に向かって根こそぎ倒れた(根返り)スギの根際に掘られた巣穴bを自動撮影カメラで見張っています。 
そこにはニホンイタチMustela itatsi)が越冬していたのですが、最近ではなぜか姿を見かけなくなりました。 

今季は記録的な暖冬で、積雪が例年よりもはるかに少ないです。 
水平の細い別な倒木が朽ちて樹皮がどんどん剥がれ落ち、雪面に散乱しています。 

昼間に集まる小鳥たちの採食行動をまとめてみました。 
主にシジュウカラですが、少数のコガラやヤマガラなどを含むカラ混群のようです。 


シーン1:12/28(@0:03〜) 
シジュウカラ♀♂(Parus minor minor)の群れが根返りスギの土付き根っこをしきりに啄んでいます。 
そこで休眠越冬する昆虫を捕食しているのでしょう。 
チッチッ♪と鳴き交わす声もかすかに聞こえます。 


シーン2:12/29(@1:56〜) 
シジュウカラの群れ。 
ヒヨドリの鳴き声も聞こえましたが、姿は写っていません。 

 突然、監視カメラのレンズを覗き込んだ小鳥がいたのですが、あまりにも近過ぎて種類を見分けられませんでした。(@3:32〜) 


シーン3:12/30(@3:43〜) 
常連のシジュウカラの他に、コガラPoecile montanus)やヤマガラSittiparus varius)も来ているようです。 

根返りスギの土付き根っこを嘴でつつくシジュウカラたちの様子を、動画編集でゆっくりズームインしてみました。 
(最終的に1.5倍まで拡大)


シーン4:12/31(@8:09〜) 
珍しく、奥の残雪の上で餌を探すシジュウカラの個体がいます。 


シーン5:1/1(@9:34〜) 
翌日の元日には、雪解けが進んでいました。 


シーン6:1/2(@9:38〜) 
ヤマガラが来ています。 
珍しくフルカラーで録画されていました。 
トレイルカメラ旧機種の不安定な挙動に悩まされます。 


シーン7:1/5(@10:10〜) 
林床の積雪はほとんど溶け切っていました。 


シーン8:1/6・午前後(@10:11〜) 
これ以降は、監視カメラの電池が切れて、わずか1秒間しか録画してくれなくなりました。 
それでも健気に記録し続けるので、小鳥が来た記録にはなります。 


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。


つづく→

2025/01/25

ホンドタヌキが越冬する営巣地の端で雪面や地面を転げ回って匂い付けするホンドギツネの謎【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年2月下旬〜3月上旬

シーン0:2/20・午後13:10・くもり・気温23℃(@0:00〜) 
明るい日中にたまたま撮れた現場の状況です。 
休耕地でホンドタヌキ♀♂(Nyctereutes viverrinus)が越冬する巣穴を自動センサーカメラで見張っています。 異常な暖冬で積雪量が少なく、あちこちで地面が露出しています。 少なくとも3つの巣口(左から順にL、M、R)が点在しています。 


シーン1:2/24・午後23:40・気温-4℃(@0:04〜) 
深夜に監視カメラが誤作動したようです。 
晴れて静かな夜でした。 
新雪が積もり、雪原を往来するタヌキなど野生動物の足跡が残されています。 


シーン2:2/25・午前4:01・気温-7℃(@0:07〜) 

シーン3:2/27・午前5:57(@0:11〜)日の出時刻は午前6:12。 
夜明け前にホンドギツネVulpes vulpes japonica)がまた左から現れました。 
フサフサした尻尾を水平にピンと伸ばして歩きます。 
雪面は固く凍結しているようで、キツネが歩いても足跡が残りません。 
タヌキの巣穴がある左をちらっと見ました。 

画面の右端で、落葉したオニグルミ樹上から垂れ下がったクズの蔓の下をくぐろうとしたキツネが、後足を滑らせたように見えました(スリップ?)。 
死角で見えないのですが、足で雪を後方に掻いたようです。 
凍った雪面で転んだのかと思ったのですが、どうやら雪面に体を投げ出して転げ回っているようです。 
右の死角から雪を後方に掻いたようです。
しばらくすると、キツネが右から戻ってきました。 
再び監視カメラの死角で雪面に寝転がったようです。 
立ち上がって、タヌキの巣穴を見ています。


シーン4:2/27・午前5:58(@0:50〜) 
約20秒後に同一個体のキツネが右から来て、手前をぐるっと回り込んでタヌキの巣口Lの横を通り過ぎました。 
次は巣口Mを覗き込んで匂いを嗅いでいます。 
再び巣口Lに戻ると、鼻面を浅く突っ込みました。 
驚いたことに、巣口Lの手前でキツネは腹這いになり、雪面に体を投げ出しました。 
おそらく匂い付けの行動なのでしょう。 
それとも、わざと物音を立てて巣内に潜むタヌキの動向を伺っているのかな? 
続けて雪原を右へ回り込み、巣口Rに向かいかけたところで、1分間の録画が打ち切られました。 


