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2025/02/13

早春にトウホクサンショウウオの繁殖池をタイムラプス動画で監視してみると…#1:ニホンザルの登場

 

2024年3月上旬〜下旬

山中の湧き水が溜まる浅い池で毎年早春にトウホクサンショウウオHynobius lichenatus)が繁殖していることが分かっています。

産卵行動を観察・撮影するのが今季の目標です。 
3月上旬に現場入りしてみると、暖冬のためか池は雪に埋もれていませんでした。 
この日は未だヤマアカガエルやトウホクサンショウウオの卵嚢は1つも見つかりませんでした。 
親の姿もまったく見当たりません。 
繁殖期はまだ始まっていないようです。 
(ちなみに、標高の低い山麓の池ではヤマアカガエルの産卵が始まっていました。) 
前年は水中に半分沈んだアカマツの落枝にトウホクサンショウウオの卵嚢が産み付けられていたので、今年は産卵基質として常緑の葉の付いたスギの落枝を池に投入してみました。 
(私のこの行為が、余計なお世話だったかもしれません。)

両生類は変温動物ですから、いくら活発に動き回っても通常のトレイルカメラでは検知できません。 
仕方がないので、次善の策としてタイムラプス専用カメラを設置して繁殖池を監視することにしました。 
明るい昼間のみ1分間隔でインターバル撮影した連続写真をタイムラプス動画に加工しました。 
(この機種では、夜間の暗視撮影はできません。)
まる2週間のインターバル撮影で計4.7 GiBのAVIファイルが生成されました。

野生動物で唯一写っていたのは、 3/8の夕方(PM 17:10〜17:11)に登場した1頭のニホンザルMacaca fuscata fuscata)だけでした。 
他の季節にこの水場でニホンザルが飲水するシーンがときどきトレイルカメラで撮れていたので、今回も群れで遊動する途中に水を飲んだり水浴するために立ち寄ったのでしょうか? 
雪解け水の冷たい泉にわざわざ入ってジャブジャブ横断したということは、何か餌を探していたのかもしれません。 
早春は樹々が芽吹くまでニホンザルの餌がきわめて乏しい季節ですから、空腹の猿がカエルやサンショウウオの成体や卵嚢を探して捕食する可能性も十分あり得ます。 
しかし、ニホンザルが監視カメラに写ったのは、2週間でこの一度きりでした。 
もし捕食に成功していたら、味をしめて何度も同じ池に通っていたはずです。 
あるいは、カエルやサンショウウオの成体または卵嚢を味見したのに、ニホンザルの口に合わなかった(不味かった)のかもしれません。
ニホンザルの糞を分析して、両生類のDNAが検出できれば捕食した有力な証拠となるでしょう。 

低山でもときどき寒の戻りで雪が降っていました。 
早春の積雪量は少なく、すぐに溶けてしまいます。 
カメラのレンズに雪が付着しても、晴れると溶け落ちてすぐに視界は良好に戻ります。 
晴れると池の周囲の雑木林の影がまるで日時計のように刻々と移動しています。 

画面の下端に写っている、池畔に自生するスギ幼木の枯れた横枝が邪魔なのですが、上下に日周運動していることが分かりました。 
昼間に晴れると枝が立ち上がり、曇りや雨雪など悪天候になると垂れ下がります。 
つまり死んだ枯れ枝ではなく、生きているようです。 

水中に浸ったスギの落枝はいつまで経っても葉が緑色のままで、茶色に枯れることはありませんでした。 
いくら目を凝らして動画を見直しても、水中のスギ落枝にサンショウウオやカエルが集まって産卵する様子は写っていませんでした。 
たまに岸辺近くの水中で両生類?がウロチョロしていたかもしれませんが、タイムラプスの早回し映像ではあまりにも早すぎてよく分かりません。 

後に現場入りすると、監視カメラの画角の外の、対岸の水面に浮いていたスギの落ち葉にトウホクサンショウウオの卵鞘が産み付けられていました。(映像公開予定) 
スギの生葉から水に溶け出したエキスをトウホクサンショウウオが嫌って寄り付かなくなってしまった可能性なども懸念してしまいます。
完全に枯れたスギ枝葉を池に投入すべきだったかもしれません。 

期待外れの結果で残念でしたが、もう少し続行します。

つづく→ 


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2025/02/06

山中の砂利道で産卵のため試掘と跳躍移動を繰り返すミカドフキバッタ♀【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2023年7月下旬・午後14:10頃・くもり 

里山の砂利が敷かれた坂道で、ミカドフキバッタ♀(別名ミヤマフキバッタ;Parapodisma mikado)が産卵する場所を探していました。 
砂利道をゆっくり横断しながら、腹端で地面に穴をあちこち試掘しています。 
前に少し歩いて移動し、また試掘します。 
フキバッタの仲間は、卵を1個ずつ地中に産み付けるのではなく、泡状の物質とともに卵塊としてまとめて産卵するはずです。 
つまり、もし産卵に成功していれば、腹端の産卵管を地中にもっと長時間伸ばしているはずです。 

少し離れた位置から様子をしばらく見守ったものの、乾燥した土壌が石だらけで硬すぎるのか、ミカドフキバッタ♀は本格的な産卵行動を始めてくれませんでした。 
どうやら深く掘れる土質ではなかったようです。 
それならどうして、硬い砂利道ではなく適度に湿った柔らかい土壌の場所(林床の黒土など)を選んで産卵しないのか、理解に苦しみます。 
卵寄生者や捕食者への対策なのでしょうか? 
小石の下がむしろ掘りやすかったり、水はけの良い砂地や砂利に好んで産卵するのかな? 

