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2024/04/02

扇風行動で巣内を冷やすコガタスズメバチ♀

 



2023年7月中旬・午前11:45頃・晴れ 

物置小屋の軒先に営巣したコガタスズメバチVespa analis insularis)のコロニーを定点観察しています。 
前回と比べて巣の形状ががらっと様変わりしていました。 
外皮が少し大きく成長して、球形というよりも、やや滴状の形になりました。
初ワーカー♀が羽化したので、初期巣に特有の煙突状の細長い巣口は完全に撤去されていました。 
この撤去作業を観察・撮影するのが私のミッシング・リンクになっているのですが、残念ながら今季も見逃してしまいました。 
新たな巣口として、外皮の底部の側面に丸くて大きな穴が開いていました。 

巣口が大きいので中の様子が結構よく見えます。 
中から外をじっと見張っている大型の個体は創設女王です。 
巣内で少なくとももう1匹の内役ワーカーが動き回っていました。 
巣口に顔を出したものの、飛び立って外役に出かけませんでした。 
巣盤の育房の一部は白い繭のキャップで覆われています。 (繭の中で蛹が育っています。) 

巣口の縁から外皮に乗り出した門衛♀が単独で扇風行動をしていました。 
巣内の気温が高くなり過ぎると幼虫や蛹の発生に悪影響を及ぼすので、巣内に冷風を送り込んでいるのです。 
コガタスズメバチの巣口がこんなに大きな例を私は初めて見たかもしれません。
特に暑い日には巣内に熱気がこもらないように、臨機応変に巣口をかじり取って大きく広げるのかもしれません。
後で巣口を狭くするのもスズメバチにとっては朝飯前です。





扇風行動をストロボ写真で記録する際に、羽ばたきが止まって見えるようにもっとシャッタースピードを上げるべきでした。 
ハイスピード動画でも扇風行動を撮りたかったです。 
しかし現場に長居していると、近所の人に怪しまれてしまいます。 
せっかく人通りのない時間帯を狙って来たのに、コガタスズメバチの巣の存在を気づかれたら最後、大騒ぎになり駆除されてしまうでしょう。 
手早く撮影を済ませ、そそくさと現場から立ち去りました。 
とにかく焦っていた私は、肝心の気温を計るのも忘れてしまいました。 

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。 


つづく→? 
残念ながら、定点観察できたのはこの日が最後でした。 
予想通り、ここでもコガタスズメバチの巣は丸ごと駆除されてしまいました。 
スズメバチにとっても蜂好きにとっても、受難の時代が続きます。 
各種スズメバチの生活史を撮影するプロジェクトが遅々として進まないのは、定点観察の途中で巣が駆除されてしまうからです。 
人目を忍んで細心の注意を払ってコソコソ通わないとスズメバチの観察ができないのは、ストレスでもあり、情けなくなります。 
コガタスズメバチは攻撃性が高くないので、蜂を刺激しなければ、専用の防護服も着用しないで普通に撮影することが可能です。
(黒い服を着るのは避け、黒髪を帽子で覆い、香水や整髪料は使わないなど、服装には注意が必要です)


【アフィリエイト】 

2024/03/10

枯草に産卵するヒメウラナミジャノメ♀

 

2023年6月下旬・午後14:35頃・くもり 

農村部の畑の横でヒメウラナミジャノメ♀(Ypthima argus)を見つけました。 
道端に咲いたドクダミの群落で訪花吸蜜しているかと初めは思ったのですが、よくよく観察すると、地表の枯草に潜り込んで腹端を擦りつけています。 
地面を歩き回りながら、あちこちの枯草に腹端をチョンチョンと付けています。 
産卵中の腹端の動きをようやく側面からしっかり撮れました! 
1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@1:17〜1:46) 
ヒメウラナミジャノメ♀の産卵行動は初見です。 

