2026/07/12

交尾期の日中に林内の巣内で休むホンドタヌキの両親♀♂と巣外で単独行動する娘【トレイルカメラ】

 


2025年3月下旬・午前8:55頃〜午後17:05頃・晴れ 

ある1日(3/23)の明るい日中の記録です。 
ホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の3頭からなる家族群が落葉二次林にある巣穴にやって来ました。 
ちょうど交尾期(発情期)の真只中で、一夫一妻の両親♀♂と両目の輝板(タペータム)を失明した娘♀h(ヘルパー)の家族です。 
明るい昼間には、輝板の反射による個体識別ができません。 
以下のもっともらしい解釈は、私の想像に過ぎません。

やがて両親♀♂が相次いで巣内に入り、娘♀hだけが巣外に取り残されました。 
もしかすると、この巣穴は狭くて、3頭のタヌキが同時に入ることは無理なのかもしれません。 
娘♀hは独りで二次林内をうろつき始めました。 
夜行性に必要な輝板が両目とも失明しているため、暗い夜にはあまり餌を摂ることができず、空腹なのかもしれません。 
つまり、夜目の効かない娘♀hは必要に迫られて昼行性になり、健常な両親(主に夜行性)とは生活リズムが違うのかもしれません。

しばらくして戻ってきた娘♀hが巣口Rでクゥーン♪と何度も鳴いて呼びかけても、両親は出てきません。 

15分以上も経ってから、ようやく両親が巣穴Rの外に出てきていました。 
しかし娘♀hは、すれ違いで外出していました。 
娘♀hの帰りを待っているのか、巣口Rでのんびり佇んだり、雪を食べたり、毛繕いしたりしています。 

9:30頃、両親は急に何者かの接近に怯えて巣内Rに慌てて逃げ込みました。(緊急避難) 
謎の侵入者の正体は不明です。 
そのまま巣内で眠ってしまったようです。 
いくら発情期の盛りでも、狭い巣内で交尾することはないはずです。 

何度か娘♀hが巣口Rまで戻って来たものの、ラブラブの両親♀♂に遠慮してか(狭くて入れないのか?)中に入ることはありませんでした。 
暇つぶしで周囲の落枝を甘噛みすることもありました。
諦めて再び独りでぶらぶらと立ち去ります。 
他の兄弟姉妹は両親の縄張りを離れて独立してしまったので、遊び相手がいないのです。 

ようやく家族全員(3頭)が合流できたのは、夕方の17:00過ぎでした。 
巣内で5.5時間も昼寝した両親♀♂は、巣口Rで欠伸をしたり、背中を弓なりに伸ばすストレッチ運動をしたり、身震いして土の汚れを振り落としたりしています。 
家族水入らずで対他毛繕いを始めました。 
立場の弱い娘♀hが発情期の両親♀♂から完全に疎外されている訳でもなさそうで、ほっとしました。 

その後にタヌキ一家がこの営巣地を立ち去るシーンがなぜか写っていませんでした。 


※ 鳴き声が聞き取れるように、動画の一部は編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 
ここは以前、ニホンアナグマが掘った営巣地(セット)でした。 


つづく→

ベニシジミ♀♂の激しい求愛飛翔【ハイスピード動画】

 

2026年6月下旬・午前11:30頃・晴れ 

田んぼの農道で2頭のベニシジミLycaena phlaeas daimio)が激しくもつれ合うように低く飛び回っていました。 
とんでもなく動きが速いので、初めから240-fpsのハイスピード動画で撮影してみました。 
固定焦点になりますが、1/8倍速のスローモーションで長く記録することができました。 
初夏の陽射しが強いので、ハイスピード動画の撮影をするにはうってつけの条件です。 
激しく乱舞する蝶の影が地面にくっきり落ちています。 

これが求愛飛翔なのか同性間の縄張り争いなのか正しく解釈するためには、ベニシジミの性別を見分ける必要があります。 
ゼフィルス(ミドリシジミ族)と同様に、♂同士が誤認求愛した結果、激しい卍巴飛翔になっているのかもしれません。 