しばらくすると、ミカドフキバッタ♀は自発的に跳躍を繰り返して、砂利道を素早く横切りました。 
さすがに場所を大きく変えて産卵地を探そうと思ったのかもしれません。 
産卵シーンを真横から撮りたくて私が少し移動したので、フキバッタ♀を警戒させてしまった可能性もありそうです。 
2回の跳躍シーンを1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@3:57〜) 
後半は、道端で跳んで逃げる様子を240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@4:27〜) 
フキバッタの仲間は成虫でも翅が退化しているため、遠くまで一気に飛ぶことができません。


かなり古い図鑑なのですが、保育社『検索入門セミ・バッタ』(1992年)でミカドフキバッタを調べると、気になる記述がありました。
形・色♀の腹部1・2節は本属の他種に比べて幅広く、寒冷地適応と思われる。 
生態:(中略)本属中で最も北に分布をのばしている。 (p72より引用)
下線部の意味が分からず、詳しく知りたかったので、Perplexity AIに質問してみました。 
質問: とある昆虫図鑑で「ミカドフキバッタ♀の腹部1・2節は本属の他種に比べて幅広く、寒冷地適応と思われる。」という記述がありました。どうして幅広い腹部が寒冷地に適応した形質なのですか? まさか、産卵のために凍った土を腹端で掘る必要があるのですか?
回答: ミカドフキバッタ♀の腹部1・2節が幅広いことと寒冷地適応の関係については、直接的な説明が検索結果には含まれていませんが、昆虫の寒冷地適応に関する一般的な知識と推論を用いて説明することができます。 
## 寒冷地適応としての幅広い腹部 
昆虫の寒冷地適応には、主に以下の要因が関係していると考えられます: 
1. **体温調節**: 幅広い腹部は、体積に対する表面積の比率を減少させます。これにより、寒冷環境下での熱損失を抑える効果があります[1]。 
2. **エネルギー貯蔵**: 寒冷地では、活動可能な期間が限られるため、より多くのエネルギーを貯蔵する必要があります。幅広い腹部は、より多くの脂肪や栄養を蓄えるスペースを提供します[1]。 
3. **卵の保護**: ♀の場合、幅広い腹部は多くの卵を保護し、保温する役割を果たす可能性があります。これは、厳しい環境下での繁殖成功率を高めるのに役立ちます。 
4. **凍結耐性**: 寒冷地の昆虫は、体内に糖や糖アルコールを蓄積して凍結耐性を獲得します。幅広い腹部は、これらの物質をより多く貯蔵するのに適しています[1]。 
## 腹端での土掘りについて 
ミカドフキバッタ♀が凍った土を腹端で掘る必要性については、提供された情報からは確認できません。一般的に、バッタ類は産卵管を使って土中に卵を産み付けますが、凍った土を特別に掘る適応があるかどうかは不明です。 寒冷地適応としての幅広い腹部は、主に体温維持、エネルギー貯蔵、および凍結耐性の獲得に関連していると考えるのが妥当です。これらの適応は、ミカドフキバッタが厳しい寒冷環境で生存し、繁殖する能力を向上させると推測されます。 
(出典を34個も列挙したURLリストは割愛) --- Answer from Perplexity: pplx.ai/share

セカンドオピニオンとして、同じ質問をGemini2.0 AIにも尋ねてみました。 
その回答は、Perplexityとほぼ同じ内容でしたが、ダブルチェックしてみても、Google検索では関連情報(出典)がろくにヒットしません。 
この問題に対するAIの推論が正しいのか、それとも知ったかぶりのハルシネーションなのか、私には判断しかねます。
ミカドフキバッタの幅広い腹部が寒冷地適応である理由について、複数の要因が考えられます。 
**体積と保温** 
寒冷地では、体温を維持することが重要です。幅広い腹部は、体積を大きくすることで、熱を蓄えやすく、体温の低下を防ぐ効果があると考えられます。また、腹部には内臓器官が集中しているため、幅広い腹部が内臓を寒さから守る役割も果たしている可能性があります。 
**脂肪の蓄積** 
寒冷地では、食料が不足する時期があるため、エネルギー源となる脂肪を蓄えておくことが重要です。幅広い腹部は、より多くの脂肪を蓄えることを可能にし、寒さや飢餓に対する抵抗力を高めると考えられます。 
**産卵と繁殖** 
寒冷地では、繁殖期間が限られています。幅広い腹部は、一度に多くの卵を産むことを可能にし、繁殖効率を高める効果があると考えられます。また、産卵場所の確保や卵の保護にも役立つ可能性があります。 
**その他の要因** 
寒冷地に適応した幅広い腹部は、積雪時などに体が雪に埋もれるのを防ぐ効果や、風雪から体を守る効果も考えられます。また、ミカドフキバッタの祖先が寒冷地に適応した際に、たまたま幅広い腹部を持つ個体が生き残りやすかったという可能性もあります。 
**産卵のために凍った土を掘る必要性について** 
ミカドフキバッタが産卵のために凍った土を腹端で掘る必要性は低いと考えられます。一般的に、バッタ類は土壌中に産卵管を挿入して産卵します。凍った土壌は硬く、産卵管を挿入しにくいため、産卵に適した場所とは言えません。ミカドフキバッタは、比較的温暖な時期や場所を選んで産卵すると考えられます。 
**結論** 
ミカドフキバッタの幅広い腹部は、体温維持、脂肪蓄積、繁殖効率の向上など、複数の要因によって寒冷地適応した形質であると考えられます。産卵のために凍った土を掘る必要性は低いと考えられます。 
**補足** 
ミカドフキバッタの寒冷地適応については、さらなる研究が必要です。他の寒冷地性バッタ類との比較や、遺伝子レベルでの解析などを行うことで、より詳細なメカニズムが解明される可能性があります。