本種幼虫の食草はイネ科やカヤツリグサ科の生葉なのだそうです。 (『フィールドガイド日本のチョウ』p271より) 
それなのに、食草ではなくわざわざ枯葉や枯草に産卵する行動が進化してきたのは不思議です。 
寄生蜂への対策なのでしょうか? 
しかし、ヒメウラナミジャノメの卵は薄い緑色なので、本来は緑の生葉に産卵する方が目立ちません(保護色)。 
茶色の枯草に産み付けると逆に目立ってしまうはずです。 
卵から孵化した幼虫は、近くに生えた食草を自力で探し出す必要があります。 
鈴木知之『虫の卵ハンドブック』でヒメウラナミジャノメの産卵習性について調べると、
産卵場所は、枯葉・葉(イネ科のチヂミザサなど) 。♀は食草の葉裏や周辺の枯れ葉などに、1卵ずつ産卵する。(p109より引用)

産卵の合間に休息(日光浴)する際には、翅を開きました。 
この♀個体には、後翅の外縁に切れ込み状の損傷があります。 
左右対称の損傷なので、鳥に襲われかけたビークマークかもしれません。
(多数の眼状紋で威嚇していても、飛翔中は鳥に襲われることがあるのかもしれません。)
少し休むと、次の産卵を始めます。 


【アフィリエイト】 

2024/03/07

日光浴中のアオダイショウに集るムネアカオオアリ♀【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2023年6月下旬・午前11:50頃・晴れ 

砂利が敷かれた山道にアオダイショウElaphe climacophora)が長々と横たわっていました。 
私が近寄っても逃げないので、車に轢かれた死骸(ロードキル)なのか?と初めは思いました。 
ムネアカオオアリCamponotus obscuripes)のワーカー♀が群がって体中を這い回っても、蛇は全く無反応です。 
アリが眼球に触れても瞬きしませんでしたが、そもそも蛇にはまぶたが無いので、生きた蛇も瞬きすることはありません。 

周囲の森から聞こえる澄んだ美声は、オオルリ♂(Cyanoptila cyanomelana)の囀りさえずり♪ですかね? 

私が広角で動画を撮りながら蛇にゆっくり近づき、背後から回り込んでも、逃げようとしません。 
アオダイショウは頭部だけ日向に居て、残りの体は日陰に居ることが分かりました。 
ヘビの生死を確かめるために動画を撮りながら足で軽く小突いてみようとしたら、遂にアオダイショウが舌を出し入れし始めました。 
風の匂いを舌で鋤鼻器じょびきに送り込んで嗅ぎ取る行動です。 
アオダイショウが先の割れた舌を高速で出し入れする様子を240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:46〜2:34) 
頭部を左右に揺らしながら、かすかに前進していることが分かります。 

ピンクの舌を素早く出し入れしながら砂利道をスルスルと蛇行して横切り、道端の草むらに潜り込みました。 
林道の左右はスギ植林地でした。 


関連記事(2ヶ月前、1年前の撮影)▶  

2024/02/16

ブラックベリーの花蜜を吸うキタテハ夏型

 

2023年6月上旬〜中旬 

民家の裏庭の生垣にブラックベリー(=セイヨウヤブイチゴ)の花が咲き、夏型のキタテハPolygonia c-aureum)が訪花していました。 
昨年は撮り損ねて悔しい思いをしたので、念願の吸蜜シーンをいそいそと撮影しました。 
同じ場所で2回撮れた映像をまとめました。


シーン1・6月中旬・午前9:00頃・晴れ(@0:00〜) 

日向で半開きの翅を開閉しながら口吻を伸ばして吸蜜しています。 
横の車道を車が通りかかったら、飛んで逃げました。 
 次はやや日陰の花に移動して、吸蜜を続けます。 

ハキリバチの一種が正面から飛来すると、キタテハは素早く翅を打ち下ろして追い払いました。(@0:45〜) 
その撃退シーンを1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 

