2026/10/25

ヒミズの死骸で肉団子を作るシダクロスズメバチ♀と吸汁するハエ類の小競り合い(占有行動)

 

2026年9月下旬・午後12:35〜13:05頃・晴れ 

里山の苔むした山道の真ん中に小動物の死骸が転がっていました。 
死骸をよく見ると、ヒミズ(Urotrichus talpoides)のようです。 
モグラほど前腕の筋肉が発達していません。 
死因は不明ですが、捕食者の食べ残しなのか、胸部に血まみれの肉が露出しています。 
一般に、捕食者はヒミズの体臭を嫌って忌避すると言われているのですが、私は「独特なヒミズ臭」を感じたことがありません。
もしかして、ヒミズではなくトガリネズミ科の仲間なのでしょうか? (真面目に検討していません。)

私の嗅覚では死臭や腐敗臭などはしなかったのに、キンバエ(Lucilia caesar)の仲間やニクバエの一種などが新鮮な死骸に早速群がっていました。 
口吻を伸縮させて死骸の表面をあちこち舐めています。 

アリのワーカー♀も死骸に来ていました。 
普通種のクロヤマアリ(Formica japonica)は私にも見分けられましたが、微小な赤アリは種類が不明です(誰か教えて下さい)。 

しばらくすると、シダクロスズメバチ(Vespula shidai)のワーカー♀が死骸に飛来しました。 
複眼の上にある白眉のような模様が細いので、シダクロスズメバチだろうと判断しました。 
死骸をあちこち物色してから、露出した体腔に顔を突っ込みました。 
獲物を解体して肉団子を作ってるはずですが、肝心の口元が手前の肋骨に隠れて見えません。 
シダクロスズメバチも肋骨周りの肉(カルビ?)が好きなのでしょうか。
マグロの解体ショーで肋骨から肉をこそげ取っている様を連想しました。 
やがて、シダクロスズメバチ♀は赤い肉片を大顎に咥えたまま飛び去りました。 
帰巣して幼虫に給餌するのでしょう。 
獲物の位置を正確に記憶するための定位飛翔をしなかったということは、既に何度も繰り返し訪れていたのでしょう。 
クロスズメバチ類が死んだヒミズを利用するのは初見です。 




山奥で別の用事があったので、帰路にも観察できるように、小さな死骸の横に目印として落枝を2本並べて置きました。 
25分後に現場に戻ってくると、キンバエ類の他に、同一個体と思われるシダクロスズメバチ♀がまたヒミズの死骸に来ていました。 
今度は蜂の口元が見えるアングルで撮影することができました。 
シダクロスズメバチ♀が肋骨内の胸郭に潜り込んで、噛み切ろうとしている臓器はヒミズの心臓ですかね? 
肉片を噛み切って小さな肉団子を作り終えると、触角を拭ってから飛び立ち、肉団子を持ち去りました。

ヒミズの死骸から飛び去る蜂を見失ってしまい、シダクロスズメバチの巣の位置を突き止められなかったのは残念でした。 
伝統的なスガレ追い(蜂追い)の手法で営巣地を発見できたかもしれませんが、私はやったことがありません。 
生肉や目印の紙片などを用意して、いつか試してみたいものです。 

基本情報を先に解説しましたが、面白い本題はここからです。 
動画をよく観察すると、死骸に集まるスカベンジャー昆虫の間で小競り合いが繰り広げられていました。 
力関係を比べると、基本的にシダクロスズメバチが最強のようで、内臓が露出した最良のスポットを占めています。
作業中のシダクロスズメバチ♀が、背後から近づくキンバエを後脚で足蹴にして牽制しています。(@1:57〜) 
さらにしつこいキンバエをシダクロスズメバチが飛び回って追い払いました。 
ところがシダクロスズメバチ♀が再び肉団子作りの作業を再開すると、戻ってきたキンバエがシダクロスズメバチの背後から頭突きの仕返しをしました。(@2:52〜) 
もちろんそれだけで蜂から獲物を奪い返すことはできませんでしたが、キンバエの強気な報復行動を初めて見た私は驚愕しました。 
キイロスズメバチと違って、クロスズメバチ類が死骸に集まるハエを狩ることは、(私の知る限り)ほとんどありません。 
だとすると、それを知っているハエはクロスズメバチを舐めている(襲われることはないと高を括っている)可能性があります。  
体長を見比べると、キンバエの方がシダクロスズメバチよりも少し大きいくらいでした。 
強気の理由は、この体格差にあったのかもしれません。 
その後、蜂に頭突きしたキンバエ♀はヒミズの死骸に腹端を伸ばして産卵しました。(@3:11〜) 
強気のキンバエは♀だったことが判明しました。
ちなみに、キンバエの♀(クロバエ科)は卵を産みますが、ニクバエ♀(ニクバエ科)は卵胎生で幼虫(ウジ虫)を死骸に直接産み付けます。

