2016年10月上旬
▼前回の記事
ネジレバネに寄生され飛べないキイロスズメバチ♂
スズメバチネジレバネ(Xenos moutoni)に寄生されたキイロスズメバチ♂(Vespa simillima xanthoptera)♂を山中で採集してきて、しばらく飼ってみることにしました。
苺パックを被せた中で、まずは蜂蜜を一滴与えてみたのですが、雄蜂は逃げ出そうとするのに必死で蜂蜜に気づきません。
蜂を採集した翌日、次は甘いブドウを与えてみました。(映像はここから)
食用シャインマスカットの実の皮を剥いてやり、ペットボトルの蓋を皿代わりに給餌してやりました。
すると今度は、喜んで甘い汁を舐め始めました。
果汁で汚れた体をときどき身繕いしています。
小野正人『スズメバチの科学』によると、
(スズメバチネジレバネの)最大の特徴として、成虫において雄と雌の形態がまったく異なる点があげられる。(中略)♀の体の大部分はスズメバチの膨腹部内に隠れ、体節の間より生殖器が顔をのぞかせている姿は不気味である。♀は♂を誘引する性フェロモンを分泌しているとされ、羽化後わずかしか生きられない♂が効率よく配偶者にたどり着けるシステムが進化している。ネジレバネの寄生を受けた個体は、働き蜂であれば労働をまったくしなくなってしまい、新女王蜂と雄蜂では生殖能力が失われるとされている。ただし、寄生を受けた新女王蜂に対して未寄生の雄蜂が交尾行動を起こすので、性フェロモンの生成はなされているとみなされる。(p136-137より引用)
※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。
つづく→ネジレバネに寄生されたキイロスズメバチ♂は飛べなくなる?
2017年7月下旬・午前5:59〜6:57
蓮池で早朝に咲いたばかりのハス(蓮)の花にクロマルハナバチ(Bombus ignitus)のワーカー♀が何匹も来ていました。
セイヨウミツバチ♀に混じって花から花へ忙しなく飛び回っています。
胸背が花粉で真っ黄色に汚れている個体がいます。
後脚の花粉籠が初めは空荷でも、やがて橙色の花粉団子をつけて運ぶようになります。
吸蜜の合間に花弁にしがみついて身繕いし、体毛に付着した花粉を落として花粉籠にまとめています。
2016年9月下旬
里山の中腹の草むらでキイロスズメバチ♂(Vespa simillima xanthoptera)を見つけました。
触角が長いので雄蜂です。
野菊の花に登ったものの吸蜜せずに、隣接するチカラシバ?の葉を登り始めました。
そのままチカラシバの葉にしがみついて静止。
腹部をヒクヒク動かして呼吸しています。
なぜか飛べないようで、長靴の先で茂みを蹴っても飛び立ちません。
ここで腹部の異常に気づきました。
隣り合う腹節の間に不自然な隙間があり、そこからスズメバチネジレバネ(Xenos moutoni)の頭が覗いています。
寄生されたキイロスズメバチの雄蜂はこのまま弱って息絶えるのでしょうか?
飛べなくなったのは、ひょっとしてネジレバネが寄主を行動操作しているのかな?