どうやら「近縁な種間では大型の種ほど寒冷な地域に生息する」というベルクマンの法則と似た話のようです。
しかしフキバッタは昆虫で変温動物ですから、ベルクマンの法則は適応されないはずです。
むしろ変温動物の昆虫では、寒冷地に行くほど小型のものが生息する傾向が見られ、「逆ベルクマンの法則」と言われます。
コオロギでは寒冷地では活動できる時間が短いので、成虫になるまでに摂取できる食料が少ないためと言われる。さらに小型のスズムシ類では本州南部では年3回発生、北部では年2回発生する種があり、この場合、本州南部から北に向かうにつれて小型の個体が生息するが年2回になる境界線を越えると一旦大きな個体が現れ、そこから北へふたたび次第に小型になってゆく現象がある。(wikipediaより引用)

フキバッタ類は卵で越冬するので、冬が来る前に成虫は死んでしまいます。
したがって、成虫の凍結耐性向上のために腹部が幅広になったという可能性については考慮する必要はない気がします。

2024/11/18

羽ばたきながらヒャクニチソウの花で吸蜜・産卵するオオタバコガ♀(蛾)【FHD動画&ハイスピード動画】

 


2023年10月中旬・午後15:00頃・晴れ 

街なかの花壇に咲いたヒャクニチソウ(百日草)の群落でオオタバコガ♀(Helicoverpa armigera armigera)が訪花していました。 
この組み合わせは初見です。 
左前翅の翅頂が欠けた同一個体を撮り続けました。 

花弁が色とりどりの品種が咲いている中で、赤、白、黄色の花で吸蜜しました。 
筒状花から口吻を引き抜くと、オレンジ色の花粉が付着しています。 
次の花へと移動する前に、触角を前脚でぐいっと拭うことがありました。(身繕い) 
隣接する花に移動するときには、省エネのためにわざわざ飛ばずに歩いて行きました。 

くらべてわかる蛾 1704種』という図鑑でオオタバコガを調べると、
♀は(翅表が:しぐま註)橙褐色 
食草:イネ科、キク科、ウリ科、ナス科、バラ科など広食性 (p115より引用)

農薬メーカー?シンジェンタジャパンのサイトでは、次のように書いてありました。

前翅は雄は黄色味を帯び、雌は赤味を帯びる。 


この記述に従えば今回の個体は♂ということになるのですが、後に産卵したので♀と判明しました。
翅色の個体変異なのか、それとも強い日差しで翅の色が白飛びしてしまったのかな? 

訪花中も葉に止まっているときも、ほぼ休みなく翅を小刻みに震わせています。 
足を着地していますから、ホバリング(停空飛翔)ではなくて、いつでも飛び立てるように飛翔筋を震わせて体温を上げる準備運動(アイドリング)をしているのでしょう。 
暖かい日向ですから気温が低い訳ではないのですが、本種は寒がりなのか、特有の習性のようです。 
もしかして、捕食圧の高い地域なのでしょうか? 



オオタバコガがヒャクニチソウの花から飛び立つ瞬間を狙って、240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:08〜) 
撮影中は気づかなかったのですが、黄色い花の品種のヒャクニチソウで花蜜を吸いながら、腹端を前方に屈曲させて筒状花の側面に付けました。(@1:13〜) 
元の姿勢に戻るときに産卵管を伸ばしていたことから、産卵行動と判明しました。 
つまり、この個体は♀でした。 
準備運動していた羽ばたきが力強くなると、次の花に飛び去りました。 
前後の動画をじっくり見直しても、産卵していたのはこのときだけでした。 

オオタバコガ♀の産卵行動を観察できたのは、これが2例目です。 
関連記事(3年前の撮影)▶ ナスの葉に産卵するオオタバコガ♀(蛾) 

オオタバコガの産卵習性についてネット検索すると、石川県の病害虫防除室が公開しているPDF資料『オオタバコガ - 石川県 防除室だよりvol12』 がヒットしました。
雌は夜間に葉裏や新芽、花蕾付近等に1粒ずつ、一晩で200~300 粒、期間中に2000粒程産卵します。
卵を何個もまとめて産み付けるのではなく、1個ずつしか産まないというのは、私が観察した通りです。 
今回は花に産卵したので驚いたのですけど、オオタバコガ♀では珍しくないことを知りました。
撮れた写真や映像を改めて見直すと、ヒャクニチソウの群落で虫食い跡のある葉や花弁があちこちに見つかります。 
卵から孵化したオオタバコガ幼虫による食痕とは限りませんが、可能性はあります。 


2024/10/23

タヌキの溜め糞にガガンボが産卵?