シーン5:2/27・午前6:00(@1:50〜) 
約25秒後に監視カメラが再起動すると、キツネは画面の右端で再び雪原に腹這いになっていました。 
立ち上がると、タヌキの巣穴の方を見て反応を伺っています。 
巣口Mに忍び寄り、中を覗き込みました。 
右奥の巣口Rに立ち寄りかけたところで、録画が打ち切られました。 

この間、巣内の主であるタヌキは一度も外に出て来ませんでした。
専守防衛の籠城作戦なのか、それとも留守にしているのかな?


シーン6:2/27・午後17:45・気温3℃(@2:50〜)日の入り時刻は午後17:32。 
同じ日の日没直後の様子です。 
昼間はよく晴れて雪解けが急速に進みました。 
林縁に近い手前の地面が完全に露出しています。 


シーン7:2/29・午前2:45・気温-1℃(@2:54〜) 
2日後の深夜に右からキツネが登場しました。 
画面の右端で、枯草に覆われた地面に転がって匂い付けをしています。 
この個体は前回とは違い、疥癬に感染して尻尾の毛がひどく抜け落ちて細く見える個体(細尾)でした。
細尾のキツネは立ち上がると、タヌキの巣口Mを点検してから巣口Lの匂いも嗅ぎ、最後は巣口Rの窪みに飛び込みました。 
驚いた野ネズミ(ハタネズミMicrotus montebelli)?)が巣口Rから飛び出してきたのか、枯野を走って逃げ回る獲物をキツネが追い回しています。(@3:25〜) 
この時期は気温がまだ氷点下なので、休眠越冬中の昆虫が逃げ出したという可能性は除外できそうです。 
監視カメラの赤外線があまり届かないぐらい遠くて暗いです。 
動画を自動色調補正して拡大しても、逃げ回る獲物の正体が見えずに残念でした。 
狩りの成否は不明です。 
細尾キツネは、身震いしてから右に立ち去りました。 


シーン8:2/29・午前4:10・気温-1℃(@3:47〜) 
約1時間半後に、細尾のキツネがタヌキの営巣地に戻ってきました。 
画面の右端で地面を何度も転げ回っています。 
立ち上がると身震いしてから画面手前を通って左へ立ち去りました。 


シーン9:3/2・午前1:41・気温-3℃(@4:05〜) 
2日後の吹雪が降き荒れる深夜に、キツネがまた現れました。 
新雪が積もった雪面に新しい足跡が残っているのに、そのシーンが監視カメラに写っていません。 
どうやら奥から右下手前へ来たばかりのキツネの足跡のようです。 
やはり熱源が画面の前後方向に動くと、トレイルカメラのセンサーは反応しにくいようです。 

画面の右下隅の雪原でキツネが転げ回っていました。 
立ち上がったキツネは、尻尾がふさふさの健常個体でした。 
身震いしてから左へ立ち去りました。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


【考察】 
キツネが地面で何度も転げ回る行動は初めて見ました。 
キツネ関連の書籍でも読んだことがありません。 
しかし、飼い犬が散歩中に気に入った匂いが付いた地面で興奮したように転げ回る行動はよく見られます。 
イヌ科の動物で見られるこのような行動は、英語でscent-rollingまたはperfume-rollingと呼ばれているのだそうです。(確立された訳語なし)

おそらく、雪面や地面の気に入った匂いをキツネが自分の身にまとうための匂い付けの行動と思われます。 
逆にキツネが自分の匂いを残して縄張り宣言をしたいのであれば、小便を排泄していたはずです(排尿マーキング)。 
体外寄生虫対策の砂浴びだとしたら、どこでやっても良いはずなのに、わざわざ特定の地点で繰り返す理由が説明できません。
監視カメラをもう少しだけ右に向けて設置し直し、この地点を重点的に監視すべきですね。 

後に私が現場検証しても分からなかったのですが、もしかするとこの地点にタヌキが大小便を排泄していたのかもしれません。 (営巣地の端の溜め糞場)
雪面や地面に残るタヌキの小便跡の上でキツネが転げ回り、体臭を偽装しようとしていた可能性があります。 

キツネがタヌキの巣穴を乗っ取ろうと企んでいるとしたら、寄主の巣穴に侵入する前に体表を化学擬態する社会寄生性の女王蜂や女王アリを連想しました。 
暗闇の巣内では、匂いさえ同化していれば侵入しても反撃されにくいはずです。 
近くのスギ防風林の中にあるタヌキの溜め糞場wbcでもキツネが転げ回って匂い付けしているかどうか、確かめたいところですが、撮影機材が足りません。