ブラックベリーの白い花は萎れかけ、受粉後の未熟果が早くも育ちつつあります。

シーン2・6月上旬・午前10:50頃・晴れ(@1:26〜) 

この日は日向で翅をしっかり閉じたままブラックベリーの花蜜を吸っていました。 
動画を撮り始めたらすぐに吸蜜を止めてしまい、少し飛んで近くのミツバアケビの葉に止まり直しました。 
木漏れ日の落ちる葉上は完全な日向ではなく、半開きで開閉していた翅を最後は閉じてしまいました。 
暑くて日光浴の必要がないのでしょう。 


※ 撮影した時系列順ではなく、入れ替えました。

2024/01/10

舗装路で日光浴していたアオダイショウの幼蛇が蛇行して逃げるまで

 

2023年5月下旬・午前11:45頃・晴れ 

郊外の住宅地で蛇が舗装路の日陰から日向に進出しようとしていました。 
日光浴していたようです。 
見慣れない横縞模様があり、調べてみるとアオダイショウElaphe climacophora)の幼蛇でした。 
(体長がそんなに小さい印象はなかったけどな〜。)

私が動画を撮りながら右足を1歩踏み出したら、蛇は慌てて身を翻し、側溝沿いの木の下に逃げ込みました。 
蛇行して素早く逃げる様子を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 
舌をチロチロと出し入れしていますね。
このとき1.5倍に拡大しています。(デジタルズーム)

2023/12/31

尾根道で日光浴してから飛ぶ越冬明けのヒオドシチョウ【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2023年4月中旬・午後12:50頃・晴れ 

里山の尾根道を歩くと、日陰のところどころに残雪が未だ少しありました。 
越冬明けのヒオドシチョウNymphalis xanthomelas japonica)を尾根道で何頭も見かけました。 

尾根道の路肩で落ち葉の上に止まって閉じた翅を小刻みに震わせている個体がいます。 
翅の外縁が激しく破損していて、越冬の厳しさを物語っています。 
翅をパッと全開にしてから飛び去りました。 
気温が未だ低いので、くもっていると飛び立つ前に準備運動が必要だったようです。 


次は日向で翅を全開にして日光浴している個体がいました。 
自発的に飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:58〜) 
尾根道に転がっている丸太の上で翅を開閉しながら日光浴していた個体は、翅がほぼ無傷でした。 
複数個体を撮影。 

関連記事(1、9年前の撮影)▶  

ヒオドシチョウの性別を私は外見から判別できませんが、蝶道を作って侵入者(他のチョウ)を追尾していたことから、おそらく♂が尾根道に縄張りを張っているようです。 
そのシーンは動きが激し過ぎて、動画に撮れませんでした。 

 越冬後は山頂や稜線でよく見られ、♂は見晴らしのよい場所で占有行動をとる。(フィールドガイド『日本のチョウ』p225より引用) 


関連記事(同じ尾根道で同日の撮影)▶ 日光浴してから飛ぶ越冬明けのエルタテハ 


冬の間になまった体に鞭打って尾根道まで登ってきたのは、ギフチョウ類の配偶行動を観察するためでした。
しかし残念ながら、 目当てのギフチョウ、ヒメギフチョウは1頭も見かけませんでした。 
どうやら時期を逃してしまったようです。
今季は春の雪解けが早かったので、もっと早く観察に来るべきでした。

2023/12/29

カキドオシの花蜜を吸うルリシジミ♀

 

2023年4月中旬・午後14:40頃・晴れ 

河畔林の林床に咲いたカキドオシの群落でルリシジミ♀(Celastrina argiolus)が訪花していました。 
晴れているのに、初めは翅を閉じたまま吸蜜していました。 
閉じた後翅を互いに擦り合わせています。 
春風が強く吹くせいであまり飛ばず、隣の花に歩いて移動します。 

後半からは花弁に止まったまま吸蜜を止め、翅を半開きにして日光浴に専念しています。 
前翅の外縁に太い黒帯があることから♀と判明。 
粘って撮影しても飛んでくれませんでした。 

