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2025/10/21

ミズナラ幼木の葉から葉に飛び回り産卵するムラサキシジミ♀【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2024年7月中旬・午後12:30頃・晴れ 

里山の遊歩道沿いで翅が青く輝く美しい蝶が飛び回っていました。 
ムラサキシジミNarathura japonica)を見たのは生まれて初めてです。 

葉から葉へと忙しなく飛び回り、ミズナラ幼木の先端部にある葉芽に触角や足で触れてみて次々に調べているようです。 
撮影中は、てっきりアブラムシの甘露を舐めているのかと想像したのですが、映像を見直してもアブラムシは写っていません。 
翅表の斑紋から、この個体は♀であることが分かりました。 
どうやら産卵に適した食樹植物(ブナ科の常緑樹または落葉樹)を探索しているようです。 
ミズナラ以外の別の樹種(フジですかね?)の葉にも留まったのですが、すぐにミズナラの葉に戻りました。 
やはりミズナラが好みのようですが、なぜか産卵してくれません。
おそらく産卵に適した葉芽がなかなか見つからないのでしょう。 

横に咲いたリョウブの花で吸蜜するかと期待したのですが、一度も訪花しませんでした。
後で調べると、ムラサキシジミの成虫は花蜜をほとんど吸わず、樹液やアブラムシの甘露などを摂取するのだそうです。 

ムラサキシジミ♀の探索および産卵行動を240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:27〜) 
いつもなら、飛び立つ瞬間だけを編集で切り取ります。
今回は意味のある探索行動も含まれていたので、カットしませんでした。 

ハイスピード動画モードに切り替えると固定焦点になるので、蝶が前後に動き回るとピンぼけになるのは仕方がありません。 
(撮りながらカメラを前後に動かしてピントを合わせる必要があるのですが、私が下手に動くと蝶が怖がって逃げてしまうので、静止して撮り続けました。) 

忙しない行動もスーパースローでじっくり観察することができました。 
羽ばたくと翅表のメタリックな青色が日光に輝いて、息を呑むほど美しいですね。 
ミズナラの葉から少し飛んでは近くの葉に移動し、足先や触角で葉芽に触れて調べています。 
葉から葉へ伝い歩いて移動することもありました。 

遂に、ムラサキシジミ♀は腹端を曲げて葉の根本の裏面に産卵したようです。(@1:34〜) 
卵から幼虫が孵化したら、すぐ近くにミズナラの葉芽があることになります。※ 
産卵行動が撮れたのはこの1回だけでした。 

※ ミズナラの芽形成サイクルを考えると、7月中旬の枝先に見られる芽は、基本的にすべて「葉芽」です。 
初夏~夏(6~8月)の時期は、すでにその年の新梢(当年枝)が伸び切りつつあり、先端や葉の付け根に次年度の葉芽が形成されつつある段階です。 
ミズナラの花は春に当年枝上に形成されるため、この時期に花芽は存在しません。 



【考察】 
(1)ムラサキシジミはゼフィルスの仲間ではない。
雑木林に生息する金属光沢が美しいシジミチョウだったので、てっきりムラサキシジミはゼフィルスの仲間だと思い込み、知ったかぶりで筆がすべりそうになりました。
念のために確認すると、ゼフィルスはミドリシジミ族の愛称であって、ムラサキシジミ族のムラサキシジミは含まれないそうです。
(危ない、危ない…。)
翅脈構造に注目した形態分類だけでなく、生活史もゼフィルスとは全く違うそうです。 
ゼフィルス類が年一化で卵越冬型であるのに対し、ムラサキシジミは多化性(年数回発生)で成虫越冬を行います。


(2)今回ムラサキシジミ♀がほとんど産卵しなかった理由についてPerplexity AIに相談してみると、他の可能性も提示してくれました。

産卵条件の未成立

ムラサキシジミは新芽や柔らかい葉柄基部を好むため、ミズナラの新芽が適度に展開していない場合は産卵を見送ることが多い。7月中旬はミズナラ新梢の成長期が過ぎて葉が硬化していることが多く、産卵に適する状態ではない可能性が高い。実際、観察例では「近くに新芽が控えていない枝では探索のみで去る」行動が確認されている。

成熟段階と時期の問題

ムラサキシジミは多化性で、7月個体群の一部は羽化直後でまだ成熟期に達していない雌が多い。産卵器官が完全に成熟する前は、産卵行動の探索だけを繰り返すことがある。そのため、見かけ上「産卵探索のようで産卵しない」行動が頻発する。気温が高い時期は交尾や体内卵形成が遅れる場合もある。


(3)南方性のチョウの分布拡大について。 
私のフィールド(山形県の多雪地帯)でムラサキシジミを見たのは生まれて初めてで、興奮しました。
本種はもともと南方系の蝶らしいです。
近年の温暖化の影響で、分布が北進しているのでしょうか?
当地で食樹探しには苦労しませんから、積雪量が減って成虫が無事に越冬できれば、もっと個体数が増えるはずです。

ムラサキシジミ(Narathura japonica)はもともと九州・四国・本州中部以南の暖地性樹林性シジミチョウだが、近年では明確に北方へ分布を拡大しており、山形県での記録も珍しいながら定着しつつあるとされる。nacsj+4