キツネの目当てはタヌキの巣穴という不動産物件ではなく、そこに居候している野ネズミなのかもしれません。
獲物に気づかれないよう、巣口に近づく前に自分の体臭を消してタヌキの体臭を身にまとったのかもしれません。

ホンドギツネの健常個体と疥癬個体が代わる代わる同一地点で転げ回り、匂い付けしたことは、大問題です。 
疥癬の原因となる体外寄生虫のヒゼンダニが健常個体にも移った可能性があるからです。
つまり、匂い転がりをする地点がヒゼンダニの温床になってしまいます。
雪国の冬なら宿主から離れたヒゼンダニは低温で死滅してしまうかな? (低温耐性が問題になります。)
キツネにとって疥癬という皮膚病は予後が悪く死に至る病なので、事態は深刻です。 
さらには、この営巣地で暮らすタヌキの家族にも疥癬が拡大しかねません。 
困ったことになりました。 

登場した2頭のホンドギツネは行動圏が重なっていますから、もしかすると♀♂つがいなのかもしれません。
この地点で興味深い匂いを先に見つけた健常個体が転がり行動をして匂いを持ち帰り、パートナーの疥癬個体(細尾)に情報伝達した可能性も考えられます。
キツネの家族が寝床を共有したり交尾するなどの濃厚接触でもヒゼンダニは感染を広げてしまいます。




【追記】
キツネが反応したのは、タヌキの小便跡とは限りませんね。
野ネズミも自分の営巣地の周辺の決まった場所に糞尿でマーキングすることが知られているらしい。
肉眼で現場検証しても分からなかったのですが、ブラックライトで紫外線を照射すると野生動物の尿は発光するそうです。
ビタミンB2(リボフラビン)という蛍光物質が含まれているためで、紫外線照射で発光するのは野ネズミの尿に限りません。

野外にトレイルカメラを設置すると野ネズミがよく写るのですが、私はこれまでマーキング行動(排泄)を観察したことがありません。
私がただ見過ごしているだけかもしれません。
野ネズミの排泄やマーキング行動時には、以下のような特徴的な姿勢が見られる可能性があります:
  1. 後ろ足で立ち上がる姿勢
  2. 尾を少し持ち上げる
  3. 体を少し前傾させる
  4. 短時間静止する
これらの姿勢は、尿や糞を正確に配置するために必要な体勢です。
以上、Perplexity AIと相談しながら追記しました。
次回からは、ブラックライトを持参してフィールドサインを探してみようと思います。(明るい昼間でも蛍光が見えるのかな?)

2025/01/12

河川敷の芝生で虫を捕食しようと探し歩く三毛猫

 

2023年11月上旬・午後13:10頃・晴れ 

河川敷の芝生でイエネコ♀(Felis silvestris catus)がうろついていました。 
舶来品種なのか、三毛猫にしては茶色も黒も薄い気がします。 

芝生の匂いを嗅ぎながら、忍び足でゆっくり前進しています。 
斜めに上げた尻尾の先をくねらせていることから、三毛猫がワクワクしている感情が伺えます。 
突然、前足を揃えて前方の地面に飛びかかりました。 
その足元をしげしげと見つめていますが、どうやら狩りには失敗したようです。 
獲物に跳びついた狩りの瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@2:12〜) 
逃げた獲物の正体は不明ですが、おそらくバッタやコオロギの仲間だと予想しています。 
三毛猫は残念そうに舌舐めずりしながら辺りを見回し、左に引き返しました。 

この個体は、やや太り気味の体格でした。 
(冬毛に生え変わったからそう見えるだけかな?) 
近所の飼い猫だと思われますが、首輪は付けていませんでした。 
三毛猫の♂は遺伝学的に極めて珍しいので、この個体は♀の可能性が高いのですが、股間に睾丸(にゃんたまω)は見えませんでした。 
ただし、野良猫でなければ、♂でも去勢されているはずです。


三毛猫は芝生に座り込んでも、私とは目を合わせようとしません。 
再び歩き出すと、生け垣(植え込み)の横を通って左へ向かいます。 
また座って身を低くしましたが、狩りの行動には移りませんでした。
しつこく動画を撮り続ける私を嫌がったのか、ついに三毛猫は生け垣の中に潜り込んで隠れてしまいました。 


【アフィリエイト】 

2025/01/10

根返りしたスギの根元で餌を探す雪国のミソサザイ【冬の野鳥:トレイルカメラ】

 



2023年12月下旬 

シーン1:12/27・午後14:21・晴れ(@0:00〜) 
明るい日中にたまたまフルカラーで撮れた現場の状況です。
平地のスギ防風林で風倒木が何本も放置されています。 
画面の手前から奥に向かって根こそぎ倒れた(根返り)スギの根際に掘られたニホンイタチMustela itatsi)の越冬用巣穴bを自動撮影カメラで見張っています。 
今季は記録的な暖冬で、積雪量が少ないです。 
水平の倒木が朽ちて樹皮がどんどん剥がれ落ち、雪面に散乱しています。 


