2023/04/15

ヒトを怖がり林道を走って渡り藪に隠れる野生ニホンザルの群れ

 

2022年10月上旬・午後12:05頃・くもり 

私が里山の砂利道を静かに登っていると、猿の鳴き声♪が聞こえました。 
しばらくすると案の定、ニホンザルMacaca fuscata fuscata)の群れと遭遇しました。 
砂利が敷かれた林道の周囲はスギの植林地です。 

道端で採食している3頭をまず見つけました。 
毛皮の色にバリエーションがあり、明るい茶色、暗い茶色(焦げ茶色)、灰色の個体が居ます。 
私の姿を見つけた途端に猿たちは警戒し、道端の藪に慌てて飛び込んで隠れました。
どうやらニホンザルたちは群れ全体として、山側のスギ林から林道に出てきて反対側の谷側に向かって遊動しているようです。 
彼らの遊動コースの途中に私が足音を忍ばせて急に現れたので、猿たちは不意打ちのニアミスに驚いたようです。 
(私の姿を猿たちにわざと晒したまま少しずつ近づく方が警戒されません。)

背後にガサガサと気配を感じて私が振り返ると、山側のちょっとした崖(林道の法面)をニホンザルが次々と駆け下りて砂利道を渡り、反対側の藪に逃げ込みました。 
撮影している私の背後を狙って続々と横断するので、撮影は大変でした。

ニホンザルの警戒(回避)行動にもバリエーション(個性)がありました。
年をくった個体はおそらく私と顔馴染みで、あまり恐れることはないと知っているらしく、焦らずに堂々としています。 
子猿など若い個体は特に私の存在に怯えて右往左往しているのに対して、成獣♀は落ち着いて横断していました。 
林道を走って渡るニホンザルを1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@1:36〜) 

里山で出会うニホンザルを個体識別できるようになったら観察がより一層楽しくなりそうです。 
トレイルカメラにたまに写る群れと同じなのかな?
しつこく山に通って猿の群れを探し求め、ひたすら追跡して、私の存在に慣れてもらうしかありません。(餌付けではなくヒト付け) 



マルバハッカに訪花吸蜜するオオチャバネセセリ【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2022年7月中旬・午後15:45頃・くもり 

農村部の道端に咲いたマルバハッカ(別名アップルミント)の群落でオオチャバネセセリZinaida pellucida)が訪花していました。 
この組み合わせは初見です。 
翅をしっかり閉じた(立てた)まま吸蜜しています。 
隙間からちらっと見える翅表の斑紋から、イチモンジセセリではなくオオチャバネセセリと確定しました。 

途中で夏型のベニシジミが飛来してオオチャバネセセリの周囲で少しホバリングしたのですが、オオチャバネセセリは動じずに吸蜜を続けました。 
別れた後は互いに無関心で各自が吸蜜を続けます。 



花から自発的に飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@2:31〜) 
訪花中にしなやかな口吻が蜜腺を探り当てる動きも面白いです。

2023/04/14

夜のスギ林道で撮れたハクビシンの尻尾【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2022年10月上旬・午後23:45頃・気温16℃ 

里山のスギ林道に設置した自動撮影カメラに秋の深夜、謎の尻尾が写っていました。 
なぜかカメラの起動が遅れたせいで、林道を右に立ち去る獣の細長い尻尾がチラっと写っただけでした。 
1/3倍速のスローモーションでリプレイしてみましょう。 
長い尻尾の先が黒いので、ハクビシン(白鼻芯、白鼻心;Paguma larvata)ですね。 
ホンドテンの尻尾とは違います。 

タヌキとアナグマが共有する溜め糞場sの匂いをもし嗅いだとしたら林道上で立ち止まったはずですから、ハクビシンは全く興味を示さずに素通りしたことになります。 
もしかすると、右からやって来たハクビシンがトレイルカメラの起動に驚き、慌てて右に引き返したのかもしれません。

この地点でハクビシンは初登場になります。

関連記事(1年前の撮影)▶ 夜の山道を歩くハクビシン【トレイルカメラ:暗視映像】

同じ山系の尾根道に昨年ハクビシンが出没していたので、今回はあまり驚きはありません。 
このときも匂いも嗅がずにタヌキの溜め糞場cを素通りしていました。 

トビにモビングして電線から追い払うハシブトガラス(野鳥)

 