小松貴『虫のすみか―生きざまは巣にあらわれる (BERET SCIENCE)』によると、
♂はともかく、♀のネジレバネは寄主体内で死ぬまで過ごすため、途中で寄主を殺してしまうようなことはありません。それどころか、♀のネジレバネに寄生された昆虫は、しばしば通常よりも著しく長生きすることが知られています。ネジレバネにとって寄主の死は自身の死と同義であるため、何らかの方法で寄主の寿命を操作していると考えられています。 (p290-291より引用)
撮影後に生け捕りにして持ち帰りました。
雄蜂は毒針を持たないので、刺される心配はまったくありません。
つづく→ネジレバネに寄生されたキイロスズメバチ♂にブドウの果実を与えてみた
【追記】
鈴木知之『さなぎ(見ながら学習・調べてなっとく)』によると、
2013年にスズメバチネジレバネは2種に分けられました。新種のXenos oxyodontesは主にコガタスズメバチだけに、従来のX. moutoniはそれ以外のスズメバチ属に広く寄生します。
だからと言って、今回のスズメバチネジレバネがX. moutoniとは決めつけられないようです。
X.moutoniがオオスズメバチを中心にVespa属の複数種のスズメバチを宿主として利用していたのに対し、X.oxyodontesはコガタスズメバチとキイロスズメバチへの特殊化が見られた。コガタスズメバチからはX.oxyodontesの寄生しか確認されなかった。(中瀬悠太2012年研究実績報告書より引用)
2017年7月下旬
アベリア(別名ハナツクバネウツギ、ハナゾノツクバネウツギ)の生け垣でトラマルハナバチ(Bombus diversus diversus)のワーカー♀が訪花していました。
舌が短く盗蜜癖のあるクロマルハナバチ♀とは異なり、本種はマルハナバチの中でも舌が長いので、花筒の入り口から頭を突っ込む正当訪花で吸蜜することができます。
釣鐘型の花筒の中で蜂の黒くて長い舌の出し入れが透けて見えます。
訪花の際にトラマルハナバチ♀の頭部は白い花粉で汚れますし、次の花に潜り込むときに雌しべに触れて受粉を助けています。
後脚の花粉籠に白い花粉団子を少量付けていました。
こうして、トラマルハナバチ♀は蜜の報酬の代わりに送粉者としての役割を果たしているのです。
※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。
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花筒の根本にある盗蜜痕に注目 |
高圧線の鉄塔#21でのハシボソガラス営巣記録#32
2017年6月中旬
いつものようにハシボソガラス(Corvus corone)の巣を微速度撮影で長時間監視していたら、育った雛が巣立ちを躊躇する興味深い行動が記録されていました。
前回の記事で紹介した10倍速映像から該当部分を抜粋し、2.5倍速まで再生速度を落としてじっくり見てみましょう。
親鳥が給餌を済ませて巣から離れると、直後に雛の1羽が高く飛び上がって巣の右上の鉄骨に止まりました。
そこで元気に羽ばたき練習を披露。
かなり筋力がついたようですが、このまま鉄塔から飛び降りて巣立ちするのでしょうか?!
腕白な雛は傾斜のついた鉄骨をバランスを取りながら歩いて渡り、独りで遊んでいるようにも見えます。
私の予想に反して、親鳥は餌で釣って雛の巣立ちを促したりしませんでした。
親鳥が帰巣しても巣に残った3羽の雛に給餌するだけで、巣から離れた鉄骨で遊んでいる一羽の腕白な雛のことはあまり気にしていないように見えます。
もちろん、もし雛が下界に飛び降りたら親鳥もすぐに追いかけて、茂みなど安全な場所まで雛を誘導するはずです。
高所の冒険をハラハラして見ている私の心配をよそに、腕白な雛は巣の真上の鉄骨からピョンと飛び降りて、ようやく巣に戻りました。
無事で一安心。
※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。
つづく→#33:巣立ちが遅れた最後のハシボソガラス雛が独りで羽ばたき練習(野鳥)
↑【おまけの映像】
同じ素材をほぼリアルタイムまで再生速度を落としてみました(1.25倍速映像)。
カラスの動きにもっと残像が出て、不自然な映像になってしまいます。
微速度撮影はフレームを間引きして記録しているので、完璧に復元できないのは仕方がありません。
2016年10月上旬
農道沿いに咲いたオオハンゴンソウの小群落でシロオビノメイガ(Spoladea recurvalis)という蛾が訪花していました。