シーン2:12/29・午後16:29(@0:03〜)日の入り時刻は午後16:31。 
監視カメラが起動した理由が分からなかったのですが、しばらくすると1羽の小鳥が手前から奥に飛来して、巣口bの手前の雪面に落ちていた樹皮に着地しました。 
小鳥の正体はミソサザイTroglodytes troglodytes)のようです。 
ミソサザイといえば山地の渓流の近くで見かける小鳥という認識だったので、こんな平地の防風林で見れるとは意外でした。 
他の鳥と同じく、根返りした土の塊を調べて、餌となる虫を探しに来たのかな? 

千葉県立中央博物館のホームページに掲載された記事によると、
 根返りした木は、土ごと倒れて根元は大きな土の塊となっている。この土の塊の中が生きものの越冬場所として好まれるようだ。オサムシ、ゴミムシ類の他に、カメムシ、ムカデ、トカゲ、カエルなども越冬している。皆、わざわざこの土の固まりに登ってから潜っているわけだ。(「 根返りで越冬するオサムシ」より引用)
やがてミソサザイは、ピョンピョン飛んで奥に消えました。 
ちょうど日没の時刻だったことから、もしかするとねぐら入りの行動だったのかもしれません。(※ 追記参照)


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。 
ミソサザイは小さな鳥なので、最終的に1.5倍に拡大するように素材の動画をゆっくりズームインする、という編集を試してみました。 
タイムスタンプ(撮影日時)を改めて画面内の元の位置に焼き込む工夫をしたのがポイントです。



※【追記】
ミソサザイの塒について調べてみました。
ハルシネーション(AIによる知ったかぶりの誤情報)が少ないとされるPerplexity AIに質問した回答を引用します。
このAIは、質問する言語によって回答が質的に変わってくるので注意が必要です。
今回の件では、日本語よりも英語の方が圧倒的にソース(情報源)の質量ともに充実しています。
ミソサザイは、ヒトが架けた巣箱に入って越冬することもあるそうです。
ただし、大陸のミソサザイと日本のミソサザイで習性が微妙に異なる可能性もあり得るので、AIの言うことを鵜呑みにはできません。

ミソサザイの冬季のねぐら入りについて、特に雪国での具体的な情報は提供された検索結果には含まれていません。しかし、ミソサザイの一般的な生息環境と冬の行動から、以下のことが推測できます:

ミソサザイは通常、山地の渓流沿いの藪や岩のある林に生息しています[3][4]。冬になると、より低い山地や山麓の沢や岩のある林に移動する傾向があります[4]。この習性から、冬のねぐらとして以下の場所を利用する可能性が高いと考えられます:

1. 岩の隙間や穴
2. 倒木の下や樹洞
3. 厚い藪の中
4. 渓流沿いの岸辺の植生の中

雪国では、これらの場所が雪から保護され、比較的暖かい環境を提供すると考えられます。ミソサザイは体が小さいため、寒さから身を守るためにこのような隠れ場所を利用すると推測されます。

ただし、ミソサザイの具体的な冬のねぐら入り行動については、さらなる研究や観察が必要です。

Citations:
[1] https://www.pref.niigata.lg.jp/site/aicho/20210401aicho.html
[2] https://www.pref.niigata.lg.jp/site/aicho/20200401aicho.html
[3] https://zukan.com/jbirds/internal14978
[4] https://www.suntory.co.jp/eco/birds/encyclopedia/detail/1497.html
[5] http://www.omnh.jp/wada/birds-rep11.html
[6] https://www.omachi-sanpaku.com/common/file/sanpaku/backnumber/13-4_cmp.pdf
[7] http://sizenkansatu.jp/05daigaku/s_2.html

 

The **Eurasian wren** (Troglodytes troglodytes) typically roosts in **dark retreats, snug holes, and even old nests** during the winter months. These roosting sites provide essential shelter from cold weather and predators. In harsher conditions, they may gather in groups, often consisting of family members or multiple individuals, to conserve warmth[1][3][6]. 

They are known to utilize various habitats for roosting, including dense vegetation such as bushes, hedgerows, and brush piles. This adaptability allows them to find suitable roosting spots across a wide range of environments, from gardens and parks to more natural settings like forests and marshes[1][3].