2022年10月上旬・午後16:30頃・くもり 

夕方の郊外でトビMilvus migrans)が電線に止まっていました。 
トビが電柱の天辺ではなく細くてバランスの悪い電線に止まっているのは珍しいので動画に撮り始めると、ハシブトガラスCorvus macrorhynchos)が飛来してトビと同じ電線に隣り合って止まりました。 
明らかにカラスの挑発行為です。 
ハシブトガラスが電線から急に飛び立ち、トビに対して威嚇するように軽い空中戦が勃発しました。 
モビング(擬攻撃)されたトビは応戦するのではなく、あっさり電線から飛び去りました。 
トビが力強く羽ばたいて電線から飛び去る様子を上手いこと流し撮りできました。 
モビングの様子を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:43〜1:55) 
※ スロー映像は動画編集時に逆光補正を施しています。 

縄張りから猛禽を追い払ったハシブトガラスは電線に居残り、カーカー♪と勝利の凱歌を上げました。 
実は手前の電柱にハシボソガラスも野次馬のように来ていて、ガーガー♪と鳴きました。 
いざとなったらハシブトガラスに加勢してトビへのモビングに参加するつもりだったのでしょう。 
私がしつこくカメラを向けてもカラスたちは強気で、飛び去りませんでした。
もう少し暗くなるとカラスが塒入りする時間になります。


2023/04/13

右背に黒斑があるニホンカモシカが道草を食う未明【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2022年10月上旬・午前4:00頃(日の出時刻は午前5:35) 

里山の林道で年中水溜りのある区間を自動撮影カメラで見張っています。 
ジメジメとした林道上に生い茂るミゾソバなどの下草を採食しにニホンカモシカCapricornis crispus)が代わる代わるやって来ます。 
この日も未明にカモシカが単独で左から登場しました。 
採食の合間に体を曲げて右脇腹を舐めました。(@0:08〜) 
吸血性の虫に食われて痒かったのかな? 
林道を少しずつ右に移動しながら下草をムシャムシャとひたすら食べ続けます。 

カモシカの角や耳に分かりやすい特徴が無い場合は、個体識別に困ります。 
この個体は右背に黒斑がありました。 
個体識別に使える安定した母斑(生まれつきの斑紋)なのかどうか、いまいち自信がないのですけど、とりあえず気にしてみることにします。
カモシカが逆方向に(右から左へ)通過した場合には左半身しかカメラに写りませんから、「右背黒班」の有無を確認できません。(設置する監視カメラをもう1台増やして逆方向からも同時に狙えば良さそうです。)

カモシカがふと頭を上げて、トレイルカメラを凝視しました。 
録画中のカメラが発するかすかな電子ノイズや赤外線LEDの発光が気になっているのかもしれません。 

強い夜風が吹くと、カメラを固定したミズナラの幹がゆっくりと左右に大きく揺れます。 (映像自体も左右にゆっくり揺れています。) 

ニホンカモシカが再び体を曲げて、右後脚の腿を舐めました。(@2:35〜) 
毛繕いというよりも、おそらく吸血性の虫に食われて痒いのでしょう。 
頭をプルプルと激しく振って身震いしました。(@3:33〜) 
夜も頭部を目がけて飛来するヤブ蚊の群れを振り払っているのかな?と想像したものの、暗視映像にヤブ蚊は写っていません。 


クロバナヒキオコシの花で採餌するトラマルハナバチ♀

 

2022年10月上旬・午後13:25頃・くもり 

山間部の道端に咲いたクロバナヒキオコシの群落でトラマルハナバチBombus diversus diversus)のワーカー♀が訪花していました。 
この組み合わせは初見です。 
忙しなく飛び回るトラマルハナバチ♀を追い回したのが良くなかったのか、少し離れたナギナタコウジュの群落の方へすぐに逃げてしまいました。 
そこでもじっくり採餌しなかったということは、おそらくハナバチ類が採餌しつくした後で花蜜や花粉が枯渇していたのだと思います。
トラマルハナバチ♀にしては小型の個体だったので、幼虫時代に給餌される栄養条件が悪かったようです。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイすると(@0:27〜)、後脚の花粉籠は空荷でした。 

あまりにも忙しなく飛び回るので、クロバナヒキオコシの小さな唇形花から吸蜜、集粉するシーンをじっくり撮れませんでした。 
曇天で光量不足だとカメラのオートフォーカス(AF)も遅れがちになり、ちょっとストレスが溜まる撮影でした。

