2024年7月中旬・午前11:10頃・くもり
低山の樹林帯を抜ける山道の横に立派なヤマザクラの老木があり、幹に開口した小さな樹洞(開口部の直径は約2cm)の手前でフタガタハラブトハナアブ♀(Mallota eristaliformis)がホバリング(停空飛翔)していました。
樹洞の縁に停まると、樹皮に腹端を何度も接触させています。
このとき卵を産み付けているのでしょう。
飛び立っても少しホバリングするだけで、同じ地点に着陸し直し、産卵を繰り返しています。
夏の樹林帯は、林冠の葉が鬱蒼と茂って昼間でもかなり薄暗いです。
初めは黄色い蜂に見えたので、てっきりマルハナバチ類の雄蜂♂が帰巣したか、あるいは交尾のために他のコロニーの樹洞巣に飛来した(探雌飛翔)のかと思いました。
動画とは別に同定用に撮ったストロボ写真を見直すと、マルハナバチにベーツ擬態したフタガタハラブトハナアブ♀と判明しました。
このハナアブの詳しい生態や生活史を知らなかったのですが、Perplexity AIに問い合わせると、蜂の巣に寄生するのではなく、ファイトテルマに産卵するらしい。
【参考サイト】
フタガタハラブトハナアブ(Mallota eristaliformis)の雌は、主に樹木の洞(クヌギ等)の水の溜まった部分に産卵します。幼虫はその洞の水中に存在する腐植質(腐った植物片など)を食べて育ちます。
・フタガタハラブトハナアブ Mallota dimorpha by 虫撮り人さん
ちなみに、樹洞、葉腋、食中植物の壺など植物上に保持される小さな水たまりは「ファイトテルマータ」(複数形:Phytotelmata、単数形は「ファイトテルマ」Phytotelma)と呼ばれ、そこだけで興味深いミニ生態系になっています。
ヤマザクラの細い横枝が根元から折れた後に傷口が腐り、樹洞が形成されたのでしょう。
樹洞入口の右上部分には白い糸が密に張り巡らされています。
樹皮の欠片(木屑)や虫の糞?が大量に付着しているので、クモの網ではなくて蛾の幼虫が絹糸を紡いだ巣のようです。
今回見つけた小さな樹洞の奥がどうなっているのか調べていませんが、横向きに開口しているので、中に雨水が溜まっているとは思えません。
それでもフタガタハラブトハナアブの幼虫は、樹洞内部の湿って腐った木屑などを食べて育つのでしょう。
今回フタガタハラブトハナアブ♀は樹洞の縁に産卵したので、幼虫は孵化直後に自ら樹洞内の水溜り(ファイトテルマータ)など餌がある安全な場所を求めて移動しなくてはなりません。
1齢幼虫にそのような運動能力があるのであれば、♀成虫はファイトテルマータに近づきすぎてうっかり溺死するリスクを回避できそうです。
フタガタハラブトハナアブ♀が産卵のために樹洞内に侵入しなかったのは、暗闇では目が見えず、中に潜む捕食者に襲われても逃げ遅れるからだろうと推測しました。
※ オリジナルの映像があまりにも暗かったので、動画編集時に自動色調補正を施しています。
※ 羽音が聞き取れるように、音声を正規化して音量を強制的に上げています。
この小さな樹洞に小鳥や小動物が出入りしていそうな気がします。
しかしトレイルカメラを設置して確かめたくても、他のプロジェクトもいくつか同時進行しているために機材の数が足りず、後回しになっています。
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