山形県での記録

山形県では2010年代以降に複数の観察が報告されており、山形市や鶴岡市など県内各地で確認例がある。特に2015年には山形市で雌の採集記録が報告され、これが「温暖化に伴う北進例」として全国的に注目された。従来、ムラサキシジミの分布北限は宮城県南部付近とされていたが、現在は山形県内にも不定期に出現している。nanyodoshoten+3

北進と温暖化の関係

日本全体でみると本種は1990年代以降に急速に北上しており、その要因として地球温暖化による冬季気温上昇が主要因と考えられている。越冬は成虫で行うため、厳しい寒さが続く地域では生存が難しかったが、近年は冬季の最低気温が上昇し、北方でも越冬可能になったとみられる。また、寄生蜂などの天敵が分布北限では未到達であり、これが繁殖成功率を高めているという研究結果もある。kpu+3

まとめ

  1. 山形県でのムラサキシジミ記録はまだ多くはないが、2010年代以降しばしば確認されるようになった

  2. その要因は、温暖化による冬の気温上昇と寄生者不在による生存率上昇が主と考えられている。

  3. 現状では散発的な発生段階だが、今後定着が進む可能性が高い。

したがって、山形県での出現はかつては稀であったが、 近年の地球温暖化と気候緩和の影響を受けた北進個体群の一部であるとみるのが妥当である。



(4)学名のシノニムについて
英語版wikipediaでは、ムラサキシジミの学名はArhopala japonicaとなっています。 
日本語版wikipediaに載っている学名(Narathura japonica)と違います。
ともに(Murray, 1875)と同じ分類学者が同じ年に発表している場合、どちらのシノニムが優先されるのでしょうか?
Perplexityに質問すると、ややこしい事情があって現在も確定していないようです。

ムラサキシジミの学名については、Narathura japonica (Murray, 1875) が現在の日本国内の分類体系(たとえば日本鱗翅学会・日本チョウ類保全協会など)で主に採用されているが、Arhopala japonica (Murray, 1875) も依然として国際的な文献では通用しており、両者は**同じ種を指すシノニム(異名)**である。digital-museum.hiroshima-u+4

分類学的経緯

もともとMurrayが1875年に発表したときはArhopala japonicaとして記載され、その後、Arhopala属を細分する見解の中でNarathura属が独立され、日本の研究者によって本種がNarathura属に移された。両属の区別点は翅脈や♂交尾器などに基づくとされるが、明確な形態的境界がないため、近年もどちらの属に置くかは研究者の体系によって異なるpteron-world

命名上の優先順位

両方とも同じ記載者Murrayおよび同年(1875)であるため、国際動物命名規約(ICZN)上では「記載時の原属名」――すなわちArhopala――が名義上の原組み合わせとして優先されるが、実際の「有効名(valid combination)」としては分類体系で採用される属名に従う。そのため、分岐学的にNarathuraを独立属と認める場合にはNarathura japonicaが有効名となり、そうでない体系ではArhopala japonicaが使用される。mizumoto-koen.blogspot+1

現行の整理

  • 日本鱗翅学会や広島大学デジタル博物館など国内主要機関では Narathura japonica (Murray, 1875) を採用。wikipedia+1

  • 海外のデータベース(EoL, GBIF, LepIndexなど)では Arhopala japonica (Murray, 1875) が主流。sugisaka.sakura+1

結論として、どちらも正しいが、属の扱いが異なるだけで同一種を指す。命名規約上の原記載は Arhopala japonica、しかし日本国内の現行標準は Narathura japonica である。



以上の調べ物でPerplexity AIをフル活用し、とても勉強になりました。(スレッド12




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2025/10/03

ヤマザクラの樹洞の縁に産卵するフタガタハラブトハナアブ♀

 

2024年7月中旬・午前11:10頃・くもり 

低山の樹林帯を抜ける山道の横に立派なヤマザクラの老木があり、幹に開口した小さな樹洞(開口部の直径は約2cm)の手前でフタガタハラブトハナアブ♀(Mallota eristaliformis)がホバリング(停空飛翔)していました。 
樹洞の縁に停まると、樹皮に腹端を何度も接触させています。 
このとき卵を産み付けているのでしょう。 
飛び立っても少しホバリングするだけで、同じ地点に着陸し直し、産卵を繰り返しています。 

夏の樹林帯は、林冠の葉が鬱蒼と茂って昼間でもかなり薄暗いです。 
初めは黄色い蜂に見えたので、てっきりマルハナバチ類の雄蜂♂が帰巣したか、あるいは交尾のために他のコロニーの樹洞巣に飛来した(探雌飛翔)のかと思いました。 
動画とは別に同定用に撮ったストロボ写真を見直すと、マルハナバチにベーツ擬態したフタガタハラブトハナアブ♀と判明しました。



