2026年9月下旬・午後12:35〜13:05頃・晴れ
里山の苔むした山道の真ん中に小動物の死骸が転がっていました。
死骸をよく見ると、ヒミズ(Urotrichus talpoides)のようです。
モグラほど前腕の筋肉が発達していません。
死因は不明ですが、捕食者の食べ残しなのか、胸部に血まみれの肉が露出しています。
一般に、捕食者はヒミズの体臭を嫌って忌避すると言われているのですが、私は「独特なヒミズ臭」を感じたことがありません。
もしかして、ヒミズではなくトガリネズミ科の仲間なのでしょうか? (真面目に検討していません。)
口吻を伸縮させて死骸の表面をあちこち舐めています。
アリのワーカー♀も死骸に来ていました。
普通種のクロヤマアリ(Formica japonica)は私にも見分けられましたが、微小な赤アリは種類が不明です(誰か教えて下さい)。
しばらくすると、シダクロスズメバチ(Vespula shidai)のワーカー♀が死骸に飛来しました。
複眼の上にある白眉のような模様が細いので、シダクロスズメバチだろうと判断しました。
死骸をあちこち物色してから、露出した体腔に顔を突っ込みました。
獲物を解体して肉団子を作ってるはずですが、肝心の口元が手前の肋骨に隠れて見えません。
シダクロスズメバチも肋骨周りの肉(カルビ?)が好きなのでしょうか。
マグロの解体ショーで肋骨から肉をこそげ取っている様を連想しました。
やがて、シダクロスズメバチ♀は赤い肉片を大顎に咥えたまま飛び去りました。
帰巣して幼虫に給餌するのでしょう。
獲物の位置を正確に記憶するための定位飛翔をしなかったということは、既に何度も繰り返し訪れていたのでしょう。
山奥で別の用事があったので、帰路にも観察できるように、小さな死骸の横に目印として落枝を2本並べて置きました。
25分後に現場に戻ってくると、キンバエ類の他に、同一個体と思われるシダクロスズメバチ♀がまたヒミズの死骸に来ていました。
今度は蜂の口元が見えるアングルで撮影することができました。
シダクロスズメバチ♀が肋骨内の胸郭に潜り込んで、噛み切ろうとしている臓器はヒミズの心臓ですかね?
肉片を噛み切って小さな肉団子を作り終えると、触角を拭ってから飛び立ち、肉団子を持ち去りました。
ヒミズの死骸から飛び去る蜂を見失ってしまい、シダクロスズメバチの巣の位置を突き止められなかったのは残念でした。
伝統的なスガレ追い(蜂追い)の手法で営巣地を発見できたかもしれませんが、私はやったことがありません。
生肉や目印の紙片などを用意して、いつか試してみたいものです。
基本情報を先に解説しましたが、面白い本題はここからです。
動画をよく観察すると、死骸に集まるスカベンジャー昆虫の間で小競り合いが繰り広げられていました。
力関係を比べると、基本的にシダクロスズメバチが最強のようで、内臓が露出した最良のスポットを占めています。
作業中のシダクロスズメバチ♀が、背後から近づくキンバエを後脚で足蹴にして牽制しています。(@1:57〜)
さらにしつこいキンバエをシダクロスズメバチが飛び回って追い払いました。
ところがシダクロスズメバチ♀が再び肉団子作りの作業を再開すると、戻ってきたキンバエがシダクロスズメバチの背後から頭突きの仕返しをしました。(@2:52〜)
もちろんそれだけで蜂から獲物を奪い返すことはできませんでしたが、キンバエの強気な報復行動を初めて見た私は驚愕しました。
キイロスズメバチと違って、クロスズメバチ類が死骸に集まるハエを狩ることは、(私の知る限り)ほとんどありません。
だとすると、それを知っているハエはクロスズメバチを舐めている(襲われることはないと高を括っている)可能性があります。
体長を見比べると、キンバエの方がシダクロスズメバチよりも少し大きいくらいでした。
強気の理由は、この体格差にあったのかもしれません。
その後、蜂に頭突きしたキンバエ♀はヒミズの死骸に腹端を伸ばして産卵しました。(@3:11〜)
強気のキンバエは♀だったことが判明しました。
ちなみに、キンバエの♀(クロバエ科)は卵を産みますが、ニクバエ♀(ニクバエ科)は卵胎生で幼虫(ウジ虫)を死骸に直接産み付けます。
死骸の横に15cm定規を並べて置いたら、ハエは警戒して逃げたものの、すぐにまた舞い戻ってきました。
キンバエ同士の間でも、よく見ると軽い小競り合い(占有行動)が繰り広げられていました。
(横に来たライバルを足蹴にするなど。)
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特に、DNAメタバーコーディング法でスズメバチ各種の食性を解析した最新研究の章が興味深く、勉強になりました。
シダクロスズメバチの幼虫の未消化物からDNAメタバーコーディング法で検出した324種の割合を示したグラフも掲載してありました。
鳥類10種および魚類、爬虫類、両生類、哺乳類を含む脊椎動物13種が同定されたものの、ヒミズが含まれていたかどうかは不明です。(原著論文を読む必要がありそう)
・虫から環境を考える (5) 里山にすむクロスズメバチ