2026年6月下旬・午後13:05頃・晴れ
山林にあるモリアオガエルの繁殖池で私が静かにトレイルカメラの保守作業をしていると、少し遠くからジャブジャブと水音が聞こえました。
クマだったらやばい!と焦りつつも、音のする方をそっと覗いて見ると、その正体はホンドタヌキ(Nyctereutes viverrinus)でした。
東西に細長い池の東から浅い岸辺を単独でゆっくり歩いて来ます。
タヌキは水際に堆積したスギの濡れ落ち葉の匂いを嗅いでから、首筋を擦りつけて匂い付けしました。(@0:08〜)
どんどん近づいてきたタヌキは立ち止まると、私が先程立ってトレイルカメラの保守作業をしたスギの根元の匂いを嗅ぎ回っています。
私のゴム長靴の残り香がするのでしょう。
池畔の土手に静かに座っている私の1.5m直下を通り過ぎたのに、タヌキは私にまったく気づきませんでした。
カメラをズームイン、ズームアウトしても、タヌキは無反応でした。
てっきり、ニアミスしたタヌキが私に気づいた途端に慌てて逃げ出すかと予想したのですが、今回はタヌキの鈍臭さを実感しました(視力も嗅覚、聴覚も鈍い?)。
やがてタヌキは池に入水して、浅い岸辺をジャブジャブ歩いて遠ざかります。
今回のタヌキは、池で水を飲んだり浴びたりしませんでした。
この泡巣を野生動物が食べに来るか?(食卵するか?)という点に私は興味があって、トレイルカメラで池畔を見張っていたのです。
しかし、泡巣の真下を通り過ぎてもタヌキは気づかなかったのか、興味を示しませんでした。
周囲でモリアオガエル (またはシュレーゲルアオガエル?)の鳴く声♪が聞こえます。
動画を撮り続けながら私はゆっくり立ち上がって、歩き去るタヌキの後ろ姿を見送ります。
湿地にヨシが生えたエリア(池の西端)まで来ると、タヌキは立ち止まって眩しそうに目を細めながら、風の匂いを頻りに嗅ぐようになりました。
ようやく私の体臭を嗅ぎ取ったのかもしれません。
それでも警戒したり逃げ出したりすることはありませんでした。
タヌキは奥(池の西端)の湿地に放置されている太いスギ倒木に乗ると、その上を右往左往して餌を探しています。
タヌキも湿地をそのまま歩いて1歩ずつ足が泥濘にもぐるよりも、歩きやすい木道や丸木橋を好んで選ぶようです。
途中で立ち止まって、再び風の匂いを嗅いでいます。
このとき初めて気づいたのですが、このホンドタヌキ個体は左右の耳の形が非対称でした。
左耳だけいつも寝かせているというか、軟骨が潰れています。
出血こそしていませんが、喧嘩相手に噛まれた過去があるのでしょう。
対岸に上陸すると、タヌキはケナシヤブデマリ灌木の茂みの下に潜り込みました。
そこから池に張り出した横枝の先にもモリアオガエルの泡巣が産み付けられているのですが、やはりタヌキは興味がないようで、素通りしました。
対岸でタヌキはスギ植林地の獣道をうろついて、下草の匂いを嗅ぎ回っています。
吸血性の虫に食われたのか、体をひねって右脇腹を甘噛みしました(毛繕い?)。
太い木の根元で腰を屈めて排尿マーキングしたような気がするのですが、定かではありません。
(現場検証しても、そこに溜め糞場はありませんでした。)
最後は雑草が繁茂する左奥の林道へと向かい、姿を消しました。
※ タヌキが渡渉する水音が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。
【考察】
野生のホンドタヌキによる水辺の探餌行動をこれほど長々と直接観察できたのは初めてで、感激しました。
対岸のスギ幹に設置してあるトレイルカメラを動画の最後に写しました。
監視カメラの画角をタヌキが横切ったはずなのに、チェックしてみると残念ながら何も写っていませんでした。
カメラのセンサーが反応しなかったということは、脚が水で濡れるのも厭わずにジャブジャブと池を渡渉していたタヌキの体温が低かったのかもしれません。
雨季に複数個体のタヌキがこの池の岸辺を頻繁に往来して餌を探し歩いていることが、トレイルカメラで後に判明します。(映像公開予定)
せっかく個体識別できる特徴的なタヌキと間近に出会えたので、巣穴や溜め糞場の位置を突き止めたいものです。
池畔の灌木に産み付けられたモリアオガエルの泡巣のすぐ横を通ったチャンスが少なくとも2回あったのに、タヌキは泡巣を食べる(食卵)どころか、興味を示しませんでした。