産卵直後の写真を見ても、卵は微小なのか、どこか分かりません。


樹洞開口部の直径は約2cm。



このハナアブの詳しい生態や生活史を知らなかったのですが、Perplexity AIに問い合わせると、蜂の巣に寄生するのではなく、ファイトテルマに産卵するらしい。
フタガタハラブトハナアブ(Mallota eristaliformis)の雌は、主に樹木の洞(クヌギ等)の水の溜まった部分に産卵します。幼虫はその洞の水中に存在する腐植質(腐った植物片など)を食べて育ちます。

【参考サイト】 


ちなみに、樹洞、葉腋、食中植物の壺など植物上に保持される小さな水たまりは「ファイトテルマータ」(複数形:Phytotelmata、単数形は「ファイトテルマ」Phytotelma)と呼ばれ、そこだけで興味深いミニ生態系になっています。 

ヤマザクラの細い横枝が根元から折れた後に傷口が腐り、樹洞が形成されたのでしょう。
樹洞入口の右上部分には白い糸が密に張り巡らされています。
樹皮の欠片(木屑)や虫の糞?が大量に付着しているので、クモの網ではなくて蛾の幼虫が絹糸を紡いだ巣のようです。
今回見つけた小さな樹洞の奥がどうなっているのか調べていませんが、横向きに開口しているので、中に雨水が溜まっているとは思えません。 
それでもフタガタハラブトハナアブの幼虫は、樹洞内部の湿って腐った木屑などを食べて育つのでしょう。 

今回フタガタハラブトハナアブ♀は樹洞の縁に産卵したので、幼虫は孵化直後に自ら樹洞内の水溜り(ファイトテルマータ)など餌がある安全な場所を求めて移動しなくてはなりません。 
1齢幼虫にそのような運動能力があるのであれば、♀成虫はファイトテルマータに近づきすぎてうっかり溺死するリスクを回避できそうです。 
フタガタハラブトハナアブ♀が産卵のために樹洞内に侵入しなかったのは、暗闇では目が見えず、中に潜む捕食者に襲われても逃げ遅れるからだろうと推測しました。 


※ オリジナルの映像があまりにも暗かったので、動画編集時に自動色調補正を施しています。 
※ 羽音が聞き取れるように、音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


この小さな樹洞に小鳥や小動物が出入りしていそうな気がします。
しかしトレイルカメラを設置して確かめたくても、他のプロジェクトもいくつか同時進行しているために機材の数が足りず、後回しになっています。 


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2025/09/28

山中の水溜りで♂の警護なしで単独打水産卵する謎のトンボ♀【トレイルカメラ】

 

2024年7月中旬 

シーン1:7/16・午前11:45・晴れ・気温32℃(@0:00〜) 
山林にある湿地帯で湧き水や雨水が溜まった水溜りを無人センサーカメラで見張っています。 


シーン2:7/20・午後13:15頃・晴れ・気温27℃(@0:04〜) 
画面の右上奥、水溜まりNから溢れた水が流れ出る地点(湿地帯の泥濘)で、トンボ♀(種名不詳)が単独で飛びながら打水産卵を繰り返していました。 
トンボ♀は場所を変えて更に産卵してから、最後は右上に飛び去りました。 
その間、♀の近くで産卵警護する♂の姿は写っていませんでした。 

謎のトンボ♀の単独打水産卵を1.5倍に拡大した上でリプレイ。(@0:34〜) 
遠くてトンボの種類を見分けられず、大型のヤンマ類なのかそれより小型のトンボ類なのかも不明です。 
オニヤンマ♀の単独打泥産卵(挿泥飛翔産卵)は体をもっと垂直に立てた姿勢でホバリングしながら上下動して産卵するので、今回の産卵動画の動きとは違います。

関連記事(2、15年前の撮影)▶ 

井上清、谷幸三『トンボのすべて(第2改訂版)』によると、
オニヤンマの♀は浅くて細い流れの上にやってくると、空中で少しホバリングしたあと、突っ立った姿勢のままストンと落下し、腹の先より突き出ている生殖弁を砂泥底に突き立てて産卵し、すぐ飛び上がり、また落下して産卵する。この動作をリズミカルにストンストンと繰り返します。(p69より引用)

同時期に別の池で見かけたオオシオカラトンボ♀の産卵行動と似ていますが、他にも候補がいるので決めつけることはできません。 



しばらくすると、手前の水溜まりSに右奥から1匹のトンボが飛来しました。 
水溜りSの上空を一回りしただけで、右奥の水溜まりNに戻りました。 

1.5倍に拡大した上でリプレイ。(@1:26〜) 
更に1/3倍速のスローモーションでもう1回リプレイしてみましょう。 
残念ながらトンボの種類や性別を外見で見分けることはできませんでしたが、その行動から推理すると、おそらくトンボ♂が縄張りを張って占有飛翔しているのでしょう。 
交尾相手の♀を探し回り(探雌飛翔)、ライバルの♂が来たら縄張りから追い払うと思われます。 
動画の前後半で登場したトンボは同種とは限らず、別種かもしれません。


そもそも今回、監視カメラが何に反応して起動したのか不明です。
トンボは昆虫で変温動物のはずなのに、トレイルカメラの熱源センサーが反応したということは、飛翔筋の激しい運動により、気温よりも高く発熱しているのかもしれません。 
トレイルカメラに飛んでいるトンボが写っていたことがこれまでに何度もあるので、サーモグラフィカメラでトンボの体温を知りたいものです。

関連記事(2年前の撮影)▶ 

あるいは、たまたま飛来した鳥が高速で横切った結果、偶然トンボの産卵シーンが撮れたという可能性もあります。 


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2025/09/19

単独産卵中のオオシオカラトンボ♀が捕食者に襲われると警護飛翔中の♂は身を挺して守るのか?