 

2023年12月上旬・午前10:50頃・くもり 

里山のスギ林道に残されたホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の溜め糞場を定点観察しています。 
今回は新鮮な糞塊が残されていました。 

1匹のガガンボ(種名不詳)がタヌキの糞の上を歩いて横切っていました。 
後半は立ち止まって何かしています。 
林道を歩いていたガガンボが溜め糞場にたまたま通りかかったのではなく、明らかに獣糞に誘引されて来たようです。 
背側を見下ろすアングルでは産卵しているのか吸汁なのか、見分けられません。 
口器が退化しているように見えるので、吸汁ではなく産卵行動ではないかと思います。 
そもそも私にはガガンボの性別を外見から見分けられません。 
触角や腹端の形状などから性別を見分けられる方がいらっしゃいましたら、教えて下さい。 

撮影アングルを変えてガガンボを側面からも撮りたかったのですが、カメラの電池が切れてしまい残念無念…。 
私がカメラの電池を慌てて交換している間に、ガガンボは逃げてしまいました。 
動画を優先したので、同定用の高画質写真も撮れませんでした。 

冬に観察したフユユスリカ?とは明らかに別種でした。 

関連記事(1年前の撮影)▶  


余談ですが、今回タヌキの溜め糞場sで撮った隣の糞塊の写真をよく見ると、茶色い未消化物が大量に含まれていました。
もしこれがナツメの果皮だとすると、山のタヌキが里まで降りてきて庭木の下でナツメの落果をたらふく食べたことになります。
正式にはタヌキの糞分析をして、ナツメの種子が含まれていることを確かめる必要があります。
ナツメは日本の在来種ではありませんから、山中でナツメの木を見かけるようになったら、タヌキなどの野生動物が種子散布した結果ということになります。

関連記事(同時期に別の地点の溜め糞場で撮影)▶ ナツメの種子散布者としてのホンドタヌキ


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こっちの糞塊にはナツメの果皮が未消化のまま含まれている?

2024/07/05

シラハギに産卵するツバメシジミ♀

 

2023年9月下旬・午前11:15頃・くもり 

墓地の片隅に咲いたシラハギ(白萩)ツバメシジミ♀(Everes argiades hellotia)が訪花していました。 
この組み合わせは初見です。
いつものように、ツバメシジミ♀はしっかり閉じた翅を互いに擦り合わせ、後翅の尾状突起を触角のように動かしています。(自己擬態) 
ちらっと見えた翅表は茶色でした。 
吸蜜シーンを撮りたかったのですが、風揺れに悩まされ、いつの間にか飛び去ってしまいました。 

撮影中は気づかなかったのですが、動画を見直すと、腹端を前方に曲げて産卵していました。 
ツバメシジミの幼虫はマメ科植物を食草とするので、納得です。 
手前の蕾が邪魔でしっかり見えなかったのが残念でした。 




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2024/06/23

ニホンアナグマの糞に初齢幼虫および未受精卵を産み付ける卵胎生のニクバエ♀

 

2023年9月下旬・午前10:55頃・晴れ 

里山のスギ植林地を抜ける林道にニホンアナグマMeles anakuma)とホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が共有する溜め糞場sがあります。 
この日はタヌキの新鮮な溜め糞は見当たらず、アナグマが排泄したと思われる新鮮な軟便が林床の下草の上に残されていました。 

ちなみに、この下草はツワブキのような丸い葉の植物ですが、ツワブキにしては葉の緑色に照り(光沢)がありません。 
フキではないことは私にも分かるのですが、山中でよく見かけるこの植物の名前が分からず、長年気になっています。 
どなたかご存知の方がいらっしゃいましたら、教えてくださると助かります。 

前年(2022年)にトレイルカメラを設置して長期観察したところ、この溜め糞場sに通ってくるタヌキとアナグマは少し離れた別々の地点に排便していること、アナグマは下痢便になりがちということ、などが分かりました。 
アナグマの新鮮な糞は「黄土色の絵の具の匂い」がするらしいと本で読んだのですけど、今回の軟便を小枝の先端でつつき(検便)、匂いを嗅いでみても意外なことに無臭でした。


溜め糞場に集まって来ている昆虫でまず目についたのは、ピンクの金属光沢に輝くオオセンチコガネPhelotrupes (Chromogeotrupes) auratus auratus)です。 
アナグマ下痢便のすぐ横でスギ落ち葉の上にじっとしていました。 



しばらくすると、逃げていたキンバエLucilia caesar)の仲間♂とニクバエの一種♀が獣糞に戻ってきました。 
いつものように獣糞の上を歩き回って口吻で表面を舐めています。 

