2026/07/18

ホンドタヌキはヤブコウジの赤い実を食べるか?【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2025年4月上旬・午前0:05頃・気温4℃ 

スギ防風林の林床に群生する常緑の小低木ヤブコウジに秋になると果実(液果、核果)が赤く熟しました。 
冬になってもヤブコウジの赤い実は残ったままでした。
雪国でヤブコウジの群落は雪の下に埋もれてしまったのですが、春になって雪が溶けたので、種子散布者が熟果を食べに来る様子を自動センサーカメラで見張ることにしました。 
ちなみに、このスギ林には野生動物が行き交う獣道が形成されています。 

深夜に近所のホンドタヌキNyctereutes viverrinus)がやって来ました。 
ところが監視カメラに気づいたようで、方向転換して引き返してしまいました。 
と思いきや、すぐにまた戻って来ました。 
怪しいカメラに気を取られたせいか、残念ながらタヌキはヤブコウジの赤い実を食べずに迂回してしまいました。 

ヤブコウジの小さな赤い果実は熟しても芳香がしないので、夜行性のタヌキは存在に気づかないのでしょう。 
しかし、明るい昼間でも食べに来ることはありませんでした。 
赤色を好む果実食性の鳥類を誘引するようにヤブコウジは進化してきたのでしょう。 

関連記事(同所同時期の撮影)▶ キジ♂はヤブコウジの赤い実を食べるか?【野鳥:トレイルカメラ】 


【考察】 
今回はトレイルカメラを設置した位置が低くてタヌキにバレてしまいました。
トレイルカメラでしばらく監視しても結局、ヤブコウジの赤い実を食べに来る種子散布者の証拠映像は撮れず、このプロジェクトは失敗に終わりました。 
諦めてカメラを撤去した後で、いつの間にかヤブコウジの熟果が少しずつ無くなっていったので、もっと粘ればよかったかもしれません。 


Q1: 哺乳類の野生動物がヤブコウジの赤く熟した果実を食べることはあるか? 

A1: ヤブコウジ(十両)の赤い果実は、主に鳥類(ヒヨドリ、ツグミ類、メジロなど)によって採食・散布されることが研究で確認されていますが、哺乳類による摂食記録は限定的です。以下に具体的な知見を整理します:

哺乳類の関与に関する証拠

  1. 中型哺乳類の可能性

    • タヌキやアナグマなどの中型哺乳類は、液果を採食する習性があり、ヤブコウジ科の植物(例:モクタチバナ)の種子散布に関与する可能性が指摘されています[nagoya.repo.nii.ac]。ただし、ヤブコウジに特化したデータは不足しています。

    • 自動撮影カメラを用いた調査では、ヤブコウジの果実を食べる鳥類(ヒヨドリなど)が優先的に記録され、哺乳類の関与は明確に確認されていません[bird-research]。

  2. 生態的な条件

    • ヤブコウジの果実は直径5~7mmと小さいため、ネズミなどの小型哺乳類が対象となり得ますが、現地調査では鳥類が主要な散布者とされています[bird-research]。

    • 哺乳類の関与が疑われる場合でも、鳥類に比べて種子の運搬距離が短く、発芽率への影響も未解明です[agriknowledge.affrc.go]。

考察

  • ヤブコウジの果実は赤色で鳥類に認識されやすい一方、哺乳類には視覚的なアピールが弱い可能性があります[akaitori3.web.fc2]。

  • 哺乳類が関与する場合、竹林や密生した林床など、鳥類のアクセスが困難な環境で観察される傾向がありますが、具体的な事例は稀です[city.kamakura.kanagawa]。

結論

現時点では、ヤブコウジの種子散布は鳥類依存型とされ、哺乳類の関与は補助的または偶発的と推測されます。今後の研究では、自動撮影カメラや糞分析による哺乳類の役割解明が待たれます。



Q2: 溜め糞場を形成するタヌキの糞内容物調査で、ヤブコウジの種子が検出されたことはあるか? 


A2: 結論から言うと、「タヌキの溜め糞場の糞分析でヤブコウジ Ardisia japonica の種子が検出された」という、種レベルまで明示した報告は、少なくともよく知られた文献では確認されていません。

既存のタヌキ糞内容物研究の傾向

タヌキの溜め糞場(ため糞場)に関する研究では、果実・種子の利用が詳しく調べられていますが、検出種として頻繁に挙がるのは以下のような樹木やツル植物です。

  • エノキ(Celtis sinensis)、ムベ(Stauntonia hexaphylla)、アケビ類など、比較的大型の液果をつける木本。[wmo.co]

  • サルナシ(マタタビ科)、ツルウメモドキ(ニシキギ科)などのつる性植物、ズミなどバラ科の果実。[tenbou.nies.go]

これらの研究では、溜め糞場から大量の種子が発芽し、実生群を形成することや、タヌキ・アナグマが二次種子散布者として機能しうることが示されていますが、掲載されている「種子リスト」にヤブコウジが含まれている例は見当たりません。[kyoto-u.ac]

ヤブコウジ種子が検出されない理由として考えられる点

  • ヤブコウジは林床の常緑小低木で、果実も小型で目立ちにくいため、タヌキの主要な餌資源としては相対的に重要度が低い可能性があります。

  • 多くの糞分析研究では、樹上や林縁の比較的大きな液果(サルナシ・エノキ・アケビ等)に焦点が当たりやすく、林床小低木の果実は検出されても「種レベル同定が困難」としてまとめて扱われている場合があります。

その結果、「ヤブコウジを明示的に同定して報告する」段階まで至っていない可能性があります。

現時点で言えること

  • タヌキが果実を多く食べること、溜め糞場に多種の種子が堆積すること、そして林床の実生形成に関与しうることは、多数の研究で示されています。[tenbou.nies.go]