 



2024年7月上旬・午前11:40頃・晴れ 

低山の池でオオシオカラトンボ♀♂(Orthetrum triangulare melania)の産卵行動を観察していると、捕食者が現れました! 
トンボの撮影に集中していた私は気づかなかったのですが、トノサマガエルPelophylax nigromaculatus)が池で獲物を待ち伏せしていたようです。 
単独で飛びながら岸辺の水面に打水産卵を繰り返すオオシオカラトンボ♀に気づいたトノサマガエルが左からピョンピョン跳んできました。 
そのまま獲物に襲いかかろうとしたものの、オオシオカラトンボ♀は気づいて素早く飛んで逃げ、トノサマガエルの狩りは失敗しました。 

緊迫の瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:18〜) 
トノサマガエルが獲物を狩れる射程距離に入る前に、オオシオカラトンボ♀は逃げていました。 
このトノサマガエルはまだ若いのか、やや小さ目の個体でした。 

ここで興味深いのは、♀を産卵警護していた♂の反応です。 
産卵中の♀のすぐ上空でホバリング(停空飛翔)していたオオシオカラトンボ♂は、捕食者の接近を♀に警告したり、身を挺して♀を守ったりすることはありませんでした。 
カエルから逃げた♀の後を追いかけて♂も飛び去りました。 

警護飛翔する♂はあくまでも♀が浮気しないようにライバル♂から♀を守るだけであって、捕食者から配偶者をガードすることはないようです。 
(捕食者の接近を見張るための哨戒飛翔ではないようです。)
もしもカエルの待ち伏せ猟が成功していれば、オオシオカラトンボ♂はあっさり♀を見殺しにしたと思われます。


【考察】 
擬人化すると、今回オオシオカラトンボ♂の行動を見て騎士道精神に欠ける(甲斐性がない、頼りない)と憤慨・失望する人がいるかもしれません。 
しかし、利己的遺伝子の観点からは容易に説明できます。 
♂は命を賭して捕食者に立ち向かったり身を挺して♀を守るよりも、さっさと逃げて生き残れば、新しい♀と交尾して自分の子孫をもっと増やせるチャンスがあるからです。 
そもそもトンボは天敵(捕食者)に立ち向かえる武器を何も持っていません。 


この疑問をPerplexity AIに質問すると、以下の回答を得ました。 (参考文献へのリンクは割愛。)

オオシオカラトンボの♂が行う「警護飛翔」は基本的にライバルとなる他の♂トンボに対する縄張りや交尾相手(♀)の独占を目的とした行動であり、捕食者から♀を守るための直接的な防衛行動や警告行動ではありません。

理由と背景

  1. 警護飛翔の目的
     ♂は産卵中の♀を他の♂が奪うことを防ぐために♀の周囲を飛び回り、ホバリングしたり威嚇したりします。これは「産卵相手の独占」と「ライバルの排除」が主目的です。

  2. 捕食者に対する反応
     トノサマガエルやカエル類、クモ、カマキリなどの捕食者に対して、トンボの♂が積極的に捕食者を追い払ったり警告を発したりする報告は一般的に少なく、むしろ捕食者に気付いた♀や♂自身が素早く逃避飛翔します。
     ♂は捕食者に対して防御的に護衛する行動はとらず、攻撃的な防衛は行いません。

  3. 捕食者が近づいた際のトンボの行動
     捕食者の接近は非常に危険なため、♀も♂も逃げることが多く、♂の警護飛翔は捕食者認知や防御の役割は持たないと考えられています。

まとめ

  • オオシオカラトンボ♂の警護飛翔は「競争相手の♂トンボへの排除・威嚇行動」であり、

  • 捕食者からの防衛や警告ではない。

  • 捕食者接近時は♀自身が逃げるか、周囲のトンボも飛び去るなどして回避する。

よって、今回のトノサマガエルに♀が跳びつかれた場合に♂が防御的な行動をとらず、逃げて無事だったというのは、オオシオカラトンボの自然な行動パターンとして符合します。


 
ところで、トンボの中にはノシメトンボのように♀が打空産卵する種類もいます。 
打水産卵と打空産卵で産み分けているのはなぜでしょうか?  
オオシオカラトンボのように打水産卵する方が、産卵する地点の狙いを付けやすいのですかね?

トンボの「打水産卵」と「打空産卵」は、どちらも飛翔中に腹端をリズミカルに振る動作をとりますが、前者は腹端で実際に水面を叩き卵を水中や水面直下に産みつけるのに対し、後者は空中から卵をばら撒き水面や湿地、泥などに着地させる方法です。たとえばノシメトンボやナツアカネなど、同じアカネ属でも種や状況によって使い分けることがあります。dragonflykumamoto.fc2+1

なぜ産み分けるのか?