ニクバエ♀が未受精卵を産む瞬間

やがてニクバエが立ち止まると、獣糞の縁に腹端から真っ白い物体を2回続けて産み付けました。 
1個目はバナナのように湾曲した白くて巨大な卵でした。 
続けて産み落としたのは、それよりも小さな白い蛆虫でした。 
ニクバエの仲間は昆虫でも珍しい卵胎生です。 
産卵・産仔したことから、このニクバエは♀と判明しました。 
たまたま『昆虫考古学』という本を読んでいる最中だったので、ニクバエ♀が産仔する瞬間を初めて目の当たりにして感動しました。
ニクバエ科(flesh fly)腐肉食性 他のハエと異なり、卵を産まない。卵は生殖器官内にとどまり、幼齢1期の幼虫として産み出される。幼虫の大きさは3〜19mm。(V章:ハエが見ていた人の死ー葬送昆虫考古学の世界p114より引用)


スギ林の林床は晴れた昼間でもかなり薄暗く、少し離れた位置から望遠マクロで撮影中の私は、産仔されたニクバエの初齢幼虫がどこに行ったのか見失ってしまいました。 
私が目を離した隙にハネカクシやアリなど肉食性の昆虫にすぐ捕食されてしまったのかと思ったのですけど、撮れた動画を見返すと、ウジ虫は産仔直後に蠕動徘徊して軟便の中に自力で潜り込んでいました。 
その様子をじっくり撮影すべきだったのですが、巨大な卵に目が釘付けになっていた私は、現場でニクバエ初齢幼虫の動向に気づいていません。 

アナグマ軟便上を徘徊していたニクバエ♀が初回とは少し離れた地点に再び蛆虫(初齢幼虫)を産仔しました。(@0:40〜) 
2匹目のウジ虫も産仔直後に蠕動徘徊して獣糞の中に潜り込みました。 
産仔シーンを1.5倍に拡大してリプレイ。(@1:00〜)

次に私はカメラにマクロレンズを装着し、巨大な白い卵を接写してみました。 
この卵からニクバエの1齢幼虫がすぐに孵化してくると予想してその瞬間を待ち構えたのですけど、待てど暮せど変化がありません。 
どうやら、未受精卵だったようです。 
未受精卵に付着している白い膜のような物は、初齢幼虫が孵化した後の卵膜なのかな? 


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ハエ学: 多様な生活と謎を探る

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2024/05/29

林道で採食する2羽のヤマドリと山中の泉で間欠打水産卵する謎のトンボ♀【トレイルカメラ】

 

2022年8月下旬・午後16:10頃・晴れ 


シーン1:8/19・午後13:32・晴れ(@0:00〜) 
明るい時間帯にたまたまフルカラーで撮れた現場の状況です。 
里山から湧き出る地下水が溜まって、浅い池になっています。 
池の奥には林道が左右に通っていますが、往来するヒトはほとんど居なくて、雑草が生い茂る獣道と化しています。 

泉から画面の奥に向かって流れ出た水は、林道を渡って(洗い越し)から山の斜面を流れ下り、沢の源流となります。 


シーン2:8/22・午後16:06・晴れ(@0:04〜) 
雑草が生い茂る奥の林道を2羽のヤマドリ(亜種キタヤマドリ:Syrmaticus soemmerringii scintillans)が前後して右から左へゆっくり歩いていました。 
ときどき地面を啄んだり、目の前の植物の葉をつついたりしています。 
雑草が邪魔で尾羽の長さが確認できず、性別不明です。 
(なんとなく♀のような気がするのですけど、どうでしょうか?) 


一方その間、手前にある池の上をトンボが単独で飛び回っていました。 
てっきりいつものように、オニヤンマ♂の縄張り巡回飛翔かと初めは見過ごしそうになりました。 

関連記事(同所で17日前の撮影)▶ 縄張りの池を守り争うオニヤンマ♂【トレイルカメラ】 


1.5倍に拡大した上で1/3倍速のスローモーションでリプレイしてみると、水面に産卵を繰り返すトンボ♀と分かりました。 
トンボ♀が飛びながら池の水面に腹端を叩きつける度に、波紋が広がります。 
もしもオニヤンマ♀なら、ホバリング(停空飛翔)しながら何度も連続して打水産卵するはずです。 

関連記事(1ヶ月、11年、13年前の撮影)▶  


ところが今回のトンボ♀個体は、1個ずつ単発的(間欠的)に繰り返し産卵していました。 
この産卵様式は「間欠打水産卵」と呼ばれ、オニヤンマ♀以外の別種のトンボである可能性を示唆しています。 
♀♂ペアの尾繋がり状態ではなく、単独で産卵する♀を警護する♂の姿はありませんでした。 
 
連続打水産卵は,連続的に水面上に降下して水面を一定のリズムでたたいて産卵する方式,間欠打水産卵は,しばらくホバリング飛翔をしてその間に産卵弁と第9節腹板の間に卵塊をつくり,ある程度それが大きくなったら打水して放卵,それを繰り返す方式,といった具合です.だいたいは名称を見ればその動きに見当がつきます.状態的基準についても,同じトンボが異なる動きで産卵することがあり,つけられる名称も複数ある場合があります. (神戸のトンボサイトの「トンボの生態学 3.産卵とその行動」から一部引用)

