2023年8月上旬〜中旬
スギ防風林で立木の根元と倒木の間に残されたホンドタヌキ(Nyctereutes viverrinus)の溜め糞場phを自動センサーカメラで監視しています。
右後脚を怪我して跛行する♂個体の登場シーンをまとめてみました。
シーン0:8/4・午後12:07・晴れ(@0:00〜)
明るい昼間にたまたま撮れた現場の様子です。
真夏の林床はシダ植物があちこちに繁茂しています。
カメラの設置アングルをもっと下に向けて、肝心の溜め糞場phを画面の中央に収めるるべきでしたね。
ちなみに、この倒木はヒトが間伐したのではなく、低い位置で幹がバキッと折れたまま放置されていました。
シーン1:8/6・午前3:30(@0:03〜)
深夜未明に跛行タヌキが右からやって来ました。
足に障害があるのにスギ倒木を乗り越えてきたとは思えませんから(※)、おそらく倒木の下の隙間をくぐって来たのではないかと思います。
※この推測は後にくつがえされました。
痛々しく跛行しながら溜め糞場phに辿り着くと、南南西を向いて排便しました。
そのまま手前に立ち去りました。
シーン2:8/8・午後21:23(@0:53〜)
2日後の晩にも同一個体が溜め糞場phにやって来て、スギ立木の下に左を向いて佇んでいました。
用を足す前に体の向きを変えると、股間にぶら下がっている睾丸が目立ちます。
信楽焼のタヌキの置物は金玉がデフォルメされてますけど、実物も確かに大きいようです。
たんたんタヌキの金玉は風もないのにブーラブラ♪
南を向いて排便すると、そのまま手前に立ち去りました。
シーン3:8/8・午後23:22(@1:53〜)
約2時間後の深夜に、新鮮な大便が追加されたばかりの溜め糞場phをよく見ると、多数の糞虫が蠢いていました。
糞便臭で誘引された黒い糞虫(種名不詳)がスギ林床を歩き、溜め糞に向かっています。
5倍速の早回し映像でご覧ください。
ところで、スギの根本で幹を下る虫の正体は何でしょうか?
今回なぜトレイルカメラが起動したのか不明です。
変温動物の昆虫がいくら活発に動き回っても、トレイルカメラのセンサーは反応しないはずです。
シーン4:8/10・午後20:36・気温(@2:05〜)
トレイルカメラの起動が遅れがちですけど、画面の奥からやって来たのかな?
溜め糞場phで匂いを嗅ぎ回るだけで、今回は排便しなかったようです。
方向転換した際に、股間に大きな睾丸を認めました。
今回は珍しく奥に立ち去ると、大きなシダの葉に隠れてすぐに姿が見えなくなりました。
画面の上端でスギの倒木を苦労して飛び越え、右に向かったようです。
よく見えなかったのが残念です。
3本足で跛行しながらもなんとか倒木を飛び越えられるとは驚きました。
シーン5:8/13・午後19:18(@2:40〜)
3日後の晩は小雨がぱらぱらと降っていました。
跛行しながら右から来たタヌキがスギの倒木を乗り越えて、溜め糞場phへ到着しました。
3本足でも倒木を飛び越えられることが、これで確実になりました。
排便したかどうか不明ですが、身震いしてから手前に立ち去りました。
※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。
【考察】
この個体は右の後足を地面に付けないように上げて歩くので、足を引きずるのではなく3本足でヒョコヒョコと跛行します。
罠にかかったり交通事故に遭った可能性もありますけど、夜の獣道でノイバラの棘を踏んでしまい肉球に刺さって化膿しているのではないか?と私は推測しています。
あまりにも分かりやすい特徴なので、溜め糞場phに通って来るタヌキの中でこの個体だけ確実に識別することが可能です。
素人目には若い個体のような気がするのですけど、夏毛で痩せて見えるだけかもしれません。
いつ見ても尻尾が力なく垂れているのは、怪我のせいで自信を失っているのかな? (負け犬の「垂れ尾」状態)
以前撮った排尿姿勢から、♂であることも判明しています。
関連記事(1ヶ月前の撮影)▶ 怪我した右後脚をかばって3本足で痛々しく跛行するホンドタヌキ♂が排尿マーキング【トレイルカメラ】
2つの撮影地点は数百m離れているのですが、この個体は跛行しながらも他の健常個体と遜色なく広い行動圏を活動できているようです。
タヌキは獲物を狩る肉食獣ではなく雑食性ですから、足が多少不自由でもなんとか生きていけるようです。
ニホンオオカミが絶滅して野犬も駆除された現代の日本では、逃げ足の遅いタヌキを捕食する天敵も居ません。
足の裏に棘が刺さっただけの負傷ならいずれ回復しそうですけど、もし障害が残れば、縄張りや異性♀を巡って健常個体♂と闘争になったときには不利になりそうです。
つづく→
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