触角を常に動かし、少しずつ移動しながら吸蜜しています。
前回撮ったのは夕刻でしたが、明るい昼間も吸蜜しに来るようです。(昼行性)
この花は蜂蜜草と言われるだけあって蜜量がよほど多いようで、なかなか飛び立たず一心不乱に吸蜜しています。
▼前回の記事
夕暮れにハチミツソウの花蜜を吸うシロオビノメイガ(蛾)
今回は花弁もしっかり残っていて、ハチミツソウと分かりやすい花です。
【追記】
この植物はハチミツソウではなくてオオハンゴンソウですね。
遅ればせながら訂正しておきます。
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これは同じ日に撮った別個体 |
高圧線の鉄塔#21でのハシボソガラス営巣記録#31
2017年6月中旬・午後15:11〜16:17
ハシボソガラス(Corvus corone)親鳥♀♂が共稼ぎで巣に通って4羽の雛に給餌する様子を微速度撮影で長時間記録してみました。
10倍速の映像をご覧ください。
微速度撮影した66分間の間に親鳥♀♂は計12回も給餌しました。
さて、雛のいつもと違う行動に何かお気づきになられましたでしょうか?(@0:31〜1:15)
詳しくは次回。
再生時間 行動
0:22 帰巣
0:30 出巣
0:31 出巣 親鳥ではなく、幼鳥γが少しずつ巣から離れ冒険
1:00 帰巣
1:02 出巣 その間に幼鳥γが巣の上の鉄骨に移動
1:15 γ@帰巣 上の鉄骨から巣に飛び降りた。無事で何より
1:19 帰巣
1:25 帰巣
2:16 帰巣
2:22 出巣 鉄塔の奥の高圧線(最上段)に止まり直し監視
2:26 帰巣 もう1羽の親鳥が帰巣、雛給餌
2:30 出巣
2:33 高圧線から飛び立った
3:38 帰巣
3:40 出巣
3:43 帰巣
3:46 出巣
4:01 帰巣
4:04 出巣
4:14 帰巣
4:18 出巣
5:01 帰巣
5:04 出巣
5:55 帰巣
5:57 出巣 巣の右の鉄骨に止まり直して監視。
6:09 飛び去った
6:12 帰巣
6:14 出巣
6:36 撮影終了
カメラを据え付けた三脚が強風で振動してしまいました。
いつものように動画編集時に手ブレ補正処理をしてみたら、副作用で鉄塔がグニャグニャと妙に歪んだりしてしまいました。
あまりにも酷いので、仕方なくオリジナルのままお見せします。
自動色調補正も施していません。
最近、YouTubeの手ブレ補正のアルゴリズムが変わった気がします。(質が落ちた改悪)
つづく→#32:巣立ちの近いハシボソガラス雛の冒険(その2)後編 【2.5倍速映像:野鳥】
2017年7月下旬・午前5:11〜5:28
早朝の蓮池に咲いたハス(蓮)にセイヨウミツバチ(Apis mellifera)のワーカー♀が訪花していました。
開花直後の花に来ていた蜂は体中が大量の花粉で真っ黄色に汚れていて、初めは正体が全く分かりませんでした。
一瞬クロマルハナバチ♂か新種のハチかと見間違えたぐらいです。
同定のために謎の蜂を採集したくても捕虫網を持参しなかったのでどうしようか…と思案していたら、次第にハスの花粉の量が減るとセイヨウミツバチだと判明。
複数個体を撮影。
花に着陸したミツバチは、花糸の奥に潜り込んで吸蜜しています。
後脚の花粉籠に橙色の花粉団子を付けている個体と空荷の個体が居ます。
採餌の合間に空中でホバリング(停空飛翔)しながら身繕いして、体に付着した花粉を花粉籠に移しています。
咲いているハスの花は他に幾らでもあるのに、同じ花でミツバチが小競り合いの空中戦を繰り広げることが時々ありました。
別な巣から来たワーカー♀間の餌場を巡る争い(占有行動)なのでしょうか?
高圧線の鉄塔#21でのハシボソガラス営巣記録#30
2017年6月中旬・午後14:55
いつもの撮影ポイントへ向かっていると、ハシボソガラス(Corvus corone)の巣がある高圧線鉄塔#21で一羽のヒヨドリ(Hypsipetes amaurotis)が居ました。
鉄塔の中段に止まって辺りを見回しています。
ヒヨドリにしてはあまり聞き慣れない鳴き方を始めました。
嘴の動きと鳴き声が一致したので(リップシンクロ)、この個体の鳴き声で間違いありません。
カワラヒワの鳴き声も一緒に聞こえて紛らわしいのですけど、これはヒヨドリが縄張り宣言しているさえずり(囀り)なのですかね?
あまり面白くもない映像を長々と撮り続けたのは理由があって、ハシボソガラスの親鳥が縄張りへ侵入したヒヨドリに気づいたらどんな反応をするのか、興味があったからです。
すごい剣幕でヒヨドリを追い払うでしょうか?