近くでウグイス♂のさえずる鳴き声♪が聞こえます。 
春の林床に咲くスプリング・エフェメラルは、カキドオシに交代したようです。

2023/12/17

春の里山で残雪を跳びはねて横切る越冬明けのニホンアマガエル

 

2023年5月上旬・午後13:50頃・晴れ 

里山を流れる沢の源流部の渓谷が冬の雪崩で埋もれていたのですが、その雪がだいぶ溶けていました。 
両岸の地面よりも雪面が高く盛り上がっていたのに、低くなっていました。 
標高が低くて初夏には完全に消失するので、雪渓というほどではありません。 

土で汚れた残雪の上にニホンアマガエルHyla japonica)が居ました。 
越冬明けの個体が日光浴していたようですが、雪上では体温が上がらないでしょう。 
カエルは変温動物ですから、雪上では低体温で仮死状態なのもしれません。(行き倒れ) 
アマガエルの生死を確かめるために私が動画を撮りながら靴の先で蹴るふりをすると、ピョンピョン跳んで逃げ始めました。 
そのまま連続して跳ぶと、雪の無い地面に無事に上陸しました。 
気温や雪面の温度を測るべきでしたね。 
連続跳躍の様子を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:21〜) 

ちなみに、雪崩で埋もれた渓谷を渡るカモシカなど野生動物の足跡は見つかりませんでした。 
雪面がガリガリに固いと足跡が残りにくいのです。
それともスノーブリッジの下の見えない空洞を踏み抜く恐れがあるので、危険を察知して春の間は通行を回避しているのかもしれません。

2023/11/11

河川敷を蛇行横断するアオダイショウが公衆トイレに侵入未遂するまで

 

2023年4月中旬・午後12:00頃・晴れ 

河川敷を横切る用水路のコンクリート護岸にてアオダイショウElaphe climacophora)が春の日差しを浴びていました。 
私が近づくと警戒し、ゆっくり蛇行して逃げ始めました。 

舌を素早く出し入れしながら蛇行で前進します。 
コンクリートの地面を離れ、隣の枯れた芝生エリアに移動しました。 
さらにシロツメクサで覆われた草地をひたすら進んで行きます。 
一体どこに行くのでしょうか? 
野ネズミやモグラの巣穴に侵入して獲物を狩るのではないかと期待して、アオダイショウを追跡することにしました。 
しかし、それらしき巣穴があってもヘビは素通りしました。 
しつこく付いて歩く私から逃げていただけかもしれません。
緑の草地に点在する白いものは、堤防路のサクラ並木から散ったソメイヨシノの花弁です。 

やがてアオダイショウは河川敷の公衆トイレに近づき、日陰に入りました。 
変温動物のアオダイショウにとって、どうやら日向は暑かったようで、体温調節のため日陰に避難したのでしょう。 
しばらくすると公衆便所のコンクリート土台に近づきました。 
幸いトイレを使っているヒトは誰もおらず、騒ぎにならずに済みました。
小便器のある男性トイレは扉が無い開放型ですから、ノックは不要です。 
その入口でアオダイショウは鎌首をもたげて、中の様子をうかがっています。 
舌を出し入れして、ヒト♂の小便臭を鋤鼻器で嗅ぎ取っています。 
男性トイレの中に蛇が侵入したら面白いスクープ映像になりそうです。
ところが、アオダイショウは入口から自発的に後退して、日陰の草むらに隠れました。 
トイレの床が熱伝導の良いアルミ製になっていて触れるとひんやりしますから、せっかく日光浴で暖まった体温が下がり過ぎるのを嫌ったのかもしれません。 

ヘビを捕獲したことが一度もない私は、絶好の機会に悩みました。 
しかし今回も怖気づいて生け捕りに挑戦できませんでした…。 
帰路に同じ公衆トイレを再訪したときには、アオダイショウは居なくなっていました。