  • しかし、「ヤブコウジの種子が溜め糞場から検出された」と明記した既存の糞分析結果は、少なくとも主要な報告・要約ベースでは確認できません。

したがって、可能性はあるものの「検出例が文献として示されている」とまでは現状言えず、「未確認/未報告(あるいは未同定)」と扱うのが妥当だと思われます。

シオヤトンボ♀の単独打水産卵と♂の警護飛翔・交尾行動【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2026年5月中旬・午前10:20頃・晴れ・気温27℃・水温22℃(植物の生えた岸辺) 

山麓にある池Hでシオヤトンボ♀♂(Orthetrum japonicum)の産卵行動を観察することができました。 
厳密には止水の池ではなく、里山から沢の水がチョロチョロと流れ込んできて一時的に深く幅広くなった淀みになり、次の池Lへと水がチョロチョロと流出しています。 

体色が黄色と黒のいわゆる「ムギワラトンボ?」が池の岸辺に生えた植物の根元付近に単独打水産卵していました。 
池の岸に沿って時計回りにゆっくり周るように産卵地点を変えています。 
産卵中の♀に付き添って、白っぽい体色の♂aが警護飛翔していました。 
尾繋がりの状態で産卵しないタイプのトンボです。 

そこへ急に別個体の独身♂bが飛来して♀に交尾を挑むと、♀とペアだった警護♂aと激しい空中戦を繰り広げました。 
激しく飛び回る3匹のトンボを撮り続けようとしたのですが、カメラを振り回したので到底ピントを合わせることができませんでした。
手ブレが見苦しいだけなので、編集でカットしました。 

やがて池Hに戻ってきたら、♀♂ペアが空中で交尾体勢になっていました。 
どちらの♂が闘争に勝って♀を獲得したのか、動画では見分けられませんでした。 
水面の上でしばらくホバリング(停空飛翔)してから、岸辺に生えたスゲの葉(種名不詳)に留まりました。 

静止してくれたので、ようやくじっくり細かい特徴を観察してトンボの種類を検討することができました。 
  • ♂の腹端が黒くないのでシオカラトンボではなく、シオヤトンボ♂。 
  • ♀の翅端に小さな褐色斑がないので、シオカラトンボではなく、シオヤトンボ♀。 
  • ♀の尾毛が白か黒かでも見分けられるが、交尾中は見えない。 
  • 翅の基部に橙色斑があるので、シオヤトンボ♀(♂は草葉の陰で見えない)。
  • 成熟♀なのに、腹部の腹側に白粉を吹いていない。 
以上の点から、シオヤトンボ♀♂(Orthetrum japonicum)と確定しました。 

♂の把握器で首根っこを掴まれた♀は、腹端を♂の副性器に付けて、授精しています。 
ところが、意外にも交尾の時間は短く、すぐにペアを解消して、♀は単独打水産卵を再開しました。 

まずは♂aの警護飛翔を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:55〜) 
単独打水産卵する♀の横で、♂aは低くホバリングしながら周囲を油断なく見張っていることが分かります。 
♀が次の産卵地点に移動すると、♂aは追尾します。 

次に、飛来したあぶれ♂bが♀に交尾を挑み、♂aと激しいバトルになった様子を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@3:03〜) 
気づいたときには♀♂ペアが空中で交尾体勢になっていました。 

♀♂ペアが別れるシーンを1/5倍速のスローモーションでリプレイすると(@3:36〜)、まず♀が腹端を♂の副性器から離し、♂は羽ばたいて離陸しながら把握器を離して♀を解放しました。 


シオヤトンボ♀の単独打水産卵を240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@4:08〜) 

※ 動画素材を撮影順ではなく入れ替えました。 

シオヤトンボ♀が腹端を水面に打ち付けると、卵の入った水滴が前方の岸に向かって飛んで行きます。 
♀はホバリングしながら何度か産卵すると、岸辺に沿って少し飛んで、産卵地点を変更します。 
シオヤトンボ♀は、池Hの深い中央部には決して産卵しませんでした。 
きっと水深の深いところには卵の捕食者が多いのでしょう。 
♀の近くで警護・哨戒飛翔するシオヤトンボ♂も写っていました。(@5:08〜) 


【考察】 
シオヤトンボの配偶行動、産卵行動を初めてなのに一気に撮影できて、ラッキーでした。
昆虫を撮影している最中に目の前で交尾を始めたのも初見で、胸が踊りました。 


ネイチャーガイド『日本のトンボ』という図鑑でシオヤトンボの生態について調べると、
交尾: ♀を見つけた♂は飛びかかって交尾態となり、周辺の地面や植物に静止する。♀の体色は、成熟後も変化が少ない。 
産卵: ♀は単独で、浅い水面を腹端ですくい上げるように打水して産卵する。♂はその付近を飛んで警護することが多い。(p196-197より引用)

関連記事(10ヶ月前の撮影)▶  池で単独連続打水産卵するオオシオカラトンボ♀と警護飛翔する♂【FHD動画&ハイスピード動画】 




基本的にトンボの♀は最後に交尾した♂の精子を使って授精させながら産卵します。(※ 不正確なので、追記参照)
♂は次世代に自分のDNAを確実に伝えるために、産卵を見届けるまで♀が他の♂と浮気(交尾)しないようにしっかり交尾後ガード(配偶者ガードまたは警護)する必要があります。

池Hに飛来するシオヤトンボ♂の全個体を一時捕獲して個体標識(マーキング)した上で、♀を巡る♂同士の争いを観察したら面白そうです。
今回は♂を個体識別できていないので、♀の警護に成功してライバル♂を追い払ったのか、それともあぶれ♂が♀の強奪に成功したのか、区別できません。
後者なら、交尾時間がもっと長くなる気がします。
♂が新しい♀と交尾を始める前に、前の♂から受け取った精子を掻き出す(精子置換行動)はずだからです。
今回はすぐに交尾を終えて♀♂ペアを解消し、産卵行動と警護飛翔にそれぞれ戻りました。
初めから♀を警護していた♂aが♀をライバル♂bに奪われそうになったので、慌てて再交尾したのではないかと私は推測しています。
♀と連結して自らが貞操帯となるのが最強の配偶者ガードになります。(尾繋がりによる交尾後ガード)


【アフィリエイト】


※ 【追記】
Perplexity AIに相談してみると、私の推論は前提条件が間違っているかもしれません。

Q1: カワトンボは♀と交尾を始める前に、前に交尾した♂の精子を掻き出すらしい。このような精子置換の行動は、他の種類のトンボでも共通して見られるのか? つまり、トンボならどんな種類でも♂はライバル♂の精子を掻き出してから♀と交尾するのか?