例えばカラスの天敵の猛禽類がハシボソガラスの巣の近くに飛来すると、カラスの親鳥はすごい剣幕で急行し、モビングして縄張りから追い払ってしまいます。
ヒヨドリはカラスの雛を襲う天敵でもありませんし、ニッチもおそらく違うので、カラスの縄張りに侵入しても黙認するでしょうか?
ところがハシボソガラスの番は採餌に出掛けて辺りに不在で、ヒヨドリはカラスの巣の下でひたすら鳴き続けています。
自発的に飛び立つ気配もありません。
私も先を急ぐので、痺れを切らして撮影を打ち切ってしまいました。
※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。
つづく→#31:巣立ちの近いハシボソガラス雛の冒険(その2)前編【10倍速映像:野鳥】
2016年9月下旬
田んぼの畦道の横に生えたアキノノゲシの群落でホソバセダカモクメ(Cucullia fraterna)という蛾の幼虫を見つけました。
保護色にはなっておらず、白い綿毛に居るとむしろ目立ちます。
黄色と黒の模様は、毒があることを捕食者に知らせる警告色なのかな?
見つけたときこの幼虫はじっとしていたのですが、花が終わった後の綿毛や種を食べていたのですかね?
このときは先を急ぐ用事があって、摂食シーンをじっくり観察できませんでした。
飼育する余力も無くて、採集もしていません。
▼関連記事
オニノゲシの葉を食べるホソバセダカモクメ(蛾)幼虫
【追記】
ホソバセダカモクメ幼虫の種子食は2年後に確認することができました。
▼関連記事
ホソバセダカモクメ(蛾)の幼虫がアキノノゲシの種子を食べる際のトレンチ行動
高圧線の鉄塔#21でのハシボソガラス営巣記録#29
2017年6月中旬・午後15:05〜15:10?
この日も未だ4羽のハシボソガラス(Corvus corone)雛鳥は巣立っていませんでした。
この日に撮れた親鳥による2回分の給餌シーンをまとめてみました。
巣内の雛は各々で、羽繕いや羽ばたき練習をしています。
※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。
つづく→#30:ハシボソガラスの巣の下で鳴く♪ヒヨドリ(野鳥)
2017年7月下旬・午前8:17
アベリア(別名ハナツクバネウツギ、ハナゾノツクバネウツギ)の生け垣で、シオヤムシヒキ♂(旧名シオヤアブ;Promachus yesonicus)が葉の上に止まっていました。
腹端に白い毛束があるので♂ですね。
抱えている獲物はセマダラコガネ(Anomala orientalis)でした。
その胸背(頭部?)から吸汁しているようですが、口器の状態はよく見えませんでした。
シオヤムシヒキ♂は腹部をヒクヒクさせて腹式呼吸しています。
最後は獲物を抱えてどこかに飛び去ってしまいました。
アベリアに訪花していたセマダラコガネを狩ったのでしょうか?
それとも横の芝生で狩ったのかもしれません。
いつか狩りの瞬間を観察してみたいものです。(飼育すれば見れるかな?)
2016年11月下旬・午後16:17(日の入り時刻は16:22)
晩秋の日没直前に、田園地帯の上空で9羽の猛禽類が群れで帆翔していました。
小規模ながらも猛禽類の群飛を見たのはこれが初めてです。
秋に北国から南へ渡る途中の群れにしては、時期が遅過ぎるでしょうか?
現場は山に近い田園地帯ですが、このときは上昇気流の勢いがいまいち弱いようです。
最後はタカ柱の群れが分散しました。
5羽が山の方へ向かい、4羽だけがこの空域に残りました。
タカ柱とは上昇気流のあるところへタカが集まってくることである。そのなかでサシバは帆翔しながら高度を上げる。それがあたかも柱状に見えるところからタカ柱という。 (茂木一男『60歳からのホーク・ウォッチング』p54より引用)
素人目にはなんとなくトビ(Milvus migrans)のような気がするのですけど、夕暮れ時で翼の下面の模様をしっかり確認できず、同定は無理でした。
普段この辺りのフィールドで私がよく見かける猛禽類はトビとノスリ、(夏鳥サシバ)です。
2016年9月下旬
山麓の農村で畑の端に栽培されたアオジソの小群落に白い花が咲いていました。
そこにニホンミツバチ(Apis cerana japonica)のワーカー♀が訪花していました。
後脚の花粉籠に白い花粉団子を少量付けています。