  • 産卵環境の多様化(=卵の生存戦略の幅)と、捕食リスク・生息地特性への適応が主な理由と考えられています。

    • 打泥産卵は泥の中、打水産卵は直接水中、打空産卵は水・湿地・泥の上など、卵を分散させて環境の変動や捕食からより多くの子孫を残す可能性を高めます。dragonflykumamoto.fc2

    • 打空産卵は捕食者(カエルなど)に狙われにくい高さを飛びながら産卵できる反面、卵が正確に水中に落ちないリスクがあります。global

打水産卵の狙い付けについて

  • 打水産卵は自分の腹端で「ここだ」と狙いを定めて直接水面を叩きつけるため、卵の投入位置をかなりコントロールしやすい利点があります。kobe-c+1

  • 一方、打空産卵では相対的に「着地する地点」が卵ごとにムラが生じやすく、特に風や空中の姿勢で散布状態になります。ただし「湛水域の安定」「季節的な水たまり」など長期的な生存戦略としては有効な場合も多いです。

まとめ

  • 打水産卵は「確実に水中へ」、打空産卵は「リスク回避&卵の分散」を組み合わせた適応行動です。とくに打水産卵は「狙いをつけやすい」産卵法に該当しますが、その分、捕食リスクもやや高くなります。kobe-c+2

  • 種や産卵場所、環境条件に応じて両法を使い分けるトンボもいます。

参考:トンボの産卵方法の多様性と戦略

 
確かに、打水産卵するトンボはカエルなどに捕食されるリスクがあることを今回まざまざと教えられました。

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2025/09/16

マユミの枝先に産み付けられたモリアオガエルの泡巣が雨で溶け落ちるまで【トレイルカメラ:昼夜の微速度撮影#7】

 



2024年7月上旬〜中旬

山中にあるモリアオガエルRhacophorus arboreus)の繁殖池で、岸辺に自生する灌木に産み付けられる白い泡巣を長期間観察しています。 
これまでタイムラプス専用カメラで定点観察してきたのですが、旧機種のトレイルカメラを新たに追加投入し、終日5分間隔のインターバル撮影を行いました。 
11日間の記録です(7/5〜7/16)。 
本当は従来どおり1分間隔で撮りたかったのですが、旧機種のトレイルカメラではなぜか5分間隔が精一杯です。 
トレイルカメラを使う利点は、昼間だけでなく夜も赤外線LEDによる暗視撮影ができることです。 

タイムスタンプ(撮影日時)だけでなく、気温や月齢のデータも画面に焼きこまれているのはありがたいです。 
池の岸辺から張り出したマユミ灌木の横枝にわずかに残った新鮮な白い泡巣に狙いをつけて監視することにしました。
すでに崩壊した古い泡巣がいくつも見えます。

7月中旬に現場入りすると、待望の大雨が降ったおかげで、今季初めて池が満水状態になっていました。 
岸辺に設置したトレイルカメラが水没しているのではないかと心配だったのですが、無事でした。 
池畔の木々の枝先に新たな泡巣はもう産み付けられなくなりました。 

確認すると、ようやく自分でもだいぶ納得のいく(イメージに近い)タイムラプス動画が撮れていました。 
マユミの枝葉に産み付けられた白い泡巣の表面が固くなり、やがて雨で溶け落ちてモリアオガエルの幼生(孵化したオタマジャクシ)が下の池に入水するまでの様子が刻々と記録されていました。 
トレイルカメラの真上に雨よけの庇を取り付けたのが役立ったようで、梅雨時でもレンズがほとんど濡れずに済みました。 

予想通り、夜はモリアオガエルの成体がマユミの樹上に集まっていました。 
おそらく、この時期はほとんどの個体が♂で、♀はもう来なくなったようです。 
残念ながら、5分間隔のインターバル撮影ではカエルの木登り移動の様子や離合集散(求愛と抱接産卵)が分かりにくいです。 


【考察・反省点】
撮れたタイムラプス動画をご覧の通り、モリアオガエルの繁殖期はもう終わったようです。 
昼も夜も連続撮影できるトレイルカメラをもっと早く(初めから)投入したかったのですが、同時進行している他のプロジェクトとの兼ね合いで遅れてしまいました。 

被写体との距離が近すぎて、暗視するために照射する赤外線が白飛びしてしまいました。 
旧機種のトレイルカメラには赤外線の強弱を調節する設定がないので、赤外線LEDに光を和らげるディフューザーを被せるように取り付ければよかったですね。 
現場の状況から、被写体(樹上の泡巣)からの距離を離してカメラを設置することがどうしても無理なのです。
池の中に三脚を立てることができれば確かに撮りやすいのですが、梅雨時に機材が水没するのが怖くて敢行できませんでした。

カメラを設置したときに画角の水平が取れておらず、対岸の水面が斜めにずれてしまいました。 
現場で試写した後に画角をしっかり確認するには、池に入る必要があったのですが、底なし沼のように長靴がズブズブと泥濘に沈むのが嫌で、ほとんど勘でトレイルカメラの角度を固定してしまいました。 