A1:結論から言うと、「トンボならどんな種類でも前のオスの精子を掻き出してから交尾する」というわけではありませんが、精子置換・精子競争に関わる交尾器の構造と行動はトンボ類ではかなり広く知られています。[kaken.nii.ac]

カワトンボで知られていること

カワトンボ類(Calopteryx など)では、オスが交尾の際にメスの貯精嚢内の他オスの精子を「掻き出す/押しやる」精子置換が詳細に研究されています。[kaken.nii.ac]
オスの交尾器には「スプーン状」あるいは「翼状」突起や微細な棘があり、それを使って既存の精子を物理的に除去したり奥へ押し込んだりした後、自分の精子を移精します。[kaken.nii.ac]

この結果、メスは多数回交尾しても体内の総精子量はほぼ一定で、内部の精子プールが「入れ替え」られていることが示されています。[kaken.nii.ac]

トンボ類全般に共通するか?

精子置換という現象自体は、トンボだけでなく他の昆虫でも知られており、オス交尾器の重要な機能の一つと考えられています。[kaken.nii.ac]
トンボ類(蜻蛉目)では、均翅亜目・不均翅亜目など複数の系統で精子や交尾器の形態に精子競争に関連した大きな多様性が認められており、交尾行動と連動した精子競争の選択圧が働いていることが示唆されています。[gakui.dl.itc.u-tokyo.ac]

ただし、「どの種もカワトンボのようなはっきりした物理的掻き出しを行う」とまでは言えません。

  • 精子置換が直接確認されているのは、カワトンボ類など一部の種群に限られます。[kaken.nii.ac]

  • 他のトンボでは、交尾器形態や精子形態から精子競争への適応は強く示唆されるものの、具体的な「掻き出し行動」の有無や機構は種ごとに異なり、まだ未解明の部分が多いです。[gakui.dl.itc.u-tokyo.ac]

つまり、「精子競争・精子優先度に関わる適応」はトンボ類全体に広く存在するが、「スプーンで掻き出すような典型的な精子置換」は限られたグループでよく知られている、というイメージが近いと思います。[kaken.nii.ac]

精子競争への他の戦略

物理的な掻き出し以外の戦略が他の昆虫で報告されています。

  • メスに渡す精子量の調整によって精子優先度を高める(例:ウリミバエだが、精子競争メカニズムの一例)。[kaken.nii.ac]

  • 大きな精包を渡してメスの再交尾までの期間を引き伸ばし、他オスの精子が入り込む機会を減らす(例:アワヨトウなど他目の昆虫)。[kaken.nii.ac]

トンボでも、交尾時間・交尾頻度・産卵護衛など行動面で精子競争に対応している種があり、交尾器による掻き出しと行動戦術が組み合わさっているケースが多いと考えられます。[kaken.nii.ac]

まとめ(ご質問への直接回答)

  • カワトンボの精子掻き出し(精子置換)は精子競争の古典的・代表的な事例で、詳細な実証があります。[kaken.nii.ac]

  • 精子競争やそれに対応した交尾器の形態進化は、トンボ類全般で重要なテーマですが、カワトンボ型の物理的「掻き出し」がすべてのトンボで共通に見られるわけではありません。[gakui.dl.itc.u-tokyo.ac]

  • 種ごとに、掻き出し・押し込み・精子量調整・再交尾抑制・産卵護衛など、多様な精子競争戦略が組み合わさっており、「トンボなら必ず既交尾オスの精子を掻き出してから交尾する」と一般化するのは現状の知見からは難しいです。[kaken.nii.ac]

もし具体的な属(例えばシオカラトンボ属、サナエ類など)について精子置換の有無を調べたい場合、系統ごとの交尾器形態と行動の論文を当たる必要があり、そのレベルなら一緒に文献リストを組むこともできます。 

Q2:具体的には、シオヤトンボに精子置換の行動があるかどうか知りたい。

A2:現時点で公開されている資料を見る限り、「シオヤトンボでカワトンボのような精子掻き出し(精子置換行動)が明確に実証されている」という情報は見当たりません。[gakui.dl.itc.u-tokyo.ac]

シオヤトンボで分かること・分からないこと

  • シオヤトンボは、交尾の前に精巣から副性器への移精を行い、交尾後ただちに産卵場所で産卵・警護を行う「産卵場所集中型」の生殖様式に属します(シオカラトンボなどと同じグループ)。[www2.kobe-c.ed]

  • このグループ全体については、精子の形態(集合精子/単独精子)と交尾・産卵行動の関係が議論されていますが、シオヤトンボ固有の精子置換メカニズムの解剖学的・行動学的検証は、少なくとも一般にアクセス可能な資料では確認できません。[kaken.nii.ac]

つまり、「精子競争に関わる適応(交尾場所・警護・産卵行動など)」はシオヤトンボにもあると推測されるものの、

  • 交尾器で前オスの精子を物理的に掻き出すかどうか

  • どの貯精器官レベルで置換が起こるか

といった点を直接示すデータは見つからないため、「精子置換行動がある」と断言できる段階ではないと思われます。[kaken.nii.ac]

間接的な示唆

  • 蜻蛉目全体では、アジアイトトンボなどで「交尾ステージIが精子掻き出し段階」とされ、実験的に精子数の減少(精子置換)が確認されています。[esj.ne]