2023/11/03

日光浴してから飛ぶ越冬明けのエルタテハ

 

2023年4月中旬・午後12:50頃・晴れ 

里山の尾根道には残雪が少しありました。 
山道の横にある枯れ草の上で越冬明けのエルタテハNymphalis vaualbum)が翅を開閉しながら日光浴していました。 
体温を上げてから自発的に飛び去りました。 
 翅裏をしっかり見せてくれず、性別を見分けられません。 
右後翅の激しい破損が、越冬の厳しさを物語っています。 
それでも飛翔能力に支障はないようです。 
飛び立つ瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。

よく似たヒオドシチョウも同様に日光浴する姿を、この日の山行で多数見かけました。(映像公開予定)
私のフィールドでエルタテハは個体数が少なく、出会えると嬉しい蝶のひとつです。


関連記事(9年前の撮影@晩秋)▶ エルタテハの日光浴

2023/10/15

越冬明けの早春に求愛するキタテハ♂と交尾拒否する♀【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2023年3月下旬・午前11:40頃・晴れ 

川沿いの枯れ草に覆われた土手に越冬明けのキタテハPolygonia c-aureum)秋型が止まり、翅を開閉しながら日光浴していました。 
やがて自発的に飛び去りました。 
飛び立つ瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:09〜) 
フィールドで見かけるキタテハの性別を私は自信を持って見分けられません。 
この個体はなんとなく、縄張りを張る♂が、飛来したライバル♂を追い払いに行ったように見えました。 
あるいは♂が♀を待ち伏せしていて、飛来した♀を追いかけて飛び立ったのかもしれません。 

『フィールドガイド日本のチョウ』という図鑑でキタテハ♀♂の識別法を調べると、
キタテハ:秋形では♀の(翅:しぐま註)裏の外縁は一様に濃褐色で、♂では淡黄色を帯びる。(p223より引用)
しかし翅裏に正対して見ないと、太陽光の角度によって色の濃淡は変わって見えます。 
翅裏を斜めからしか撮れていない動画で性別を見分けるのは難しいのです。

辺りを探すと、堤防路の道端で枯れた落ち葉の上に2頭のキタテハ♀♂が並んで止まっていました。 
♀は翅をしっかり閉じたまま、じっとしています。 
一方、♂は斜め後ろから頭部を♀の翅裏に密着させ、翅を半開きにしました。 
これがキタテハ♂の求愛行動なのでしょうか? 
♂の触角は♀の翅裏に触れています。 
もしかすると♀の性フェロモンの匂いを嗅いだり体に直に触れたりして、同種の♀であることを確認しているのかな? 

キタテハの求愛行動をじっくり記録するために、私は240-fpsのハイスピード動画に切り替えました。(@0:48〜1:46) 
♂は前脚で頻りに♀の翅裏に触れています。 
翅を広げた♂は日光浴しているようです。 
交尾に備えて体温を上げているのでしょうか。 
春風が吹くと、キタテハ♂の翅が煽られます。 
キタテハ♀が翅を閉じたままなのが交尾拒否の意思表示なのでしょう。 
シロチョウ科の交尾拒否行動とは全く異なります。 
しばらくするとキタテハ♂は紳士的に諦めて飛び去りました。(@1:25〜) 
翅をしっかり閉じた♀は全く無反応で、反射的に♂につられて飛び立つこともありませんでした。 
煩わしい♂から解放されてしばらくすると、ようやく♀も身動きするようになり、自発的に飛び立ちました。(@1:37〜) 
低空で羽ばたき、前方に飛び去りました。 

キタテハ♀の交尾拒否行動を観察できたのはこれが2回目です。
関連記事(9年前の撮影:6月下旬)▶ キタテハの交尾拒否 
どうやら♀が翅を固く閉じたままなので、♂は腹端の交尾器を連結できないでいるようです。 (交尾に成功すれば互いに逆向きに連結するはずです。) 
これがキタテハ♀の交尾拒否行動なのでしょう。 
やがて諦めた♂は飛び去りました。 