来季は高画質で撮れる新機種のトレイルカメラを使って1分間隔のインターバル撮影、赤外線LEDの照射距離はshort(弱)の設定で再挑戦してみたいものです。 
さらに別のトレイルカメラでモリアオガエルの泡巣を見張り、ニホンザルによる食卵シーンを動画で記録するのが来季の目標です。 


つづく→

2025/09/15

池で単独連続打水産卵するオオシオカラトンボ♀と警護飛翔する♂【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2024年7月上旬・午前11:40頃・晴れ 

里山にあるモリアオガエルに繁殖池に来てみると、最近雨が降ってくれたおかげで池の水量が増していました。 
対岸付近の水面で打水産卵するトンボ♀を見つけました。 
体色が性的二型のトンボで、黄色の♀が単独で打水産卵する間に、水色の♂が近くをホバリング(停空飛翔)しながら♀を警護していました。 

同定用の写真を撮るよりも産卵行動を記録する動画を優先したのですが、動きが速くてしっかり合焦できませんでした。 
シオカラトンボ、シオヤトンボなどと迷ったのですが、打水産卵する♀の透明な翅の根元が黒かったので、オオシオカラトンボOrthetrum triangulare melania)の♀♂ペアと確定しました。 警護する♂は撮影アングルの問題で翅の根元が見えませんでした。
(シオヤトンボは成虫の出現時期と、腹部の色の違いから却下。) 

(オオシオカラトンボの)♀は単独で浅い水面を打水し、腹端ですくい上げた水と卵とを前方に飛ばす。♂は付近を飛んで警護することが多い。(ネイチャーガイド『日本のトンボ』p483より引用) 

関連記事(12年前の撮影)▶ オオシオカラトンボ♀ 


生物関連の本の中でも、たとえありふれた普通種でも一種類の生き物に絞って生活史や行動生態を徹底的に調べて渾身の一冊にまとめた本を私は好みます。 
そんな本の一つ『シオカラトンボ (カラーサイエンス 12)』によると、
・交尾のあとすぐに、めすは、水のなかに産卵します。このとき、おすはめすのまわりととんで見はります。 
・水草のはえた池や沼では、めすが卵を水てきといっしょに水草にむかって、腹のさきでとばして、産卵します。 (p30〜31より引用)
1985年に発行された40年前の古本ですが、交尾の連続写真(当時は高速連写できないので苦労して撮り貯めたカラー写真を再構成した組写真)なども掲載されていて、充実した内容です。 
最近はこうしたじっくり腰を据えた本を作る余裕がなくなっているのが残念です。 


動画の冒頭では、池の水面の上を水色のトンボと黄色のトンボが高速で飛び回っています。 
異種間の縄張り争いかと思って慌てて撮り始めたので、ズームインし過ぎてしまい、すぐに見失ってしまいました。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイすると、産卵地点を探して飛び回るオオシオカラトンボ♀の後を同種の♂が追尾していました。 

黄色いトンボ♀が水面の上でホバリングしながら腹端を水面に叩きつける度に、水滴が斜め前方に飛んでいきます。 
単独で打水産卵に励む♀の近くを水色のトンボ♂が単独でホバリングしながら警護しています。 
オオシオカラトンボは、連結状態(尾繋がり)では産卵しないのです。

オオシオカラトンボ♀の連続打水産卵を240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:58〜) 
♂の警護飛翔は写っていません。 

※ 晴れていてもスギ林に囲まれた池で遠くからズームインして撮影するとかなり暗い映像になったので、動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 




【考察】 
いつものようにPerplexity AIと問答を繰り返して、産卵行動についてブレインストーミングしました。 
トンボの種類をオオシオカラトンボと絞り込む手助けもしてくれました。 

オオシオカラトンボ♀の卵は、打水の度に前方に飛んでいく水滴の中に含まれているのか、それとも打水した瞬間に水中に沈むのか、どちらなのでしょうか?

打水産卵時の卵の挙動
オオシオカラトンボの打水産卵(飛水産卵)では、腹端を水面に打ち付けると同時に卵と水滴を一緒に前方へ飛ばす行動がみられます。

このとき腹端で水面をすくい上げた小さな水滴の中に卵が含まれていて、その水滴ごと水面の前方(浅瀬や水草の周辺)に飛ばされる、というのが標準的な解釈です。

連続して打水するので、水面には多数の小さな水滴が弧を描きながら飛び、卵もこれに含まれて飛ばされます。

詳細と補足
水滴は水面に再び落ちる際、その中に入った卵も一緒に着水し、そのまま水中に沈みます。

写真や動画の高精度な観察でも、「水滴の中に卵が混じって飛んでいる」様子が確認されており、水滴の色が微妙に濁る・色づく場合は卵塊が含まれているためとされています。

水滴の一部が透明、他がうっすら褐色の場合、褐色の水滴の方に卵や卵塊が多く含まれる状況が観察されています。

まとめ
オオシオカラトンボ♀の打水産卵では、卵は打水によってできた小さな水滴に包まれて飛び、水滴ごと前方へ飛ばされた後、水面に落ちてそのまま水中に沈みます。打水と同時に水中に直接沈むのではなく、「水滴の中に入って飛ぶ→水面に再落下して水中へ沈む」が基本の流れです。

この産卵様式は、卵をなるべく広範囲にばらまき、外敵からの(食卵)リスクを減らすためのものと考えられています。

今回私が観察した事例では、オオシオカラトンボ♀は池の浅いところから岸に向かって水滴を繰り返し飛ばしていました。
この時期は雨量が少なく池は干上がりつつあったので、卵の生存率を上げるには岸(陸上)ではなく池の中央に向かって水中に産むべきではないでしょうか?