Citations:
[1] https://www.allaboutbirds.org/guide/Eurasian_Wren/lifehistory
[2] https://en.wikipedia.org/wiki/Winter_wren
[3] https://en.wikipedia.org/wiki/Eurasian_wren
[4] https://www.audubon.org/field-guide/bird/pacific-wren
[5] https://animaldiversity.org/accounts/Troglodytes_troglodytes/
[6] https://animalia.bio/eurasian-wren?letter=w
[7] http://www.birdwatchingacademy.com/winter-wren/
[8] https://www.allaboutbirds.org/guide/Winter_Wren/overview
[9] https://www.discoverwildlife.com/animal-facts/birds/wren-facts


Eurasian wrens (Troglodytes troglodytes) do use man-made structures for roosting in winter, including nest boxes. While they typically prefer natural roosting sites, they have been observed using artificial structures when available:

1. Wrens have been recorded roosting in large numbers in nest boxes during winter. In one instance, as many as 60 wrens were found roosting together in a single nest box[4].

2. They are known to use various man-made structures for shelter, including stone walls and even old nests[3][5].

3. Wrens often seek out "dark retreats" and "snug holes" for roosting, especially during harsh winter weather[3]. Nest boxes can provide such protected environments.

It's important to note that wrens are adaptable and will use a variety of roosting sites. They may roost alone or in groups, with communal roosting being a common strategy to conserve heat during cold winter nights[4]. While nest boxes are not their primary choice, they can serve as valuable artificial roosting sites when natural options are limited or during particularly harsh weather conditions.

Citations:
[1] http://www.birdwatchingacademy.com/winter-wren/
[2] https://animaldiversity.org/accounts/Troglodytes_troglodytes/
[3] https://en.wikipedia.org/wiki/Eurasian_wren
[4] https://scotlandsnature.wordpress.com/2019/01/16/a-small-bird-with-a-big-impact/
[5] https://www.allaboutbirds.org/guide/Eurasian_Wren/lifehistory
[6] https://www.backyardecology.net/winter-wren-one-of-our-other-wrens/

2025/01/09

狩ったコモリグモ♀(蜘蛛)を運搬中に身繕いするクロクモバチの一種♀

 

2023年10月上旬・午後12:35頃・くもり 

農村部の舗装された農道を私がてくてく歩いていると、牛舎の横の路上をうろつく真っ黒な蜂を見つけました。 
狩ったばかりのクモの横でうろついていたので、クモバチ科(旧称:ベッコウバチ科)の♀だろうとすぐに分かりました。 

蜂は路上で立ち止まると、触角を前脚で拭って化粧しました。 
閉じた翅を細かく震わせています。 
狩りに成功したクモバチ♀は 、獲物を運搬中に私が近づいたので、警戒して獲物を一時的に放棄してしまったようです。 

まず、路上で横倒しのまま放置された獲物を検討しましょう。
コモリグモ科の一種(種名不詳)でした。 
既にクモバチ♀の毒針によって麻痺していて、全く動きません。 
クモの写真を見直すと腹部下面に外雌器があり、♀成体と判明。
クモバチの種類によっては、獲物を狩った直後に運搬しやすいように歩脚を根元から切り落とす者がいるのですが、この獲物では歩脚の欠損はありません。 







蜂は全身真っ黒で、翅も腹背も黒色でした。
以上の情報からクロクモバチの仲間(Priocnemis属)ではないかと蜂の種類を絞り込めたのですが、それ以上は採集して標本を精査しないと分かりません。 





さてこの後、私はどうすべきかが問題です。 
その場にじっと動かずに獲物に注目して動画を撮り続ければ、いずれクロクモバチ♀が取り戻しに来て運搬を再開し、地中に巣穴を掘って貯食・産卵するまで観察できたはずです。 
クモバチの種類によって獲物の運搬法や造巣法も違うので、そこも観察ポイントです。 

クモバチ♀が毒針を刺して獲物を狩る行動を私はまだ実際に見たことがありません。 
『ファーブル昆虫記』にも詳しく書かれてあるように、運搬中の獲物をピンセットなどで摘んで動かなくすると、狩蜂♀は獲物が麻酔から覚めて抵抗したと勘違いして再び毒針を刺して麻酔し直すのだそうです。 
いつかその実演をしようとピンセットを常に持ち歩いていたのですが、ザックの奥深くにしまい込んでいました。 
カメラの電池も動画撮影中に切れてしまいました。
己の準備不足を呪いながらカメラの電池を交換したりピンセットを取り出すのにもたついている間に、クロクモバチ♀はどこかに行ってしまい、見失いました。 
巣穴をどこに掘るべきか、獲物を置いて偵察に出かけたのかもしれません。
経験豊富な蜂屋さんなら、ピンセットを使わなくても咄嗟に指で獲物のコモリグモを押さえつけたかもしれません。
しかし、素手でうっかりクモバチ♀に刺されるとひどく痛むらしいと聞いていた私は、そこまでの覚悟や根性がありませんでした。 