 
※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。
今回、謎のトンボ♀の産卵行動をフルカラーで録画できなかったことが残念です。
旧機種のトレイルカメラは動画のフレームレートが15fpsしかないので、素早く飛び回るトンボの動きが少しカクカクしています。


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2024/03/30

山道の水溜まりに集まって産卵するオオハナアブ♀

 

2023年7月上旬・午後14:05頃・晴れ 

里山の中腹で林道のわだちが水溜まりになっていました。 
そこに複数のオオハナアブ♀(Phytomia zonata)が群がり、ブンブン♪と羽音を立てながら忙しなく飛び回っていました。 
岸の泥濘や草地に降り立ったオオハナアブは、左右の複眼が離れている♀ばかりでした。 
♂が居ないのは不思議です(性比の偏り)。 

背側から見下ろしても何をしているのかよく分かりません。 
夏の日差しを浴びて腹式呼吸しています。 
身繕いや日光浴以外の目的がきっとあるはずです。 
側面から撮りたくて私が下手に移動すると、警戒したオオハナアブ♀は羽音を立てて飛び立ってしまいます。 
しばらくホバリング(停空飛翔)してから同じ地点に再着陸することがあります。 
泥水を舐めに来ているのかと思ったのですが、口吻を伸縮させている個体がいなかったので、吸水ではなさそうです。 
かなり粘って撮影すると、どうやら腹端の産卵管を水溜まりの岸の泥濘や泥まみれの枯草に挿し込んで卵を産んでいるようです。 

【参考ブログサイト】
オオハナアブの産卵 @海野和男デジタル昆虫記
オオハナアブの産卵か? @ぶんぶん・ぷらっと・・・写真ブログ


水溜まりの上を低空でジグザグに飛び回る様子はあまりにも高速のため、その動きについて行こうとカメラを振り回す羽目になり、見ると酔いそうな動画になりました。 
そこで1/5倍速に加工したスローモーションでご覧ください。(@2:20〜) 
1/8倍速のハイスピード動画でも撮りたかったのですけど、固定焦点になってしまうので、使い道が限定されてしまいます。 
オオハナアブ同士で縄張り争いや求愛飛翔などの空中戦が繰り広げられているのかどうか肉眼では分かりませんでした。
スロー再生すると、ただ次の産卵地点を探索している低空飛翔だと判明しました。 

※ 撮影順ではなく入れ替えて編集してあります。 
複数個体を撮影。 


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2024/03/10

枯草に産卵するヒメウラナミジャノメ♀

 

2023年6月下旬・午後14:35頃・くもり 

農村部の畑の横でヒメウラナミジャノメ♀(Ypthima argus)を見つけました。 
道端に咲いたドクダミの群落で訪花吸蜜しているかと初めは思ったのですが、よくよく観察すると、地表の枯草に潜り込んで腹端を擦りつけています。 
地面を歩き回りながら、あちこちの枯草に腹端をチョンチョンと付けています。 
産卵中の腹端の動きをようやく側面からしっかり撮れました! 
1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@1:17〜1:46) 
ヒメウラナミジャノメ♀の産卵行動は初見です。 

本種幼虫の食草はイネ科やカヤツリグサ科の生葉なのだそうです。 (『フィールドガイド日本のチョウ』p271より) 
それなのに、食草ではなくわざわざ枯葉や枯草に産卵する行動が進化してきたのは不思議です。 
寄生蜂への対策なのでしょうか? 
しかし、ヒメウラナミジャノメの卵は薄い緑色なので、本来は緑の生葉に産卵する方が目立ちません(保護色)。 
茶色の枯草に産み付けると逆に目立ってしまうはずです。 
卵から孵化した幼虫は、近くに生えた食草を自力で探し出す必要があります。 
鈴木知之『虫の卵ハンドブック』でヒメウラナミジャノメの産卵習性について調べると、
産卵場所は、枯葉・葉(イネ科のチヂミザサなど) 。♀は食草の葉裏や周辺の枯れ葉などに、1卵ずつ産卵する。(p109より引用)

産卵の合間に休息(日光浴)する際には、翅を開きました。 
この♀個体には、後翅の外縁に切れ込み状の損傷があります。 
左右対称の損傷なので、鳥に襲われかけたビークマークかもしれません。
(多数の眼状紋で威嚇していても、飛翔中は鳥に襲われることがあるのかもしれません。)
少し休むと、次の産卵を始めます。 


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2024/03/02

モリアオガエルの泡巣で吸汁するニクバエ

 



2023年6月中旬・午後12:20頃・晴れ 

梅雨の時期になると、山中の池の岸辺でミヤマガマズミなどの枝先にモリアオガエルRhacophorus arboreus)の卵塊がいくつも産み付けられます。 
その一つにホソヒラタアブ♀だけでなくニクバエ科の一種(種名不詳)も飛来しました。 
口吻を伸縮させて、乾いた卵塊の表面を舐め回しています。 

後半は、体格差のあるニクバエ2匹が並んで吸汁していました。 
なんとなく同種の♀♂かと思ったのですが、求愛交尾行動には発展しませんでした。 

ホソヒラタアブよりもニクバエの方が図太く、赤アリ(種名不詳)が近寄ってもあまり気にしません。 


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2024/02/23

モリアオガエルの泡巣で吸汁するホソヒラタアブ♀と食卵するアリ

 