2023/04/12

不自由な右後足をかばって痛々しく跛行するニホンザル♀

 



2022年10月上旬・午後14:00頃・くもり 

山間部の峠道で仲睦まじく相互毛繕いを長々と続けていたニホンザル♀♂(Macaca fuscata fuscata)の観察記録4部作の完結編です。 
私が至近距離(2〜3m)まで近づいても、逃げずに各自で毛繕いしています。 
もしかすると元から人馴れした個体群で過去にヒトから給餌された経験があり、今回も私が食べ物を投げ与えることを期待していたのかもしれません。 
あるいは、「餌付け」に頼らず「ヒト付け」に成功した!と悦に入る私を逆に興味津々で観察していたのかもしれません。

先を急ぐ用事があって焦っていた私は、どうしても猿の横を通り抜けてこの道を下山する必要がありました。 
2頭のニホンザルが居座っている路肩の反対側を私がゆっくり通り過ぎようとしたら、ついに大柄な成獣♂が立ち上がり、私から離れるように歩き始めました。 
舗装された車道を斜めに渡ると、谷側の路肩の車止めブロックの上に乗って座りました。 
車が崖から落ちないように、コンクリートの立方体の塊を点々と等間隔に並べてあるのです。
多雪地帯なので、普通のガードレールを設置すると深く積もった雪の重みで毎年グニャグニャに曲がって交換しないといけなくなります。
一方、小柄な若い♀は、離れて行く♂をちらっと見送っただけで、路上に座ったまま毛繕いを続けています。 
私がカメラをズームアウトすると、♀も渋々立ち上がって♂が居る隣の車止めに並んで座りました。 
このとき車道を横断する♀の歩行に注目して下さい。 
四足歩行しているものの、よく見ると右後趾が不自然な外向きで、それをかばって歩いています。 
車止めに座った♀が正常な左足を使って体の痒い部位を掻いていますが、逆の右足で掻く様子は観察できませんでした。(右足では掻けない?) 

私がニホンザルたちに遠慮して、迂回するように反対側の路肩を通り過ぎようとゆっくり歩き出すと、意図を察したように猿も逆方向に遊動を始めました。 
♂が♀を追い越しながら車止めを渡り歩き、私から離れて行きます。 
♂の後からついて行く♀の歩行が明らかに異常です。 
右後脚を車止めブロックに付かないようにかばってケンケンと跛行していました。 
右足の裏を怪我しているのかと思ったのですが、出血など明らかな外傷は認められません。 
先導する♂が車止めから降りるとノシノシと車道を斜めに横断し始めました。 
後続の♀が舗装路を歩き去る際に、ケンケン跳びを止めてようやく右後脚の足を接地しました。 
ところが右足をやや外向き(ガニ股)に接地し、しかも足の指を浮かせて歩いています。 
不自由な右足をかばって歩くために左右非対称な歩行となり、体全体が左に傾いています。 
正常に歩行する♂は、後足をやや内股気味にして指もペタペタと着地して蹴り出しています。
跛行する♀は棘などをうっかり踏んでしまい刺さった傷が痛いだけなのかと初めは想像したのですが、もしかすると先天性の軽い奇形なのかもしれません。 
やんちゃした若い♀が「猿も木から落ちる」で右足を負傷したのかな?(捻挫・骨折)

先行する♂は舗装された峠道から左脇に外れ、藪に覆われた山側の斜面(法面)を登って行きます。 
慌てて追いかける♀が走るときには四足歩行から跛行(ケンケン跳び)に切り替えました。 
3本足の不自由な歩行でも、なんとか仲間について行けるようです。 
3本足で木登りが可能かどうか確かめたかったのですが、残念ながら見失いました。
同一個体か分かりませんが、右後脚が不自由でヒョコヒョコと跛行する個体は最近トレイルカメラにも写っていました。 
別個体だとすると、ニホンザルの跛行は珍しくないようです。


さて、今回長々と相互毛繕いしていた野生ニホンザルの♀♂ペアはどういう関係なのでしょうか? 
父娘のペアなのかな? 
足の不自由な娘を心配した父親が世話していると擬人化・美談化したくなりますが、ニホンザルの社会は乱婚なので父性の自覚はないはずです。 
周囲に群れの気配(鳴き声など)が全く感じられなかったので、離れザル♂のような気がします。 
右足が不自由なせいで山林を遊動する群れから脱落してしまった♀を見つけた離れザル♂が、将来の交尾相手(候補)として仲良くしているのではないか?と想像を逞しくしました。 
あるいは、気の合う♀♂カップルが群れからこっそり抜け出して逢引を楽しんでいたのでしょうか? 
群れ内で順位の低い♂が特定の♀と仲良くしようとするとα♂(いわゆるボス猿)が怒って邪魔をするらしいので、一時的にこそこそと駆け落ちするしかありません。 
しかし、どう見ても今回の♀は若過ぎますし、♂は成獣とは言え発情していませんでした。 

柳の樹液酒場でスジクワガタ♀に誤認求愛するコクワガタ♂(繁殖干渉の配偶者ガード?)