久しぶりにクモバチ(狩蜂)と出会えてとても嬉しかったのですが、あまりにも久々すぎて観察のコツを忘れてしまい、どっちつかずの撮影になってしまいました。 
先を急ぐ他の用事があった私は、逃げた蜂が戻ってくるまで待てませんでした。 

2025/01/08

ホンドタヌキの越冬用営巣地で野ネズミを狩ろうとする雪国のホンドギツネ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年1月下旬

シーン1:1/22・午後14:17・くもり・気温21℃(@0:00〜) 
明るい日中にたまたま撮れた現場の状況です。 
根雪の積もった休耕地でホンドタヌキ♀♂(Nyctereutes viverrinus)が越冬する営巣地を自動撮影カメラで見張っています。 
巣穴の入口は少なくとも3つあり、そこからタヌキの足跡が雪面に残されています。 
今季は異常な暖冬で積雪量が少なく、雪が溶けて地面が一部露出しています。 

ホンドギツネVulpes vulpes japonica)の登場シーンを以下にまとめました。 


シーン1:1/24・午後18:12・降雪・気温-3℃(@0:03〜) 
2日後の雪が激しく降る晩に、キツネが新雪の雪原を右から左へ横切りました。 
画面の左端で立ち止まると、タヌキの営巣地を振り返りました。 
巣穴から漂う臭いや物音に気づいたのかな? 
雪が激しく降る日のタヌキは、日没後も巣穴Lから遠出しないですぐに帰巣したことが、雪面に残る足跡から読み取れます。 
キツネはタヌキの巣穴Lへ忍び寄り、雪面の足跡の匂いをじっくり嗅いでいます。 
巣口Lに顔を突っ込んで覗き込んだものの、中に無理やり押し入ることはありませんでした。 


シーン2:1/28・午前4:31・気温-1℃(@1:03〜) 
4日後の未明に、キツネが左からやって来ました。 
新雪の雪面には、約7時間前に通ったタヌキの足跡が、雪に埋もれかけています。 
キツネはタヌキの足跡に気づくと立ち止まり、匂いを嗅ぎました。 
うっかり「足跡を見つける」と書きそうになりましましたが、暗闇でキツネがどのぐらい見えているのか疑問です。
キツネは目のタペータムが発達していますから、雪明りだけでも夜目が効くのかもしれません。

キツネは雪原をショートカットしてタヌキの巣口Mに近づいたものの、横を素通りしました。 
巣口Mを通り過ぎたことに気づいたのか、雪面の匂いを嗅ぎながら、ゆっくり引き返してきました。 

最後にキツネは何か獲物の気配を雪の下に感じ取ったらしく、後足の筋力で高く飛び上がり、揃えた前足で獲物に襲いかかろうとしました。 
しかし、その結末(狩りの成否)を見届けることなく、無情にも1分間の録画が打ち切られてしまいました。
うーむ、残念無念…。 
監視カメラの録画時間を1分間から2分間に延長すべきかもしれません。 
まるでアクションの一番良い瞬間で静止画にして余韻を残したまま劇的に終わらせる「フリーズフレーム」(またはフリーズショット)という映画の手法のようです。 
1/3倍速のスローモーションでリプレイしてみると(@2:07〜)、意外にもキツネは後足を先に着地していました。 
着地の振動に驚いた野ネズミが雪の下から外に飛び出してくるのを期待して、次に前足と口で獲物を狩ろうとする作戦なのかもしれません。 



※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


【考察】 
ホンドギツネはおそらく、ホンドタヌキの越冬用巣穴に居候する野ネズミの気配を雪の下に察知して、狩ろうとしたのでしょう。 
この休耕地にも野ネズミが出没することが既に分かっています。 

これまで私は山中または森の中にトレイルカメラを設置することが多く、写った野ネズミ(ノネズミ)アカネズミApodemus speciosus)またはヒメネズミApodemus argenteus)だろうとみなしてきました。 
しかし、この撮影地点は田畑に隣接する原っぱ(休耕地)なので、ハタネズミMicrotus montebelli)の可能性もありそうです。 
キツネの狩りの成功確率はわずか2~3割らしいので、成功シーンを撮影するには辛抱強く観察を続けるしかありません。

あるいは、巣内に籠もったタヌキの動きを察知したキツネが、獲物と誤認して反応してしまったのだとしたら、それはそれで面白い話です。 
「タヌキの奴らを驚かしてやろう」というキツネの悪戯心だったりして…。






2025/01/06

ご馳走のあった地点に繰り返し戻ってきて餌を探すカケス【冬の野鳥:トレイルカメラ】

 