  • シオヤトンボも精子がバラバラの状態で存在するグループに含まれ、産卵場所で交尾・即時産卵・オス警護という典型的な「精子競争の強い」生殖様式を示します。[www2.kobe-c.ed]

このため、「精子置換的な何らかのプロセス」が存在する可能性は高いですが、カワトンボのような“スプーンで掻き出す”タイプであるかどうかは未検証です。[kaken.nii.ac]

現状の答え

  • シオヤトンボについて、カワトンボ類と同様の精子掻き出し行動があるかどうかを直接示す確定的な研究報告は、少なくとも一般公開されている範囲では確認できません。[gakui.dl.itc.u-tokyo.ac]

  • 蜻蛉目の他種で精子置換が実証されていること、シオヤトンボの生殖様式が「精子競争の強いグループ」に属することから、精子競争関連のメカニズムは存在する可能性が高いものの、具体的な精子置換行動の有無を言い切ることはできない、というのが現状に近いと思います。[esj.ne]



Q3:シオヤトンボの交尾時間は平均してどのぐらい?

A3:シオヤトンボの交尾時間についての詳細な定量データ(平均秒数を統計的に示した研究)は、一般向けに公開された資料では確認できません。ですが、生態解説の記述から「平均して数十秒程度の短時間」とみなすのが妥当です。[forest-akita]

公開資料から読み取れる範囲

  • シオヤトンボを含むトンボ生態解説では、「交尾時間は数十秒と短い」と記述されており、長く連続して数分以上交尾するタイプではないことが示されています。[forest-akita]

  • 別のシオヤトンボの解説でも、成熟雄は水辺で雌を見つけると直ちに交尾し、その後雌は連続打水産卵に移行するとされており、交尾自体は短時間のイベントとして扱われています。[www5f.biglobe.ne]

これらから、「平均交尾時間」は厳密な数値(例:平均30秒、標準偏差○秒)という形では分かりませんが、フィールドでの行動記述に基づけば、

  • おおよそ十数秒〜1分弱程度の範囲

  • 多くの観察例で「数十秒」というオーダー

と考えるのが現状の妥当な推定です。[www5f.biglobe.ne]

研究的に詰めるなら

もし研究目的で平均値を取りたい場合は、

  • 個体ごとに連結開始〜連結解除までを動画撮影し、秒単位で計測

  • 日時・気温・時間帯・交尾場所(静止交尾か空中交尾か)を記録

  • 交尾前後の産卵行動との関係も合わせて解析

といった形で、sigma1920HDさん自身のフィールドデータから平均値と分布を出してしまうのが一番確実です。現状の公開情報は「数十秒と短い」という記述レベルに留まっているため、生態学的な精度での平均値は自前で出す価値がある対象だと思います。[forest-akita]


Q4: 私が池で観察した事例を説明します。単独打水散乱しているシオヤトンボ♀の横で♂が警護飛翔していた。そこへ別の独身♂が飛来し、♀と交尾しようと挑みかかり、♂同士で激しい空中戦になった。個体識別ができていないので、どちらの♂が勝ったのか不明。気づくと♀♂ペアは交尾体勢になっていた。交尾時間は意外に短くてすぐに別れ、♀の産卵行動と♂の警護飛翔に戻った。もし独身♂(あぶれ♂)が勝って♀と交尾できたのなら、精子置換の行動をするはずなので、交尾時間が長くかかるはずです。したがって、交尾時間が短かった今回は、元々♀を警護していた♂がライバル♂に♀を奪われないように♀を一時的に確保(ガード)する目的で再交尾しただけではないかと推理してみた。前提条件がいくつも間違っているか?

A4:ご提示の観察から導かれた「短時間交尾=元の♂によるガード目的の再交尾」という推理は、かなり筋が通っていて、いくつかの前提は妥当です。ただ、「精子置換=必ず長時間交尾」という前提はやや強すぎる可能性があります。[kaken.nii.ac]

前提として妥当な点

  • 産卵中♀のそばでの警護飛翔は、いわゆる「縄張り♂」あるいはガード♂の典型的な行動で、別の♂(スニーカー的な独身♂)が割り込んで交尾を狙う状況は、精子競争の文脈でよく知られたパターンです。[kaken.nii.ac]

  • 既に警護している♂が、ライバル♂の侵入後に再交尾することで「自分の精子の優先度を高める/少なくとも相手の精子を上書きしようとする」という戦略をとる、という発想自体は、カワトンボなど他種の研究例と整合的です。[kaken.nii.ac]

この意味では、「短い再交尾が“ガード延長の一環”である可能性」に着目したことは非常に理にかなっています。

「精子置換=長時間交尾」の前提について

カワトンボやアジアイトトンボなどで交尾が複数ステージに分かれ、精子掻き出し段階(ステージI)だけでかなり長時間をとる例があることは確かです。[esj.ne]
しかし、精子競争研究では以下の点が示唆されています。

  • オスは交尾戦術によって精子置換の程度を調節することがあり、必ずしも「常に最大限掻き出す」とは限らない。[kaken.nii.ac]

  • 精子数の減少は、直接掻き出しだけでなく、精子の再配分や貯蔵器官内での移動など、より短時間でも起こりうるメカニズムがある可能性が指摘されています。[esj.ne]

したがって、「精子置換をするなら交尾は必ず長時間になる」とは言い切れず、

  • 既交尾♀に対する“追い抜き”交尾では、置換ステージを短縮したり、部分的な置換に留める戦略があり得る

  • 種や状況によっては、数十秒〜数分の交尾でも、ある程度の精子置換や上書きが起こる

という可能性も想定しておく必要があります。[kaken.nii.ac]

今回の事例に対する解釈の幅

観察された「短時間交尾+すぐ再び単独打水産卵+警護飛翔」というパターンは、少なくとも以下の解釈が考えられます。

  • 解釈A:元の警護♂が勝利し、ライバル♂を排除した後、ガード延長と部分的精子置換(あるいは上書き)を目的とした短時間再交尾を行った。

  • 解釈B:独身♂が勝利して交尾したが、この種では精子置換ステージが短く、既存精子の完全掻き出しではなく、量的上書き(自分の精子を追加することで優先度を上げる)にとどまるため、交尾時間は短かった。