オオシオカラトンボ♀が池の浅瀬から岸に向かって水滴を飛ばす産卵行動は、たしかにご指摘のように「池の干上がりが進む時期、水面から離れた場所では卵が孵化や発生に適さなくなる恐れ」があります。実際、トンボの打水産卵は卵を水滴と一緒に前方へ飛ばし、より広範囲かつ適した場所に分散する意味があると考えられていますが、どの程度「着水するか」は水位や池の地形、個体の打水角度など自然条件によって変動します。

トンボの産卵行動の研究では、

普段は卵を確実に水面に落下させることが繁殖戦略ですが、池が干上がりつつあるなどの極端な状況では、必ずしも全ての卵が生き残るわけではなく、生存率の低下は避けられません。

メスは本能的には「水面やその近く」で産卵しますが、水位が低くなっている場合、結果的に一部の卵が水際から外れるリスクも発生します(環境把握能力には限界があります)。

しかし、トンボは基本的に当日の池の状態(少なくとも「目で見て水がある範囲」)を選ぶ能力が備わっていると考えられており、一定の確率で着水しない場所にも卵が飛ぶことも想定内です。干上がりの進行など短期間の変動には柔軟に対応しきれないため、「池の縁」に産み落とされた卵は水位低下で生存率が下がる可能性が高いですが、これは自然環境下でトンボが常に抱えるリスクでもあります。

まとめると、「池の水位が極端に下がると卵の生存率が低下しうる」ことはその通りですが、オオシオカラトンボの産卵行動はあくまで通常状態の水辺環境を前提に進化しており、池が干上がる非常時に完全対応するものではありません。生存率の確保には、産卵タイミング・場所選択・環境変動すべてが影響します。

産卵時の水位が高ければほとんどが水面に着地し高い生存率となりますが、干上がりが進めば一部は陸地に落下し孵化できず死亡します。

トンボは水面に産みつけようとしますが、環境条件が変動する以上「最大多数を水辺に着地させる」戦略しかとれません。

したがって、今回ご覧になったような状況は、生態的にはごく普通に見られる現象であり、トンボの本能的な産卵行動が必ずしもその年の最適条件に対応できないという自然界の一断面ともいえます。

それなら、オオシオカラトンボの卵や幼虫(ヤゴ)は乾燥に対して強い(耐性がある)のでしょうか?
卵の乾燥耐性
トンボ類の卵は一般に産卵直後は乾燥に弱いですが、発生が進み眼点(発生初期の目のような構造)が現れるまではやや耐乾性が低い一方、発生が進むと乾燥耐性がかなり強くなります。

水田や池が一時的に干上がっても、多くの種で卵は土や泥の中でかなりの乾燥や低温に耐えて春になり、水が張られると孵化することが可能です。

オオシオカラトンボの卵もこの耐乾性を持ち、通常の内陸のため池などで冬期に水が抜かれて乾燥状態が続いても、生き残れるケースがあり、これは稲作地帯のシオカラトンボなどとほぼ同等の能力とみなされます。

ヤゴ(幼虫)の乾燥耐性
幼虫(ヤゴ)は卵ほどの乾燥耐性はありませんが、冬季の低温下では、ある程度の乾燥や池干しにも耐えられることが知られています。

泥の中に深く潜ったり、落ち葉の下に隠れるなどして、一時的な湿泥状態なら生存できる場合もあります。

ただし高温期(春~夏~初秋)に完全な乾燥に晒されると生き残れないことがほとんどで、特に羽化直前の終齢幼虫などは乾燥に極めて弱いです。冬季など休眠に近い低代謝の状態だとやや耐えやすいですが、卵期ほどの耐性はありません。

まとめ
卵期の乾燥耐性は高く、池や水田の“冬期干上げ”程度には十分に耐える能力がある。

ヤゴは卵ほど乾燥に強くないが、泥の中など湿り気がごくわずかに残る状況では冬季~早春に一時的な乾燥に耐えられる場合もある。

一方、完全な乾燥(土がカチカチに乾く状態)が長期間続くと、幼虫はほとんど死滅してしまう。

多くの日本のトンボ同様、オオシオカラトンボも水辺の環境変動にある程度耐える進化をしていますが、耐性の「強さ」は卵>幼虫の順です。

トンボの♂が産卵しているパートナー♀をライバル♂から守るためには、交尾後も尾繋がりの状態を保ってペアで産卵するのが最善であるはずです。
なぜオオシオカラトンボ♂は連結を解除した状態で♀の警護飛翔をするのでしょうか?
「尾繋がりの状態で連結打水産卵するのでは産卵しにくくて仕方がない」とオオシオカラトンボ♀がたとえ感じたとしても、首根っこを掴まれた♀は自分の意志では連結を解除することが出来ません。
つまり産卵中に連結するかしないかは、♂が選択した結果なのです。
むしろ、オオシオカラトンボ♂が連結しないのは♂が浮気性だからと考えられます。
たとえ警護飛翔中でも、産卵池に別個体の同種♀が飛来したら、♂はただちに新しい♀を捕獲して交尾を試みることが(私は未見ですが)報告されているそうです。
以下はPerplexityによる回答です。
オオシオカラトンボの単独産卵と♂の警護飛翔の進化・行動の実態については、実際の現場行動と繁殖戦略の両面からもっと複雑な説明が必要です。