死骸の横に15cm定規を並べて置いたら、ハエは警戒して逃げたものの、すぐにまた舞い戻ってきました。
キンバエ同士の間でも、よく見ると軽い小競り合い(占有行動)が繰り広げられていました。 
(横に来たライバルを足蹴にするなど。)


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特に、DNAメタバーコーディング法でスズメバチ各種の食性を解析した最新研究の章が興味深く、勉強になりました。
シダクロスズメバチの幼虫の未消化物からDNAメタバーコーディング法で検出した324種の割合を示したグラフも掲載してありました。
鳥類10種および魚類、爬虫類、両生類、哺乳類を含む脊椎動物13種が同定されたものの、ヒミズが含まれていたかどうかは不明です。(原著論文を読む必要がありそう)

・虫から環境を考える (5) 里山にすむクロスズメバチ 

2026/10/24

獲物を運びながら溜め糞場で排尿するホンドタヌキのヘルパー個体【トレイルカメラ:暗視映像】

 


2025年5月下旬・午前3:40頃・気温12℃ 

スギ防風林にあるホンドタヌキ(Nyctereutes viverrinus)の溜め糞場WBCを自動撮影カメラで見張っています。
未明に両目のタペータム(輝板)を失明した個体が独りで北からやって来ました。 
溜め糞場をぐるっと1周してから、中腰になって北向きで排尿しました。 
 1.5倍に拡大した上でリプレイすると(@0:27〜)、股間から小便の雫が前方にポタポタと滴り落ちていました。 
排尿姿勢(片方の後脚を上げるかどうか)からタヌキの性別が見分けられるのですけど、平地の地面に排尿するときは両性ともに腰を屈めてやるので、決定打に欠けます。 
(私は今のところ、両目失明のヘルパー個体は♀だと考えています。) 

今回、尿意を催した両目失明個体♀hは口に何か小さな獲物を咥えて運んでいました。 
映像を拡大して見直しても、獲物の正体は不明です。 
夜目が効かないというハンディキャップがあっても、嗅覚と聴覚で問題なく採餌できていることが伺えます。 

溜め糞場WBCから南西に立ち去ったので、てっきり休耕地にある巣穴に獲物を持ち帰り、家族に給餌したのかと思いました。 
ところが、営巣地に設置してある別の監視カメラには、この後、両目失明のヘルパー個体♀hが帰巣するシーンが撮れていませんでした。 
単に機材のトラブルで撮れていないだけなのか、それともどこかに餌を隠して(貯食)、後で自分が食べるつもりなのでしょうか? 
ヘルパーとしての務めを果たして巣穴に餌を運んでくるという決定的な証拠映像が撮れずに残念でした。 


つづく→

林内の排水溝に来て落枝を操作するカラスたち【野鳥:トレイルカメラ】

 



2025年4月下旬 

春の林内で雪解け水が溜まった排水溝を自動センサーカメラで見張っています。 
倒木が天然の丸木橋になっていて、水路を渡れるようになっています。 

昼間に最も頻繁に来るのはカラスの仲間です。 
「落枝の操作」と名づけた行動が含まれる記録をまとめてみました。 
前後の文脈に意味があるかもしれないので、落枝の操作行動だけを編集で切り抜くのではなくて、なるべく撮れた素材をそのまま繋ぎました。 

ハシブトガラス(Corvus macrorhynchos)の動画をまとめたつもりでしたが、見直すとハシボソガラスが含まれてるかもしれません。 
恥ずかしながら最近、見分ける自信がなくなっています。 
林内には平地性のハシボソガラスは来ないはずではないか?という定説が迷いの源です。 
若いハシブトガラスは嘴がやや細いのでしょうか? 