 

2022年9月上旬・午後14:00頃・晴れ 

平地を流れる川沿いに生えた柳(種名不詳)から樹液が滲み出していて、その樹液酒場に集まる昆虫を定点観察しています。 
この日はコムラサキApatura metis substituta)が♀♂1頭ずつ来ていました。 
♀♂ペアが仲良く並んで柳の樹液を吸汁しているのに、求愛や交尾などの配偶行動が始まらないのは不思議です。(色気より食い気) 




柳の枝の下面にえぐれたような樹洞があり、その上にコクワガタ♂(Dorcus rectus rectus)が覆い被さるように静止していました。 
口吻を見ると樹液を舐めている訳ではなく、左半身だけ穴の中に差し込んだままじっとしています。 
コクワガタ♂は直下の樹液酒場からコムラサキ♀♂を追い払おうとしませんでした(占有行動なし)。 

撮影を中断して、コクワガタ♂を手掴みで採集しました。 
コムラサキ♂は逃げてしまったものの、♀はずぶとく樹液酒場に居残って吸汁を続けています。 
コクワガタ♂を取り除くまで気づかなかったのですが、柳樹洞の奥に大顎の短いクワガタムシの♀が潜んでいました。 
安全な場所に陣取って樹液を舐めていたのでしょう。 



コクワガタ♂は樹液酒場で配偶者ガードしていたのだと、ようやく腑に落ちました。 
つまり、♀と交尾する機会を狙いつつ、ライバル♂が近づけないように♀を守っていたのです。(交尾前ガードではなく交尾後ガード?) 

関連記事(同所で32日前の撮影)▶ 柳の樹洞に籠城するコクワガタ♀にしつこく求愛する♂

採集したクワガタ♀♂を1匹ずつ透明プラスチックの円筒容器(直径7.5cmの綿棒容器を再利用)に移し、背面と腹面をじっくり観察してみましょう。 
ツルツルした容器壁面をクワガタはよじ登れませんし、仰向けに置くと脚をばたつかせて暴れるものの、足先が滑って自力では起き上がれません。 
♀の方は驚いたことにスジクワガタ♀(Dorcus striatipennis striatipennis)でした。 
鞘翅にうっすらと縦筋があります。 




となると、問題はクワガタ♂の方です。 
大顎の内歯が1歯なのでコクワガタだと思うのですが、鞘翅にうっすらと縦筋があるような気もしてきます。 
コクワガタ♂だとすると、樹洞に籠城するスジクワガタ♀を同種の♀だと誤認求愛し、異種間で配偶者ガードしていたことになります。 




コクワガタとスジクワガタはどのぐらい近縁なのでしょうか? 
ネット検索してみると、この2種が交雑することは無いそうです。 
日本産クワガタムシの分子系統樹がどうなっているのか知りたくて文献検索してみると、次の全文PDFが無料で入手できました。
松岡教理; 細谷忠嗣. 日本産クワガタムシの分子系統学的研究.弘前大学農学生命科学部学術報告 2003.