連結解除の主導は♂
トンボ類の多くでは交尾後、♂が自発的に連結を解除して♀を離す行動が観察されています。

これは交尾後に♀が産卵に移る時点で、連結保持による直接監督より、効率的な交尾回数増加や他の♀探索への戦略を取るためです。

つまり、単独打水産卵への切り替えは、進化的には♂側の交尾戦略(浮気的=複数の♀との交尾へ)や他の♀に対する即応性の高さの副産物です。

警護飛翔中の♂の行動
産卵警護中でも、池に新たな♀が現れると、警護していた♂は即座に警護中の♀を見捨て、新到着♀にアタックし連結しようとする行動が頻繁に報告されています。

トンボ♂は「警護」と「新たな交尾相手獲得」を状況ごとにスイッチしやすく、どちらかといえば「新たな♀優先」になる傾向が強いです。

進化的意義
単独産卵を可能にしたのは**♀の進化的自由ではなく、♂の浮気行動(頻繁な交尾機会探索)や多数交尾戦略に由来**します。

産卵警護は「自分の精子で産ませたい」気持ちの表れですが、より生殖成功率を高めるためには、他の♀の出現時に即座に乗り換える「浮気性」が同じくらい重要です。

観察・実験例
産卵池では、同時に複数ペアが産卵行動をとり、♂が急に警護♀から新たな♀に乗り換える現象が容易に再現・観察できます。

男女双方の利害一致ではなく、主に♂の多回交尾・浮気性・交尾機会争取戦略によって形づくられていると考えられます。

要するに、オオシオカラトンボの警護産卵と連結解除の主因は「♂の浮気性や交尾回数の最大化欲求」と見る方が、生態的現象の実態により近いです。ご指摘の通り、産卵警護中でも♂は新規到着の♀に即反応して乗り換えるため、「本当に守っている」のは縄張りと交尾機会だけであり、♀自身や受精卵に対する献身的防衛ではありません。

トンボは種類によって産卵行動が多様です(打空産卵、打水産卵、連結産卵、単独産卵など)。 
比較行動学と分子系統分類学を組み合わせると、トンボの産卵行動がどのような順序で進化してきたか推測できるだろうか?  
それとも、産卵行動はトンボの系統とはあまり関係なくて、収斂進化の結果だろうか?

比較行動学と分子系統分類学を組み合わせることで、トンボの産卵行動の進化順序を「かなりの程度」推測することは可能ですが、産卵行動の多様性は必ずしも系統樹のパターンにきれいに一致せず、**収斂進化(独立進化)も非常に多い**ことが明らかになっています。[1][2][3]

### 行動形態と系統の対応

- トンボの産卵行動には「静止接触産卵」「静止非接触産卵」「飛翔接触産卵」「飛翔非接触産卵」など複数の基本タイプがあり、各グループごとに特徴的な行動パターンを示します。[1]
- たとえば、イトトンボ科やアオイトトンボ科は連結潜水産卵や組織内産卵が典型で、ヤンマ類やアカトンボ類は空中からの打空産卵・連結打水産卵、トンボ科は♀単独の打水産卵が多いなど、類縁ごとの偏りがあります。[2][3]

### 分子系統分類学との比較

- 最新の分子系統樹による分析では、こうした産卵行動パターンが「一度だけ進化し、系統的に保存されている」場合と、「複数回、異なる系統で独立進化した(収斂進化)」場合の両方が認められています。[1]
- 一部の行動(例:組織内産卵や連結打水産卵)は比較的原始的な形質とされ、複数の系統にわたって保存されている傾向がありますが、**打水産卵や打空産卵など「目立った派生行動」は、異なるグループ間で独立に進化したと推測されるものが多い**です。[3][1]

### 収斂進化の具体例

- たとえば「打空産卵」はアカトンボ類だけでなく他の科にも現れ、「単独打水産卵」も様々な系統で発達しており、同じ行動が系統的に遠いグループでも発現します。[2][1]
- これは生息環境や繁殖戦略、生存率向上など外部要因による適応が大きく関わっているためと考えられています。

### 結論

- 比較行動学と分子系統分類学を合わせれば「祖先形質」「系統保存された行動」「収斂的な適応」の判別が可能ですが、**産卵行動の多くは複数回・多系統で独立進化した例が多く、単純な祖先―派生の直線的な進化とは限りません**。[3][2][1]
- したがって、「産卵行動の進化順序は系統ごとに異なる分岐と収斂の複合」と解釈するのが現在の理解です。

 


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