2023年6月中旬・午後12:15頃・晴れ 

山中にあるモリアオガエルRhacophorus arboreus)の繁殖池に定点観察しにやって来ました。 
梅雨時で池の水位が上がり、満水状態です。 
例年なら池畔のマユミ灌木の枝先に卵塊が産み付けられているのですが、いつもの場所には泡巣がありませんでした。 
池畔の灌木を丹念に調べると、モリアオガエルの卵塊をいくつか発見しました。 
定量的な調査をしていませんが、今季は少ない印象です。 

ミヤマガマズミの枝葉にモリアオガエルが産み付けた一つの卵塊に1匹のホソヒラタアブ♀(Episyrphus balteatus)が止まっていました。
左右の複眼が離れているので♀と分かります。 
翅を広げたまま口吻を伸縮させて、乾いた粘液をしきりに舐めているようです。
タンパク質やミネラル成分が豊富なのでしょう。
吸汁しながらも、腹部を上下に軽く動かして腹式呼吸しています。 

一方、赤っぽい微小なアリ(種名不詳)も同じ泡巣の表面をうろついています。 
赤アリがかじっている黄色い粒々は、モリアオガエルの泡巣に含まれる卵です。
ホソヒラタアブは近づいてくるアリを嫌って飛び立ち、軽くホバリング(停空飛翔)してアリから少し離れた位置に止まり直しました。 
アリ自身にホソヒラタアブ♀を攻撃する意図(餌場の縄張り防衛)は別になさそうです。 
アリがモリアオガエルの卵を泡巣からほじくり出して自分の巣穴に運ぶかどうか、興味があったのですが、かなりの長時間観察しないと見届けられないでしょう。

ホバリング中のホソヒラタアブ♀がモリアオガエル泡巣の表面にチョンチョンと触れるような思わせぶりな動きを繰り返しているのが気になりました。 
産卵行動だとしたら、大発見です。 
それとも近くのアリを牽制しているのでしょうか? 
1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると(@2:10〜3:40)、どうやら産卵行動ではなさそうです。  
停飛しながら足の先で泡巣の表面に軽く触れているだけで、腹端は泡巣に触れていませんでした。 
泡巣表面の湿り気を足先の感覚器で調べているのかもしれません。 
ホバリングしながら泡巣の横のミヤマガマズミの葉にも足先で触れたので、どこに着陸しようか吟味しているだけなのでしょう。 
そもそもホソヒラタアブの幼虫はアブラムシを捕食するので、カエルの卵塊に産卵するはずがありません。 

関連記事(14年前の撮影)▶ ホソヒラタアブの幼虫と前蛹


周囲にモリアオガエルの卵塊はいくつもあるのに、特定の卵塊にしか昆虫が集まらないのは不思議です。 
アブ・ハエ類が吸汁目的だとしたら、産みたてで水気の多い白い泡巣を舐めれば良さそうなのに、少し乾いた卵塊が好みなのは何故でしょう?
わざわざ唾液を吐き戻しながら乾いた卵塊を舐め、吸汁しているのです。
出来たてフワフワの泡巣の上をアリが歩けないのはなんとなく予想できます。

関連記事(10年前の撮影)▶ モリアオガエルの泡巣に集まるハエ 
キンバエ類、ニクバエ類、ベッコウバエの仲間など大小様々のハエが来ていました。 



 
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水際に自生するミヤマガマズミの枝葉に群がってまさに抱接・産卵中のモリアオガエル♀♂も見つけました。
新鮮な泡巣は真っ白です。
モリアオガエル♀♂が粘液や尿を後脚で泡立てている最中に虫は来ていませんでした。
日が経って乾いた泡巣は黄色っぽくなります。

2023/11/17

山中の泉に沈んだアカマツの落枝に産み付けられたトウホクサンショウウオの卵嚢

 

2023年4月中旬・午後13:30頃・晴れ 

里山の根雪がすっかり溶けたのを見計らって、山中から地下水が湧き出る水場へ久しぶりの定点観察に行きました。 
岸辺のあちこちにゼラチン質の巨大な卵嚢が幾つも産み付けられていました。 
この泉にはトウホクサンショウウオHynobius lichenatus)生息していることが分かっているので、おそらくトウホクサンショウウオ♀が最近産み付けたばかりの卵嚢でしょう。 



岸辺の浅い水中に産み付けられた大きな卵嚢を右手で掬い上げてみると、ブヨブヨの触感で捉えどころがありません。 
くるんとカールした勾玉のような形状でした。 
岸辺の卵嚢は何にも固定されておらず、水底にゴロンと転がっているだけです。 
胚発生が少し進んでいたものの、まだ自発的な動きはありませんでした。 

サンショウウオには溜まり水など流れのない水(止水)に産卵するものと、産地の谷川など流れのある水(流水)に産卵するものがいる。(秋田喜憲『石川県能登宝達山のサンショウウオ物語:サンショウウオに魅せられて40年』p12より引用)