堤防路の少し離れた地点でも同様のシーンが繰り広げられていました。(@1:48〜) 
地上に2頭のキタテハ♀♂が並んで止まっています。 
さっきと同一の♀♂ペアなのか別個体なのか不明です。 
枯れ葉の上で翅を閉じていると、翅裏は枯葉のように地味なため、見事な保護色で見つけにくくなっています。 

今回も♀♂ペアは共に翅をしっかり閉じています。 
高画質のFHD動画で交尾拒否行動を記録しました。
♀の閉じた翅裏に対して♂が正対してアプローチするのがキタテハ♂の求愛の流儀なのでしょう。 
体の向きは互いに直交しています。 
♂は頭部や触角を♀の翅裏にぐいぐい押し付けながら、♀の背後に回り込んでマウントしようと試みます。 
しかし♀が翅を閉じたままなので、腹端がしっかり隠されていて交尾器を結合できません。 
この間に♂が翅を少し開閉しました。 
これが求愛の儀式的な行動なのかどうか、定かではありません。 
♀の背後で♂が翅を広げて美しい翅表を見せつけたところで、♀には見えない気がします。 
♀の閉じた翅を♂が手足を使ってこじ開けることは出来ず、♂は交尾を諦めて飛び去りました。 
♀に交尾拒否された♂が飛び去る様子を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@2:06〜) 

キタテハの翅裏は地味なので、地上で翅を閉じたままだと周囲の枯葉や落葉に完全に紛れています(隠蔽擬態、保護色)。 
翅の外縁の不規則なギザギザ(鋸歯)も隠蔽効果を高めています。 
地上で翅を閉じたまま静止している同種♀を♂はどうやって探し出すのでしょうか? 
今回のケースでは♂の求愛を拒否したので、地上の♀が性フェロモンを放出して♂を誘引しているとは思えません。 
(♂を誘引した上で、求愛しに来た♂を♀が品定めしている可能性は残ります。)
可視光しか見えないヒトとは違って昆虫の視覚は紫外線のスペクトルでも見えているので、もしかすると紫外線の下では♀の姿がよく目立つのかもしれません。 
紫外線カメラでキタテハを撮影し、確かめてみたいものです。 


採集したキタテハ♀の標本(死骸)を野外に放置したら、♂が求愛に来て交尾を試みるのかどうか、実験してみるのも面白そうです。 
♂の標本に対してはどんな反応をするでしょうか? 
同性に誤認求愛するでしょうか?
もしも近縁種シータテハ♀の標本を使うと、キタテハ♂はしっかり異種だと見分けられるでしょうか?
異種に誤認求愛するかな?
(ヒトが翅裏を見ただけでシータテハとキタテハを見分けるのは、蝶に詳しいマニアでなければ難易度が高いです。)

地上で休んでいるキタテハ♀を♂が目敏く見つけて横に舞い降りたとは限りません。
♂の縄張り内に飛来した♀を追尾して乱舞になり、一緒に着陸したのではないかと思います。 
この過程はあまりにも動きが激し過ぎて、しっかり観察・撮影できていません。(見失いがち)

交尾済みの♀にとって、♂のしつこい求愛(セクハラ)は煩わしいだけです。 
キタテハでは交尾拒否の決定権が♀にあり、♂が♀の意志に反してむりやり交尾することは物理的に不可能です。 
交尾拒否された♂はあっさりと紳士的に諦め、次の♀を探しに行きます。 
キタテハで求愛が成就して交尾に至る例を私は未だ一度も観察できていません。 
♀が翅を開いて♂を受け入れれば互いに逆向きで連結するはずですが、そもそも交尾中のキタテハ♀♂も未見です。
かなり古い本ですけど、保育社『原色日本昆虫生態図鑑IIIチョウ編』(1972)を紐解いてキタテハの配偶行動について調べると、
秋型の交尾は一般に越冬後に行なわれるが、9月に交尾した記録もある。(p228より引用)