解析結果の図2を転載させてもらいました。
ただし、これはタンパク質レベルで比較したアロザイム分析なので注意が必要です。 
この結果だけを見れば、コクワガタとスジクワガタは最も近縁ですから、異種間で誤認求愛するのも不思議ではありません。
しかしクワガタ愛好家の知見によれば、コクワガタとオオクワガタはまれに交雑するのに対して、コクワガタとスジクワガタは決して交雑しないのだそうです。
つまり、交雑可能性や生殖隔離という点ではコクワガタに対してスジクワガタよりもオオクワガタの方が近縁種ということになり、上記のアロザイム分析の結果は生物学的種の概念に明らかに反しています。(生殖隔離を説明できない。)
最新のDNA分析ではクワガタの分子系統樹が変わるのか、当然知りたくなります。 
続報として同じ筆者による博士論文がヒットしましたが、要旨(概要)しか閲覧できませんでした。
細谷忠嗣. クワガタ属 (甲虫目クワガタムシ科) とその近縁属の分子系統学的研究. 2004.
たとえ異種間で交尾できたとしても雑種の繁殖可能な子孫F1が残せないとなると、今回のスジクワガタ♀にとってコクワガタ♂のしつこい誤認求愛や配偶者ガードはただただ迷惑なセクハラでしかありません。
スジクワガタ♀の繁殖機会を奪っている訳ですから、コクワガタ♂の振る舞いは繁殖干渉です。
私の個人的な印象では、当地のスジクワガタは山地に偏ってほそぼそと分布しています。
スジクワガタが平地に分布を広げられないのは、どこにでも居る普通種のコクワガタが繁殖干渉(セクハラ)するせいかもしれません。
この仮説が正しければ、逆にスジクワガタ♂がコクワガタ♀に誤認求愛、配偶者ガードすることは無いはずですから、飼育下で検証可能です。

素人が背伸びして(先走って)勝手に考察してみましたが、そもそも私は恥ずかしながらクワガタの同定にいまいち自信がありません。
(特に今回の♂がコクワガタかスジクワガタかどうかについて)
もし同定が間違っていたら、ご指摘願います。
たとえば、ヤナギ樹洞の奥に隠れていた個体がスジクワガタ♀ではなくて小型のスジクワガタ♂やコクワガタ♀だとしたら、動画の解釈がまるで頓珍漢ということになり、目も当てられません…。

余談ですが、スジクワガタ♀を採集した後にもコムラサキ♀が樹液酒場に最後まで居座っていました。
ところがフラッシュを焚いて写真に撮ると、右半分の翅表だけに鮮やかな青紫色の光沢がありました(♂の性標)。
自然光下の動画ではてっきり地味な翅色の♀だと思っていたのですが、雌雄モザイクの変異個体なのでしょうか?
だとすれば、隣に居たコムラサキ♂個体と配偶行動が始まらなかった理由も説明できそうです。
それとも、翅を開いた角度の違いで青紫の構造色がストロボ光に反射したりしなかったりしただけかな?

コムラサキ:雌雄モザイク?@柳樹液酒場

テントウムシの研究で有名な鈴木紀之先生が繁殖干渉について「すごい進化ラジオ」で分かりやすくオンライン講義してくれているのでお薦めです。(全9回)


2023/04/11

ニホンアナグマ2頭が交互に通う溜め糞場【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2022年10月上旬 

自動撮影カメラで監視しているスギ林道の溜め糞場sに来るニホンアナグマMeles anakuma)の記録です。 

シーン1:10/2・午前00:55・気温16℃ 
アルビノ?個体が深夜の林道を左から登場しました。 
顔だけでなく足も白っぽい個体です。 
林道上のあちこちにしゃがんで尻の臭腺をスギ落葉や下草に擦り付けて回ります。 
画面の下に消えたものの、すぐに戻って来ました。 
自分たちの溜め糞場を匂いで探り当てると、右を向いて排便しました。(@0:35〜) 
そのまま右へ立ち去りました。 


シーン2:10/4・午前2:02・気温17℃ (@0:50〜) 
2日後に真夜中の林道を右から来た個体は顔にアナグマ特有の黒い模様がありました。 
自分たちの溜め糞場でアルビノ?が2日前に残した大便の匂いを嗅ぐと、自分は横にスクワットマーキングしただけで、林道を右に戻りました。 
右から来て右に帰ったということは、アナグマの巣穴の方向は右にありそうです。 
この溜め糞場はきっとアナグマの縄張りの端に位置しているのでしょう。


シーン3:10/4・午後21:08・気温20℃ (@1:32〜) 
19時間後に正常型のアナグマ(顔に黒い模様あり)が再び林道を右から歩いて来ました。 
同一個体なのかどうか、定かではありません。 
珍しく林道の左端を歩き、溜め糞場sを素通りして左へ行きました。 


この溜め糞場sに通うアナグマは少なくとも2頭いることが分かっています。 

アルビノ?個体と通常個体がつがい関係にあるのではないかと予想しているのですが、タヌキと違ってアナグマは♀♂ペアが連れ立って一緒に溜め糞場に来ることが一度も無いので、確信が持てません。 