撮影現場は水の流入および流出があるものの、どちらに分類されるかと言えば止水域です。 

wikipediaによれば、トウホクサンショウウオは
雪解けを迎える3月から6月が繁殖期で、止水域に20-100個でひとかたまりの卵を産む[4]。

実は、池畔の崖に立っていたアカマツが冬の間に積雪の重みに耐え切れず真っ二つに折れてしまい、池の中にアカマツ倒木の枝が突き刺さっていました。 
(あるいはひょっとすると、落雷を受けたのかもしれません。)
水温が低いために、松葉が枯れずに緑色のままです。 
水中のアカマツ落枝にもトウホクサンショウウオの卵嚢が多数産み付けられていました。 
落枝ごと水中から外に引き上げてみると、卵嚢は自重で細長く垂れ下がり、印象がまるで変わりました。
卵嚢がちぎれることはありませんでした。 
アカマツの枝先や針葉に卵嚢が固定されているようです。 

トウホクサンショウウオの産卵シーンを観察できず、残念でした。 
来年以降の宿題として持ち越します。
もっと残雪のある早春に来る必要がありそうです。
この日はトウホクサンショウウオの成体を1匹も見かけませんでした。 
既に繁殖を終えて陸地に帰ったのか、それとも私を警戒して水中に逃げ込んだのか、分かりません。

水場でヤマアカガエルの卵塊が見つかるかと期待して山を登って来たのに、意外にも全くありませんでした。 
この泉でヤマアカガエルは繁殖しないのでしょうか? 
それとも、今春は大量のアカマツ落枝で池の水面がほとんど埋め尽くされたせいで産卵できなかったのかもしれません。

それから、アズマヒキガエルの卵塊も見つかりませんでした。 
ヒキガエルの繁殖期(カエル合戦)にはまだ時期が早そうです。 

水場に無人カメラを設置してサンショウウオやカエルの産卵シーンをなんとか撮影したいところです。
しかし両生類は変温動物のため、いくら激しく動き回ってもトレイルカメラのセンサーが反応してくれないのが問題です。 

ひょっとしたら水中の落枝をそのままにした方が、トウホクサンショウウオは捕食を免れてよく育つのかもしれません。 
しかし放置すると野鳥や野生動物が水場として利用しにくそうなので、撮影後はアカマツの倒木や落枝を撤去しました。 

ところで、動画撮影中に周囲の雑木林からツツピーツツピー♪というシジュウカラ♂(Parus minor minor)の囀りさえずりが繰り返し聞こえます。 

本当はトウホクサンショウウオの卵嚢を採取して持ち帰り、飼育してみたいところです。
あれこれ手を広げ過ぎてしまい、忙しくてとても余力がありません。 
できる限り定点観察に通うことにします。
調べてみると山形県のトウホクサンショウウオは 準絶滅危惧種(NT)に指定されているので、採集は控えるべきかもしれません。


同じ山系で雪解け水が溜まった別の池でもトウホクサンショウウオ♀が産んだと思われる卵嚢を先日見つけています。




そちらの池は標高が低くて日当たりも良いので、水温が高そうです
産卵時期も少し早く、胚発生も早く進行するでしょう。

それに対して、雑木林に囲まれた山中の水場は標高が高くて日当たりが良くありません。
しかも地下水の湧き水は夏でも冷たい(水温が低い)ため、トウホクサンショウウオの胚発生はゆっくり進行すると思われます。




【追記】
ネットで調べ物をしていたら、興味を引く文献を見つけました。
藤原愛弓, and フジワラアユミ. "宮城学院女子大学構内における準絶滅危惧種トウホクサンショウウオの産卵地の発見と個体数の推定." 宮城學院女子大學研究論文集 130 (2020): 47-57.
ありがたいことに、全文PDFがダウンロード可能です。
ざっと斜め読みしてみると、私の観察とそっくりの産卵環境が報告されていて驚きました。
MG 産卵地の周囲や水底には、周辺に生育する落葉・常緑広葉樹の落ち葉が厚く堆積しており(写真 4)、主に樹幹部から落下してきたと思われる枯れ枝や数本の倒木が、MG 産卵地の中の数か所に半分没した状態で確認できた。
 卵嚢が多く産み付けられていた場所は、倒木の下(写真 5)や木の枝(写真 6)であった。
広葉樹のみならず、アカマツの枝や葉にも産み付けられていた(写真 7)。同所的に最も多くの卵嚢が産み付けられていたのは倒木の下であり、3 月 19 日には水中に半分没した倒木の側面から下面にかけて、計 24 個の卵嚢が確認された。一方で、落ち葉が堆積した場所に、そのまま産み付けられている卵嚢も確認された。


【追記2】

平凡社『日本動物大百科5:両生類・爬虫類・軟骨魚類』を紐解いてトウホクサンショウウオの産卵生態について調べると、

透明でバナナ状の卵のうの表面に多数のしわがある点で、トウキョウサンショウウオやクロサンショウウオと区別できる。

 3〜6月の 雪どけのころに、繁殖個体が止水に集まり産卵する。止水といっても、(中略)山間の細流のよどみなどのようなわずかに流れのあるところが好まれる。♀は水中の石の下の枯れ枝などに1対の透明な卵のうを産みつける。1匹の♀が産む卵の大きさや卵数は地域により大きく異なるが、直径2.4〜3.2mmほどの卵を20〜100個産卵する。(p13より引用)

卵嚢表面の皺については、私が撮った写真でも確認できます。 

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