2024年1月下旬

シーン0:1/22・午後12:56(@0:00〜) 
明るい時間帯にたまたまフルカラーで撮れた現場の状況です。 
今季は異常な暖冬で積雪がほとんど溶けてしまい、まるで早春のようです。 
平地のスギ防風林で、画面の手前から奥に向かって根こそぎ倒れたスギ風倒木(根返り)の根元に掘られた「根曲がり巣穴」を自動センサーカメラで監視しています。 
風倒したスギの巻き添えを食って落葉性広葉樹(樹種不明)の稚樹が一緒に根こそぎ倒れてしまい、毎年冬の積雪に押し潰されて樹形がねじ曲がりながらも逞しく育ったのです(根曲がり)。 

この巣穴aにはニホンイタチMustela itatsi)が越冬しているらしいことが分かっています。 
実はすぐ近く(画面の右背後)にもう一つ同様の巣穴bがスギ風倒木の下に掘られていて、そこにもイタチが出入りしていました。 


シーン1:1/23・午後12:44・晴れ(@0:04〜) 
カエルの死骸を持ち去ってから3時間45分後の昼下がり、カケスGarrulus glandarius)が再び戻ってきました。 
倒伏したスギの根に止まって、露出した土を啄んでいます。 
甲虫に疎い私は冬に「オサ掘り」採集をしたことがないので知らなかったのですが、オサムシ類は休眠越冬する場所として、まさにこのような倒木の土付き根っこ(「根返り」と呼ぶらしい)を選ぶことが多いのだそうです。 
冬にさまざまな野鳥がこの根返りに繰り返しやって来て何やら啄んでいる理由が、ようやく分かりました。 
鳥は根返りの土そのものを食べている(ミネラル摂取)のではなく、越冬中のオサムシ類を探して捕食しようと通っているようです。 

カケスが冠羽を逆立てたり寝かせたりしているのは、どんな感情表現なのでしょうか? 
すぐ近く(左奥)の地上で採食していた別種の小鳥(種名不詳:アトリ科?)に対して警戒や苛立ちを示していたのかもしれません。 
混群にしては異色の組み合わせでした。 


シーン2:1/23・午後14:29・晴れ(@1:04〜) 
1時間45分後、カケスが再び戻ってきました。 
監視カメラの画面が急に振動したので、カメラを固定してある水平倒木に飛来した鳥が止まったようです。 
しばらく周囲を警戒してから鳥は地面に飛び降りたようで、画面の下端からカケスが登場しました。 
地面を啄んだり、嘴で落ち葉を跳ね上げたりして、餌を探しています。 
そこはまさしく、私がモリアオガエルの死骸を置いた地点でした。 
棚ぼたの成功体験に味をしめた(学習した)同一個体のカケスが、二匹目のドジョウならぬ二匹目のカエルを求めて同じ餌場に繰り返し戻ってきていたのでしょう。
この日だけカケスの登場頻度が普段よりも明らかに高かったです。 



※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。 



2025/01/03

雪国のホンドギツネがニホンアナグマの越冬用営巣地で野ネズミ狩りに失敗【トレイルカメラ】

 



2024年1月下旬

シーン0:1/22・午後13:46・くもり・気温20℃(@0:00〜) 
明るい日中にたまたま撮れた現場の状況です。 
平地の落葉した二次林でニホンアナグマMeles anakuma)が越冬する2つの巣穴を同時に1台のトレイルカメラで見張っています。 
今季は異常な暖冬で積雪が少なく、林床の地面があちこちに露出していて、まるで早春のようです。 

冬毛のホンドギツネVulpes vulpes japonica)が昼間に登場したシーンを以下にまとめました。 


シーン1:1/24・午前6:33・気温-3℃(@0:04〜)日の出時刻は午前6:47。 
夜に大雪が降った翌朝は晴れていました。 
日の出前でも充分に明るいのは、新雪のレフ板効果です。 

左から来たキツネが、アナグマの巣口Lの辺りで新雪の中に頭を突っ込んでいました。 
次に右の巣口Rに忍び寄ると、そこで匂いを嗅いでいます。 
顔を上げたキツネの鼻面には、雪が付着しています。 


シーン2:1/24・午前6:36・気温-2℃(@1:04〜) 
1分半後に監視カメラが再び起動すると、キツネが右から戻ってきていました。 
雪面の匂いを嗅ぎながら、アナグマの巣口Rの横を通り過ぎ、巣口Lに立ち寄りました。 
もしかすると、アナグマの巣穴に居候している野ネズミ(ノネズミ)の匂いを嗅ぎ取って、執拗に探しているようです。 
最後は獣道を手前に立ち去りました。 


シーン3:1/28・午前8:27・気温0℃(@1:40〜) 
4日後、小雪がちらつく朝にもキツネが現れました。 
林床の雪面がいわゆる「腐れ雪」(湿雪)で歩きにくそうです。 
キツネが一歩踏み出す度に足が雪の中にズボズボと沈みます。 