独りになった♀はようやく翅を開くようになりました。(@3:01〜) 
後翅外縁部の損傷が激しい個体で、越冬の厳しさを物語っています。 
最初に観察した♀とは別個体であることが判明しました。 
日光浴で体温を上げると、自発的に飛び立ちました。(@3:28〜) 
そのまま低空で飛び続け、オオイヌノフグリの花が咲き乱れる土手を下りて行きました。 


2023/10/03

オオイヌノフグリの花蜜を吸う越冬明けのキタテハ秋型

 

2023年3月下旬・午前11:45頃・晴れ 

雪が溶けた川原の土手は枯れ草に覆われ、オオイヌノフグリの群落だけが青々としています。
早春にいち早く咲いたオオイヌノフグリの大群落で秋型のキタテハPolygonia c-aureum)が訪花していました。 
翅を広げて日光浴しながら吸蜜しています。 
そのままオオイヌノフグリの花畑を歩き回り、次々に吸蜜します。 

越冬明けなのに、翅に破損が無いきれいな個体でした。 
後翅の黒斑の中に散りばめられている水色の小さな点がオオイヌノフグリの花の色とマッチしていてきれいです。
ときどき翅を閉じると春風に翅が煽られそうになりますが、翅裏に目立つC文字も見えました。 

2023/07/17

飛び回るウラギンシジミ♂

 

2022年10月上旬・午後14:30頃・晴れ 

山麓にて軒下の雪囲い用資材置場でウラギンシジミ♂(Curetis acuta paracuta)を発見。 
日当たりの良い角材の上に止まっていました。(日光浴?) 
撮影アングルが悪かったので私が動いたら、辺りを忙しなく飛び回り始めました。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 
ウラギンシジミ♂は翅の色が裏表でくっきり塗り分けられているので、高速で羽ばたくと紅白に点滅して見え、強烈な印象に残ります。

2023/07/08

地面を舐めてミネラル摂取するイチモンジチョウ

 

2022年7月中旬・午後14:55頃・晴れ 

里山の尾根道でイチモンジチョウLimenitis camilla japonica)が翅を全開に広げて地面に止まっています。 
日光浴しているのかと思いきや、口吻を伸ばして乾いた地面を舐めていました。 
地面は濡れておらず、吸水ではなさそうです。 
少し飛んで移動しては、あちこちの地面を味見して回ります。 
ミネラル成分を摂取しているのでしょう。 
私にはイチモンジチョウの性別を見分けられないのですが、フィールドガイド『日本のチョウ』によると、イチモンジチョウは♀♂ともに地上で吸水するのだそうです。(p207より)

関連記事(8、10年前の撮影)▶  
土を舐めるイチモンジチョウ 
石を舐めるイチモンジチョウ

2023/05/23

山道の笹薮で群飛するオオスズメバチ♂(探雌飛翔?)

 

2022年10月下旬・午前11:20頃・晴れ 

私が里山の山道を登っていると、横の笹薮でオオスズメバチVespa mandarinia japonica)がブンブン飛び回っていました。 
林道上の砂利に着陸した個体にズームインすると、触角の長い雄蜂♂でした。 
激しく腹式呼吸をしながら日光浴しています。 
右に向きを変えてから飛び立ちました。 
離陸の瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:38〜0:50) 
秋晴れで日差しが強いので、飛び去る影も美しく写っていました。 

多数のオオスズメバチが忙しなく飛び回るので、どこに注目してズームインすべきか目移りしてしまいます。 
どうやら林道脇にぎっしり生い茂った笹薮の下にオオスズメバチの地中巣がありそうな気がします。 
何者か(ツキノワグマやハチクマなど)に巣を襲われた後で、コロニー全体が興奮しているのでしょうか? 
だとしたら危険なので、一刻も早くこの場を離れるべきです。 
ちなみに、この山道は最近きれいに整備され、道の両脇から伸びていた邪魔な灌木が伐採されていました。