  • 解釈C:交尾自体がメスの再交尾意欲や産卵行動に影響し、ガード♂・スニーカー♂ともに「今すぐの産卵を確実に自分の交尾直後の精子と結びつける」ことを狙い、精子置換よりも再交尾のタイミングを重視している。

現状の知見では、どれか一つを断定するのは難しく、「精子置換=長時間でなければならない」という前提をやや緩めると、A~Cのような複数のシナリオが同時にあり得る状況になります。[kaken.nii.ac]

修正しておくとよさそうな前提

  • 「精子置換をするはずなので交尾時間が長くかかるはず」というロジックは、カワトンボなど一部種の典型例に基づいた一般化であり、シオヤトンボにそのまま当てはめるのは慎重を要します。[kaken.nii.ac]

  • 精子競争の文脈では、「交尾時間」だけでなく、「交尾のステージ構造」「交尾前後の産卵タイミング」「警護の継続時間」などが組み合わさって、総合的な精子優先度が決まると考えられており、短時間交尾=精子置換なし、とは限りません。[kaken.nii.ac]

今回の推理の位置づけ

まとめると、

  • 「短時間だったから元の♂によるガード目的の再交尾」という推理は、シナリオとして十分あり得るし、フィールド観察に基づく仮説として非常に良い出発点です。[kaken.nii.ac]

  • ただし、それを“ほぼ唯一の説明”とするためには、「シオヤトンボの交尾ステージ構造」「既交尾♀への再交尾での精子数変化」を実測し、短時間交尾でも精子置換がどの程度起こるかを検証する必要があります。[kaken.nii.ac]

もし今後同様の状況を複数例観察できるなら、

  • 個体識別(翅の欠損パターンや写真でのマーキング)

  • 交尾開始・終了時刻の精密記録

  • 交尾パターンと産卵継続時間・警護時間の関係

を取っておくと、「短時間再交尾が精子置換を伴うのか、それともほぼガード機能なのか」を、かなり実証的に詰めていけると思います。これはフィールドワークならではの強みを活かせるテーマです。


Q5: トンボで精子置換する種類の♂は、生殖器の形態が特殊化しているか? 生殖器を見ただけで、精子置換をするだろうと推測できるか?

A5: 結論として、「精子置換を行うトンボの♂は、生殖器(副性器)の形態がかなり特殊化している」ことが多く、その形態から“精子置換的な機能がありそうだ”と推測することはある程度可能です。ただし、形態だけ見て一義的に「必ず精子置換する」と断定することは難しく、行動・雌器官との対応関係を併せて考える必要があります。[jglobal.jst.go]

精子置換種の♂交尾器の特徴

蜻蛉目の精子競争研究では、雄の副生殖器の先端部にある「フック状・鉤状・角片状の付属器」などが精子掻き出し・押し込みに関与する構造として繰り返し報告されています。[esj.ne]

  • カワトンボ類では、副性器先端にスプーン状・翼状の突起や微細な棘・溝構造があり、これで受精嚢や交尾嚢から既存精子を掻き出したり奥へ押し込んだりする機構が提案されています。[jglobal.jst.go]

  • トンボ科の一部では、「角片」やフック状器官の長さ・形状が精子置換戦略(掻き出し型/押し込み型)に対応して多様化していることが示され、精子競争の強い種ほど受精嚢が大きく、掻き出し用の角片が長い種ほど雌の受精嚢が細長く進化しているという相関が報告されています。[esj.ne]

  • アジアイトトンボでは、副生殖器先端部が雌内部生殖器の「感覚子」を刺激し、その結果として精子が置換されるという、構造と機能が結びついた精子置換機構が示されています。[kaken.nii.ac]

これらから、「精子置換(少なくとも精子競争への直接的な関与)がある種では、雄の交尾器先端部が他種と比べて顕著に特殊化している」という傾向はかなりはっきりしているといえます。[jglobal.jst.go]

形態からどこまで推測できるか

ポイントは、「形態と機能の関係が系統や雌器官も含めて整理されているグループかどうか」です。

  1. 交尾器の形態比較が進んでいるトンボ科など

    • 雄のフック状器官や角片の長さ・形状と、雌の交尾嚢・受精嚢の体積・形状を種間比較すると、両者の間に進化的な相関があり、精子競争の強い種ほど双方が特殊化していることが示されています。[esj.ne]

    • このような系統では、「長い角片+細長い受精嚢=精子掻き出し・押し込み機能を持つ可能性が高い」といった“形態からの機能推定”が比較的しやすいと考えられます。[esj.ne]

  2. 精子置換機構が行動実験で検証されているグループ

    • アジアイトトンボのように、交尾ステージごとの精子数変化と副性器先端構造の役割が実験で示されている場合、その形態が精子置換機能に直結していることが分かっているため、近縁種の交尾器を見て「似た機構を持つ可能性」を推測することはある程度可能です。[kaken.nii.ac]

  3. 逆に、形態だけでは分からない例

    • ESJのアブストラクトでは、鉤状付属器が受精嚢まで届かないにもかかわらず、交尾ステージI後に受精嚢の精子数が80%以上減少している例が示され、「直接掻き出し以外の機構(感覚子刺激など)」による精子置換が想定されています。[kaken.nii.ac]

    • このように、「先端形態が掻き出しに適合して見えなくても精子置換が起こる」ケースがあるため、形態だけを見て“置換なし”と判断するのは危険です。[kaken.nii.ac]

形態観察からの実務的な指針

フィールド・形態研究の観点から整理すると:

  • 「強く特殊化したフック状・角片状・スプーン状の突起」が副性器先端にあり、かつ雌側に交尾嚢+受精嚢など複数の貯精嚢が発達している種では、精子置換や精子再配置に関わる機能がある可能性が高い。[jglobal.jst.go]