シーン1:4/22(@0:00〜) 
ハシブトガラスが丸木橋の上から水を飲んでいます。 
水を飲み終わると、右岸まで歩いて丸木橋を渡り、細長い落枝を嘴で咥えて嘴でぐいっと引っ張っても動かせずに諦めました。 


シーン2:4/23(@1:01〜) 
ハシブトガラスが丸木橋をトコトコ歩いて左岸に渡ると、水中から短い棒(落枝の断片?)を拾い上げて上陸しました。 
すぐに興味を失い、棒を捨ててしてしまいました。 
その後は丸木橋に戻って排水溝に溜まった水を飲みました。 

またしばらくすると、丸木橋の左端で水を飲んだカラスが、右岸へ渡る途中で落枝を嘴で咥えました。 
右足で落枝を押さえつけながら、嘴で何か細かい操作をしています。
(後ろ姿になってしまい、よく見えませんでした。) 
水路に落とした再び水面から丸木橋に拾い上げました。 

別個体が飛来して、丸木橋で並んで留まり、水を飲み始めると、先客のカラスは左ににじり寄って追い払うような振る舞いをしました。 
遊び道具の棒を奪われないように牽制したのかもしれません。 
後から来た個体は、先客の上を飛び越えて丸木橋の右に留まり直しました。 


シーン3:4/25(@3:01〜)
今回の個体はハシボソガラス(Corvus corone)かな? 
丸木橋の中央に乗っていたカラスが水面から落枝(小枝)を拾い上げました。 
小枝を咥えたままトコトコ歩いて丸木橋を右に渡り、そこで捨てました。 
てっきり巣材集めかと思ったのに、拍子抜けしました。 
足元の丸木橋に嘴を擦りつけています。 

その後はピョンピョン跳ぶように右へ移動し、画面の右端(林床)で何かしています。(採餌?) 


シーン4:4/26(@3:50〜) 
これはハシボソガラスですかね?
後ろ向きで丸木橋に乗って水を飲んでいたカラスが、水中に没した細い落枝を嘴で少し引っ張り上げました。 


シーン5:4/28・午前後・気温(@4:50〜) 
カラス(ハシブトガラス?)の群れが入れ代わり立ち代わり現れます。 
 丸木橋に乗って水を飲んだカラスが、水中から細い落枝を拾い上げて左岸に上陸しました。 
ところが、すぐに捨てて嘴を拭いています。 

しばらくすると、5羽のカラスが同時に写っていました。(過去最多@5:50〜) 
岸を探索しながら(餌を探しながら)、落枝を操作している個体がいます。 

丸木橋を横歩きで右に少し行ってから、目の前の細い落枝を試しに嘴でぐいっと引っ張りました。 
前方に少し飛んで、奥の右岸に着陸。 

水路の右岸にゴチャゴチャと折り重なっている落枝を嘴で引っ張り上げてどけてから、そこの水を飲むこともありました。 
嘴に短い枝を咥えたまま丸木橋を歩いて渡り、水際にそっと置きました。 
まさか後で棒を食べる訳はありませんから、貯食行動ではないはずです。 

水面に嘴を浸して水を飲むと、濡れた嘴を足元の落枝で拭きました。 
その落枝が気になったカラスが、乗っていた少し太目の落枝を引き上げ、樹皮を剥いています。 
樹皮の裏側に潜んでいる虫を探しているのかな? 


【考察】 
春にカラスが小枝を集めるのは、親鳥の巣材集めです。 
しかし、ここでまとめた映像では、真剣な巣材集めではなく、退屈しのぎに遊んでいるだけのような気がします。 
探餌行動のついでに、好奇心旺盛なカラスが探索行動をしているとも解釈できそうです。


つづく→

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