アナグマの巣口Rが雪で埋もれ、そこだけ雪面が窪んでいます。 
ホンドギツネは巣口Rの凹んだ雪面に鼻面を何度か突っ込んで匂いを嗅いでいました。
雪の下で動く獲物のかすかな物音を聞き取ってもいるようです。
やがて後足で立ち上がると、高く上げた前脚を揃えて雪面に打ち下ろしました。 
これはキツネによる典型的な野ネズミ狩りの行動です。 
同時に顔も雪の中に突っ込んで、逃げる獲物に噛みつこうとしています。 
しかし残念ながら獲物には逃げられたようで、キツネはすごすごと右に立ち去りました。 





【追記】
塚田英晴『野生動物学者が教えるキツネのせかい』を読むと、「狩りの方法」と題した章が設けられていました。
草やぶを見つめながら、まるで”ふりこ”のように、頭だけを左右にゆっくりかしげはじめます。そして、ゆっくりと後ろ足だけを曲げていき、徐々にしゃがみこむような姿勢をとったかと思うと、突然ななめ上向きにジャンプします。このとき、前肢を鼻づらの両わきにそろえた状態で、草むらの中に頭からつっ込んでゆきます。(中略)
 ネズミからすると、キツネの狩りの仕方は、まるで空から飛んでくるミサイル攻撃です。こうしたキツネのジャンプ、1~2mぐらいが多く、中には7.5mもの大ジャンプをすることもあります。(中略)狩りがうまくいく確率は2~3割ほどだといいます。(kindle版44%より引用)

続けて、キツネの狩りにおける聴覚の重要性について詳しく書いてありました。 


関連記事(同時期の撮影)▶ ホンドタヌキの越冬用営巣地で野ネズミを狩ろうとする雪国のホンドギツネ【トレイルカメラ:暗視映像】

2024/11/29

畦道に残る謎の巣穴と爪痕【フィールドサイン】

2023年12月上旬

平地の水田が減反でソバ畑となり、ソバの実の収穫も終わりました。 
関連記事(同所で4ヶ月前の撮影)▶ ソバ畑に集まり芽生えを食べるキジバトの群れ(野鳥)

私が畦道を歩いて探索すると、野生動物が残した奇妙なフィールドサインを見つけました。 
古い畦道には、コケのたいが一面に生えていました。 
用水路から水を引いている訳でもないのに、見るからにジメジメした土壌です。 
枯れたソバ畑の周囲は、スギの防風林に囲まれています。 

畦道にときどき小さな穴が開けられているのは別に珍しくないのですが、今回は周囲の黒土に爪痕がくっきり残っていて気になりました。 
小さな穴は、畦道を貫通していました。 
これはモグラが巣穴を掘った跡なのでしょうか? 
それとも、もう少し大きな肉食獣(ネコなどの捕食者)が例えば野ネズミを狩ろうとして巣口を掘り広げた爪痕なのでしょうか? 
アナグマやタヌキがミミズや土壌昆虫を捕食しようとして穴を掘った跡なのかな? 
写真を撮るときに、大きさを伝えるために定規を置いて写し込むのを忘れてしまいました。

トレイルカメラを設置して誰の仕業か突き止めたら面白そうです。
しかし、謎の野生動物が同じ場所に通ってくるとは限らず、次に畦道のどこに穴を掘るのか、予想がつきません。 

水田だった頃は、水を張る前に毎年きれいに畦塗り(畦作り)をして、水漏れしないようにする必要があります。 
野ネズミやモグラが水田の畦に穴を掘ると、水漏れが発生して稲作に深刻な影響が出ます。 
米農家は畦に穴を開けられないように、様々な防除対策を求められるのだそうです。
(この部分はAIのCopilotに調べてもらいました)
・物理的バリア: ネズミやモグラが通れないような細かい金網や防獣ネット、鉄板などを畦道に設置する。 
・防除植物の植栽: モグラが嫌う香りを持つ植物(タイムやローズマリーなど)を畦道に植える。 
・超音波装置: 超音波で小動物を追い払う装置を設置する。 
・電気柵の設置 
・天敵の導入: 野生の捕食者(ヘビやフクロウなど)が活動しやすい環境を作る。
言うは易しで、実際にきっちり対策しようとするとコストが大変そうです。 
例えば流行りの超音波装置を設置すると、当然ながらフクロウやヘビなどの天敵にも忌避効果が出てしまうらしい。
そもそも土壌の中で超音波は伝播しにくく、地中のモグラや野ネズミへの効果は薄いと考えられます。
ちなみに、この農地では周囲のスギ防風林のてっぺんにノスリが止まっているのをよく見かけますし、フクロウもよく鳴いています。
野ネズミなどの小動物を狙って猛禽が狩りに来ているのだろうと予想しています。
(捕食シーンは未見です)


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