2024年3月上旬〜下旬
山中の湧き水が溜まる浅い池で毎年早春にトウホクサンショウウオ(Hynobius lichenatus)が繁殖していることが分かっています。
産卵行動を観察・撮影するのが今季の目標です。
3月上旬に現場入りしてみると、暖冬のためか池は雪に埋もれていませんでした。
この日は未だヤマアカガエルやトウホクサンショウウオの卵嚢は1つも見つかりませんでした。
親の姿もまったく見当たりません。
繁殖期はまだ始まっていないようです。
(ちなみに、標高の低い山麓の池ではヤマアカガエルの産卵が始まっていました。)
前年は水中に半分沈んだアカマツの落枝にトウホクサンショウウオの卵嚢が産み付けられていたので、今年は産卵基質として常緑の葉の付いたスギの落枝を池に投入してみました。
(私のこの行為が、余計なお世話だったかもしれません。)
両生類は変温動物ですから、いくら活発に動き回っても通常のトレイルカメラでは検知できません。
仕方がないので、次善の策としてタイムラプス専用カメラを設置して繁殖池を監視することにしました。
明るい昼間のみ1分間隔でインターバル撮影した連続写真をタイムラプス動画に加工しました。
(この機種では、夜間の暗視撮影はできません。)
まる2週間のインターバル撮影で計4.7 GiBのAVIファイルが生成されました。
野生動物で唯一写っていたのは、 3/8の夕方(PM 17:10〜17:11)に登場した1頭のニホンザル(Macaca fuscata fuscata)だけでした。
他の季節にこの水場でニホンザルが飲水するシーンがときどきトレイルカメラで撮れていたので、今回も群れで遊動する途中に水を飲んだり水浴するために立ち寄ったのでしょうか?
雪解け水の冷たい泉にわざわざ入ってジャブジャブ横断したということは、何か餌を探していたのかもしれません。
早春は樹々が芽吹くまでニホンザルの餌がきわめて乏しい季節ですから、空腹の猿がカエルやサンショウウオの成体や卵嚢を探して捕食する可能性も十分あり得ます。
しかし、ニホンザルが監視カメラに写ったのは、2週間でこの一度きりでした。
もし捕食に成功していたら、味をしめて何度も同じ池に通っていたはずです。
あるいは、カエルやサンショウウオの成体または卵嚢を味見したのに、ニホンザルの口に合わなかった(不味かった)のかもしれません。
ニホンザルの糞を分析して、両生類のDNAが検出できれば捕食した有力な証拠となるでしょう。
低山でもときどき寒の戻りで雪が降っていました。
早春の積雪量は少なく、すぐに溶けてしまいます。
カメラのレンズに雪が付着しても、晴れると溶け落ちてすぐに視界は良好に戻ります。
晴れると池の周囲の雑木林の影がまるで日時計のように刻々と移動しています。
画面の下端に写っている、池畔に自生するスギ幼木の枯れた横枝が邪魔なのですが、上下に日周運動していることが分かりました。
昼間に晴れると枝が立ち上がり、曇りや雨雪など悪天候になると垂れ下がります。
つまり死んだ枯れ枝ではなく、生きているようです。
水中に浸ったスギの落枝はいつまで経っても葉が緑色のままで、茶色に枯れることはありませんでした。
いくら目を凝らして動画を見直しても、水中のスギ落枝にサンショウウオやカエルが集まって産卵する様子は写っていませんでした。
たまに岸辺近くの水中で両生類?がウロチョロしていたかもしれませんが、タイムラプスの早回し映像ではあまりにも早すぎてよく分かりません。
後に現場入りすると、監視カメラの画角の外の、対岸の水面に浮いていたスギの落ち葉にトウホクサンショウウオの卵鞘が産み付けられていました。(映像公開予定)
スギの生葉から水に溶け出したエキスをトウホクサンショウウオが嫌って寄り付かなくなってしまった可能性なども懸念してしまいます。
完全に枯れたスギ枝葉を池に投入すべきだったかもしれません。
期待外れの結果で残念でしたが、もう少し続行します。
つづく→
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