赤外線の暗視映像で白っぽく見える個体が本当にアルビノ(または白変種)なのか、体色を可視光でしっかり撮影してみたくなります。 
当地のアナグマは夜行性で昼間には来てくれないので、夜にフラッシュを焚いて写真に撮るか、トレイルカメラの投光器を赤外線ではなく白色光の照明にするか、工夫するしかありません。 
しかしフラッシュやサーチライトに警戒心を抱いた野生動物が溜め糞場に近寄らなくなったら本末転倒なので、悩ましいところです。
モノクロの暗視映像から被写体の色を推定・復元してくれるアルゴリズムが実用化されれば理想的です。



トリアシショウマの花蜜を吸うサカハチチョウ夏型

 

2022年7月中旬・午後14:05頃・晴れ 

山腹の細い山道に沿って咲いたトリアシショウマの群落で夏型のサカハチチョウAraschnia burejana)が訪花していました。 
半開きの翅を開閉しながら吸蜜しています。 
この組み合わせは初見でした。

2023/04/10

林道を駆け巡りスギの木を登り降りする10月のニホンリス【トレイルカメラ】

 



2022年10月上旬〜中旬〜下旬 

里山のスギ林道に設置したトレイルカメラに写ったニホンリスSciurus lis)の記録をまとめました。 
10月は計3回登場しました。 
リスは完全に昼行性で、暗い夜には決して現れません。

シーン1:10/8・午前6:01・気温10℃(日の出時刻はAM5:38) 
道端から突き出たスギ落枝に通りすがりのカモシカがよく眼下腺マーキングしているのですが、薄暗い早朝にその落枝がかすかに振動していました。 
おそらく早起きのリスが落枝を登り降りしたのでしょう。 
対面に見えるスギ立木の背後からリスが現れ、下草に覆われた地上を右へチョロチョロと走り去りました。 


シーン2:10/15・午後12:26・気温18℃ (@0:10〜)
林道中央を左から走って来たニホンリスが画面の右に消えました。 
すぐに戻って来たリスは全速力で林道を斜めに横断し、スギ大木の幹を勢い良く駆け上がりました。 
垂直な幹の途中で止まったリスの尻尾だけが見えています。 
そこで下向きに方向転換すると、垂直の幹を駆け下りて、そのまま林道を右に引き返しました。 
謎の往復シーン(右往左往)を1/3倍速のスローモーションでリプレイしてみても(@0:26〜)、リスは木の実(堅果)を運んでおらず空荷でした。 
リスは基本的に樹上性ですから、やむを得ず地上で活動するときは何かに驚いて警戒すると、近くの木に一目散に登って緊急避難するのでしょう。 


シーン3:10/26・午前9:01・気温6℃ (@1:03〜) 
秋の林道上にはスギとホオノキの落ち葉が散乱しています。
林道を右から左へ走るリスが途中で(画面の下端)立ち止まり、落ち葉を掘り返しました。 
思わせぶりな行動ですが、何か運んできた木の実を地中に隠したのでしょうか?(貯食行動) 
しかし何度もスロー再生して見直しても、このときリスが何か木の実を咥えて運んでるようには見えませんでした。 
クルミ(オニグルミ)のように大きな堅果なら見落とすはずがありません。 
小さなドングリなら見落としてしまったかもしれません。 

「ニホンリスにとってスギ林は利用価値のない緑の砂漠」というのが私の認識で、何の用事があるのか不思議でした。 
動画に写っている林道は緩やかな斜面になっていて、右から左へ少し登っています。 
周囲を調べてみると、林道を右に〜20m行った地点にオニグルミの大木がありました。 
後日(冬の積雪期)現場入りして気づいたのですが、林道を逆の左に〜20m行くと、カラマツを植林した小区画がありました。 
恥ずかしながら、これまで私はカラマツを「見れども見えず」の状態だったようです。 
思い返すと、カラマツの近くでリスの鳴き声♪(警戒声)を聞いたこともありました。
オニグルミの堅果とカラマツの球果(松ぼっくり)はリスの好物ですから、2つの餌場を結ぶ通り道としてスギ林道を利用していたのでしょう。 
もっとよく探せば、ドングリのなる木も近くに生えているかもしれません。 
リスの巣を見つけるのが次の目標です。



ナギナタコウジュに訪花吸蜜するイカリモンガ【蛾:FHD動画&ハイスピード動画】

 