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ベニシジミには、翅表の斑紋が赤っぽい春型と黒っぽい夏型という季節型があります。 
6月下旬という初夏の時期は、ちょうど春型から夏型への移行期になります。 
同一個体で翅の赤い鱗粉が剥げ落ちて春型から夏型に変わるのではなく、新しく羽化してくる夏型の個体は生まれつき翅表の鱗粉が黒っぽいのです。

今回のベニシジミは、サイズにやや大小の差があるペアでした。 
傾向としては、♀>♂らしい。(大きさだけで性別を決めつけるのは危険) 
森上信夫『虫のオスとメス、見分けられますか?』という本でベニシジミについて調べると、(シジミチョウ科の)雌雄の識別点は前脚の跗節なのだそうです。 (p20より) 
しかし、それは採集した標本で見比べたり静止している状態で接写しないと使えません。 
翅頂の角度が尖っているか丸みを帯びているかで性別を見分ける方法も図鑑に書いてありました。
しかし今回のように2頭が激しく飛び回っている状態では、羽ばたく翅の角度が刻々と変化するので、スーパースローでも見比べることが不可能です。

映像で行動をじっくり観察した結果、翅表の紅色が鮮やかな大型個体は春型♀で、色褪せた(黒っぽい)小型個体は夏型♂だろう、と推測することができました。 

2頭のベニシジミは、ときどき互いの翅が触れ合いそうなぐらい、ぶつかるように飛んでいました。 
早く交尾したい♂は、♀の前に回り込んで飛び、着陸を促しているのでしょう。 
一方、♀が♂の求愛を嫌がって逃げ回っているようには見えません。 
ただし、風のせいで♀の逃避行動が分かりにくくなった可能性もあります。
♀が本気で嫌がっているのなら、着陸して草むらに隠れたり、明確な交尾拒否姿勢を♂に見せつけるはずです。
♀は求愛する♂を焦らすように飛び続け、♂のスタミナ(持久力)を試しているのかもしれません。 
手前に飛来したモンシロチョウPieris rapae)が高速で横切っても、求愛行動に夢中のベニシジミ♀♂は見向きもしません。 (@0:29〜)

途中から風が吹いたようで、ベニシジミが全力で羽ばたいても前進できず、風下にどんどん流されていきます。 
(周囲の草も風で揺れています。)
農道を離れて横の畦道や水田の方へ飛んでいきました。 
田んぼの水面の上を低く飛び続けます。 
うっかり着水してしまったら、蝶にとっては危険です。(溺れるリスク) 
なんとか飛び続けて田んぼから畦道を経て農道に戻ることができました。 

残念ながら今回も交尾まで見届けられませんでした。 
結局ベニシジミ♂の必死な求愛は成就せず、やがて♂は諦めて♀から離れて行きました。 
空中で飛びながら♀が交尾拒否の合図を♂に出していたのかどうか、私にはよく分かりませんでした。 
性フェロモンも関与しているとなると、嗅覚の鈍いヒトがベニシジミの配偶行動を読み解くのは難しくなります。





【考察】 
スーパースローでじっくり見ると、ゼフィルスのような卍巴飛翔ではありませんでした。
今回のペアの飛翔高度は低空に終始していました。
蝶の縄張り争いでは、高く舞い上がることが多いはずです。
初めのうち、ベニシジミ♂は♀の進路を塞ぐように前方に位置して飛んでいました。
羽ばたく翅の模様を見せつけて、自分が同種の♂であることを♀にアピールしているのでしょう。
(このとき♂が性フェロモンを分泌しているかもしれません。)
♀が高度を下げて地面近くになると、♂は♀の上を飛ぶようになり、上から押さえつけるような(着陸を促す)位置取りになりました。

鈴木芳人. ベニシジミ雌の交尾回避行動. 蝶と蛾, 1978, 29.3: 129-138.
という古い文献をPerplexity AIに紹介してもらったのですが、JstageでPDFファイルをダウンロードして読んでみると、筆者が丹念に観察した焦点は求愛飛翔ではありませんでした。 
約50年前の当時はハイスピード動画などという文明の利器はありませんから、留まった状態のベニシジミ♀へ♂がアプローチする様子を主に観察しています。 

参考ブログ:ベニシジミの求愛行動(4月2日)by 探蝶逍遥記 


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2026/07/11

雪原の巣穴に立てこもるホンドタヌキの家族と対峙しつつ、クズの落果を採食するニホンザルの群れ【トレイルカメラ】狸猿の仲

 