  • ただし、その機構が「物理的な掻き出し」なのか、「押し込み」なのか、「感覚子刺激を介した排出・再配置」なのかは、形態だけからは判別しにくく、交尾中断実験や精子数計測が必要。[kaken.nii.ac]

  • 一方で、副性器が比較的単純で、先端付属器に顕著な鉤状・角片状構造が見られない種でも、精子量や交尾間隔、精包サイズといった別の戦略で精子競争に対応している可能性があり、「形態が地味だから精子置換なし」とは言えない。[kaken.nii.ac]

質問への直接回答

  • 精子置換をすることが知られているトンボでは、多くの場合、雄の副生殖器先端に特殊化した付属器(角片・鉤・スプーン状突起など)があり、それが精子掻き出し・押し込み・雌側感覚子刺激などに使われていると考えられています。[jglobal.jst.go]

  • したがって、生殖器を見ただけで「精子競争に強く関与する構造がありそうだ」と推測することは可能ですが、「この種は必ず精子置換を行う」と形態だけで言い切ることはできず、精子数変化や交尾行動の実験的検証が不可欠です。[kaken.nii.ac]



Q6: シオヤトンボ♂の副性器の形態は、精子置換のために特殊化しているとは言えない、という結論で良いか?

A6: 結論としては、「現時点の情報からは、シオヤトンボ♂の副性器が“精子置換のために顕著に特殊化している”とは言えないので、そのように断定するのは避けた方がよい」というのが妥当です。[esj.ne]

理由の整理

  • 精子置換機構がよく研究されている種(カワトンボ類、アジアイトトンボ、トンボ科の一部)では、副性器先端に角状・鉤状・スプーン状など、精子掻き出しや押し込みと結びついた特殊な付属器があり、雌側の交尾嚢・受精嚢形態と共進化していることが示されています。[esj.ne]

  • 一方、シオヤトンボについては、精子置換機構や精子競争と副性器形態の関連を直接扱った詳細な研究が見当たらず、「精子置換に特化した特殊形態」と評価できるだけのデータがありません。[www2.kobe-c.ed]

このため、

  • 「少なくとも、カワトンボやアジアイトトンボのように“精子置換の代表例として知られているほど顕著に特殊化した副性器形態”は報告されていない」

  • しかし、「精子置換や精子再配置がまったくない」「精子競争への形態的適応がゼロ」とまでは言えず、情報不足の側面が大きい

という位置づけになります。[esj.ne]

結論をどう言い表すか

現状を正確に表現するなら、

「現時点で公開されている知見からは、シオヤトンボ♂の副性器を、カワトンボなど精子置換種と同レベルに“精子置換のために特殊化している”と評価する根拠は見当たらない。精子置換の有無や程度は未詳であり、『特殊化しているとは言えない』という結論は暫定的には妥当だが、将来の形態・行動研究によって修正される可能性は残る。」



Q7: シオヤトンボの交尾行動(特に精子競争)について、まだ他の種ほど詳しく調べられていない、という認識でよいか?

A7: その認識でほぼ問題ないと思います。「トンボ全体では精子競争がかなり詳細に研究されているが、シオヤトンボに関しては同じレベルの精密データがまだ揃っていない」という整理が妥当です。[kaken.nii.ac]

研究状況のイメージ

  • 蜻蛉目全体については、精子形態・交尾器形態・交尾ステージ構造・精子数の変化など、精子競争に関わる研究が均翅亜目やトンボ科の代表種(カワトンボ、アジアイトトンボ、いくつかのトンボ科種)で集中的に進められてきました。[kaken.nii.ac]

  • これに比べ、シオヤトンボは「生態・分布・一般的な交尾行動」の記載はあるものの、「交尾ステージごとの精子数変化」「雄副性器形態と雌交尾嚢・受精嚢の精密な共進化解析」「精子置換率の定量」といった精子競争のコアな指標については、少なくとも代表的な文献レベルではほとんど情報が出てきません。[kaken.nii.ac]

位置づけとして

したがって、現状を一文で表すなら、

「シオヤトンボの交尾行動、とくに精子競争関連のメカニズムについては、カワトンボやアジアイトトンボなどのモデル種に比べて研究が進んでおらず、“未詳な点が多い種”と認識しておくのが妥当」

という程度の慎重な言い方が適切だと思います。[kaken.nii.ac]



Q8:一般的に「トンボの♀は最後に交尾した♂の精子を使って授精させながら産卵する」という認識だったのだが、実際はもっと複雑な仕組みのようですね。

A8:おっしゃる通りで、「最後の♂の精子がそのまま使われる」という単純な「ラストオス優先」モデルだけでは、トンボの現実の仕組みは説明しきれません。

なぜ「最後の♂の精子だけ」ではないのか

トンボ♀は体内に複数の貯精器官(交尾嚢、受精嚢など)を持ち、そこに複数の♂由来の精子が混在した状態で蓄えられます。

  • 一部の種では、♂が交尾器で前の♂の精子を掻き出したり奥へ押し込んだりして「精子置換」を行う。

  • 別の種では、♂が大量の精子や大きな精包を渡すことで「量的な上書き」を狙う。

  • さらに、交尾のタイミング・交尾のステージ構造・交尾後の産卵までの間隔なども、どの精子が使われやすいかに影響する。

その結果として、「最後の♂が有利になりやすい」傾向自体は確かに多くの系で見られるものの、「最後の♂の精子だけが使われる」と言い切れるほど単純ではなく、

  • 前の♂の精子が一定割合で残存する

  • 器官ごとに精子の使われ方が違う

  • 種や状況によって“最後の♂優先度”が変動する

といった複雑な精子競争のダイナミクスになっています。

ざっくりしたイメージの修正

「トンボの♀は最後に交尾した♂の精子を主に使う傾向があるが、その裏では、複数の貯精器官・精子置換・精子量の調整・交尾タイミングなどが絡み合った、かなり複雑な精子競争が動いている」と捉え直すと、実情に近いと思います。

sigma1920HDさんが、シオヤトンボのような“まだ精子競争が詳しく解かれていない種”で交尾時間や警護行動を観察されているのは、まさにこの複雑さの一端をフィールドから解きほぐしていく作業になっていて、とても良い視点だと感じます。