2022年10月上旬・午後13:15頃・くもり 

山間部の道端に咲いたナギナタコウジュの群落でイカリモンガPterodecta felderi)が訪花していました。 
意外にもこの組み合わせは初見です。 
翅をしっかり閉じたまま吸蜜しています。 
花穂を歩いてグルグル回りながら次々に花蜜を吸っています。 

ナギナタコウジュの花序に小花は疎らにしか咲いてなかったのですけど、イカリモンガは口吻の先で花筒を探り当てるのに苦労していました。 
イカリモンガは視力が相当悪いことを伺わせます。 

腹部が太くて膨満しているので、なんとなく♀ではないかと思うのですが、どうでしょうか?
(イカリモンガの性別判定法を私は知りません。) 

イカリモンガは少し飛んで隣の花穂へ移動します。
花序から飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@2:05〜2:13) 
翅表の鮮やかな斑紋を見るためには、羽ばたきをスーパースローで撮るしかありません。
曇り空で薄暗いのでカメラの設定で明るくしたところ、逆に上げ過ぎて不自然な色調になってしまいました。 
別の用事があって急いでいた(焦っていた)私は、被っていた帽子を投げつけて強制的に飛び立たせたのですけど、イカリモンガはきれいに飛んでくれませんでした。 
羽ばたきながら落下で緊急避難。 
やっぱり心に余裕がないと虫撮りは上手くいきませんね。

2023/04/09

ニホンカモシカの親子が同じ落枝に続けて眼下腺マーキング【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2022年10月上旬・午後18:05頃・気温19℃ 

トレイルカメラで見張っている里山のスギ林道にある晩、ニホンカモシカ♀(Capricornis crispus)が左からやって来ました。 
道端の斜面に突き刺さった落枝の先端の匂いをいつものように念入りに嗅いでいます。
落枝の先に眼下腺を擦りつけてマーキングしていると、左からカモシカの幼獣が登場しました。 
幼獣の頭には角が未だほとんど生えていません。 
カモシカ成獣の性別を見分けるのは至難の業なのですが、子連れということは、先導の個体は母親♀なのだと判明しました。 

ニホンカモシカ母子が並んで林道上に残された溜め糞場sの匂いを嗅いでいます。 
ここはホンドタヌキNyctereutes viverrinus)とニホンアナグマMeles anakuma)が共有している溜め糞場sです。 
母親にとっては縄張り内で馴染みのある匂いで溜め糞場を素通りすることが多いのですが、幼獣は異種の糞便臭に興味津々です。
関連記事(同所で2ヶ月に撮影)▶  
タヌキ・アナグマの溜め糞場の匂いを嗅ぎ回る若いニホンカモシカ【トレイルカメラ】 
溜め糞場でタヌキ・アナグマの匂いに興味津々のニホンカモシカ幼獣【トレイルカメラ】
カモシカ幼獣は次に母親の左側に回り込むと、スギ落枝の匂いも嗅ぎ始めました。 
母親が擦り付けたばかりの眼下腺の新鮮な匂いを嗅いで覚えているのでしょう。 
自分も母親の真似して顔を落枝に擦り付けたかどうか、定かではありません。 
眼下腺マーキングの直後に舌をペロペロと出し入れしているのは成獣と同じでした。(一種のフレーメン反応?) 

その間、母親♀は画面の下に移動し、しばらく姿を消しました。 
カメラの死角で何をしているのか分かりませんが、トレイルカメラを固定したスギの幹にも眼下腺で匂い付けしていたのかもしれません。 
トレイルカメラ自体に興味を示して匂いを嗅いでるようですが、あまりにも至近距離過ぎて母親の耳や角しか写っていません。 

トレイルカメラが少し途切れた間に、カモシカ幼獣はスギ立木の右奥に自生するコシアブラ幼木に興味を示していました。 
実は以前そのコシアブラの枝葉に通りすがりのカモシカが眼下腺マーキングしていたのですが、スギ落枝が林道脇に出現したら、カモシカは見向きもしなくなっていたのです。 
幼獣はスギ立木の後ろを回り込んで、斜面(下り坂)に姿を消しました。 
どうやら斜面で下草を採食しているようです。 
それとも、母親と隠れんぼして遊んでいるつもりなのでしょうか? 