2025年3月下旬

シーン0:3/21・午後14:39・くもり・気温25℃(@0:00〜) 
広い雪原と化した休耕地でホンドタヌキ♀♂(Nyctereutes viverrinus)家族の営巣地を自動撮影カメラで見張っています。 


シーン1:3/23・午前8:22・晴れ・気温14℃(@0:03〜) 
ニホンザル♀♂(Macaca fuscata fuscata) 
朝にタヌキ3頭の家族群が手前から走って帰巣しました。 
ここ 数日間留守にしていたのですが、採餌からようやく戻ってきたのです。 
タヌキの家族は巣口を背にして振り返ると、手前を見上げて警戒しています。 
臆病な1頭は巣内にこもり、2頭が巣口に踏みとどまって警戒しています。 
一体、何事でしょうか?

動画の冒頭から、画面の右手前の落葉灌木の横枝に1頭のニホンザルが腰掛けていました。 
樹上で痒い体を掻いたようですが、後ろ姿でよく見えません。 
体を左にねじって、巣口のタヌキ家族を見下ろしています。


シーン2:3/23・午前8:23・晴れ(@1:07〜) 
ニホンザルは単独ではなく群れで林縁まで来ていたようです。
やがて、若くて大胆なニホンザル個体が、雪原を歩いてタヌキの巣穴に少し近づき、採食を始めました。
林縁の雪面に散乱していた蔓植物クズの豆果を拾い食いしています。

右手前のオニグルミ樹上にも別個体の子猿が登り、落葉した横枝を伝ってタヌキの巣口を見下ろす位置まで移動しました。 
その子猿が手前に駆け戻り、幹にしがみついたままスルスルと雪面まで滑り降りました。 
その様子を見た2頭のタヌキは、慌てて巣穴に逃げ込みました。 
もう1頭のニホンザル個体も続けて木から下りました。 

監視カメラを固定しておいたオニグルミ落葉灌木にニホンザルがよじ登り、トレイルカメラに興味を示したようです。(@1:40〜) 
猿が手でカメラを悪戯したので、画角が少し斜めにずれてしまいました。 

その間に1頭のタヌキが巣口から顔を出して、外を警戒しています。 
近くの雪面で採食しているニホンザル個体が横に少し歩いて移動すると、タヌキの警戒が高まりました。 

雪原でクズ落果を採食するニホンザルの様子を1.5倍に拡大した上で、リプレイ(@2:07〜)。 
ニホンザルたちは一応林縁に留まり、雪原に開口したタヌキの巣穴には近づき過ぎないようにしているようです。 


シーン3:3/23・午前8:24・晴れ(@3:07〜) 
タヌキの姿が巣口から居なくなっていました。 
猿が近づいてきたので、巣内に籠城したようです。 
ニホンザルの小群は計4頭でした。 

大胆なニホンザル個体がタヌキの巣穴の入口まで行って中をしげしげと覗き込んでから、雪原を左へ歩き去りました。 
子猿もその後を続々と追いかける途中で、中腰になってタヌキの巣穴を覗き込みました。 

ニホンザルの群れが居なくなってほとぼりが冷めると、ようやく巣口にタヌキが顔を出して周囲を見回しました。 
営巣地に侵入したニホンザルの群れに吠えたり走って追い払ったりすることは最後までしませんでした。 


シーン4:3/23・午前8:42・晴れ・気温16℃(@3:53〜) 
17分後、タヌキ家族のうちの2頭が警戒を解いて巣穴から外出しました。 
猿の遊動ルートとは逆の右へ向かって1頭ずつ雪原を歩いて行きます。 
どうやら採餌に出かけるようです。
残りの1頭は巣内で留守番するのでしょうか。 
(この後の帰巣シーンがなぜか撮れていません。 )


【考察】
ニホンザルとホンドタヌキとの異種近接遭遇(ニアミス)は初見です。 
ホンドタヌキはイヌ科ですが、よく言われる「犬猿の仲」とは違って、ニホンザルに対して一切吠えませんでした。 
縄張りどころか営巣地に白昼堂々と侵入されたのに、タヌキがこれほど穏健な対応をするとは意外でした。
「狸猿の仲」は敵対関係ではないことが分かりました。


つづく→

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