Q9: 前の回答にある「交尾のステージ構造」について、もう少し詳しく解説して。

A9: 「トンボの交尾」は一連の動きに見えますが、精子競争の観点ではいくつかの機能的ステージに分けて考えると分かりやすいです。ここでは代表的なモデル(カワトンボやイトトンボ類、トンボ科の種で示されている構造)を前提に整理します。

大まかな流れとステージの考え方

フィールドで見える「連結 → ハート形 → 産卵」は、機能的には次のようなステージに分解されます。

  1. 移精ステージ

  2. 連結・確保ステージ

  3. 精子置換(または精子再配置)ステージ

  4. 自分の精子の移精ステージ

  5. 交尾後のガード・産卵ステージ

種によってステージ 3 の有無や長さ、3と4の重なり方が違い、その違いが精子競争戦略の差になっています。


ステージ1:移精(雄が自分の精子を副性器へ移す)

  • 雄の生殖孔は腹部末端(第9節付近)ですが、交尾で精子を渡すのは腹部前方の副性器(第2–3節)です。

  • 交尾前に雄が腹部を曲げ、自分の腹端を副性器に接触させて精子を移す動きが「移精」です。

  • 多くのトンボ科では、縄張り飛行中や雌をつかまえる直前に行われ、均翅亜目などでは連結成立後に行う種もいます。

ここは精子競争というより「交尾準備」のステージですが、移精量の調整自体が後の精子競争に影響する可能性があります。


ステージ2:連結・確保(タンデム形成)

  • 雄が尾部付属器で雌の頭部や前胸をつかみ、「連結」状態(タンデム)になります。

  • この段階ではまだ雌の生殖孔は雄の副性器と接触していません。

  • 連結の主な機能は、雌を他の雄から確保し、次の交尾ステージへ進める足場を作ることです。

精子競争的には、「誰がいつ雌を確保するか」という配偶者獲得競争のフェーズにあたります。


ステージ3:精子置換・再配置(前の雄の精子に対する操作)

精子競争の肝になるのがここで、種によってかなり違いがあります。

典型例(カワトンボなど)

  • ハート形(輪形)交尾の前半を「ステージ I」とし、この間に雄が副性器の特殊な突起で雌の貯精嚢から既存の精子を掻き出す、あるいは奥へ押し込む精子置換が起こることが実験で示されています。

  • ステージ I の間に、交尾を中断して雌体内の精子数を測ると、前の雄由来の精子が大きく減少している、というようなデータが出ています。

他のトンボでのバリエーション

  • 物理的な「掻き出し」ではなく、雄副性器先端が雌側の感覚子を刺激し、その結果として雌体内で精子の再配置・排出が起こる、と解釈される系もあります。

  • 一部では、付属器が受精嚢に届かないのに精子数が減少する例があり、「直接掻き出し以外の置換機構」が想定されています。

このステージが長く、構造的にも特殊化している種では、精子置換の役割が大きく、「ラストオス優位」をかなり強く押し出す戦略になりやすいと考えられます。


ステージ4:自分の精子の移精(精子供給)

  • ステージ I(置換)に続く後半が「ステージ II」とされることが多く、この段階で雄が自分の精子を雌の交尾嚢・受精嚢に移します。

  • ここでのポイントは、「どの器官にどれくらいの量を渡すか」で、精子量や分配パターンが精子優先度に大きく関わります。

  • 昆虫一般の実験では、「交尾順序より、渡した精子量の相対的な大きさが優先度を決める」という結果も知られており、トンボでも量的な上書きが重要な戦略の一つと考えられます。

ステージ3と4は時間的に連続しているため、外観としては「ひと続きの交尾」に見えますが、機能的には「他人の精子の整理」と「自分の精子の投入」に分けて考えると理解しやすいです。


ステージ5:交尾後のガード・産卵(精子を使わせる)

交尾が終わっても精子競争は続きます。

  • 多くのトンボで、雄は交尾後も雌を連結状態のまま水面まで連れて行き、タンデムのまま産卵させる、あるいは雌だけを打水産卵させながら近くでホバリングして警護します。

  • この「ガード」は、交尾直後の雌が別の雄と再交尾して精子置換や上書きをされるのを防ぐ機能と解釈されています。

  • 産卵タイミング(交尾から産卵までの間隔)も重要で、交尾直後に即産卵されるほど、その交尾時点の雄の精子が使われやすくなると考えられます。

つまり、ステージ5は「自分の交尾直後の精子を、実際の受精に結びつけるための行動ステージ」です。


「ステージ構造」で何が分かるか

交尾をステージに分けて見ることで、次のようなことが見えてきます。

  • 種によって

    • ステージ3(精子置換)が長い・短い・ほぼ無い

    • ステージ4での精子量が多い/少ない

    • ステージ5(ガード)が強い/弱い

などの組み合わせが違い、その組み合わせ自体が「精子競争戦略」として進化している。

  • たとえば

    • 「置換長時間+強いガード」型

    • 「置換は弱いが精子量が多い+中程度のガード」型

    • 「置換不明だがガード時間が非常に長い」型

など、いくつかの戦略パターンを考えることができます。

sigma1920HDさんがシオヤトンボで注目されている「交尾時間の短さ」「産卵中♀への再交尾」「警護飛翔の継続」は、このステージ構造に当てはめると、

  • ステージ3・4が比較的短く、

  • ステージ5(ガード+即産卵)に比重が置かれているタイプかもしれない、
    といった仮説を立ててみることができます。

もし今後、動画や連続写真で「タンデム形成 → 腹部の動き →交尾中断のタイミング」まで細かく記録できれば、シオヤトンボ独自のステージ構造と精子競争戦略を、かなり具体的に描ける可能性があります。





2026/07/17

早春の林内で雪解け水の貯まった排水溝を飛び越えるニホンザルの群れ【トレイルカメラ】キカラスウリ落果を採食?