画角内に戻ってきた母親♀が振り返って暗闇で幼獣を探しています。 
夜の真っ暗な山林でニホンカモシカの母子がはぐれそうになっても、お互いの居場所を伝えるために、ニホンザルのようにコンタクトコールで鳴き交わしたりしないのが不思議でなりません。 
まさか、我々ヒトが聞き取れない超音波でも発しているのでしょうか? (そんな話は聞いたことがありません。) 
カモシカの母子は体臭やかすかな物音(息遣い?)だけでお互いの居場所が分かるのかな? 
最後に母親♀は隠れた幼獣をほったらかしにしたまま、林道を右に立ち去ってしまいました。 
その後、カモシカ幼獣がどうなったのか、無事に母親と合流できたのか、気になるところですが、残念ながら録画が打ち切られていました。
母親がドライに子離れした瞬間だとしたら、それはそれで興味深い映像です。
乳離れして自力で採食できるようになった幼獣は、次第に母親から離れて独立するのでしょう。





【追記】
武田修『ロッキーへの手紙』という本は、親からはぐれた生後1ヶ月の幼獣♂を保護してから2年間飼育して山に放獣するまでのノンフィクションです。
・野生のカモシカは、他の動物に見られるような親離れの儀式を行うことなく、自分のタイミングで、自然に親から離れます。(p96より引用)
・(福島県鳥獣保護センターの獣医師の説明によると:しぐま註)♂のカモシカは♀のカモシカに比べて、親に依存する期間が長く、山に返すまでの期間は♂のほうが長いのだそうです。人工保育の場合は特にそうで、センターでは、♀なら1年半、♂の場合は2件感育てるのだとのこと。(p85〜86より引用)
・(カモシカの幼獣が:しぐま註)「ミッ、ミッ」となくのは、まだ気持ちの上で余裕のある証拠。「どうしたらいいの?」「助けて!」という状態に追いつめられ、自分でどうしたらいいのかがわからなくなると「メェ、メェ」となくのです。(p61より引用)
今回の動画に写った幼獣の性別を見分けられません。
私はまだカモシカ幼獣の鳴き声を一度も実際に聞いたことがありません。

ニセアカシア樹上で獲物を探すスズバチ♀【探餌飛翔】

 

2022年10月上旬・午後15:50頃・晴れ 

川岸に自生するニセアカシア(別名ハリエンジュ)灌木の枝先をスズバチ♀(Oreumenes decoratus)が忙しなく飛び回っていました。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると(@1:08〜)、スズバチ♀は食痕(虫食い穴)のあるニセアカシア小葉や熟した豆果を次々と調べていることが分かりました。 
ホバリング(停空飛翔)で狙いを定めてからぶつかるようにアタックしたり、着陸して触角で念入りに調べています。 
どうやら泥巣に貯食する獲物(蛾の幼虫)を探索する探餌飛翔のようです。 
雄蜂♂の探雌飛翔ではありませんでした。

ニセアカシアに巻き付いて育った蔓植物のツルウメモドキの果実が黄色から赤く色づき始めています。 
探餌飛翔するスズバチ♀は、ツルウメモドキには全く興味を示しませんでした。 
背後にジョロウグモ♀(Nephila clavata)が枝間に張り巡らせた円網が見えますが、スズバチ♀は気にせず飛び回っています。 

残念ながら狩りに成功するシーンが撮れる前にスズバチ♀を見失ってしまいました。 
秋が深まると獲物の数が減り、母蜂は苦労しているようです。

関連記事(3年前の撮影)▶ アオムシを狩るエントツドロバチ♀

磐田久二雄『日本蜂類生態図鑑:生活行動で分類した有剣蜂』を紐解いてスズバチが狩る獲物について調べると、
スズバチは体長2.5〜3.5cmのフトスジエダシャク(の幼虫:しぐま註)を3〜8頭貯える。(p37より引用)
とあります。 
しかし、フトスジエダシャクの食樹はセンダン(のみ?)とされています。 
センダンは温暖な西日本にしか分布しませんから、当地(北日本)では見たことがありません。 
フトスジエダシャク成虫も私は未見です。 
したがって、今回観察したニセアカシア樹上にフトスジエダシャク幼虫は居なさそうです。 

一方、最近の資料(例えば『狩蜂生態図鑑』p89)によると、スズバチの獲物は「シャクガの幼虫(尺取虫:しぐま註)」と一般化されていました。 
狩蜂が貯食する獲物を正確に同定するのは困難です。 
狩りの際に麻酔されてしまうので、救出しても飼育下で成虫が羽化しないからです。 
DNAバーコーディングが普及すれば調査研究が飛躍的に進展するはず、と期待しています。

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