群飛の様子を1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると(@1:20〜)、営巣地に出入りする外役ワーカー♀の動きには見えませんでした。 
どうやら雄蜂♂が笹藪の方を向いて、交尾相手の新女王が出てくるのを待機しているようです。 
笹藪の横の林道に着陸しかけた♂が上空を飛ぶ別個体の動きに反応して急発進し、慌てて追尾していました。 
スズメバチの交尾は早い者勝ちですから、焦った♂同士の誤認求愛と追いかけっこによって群飛が発生しているのはないかと思います。 
ただし、飛び回っている個体が全て♂かどうか映像では見極められませんでした。 

オオスズメバチ♂の群飛(探雌飛翔)をハイスピード動画でも記録したかったのですが、1匹がこちらに向かって飛んできたので、恐れをなして慌ててその場を離脱しました。 
本当に雄蜂♂だけなら刺される心配は無用ですが、オオスズメバチ♀には痛い目にあっているので用心するに越したことはありません。
もう少し粘ったら、オオスズメバチの交尾が観察できたかもしれません。 
営巣地と思しき笹藪からもう少し離れて安全な距離から撮影したくても、林道の幅が狭いので無理でした。 

※ 蜂の重低音の羽音が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


オオスズメバチの配偶行動の研究で学位を取った小野正人『スズメバチの科学』によると、
地中に営巣し地表に開口した巣門周辺で認められる本種(オオスズメバチ:しぐま註)の配偶行動は(1)巣門から外へ発散されている揮発性の集合フェロモンによる野外雄蜂♂の多数誘引と、(2)その巣から離巣しカースト特異的な性フェロモンを分泌している新女王蜂と被誘引雄蜂♂との交尾という2段階で成り立っている (p111より引用) 

今回私が観察したのは、まさに(1) の段階ではないかと思います。

私の鼻では現場でフェロモンの匂いを全く嗅ぎ取れませんでした(無臭)。

・特に 注目されるのは、集合フェロモンが働き蜂からも分泌されている点である。(同書p111より引用)

・集合フェロモンにより巣の周りに雄蜂♂を集めて堂々と交尾を行う戦略は同所性の他5種には認められない。

・実際に雄蜂♂の交尾行動を解発する機能をもつ新女王蜂に特異的な性フェロモンに関しては同属内で種間交差活性があることも明らかにされている。すなわち、雄蜂♂と新女王蜂の異種間の掛け合わせ実験において、すべての組合せで雄蜂♂は異種の新女王蜂にさえも交尾行動を起こす(同書p112より引用)


対スズメバチ専用の高価な防護服を持っていない私が笹薮にズカズカと踏み込んで調べるのは自殺行為です。 
コロニーが解散する初冬になったら(根雪が積もる前に)現場を再訪して、笹藪の奥にオオスズメバチの巣の有無を調べるつもりでした。 
ところが、携帯していたGPSがこの日に限ってなぜか不調で、位置情報を正確に記録してくれませんでした。 
できればオオスズメバチの巣を発掘調査したかったのに、残念ながら二度と行けなくなりました。(幻の営巣地) 

関連記事(13年前の撮影)▶  

2023/05/21

ブラックベリーの花で日光浴する初夏のキタテハ

 

2022年6月中旬・午前10:20頃・晴れ 

民家の庭で生垣として植栽されたブラックベリー(=セイヨウヤブイチゴ)キタテハPolygonia c-aureum)が訪花していました。 
吸蜜シーンを撮りたかったのに、ズームインしたときには口吻を縮めていました。 
翅を広げて日光浴しています。 
その後は蜂など他の訪花昆虫に私が気を取られている間に、キタテハは飛び去ってしまいました。 

今季もそろそろブラックベリーの花が咲くので、定点観察でキタテハの吸蜜シーンを撮るのが宿題です。

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