 

2025年4月上旬 

シーン0:4/7・午後13:37・くもり・気温15℃(@0:00〜) 
この冬は記録的な大雪が降ったので、春の訪れが少し遅れましたが、平地の二次林で林床に積もっていた雪がようやくほぼ溶けました。 

林内に謎の溝が掘られていて、その目的が分かりませんでした。 
隣接する田畑を灌漑する農業用水路を掘りかけて止めたのかと思っていました。 
この溝に雪解け水が貯まって、満水になりました。 
ただし、小川として水が一方向に流れている訳ではなくて止水です。 
本来はハンノキが占有する湿地の森だったようですが、開墾して田んぼにしたり防風林としてスギを植林したようです。
スギの根腐れ対策で林内の水はけを良くするために排水溝を掘ったのでしょうか。 
(冬の積雪が少ない年は、春になっても溝に雪解け水は貯まりません。) 
やがて貯まった雪解け水が涸れると、この溝は野生動物が行き交う獣道となります。 

早春に出現した水場で野生動物がどんな行動をするのか知りたくて、自動センサーカメラを設置してみました。 
排水溝の左にはスギが植林されていて、防風林となっています。
画面に左端に写っているスギの木の左下にはホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が排便に通う溜め糞場WBCがあり、これまでトレイルカメラで長期間の定点観察をしてきました。 


シーン1:4/9・午前7:37・くもり・気温6℃(@0:03〜) 
朝からニホンザルMacaca fuscata fuscata)の群れが林床を遊動していました。 
どの個体も白っぽい毛皮で、まだ冬毛のようです。 
林内の残雪が消えると、逆に目立っています。 
白猿(アルビノまたは白変種)が右岸を歩き去る後ろ姿が写っていました。 

一方、画面の奥から親子(成獣1頭と子猿2頭)が右岸をこちらに向かって来ます。 
元気な子猿同士が岸辺でじゃれ合ったり、格闘遊びをしたり、追いかけっこ遊びをしたり、落葉灌木を登り下りしたりしています。 
猿たちが水路を跳んで対岸に続々と渡りました。 

画面の左端に奥から歩いて来た成獣個体に注目してください。 
タヌキの溜め糞場WBCに落ちていた黄色い物体に顔を近づけて何度も匂いを嗅いでいます。(@0:37〜) 
奥から走って来て合流した子猿も謎の黄色い物体に興味を示し、右手で触れました。 
残念ながら、せっかくいいところで録画が打ち切られてしまいました。 

この黄色い物体はおそらく、キカラスウリの落果だと思います。 
数日前には無かったので、誰かが運んできたのか、上から落ちたのでしょう。 

関連記事(同所で2、4ヶ月前の撮影)▶  

落葉樹に幾つもぶら下がっていたキカラスウリの黄色く熟した瓢果をニホンザルが冬に食べている(少なくとも味見している)ようなのですが、いまのところ状況証拠ばかりでした。


シーン2:4/9・午前7:40(@1:26〜) 
次に監視カメラが起動したときには、さっきのキカラスウリ落果が溜め糞場WBCから無くなっていました。 
強い興味を示したニホンザル母子のいずれかが持ち去ったようです。 
今回も採食シーンの決定的な証拠映像が撮れずに残念無念。 
キカラスウリの種子は被食型の動物散布で分布を広げます。
当地で種子散布者はニホンザルだろうと現時点では考えています。

排水溝の両岸で2頭の子猿が落葉灌木によじ登ったり、雪解け水を飲んだりしています。 


ニホンザルが排水溝を渡る跳躍シーンを1/3倍速のスローモーションでリプレイ。(@1:04〜1:25、@1:39〜1:50、@2:03〜2:09、@2:58〜3:42、@4:22〜4:31) 
一気に跳んで渡る個体もいれば、溝の中から生えていた落葉灌木(樹種不明)を経由して安全に渡る個体もいました。 
この灌木は、一時的に水没しても根腐れしない樹種なのでしょう。
ちなみに、第二の渡河法をやるのは、ニホンザルだけです。 
タヌキもアナグマもやらないのは、知能の問題というよりも、体の作りや運動能力の違いによるものでしょう。 
邪魔だからと言ってこの灌木を伐採してしまうと、サルは排水溝を渡りにくくなって困りそうです。 
ところが、現実の自然環境はもっと多様で、少し離れた位置で倒木が天然の丸木橋のようになっていて、野生動物が排水溝を渡れるようになっていました。(映像公開予定)


シーン3:4/9・午前11:00・くもり・気温9℃(@1:26〜)
2時間20分後にニホンザルの群れがまた戻って来ました。 


シーン4:4/9・午前11:10・くもり・気温12℃(@2:10〜) 


シーン5:4/9・午前11:14・くもり・気温11℃(@3:43〜) 
排水溝の水際で水面に口を付けて、雪解け水を飲んだようです。 
肝心の口元が見切れてしまって残念。 
灌木を経由せずに、右へ一気に跳んで渡りました。 
このニホンザル個体は右前足を怪我(手首の捻挫?)しているのか、着地しないように庇っているようです。 


シーン6:4/17・午後12:42・晴れ・気温23℃(@4:32〜) 
依然として排水溝に雪解け水が貯まったままです。


【考察】
ニホンザルがキカラスウリ落果を食べるかという問題と、猿が排水溝を跳び越える動画を2つに分割するべきでしたね。
次に機会があれば、冬の林内にぶら下がっているキカラスウリの熟した瓢果をトレイルカメラで見張って、説得力のある動画でニホンザルの採食シーンを撮ってみたいものです。
ヒヨドリなどの鳥が食べに来る可能性もありますが、どうもあまり人気がないようです。

つづく→

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