2021/04/10

マガモ♂の求愛誇示 その1:水はね鳴きとそり縮み(冬の野鳥)

 

2020年11月中旬・午後15:20頃・晴れ 

川面に浮かぶマガモ♀♂(Anas platyrhynchos)の群れが求愛行動を繰り広げていました。 
マガモは性別を見分けるのが簡単なので、配偶行動の観察に適しています。 
カラフルな方が♂で、♀は地味です。 
♂は全て繁殖羽で、エクリプスの♂は居ませんでした。 

昨年はオナガガモを教材に様々な求愛誇示行動を勉強しました。 
マガモの求愛もほぼ共通しているのですが、いくつか違う点があります。 
まず♂による♀の「囲み追い」行動はオナガガモだけに見られるもので、他のカモ類は行わないそうです。 
オナガガモ♂による「水はね鳴き」と「そり縮み」では、求愛対象の♀が明確に分かりました。 
オナガガモ♂は近くにいる意中の♀に対して嘴で水を横に跳ね上げ、そり縮みの直後には意中の♀の方へ向き直ります。 
ところが、マガモ♂による同じ求愛誇示行動では、どの♀にアピールしているのか私には全く分からず、困惑しました。 
オナガガモの方が求愛行動が洗練されている(進化している?)と言えるかもしれません。
オナガガモとは異なるマガモ特有のかすかなボディランゲージ(身体言語)があるのなら、それを読み解いていかなければいけません。 
複数の♂が「水はね鳴き」や「そり縮み」の競演をする様は見事です。 
「水はね鳴き」の最後に特徴的な鳴き声を発するらしいのですが、川の水音や車の騒音などで私には聞き取れませんでした。
マガモの求愛行動について詳しく解説した文献を探しています。
どなたかオススメの本や論文があれば紹介して下さい。(※追記参照)

日没が迫りどんどん薄暗くなるため、この日は求愛が成就して交尾に至るまでの一部始終を観察できませんでした。 
もしかすると繁殖期が始まったばかりで、今回は求愛が未だ充分に盛り上がらなかった(不完全燃焼に終わった)のかもしれません。 
オナガガモ♂のように意中の♀に対して個別にアタックするのではなく、マガモ♂は「集団お見合い」や「合コン」で相手を決めるのでしょうか?

♂が自分の羽根に嘴で軽く触れる「見せつけ羽繕い」行動も儀式的な求愛誇示行動の一つなのですかね? 
なんとなく、♀に近い側面の翼の羽根を整えているような気がします。 
あるいは、首を曲げて羽繕いの姿勢になることで首から頭部にかけての鮮やかな緑色を♀にアピールしているのかもしれません。

マガモ♀も気になる行動をしていました。 
(意中の?)♂に並走しながら、嘴で水面を斜めに漕ぐような仕草を繰り返しています。 
嘴を閉じたままなので、水面採食行動ではないと思います。 
自身の左右どちら側にも嘴を水面に差し込んで漕いでいます。 
♀しかやらないこの行動も一種の求愛誇示なのですかね?
「嘴漕ぎ遊泳」と勝手に造語してみました。 
もちろん実際には、水中の足の水かきで漕いで前進・遊泳しています。

 最後に2羽の♀が川面を並走した行動も興味深く思いました。 
♀が♀に向かって突進して相手の進路をわざと少し妨害するような意図を傍目には感じたからです。 
恋敵♀を目当ての(意中の)♂に近づけまいと牽制しているのでしょうか? 
合コンに参加した2羽の♀が♂の群れにアピールするためコンビプレーの誇示行動を披露したのだとしたら面白いのですけど。

後半はマガモの求愛行動を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:51〜) 

つづく→その2



※【追記】
英語版wikipediaでmallard(=マガモ)を検索すると、求愛行動について日本語版よりは多く書いてありました。
During the breeding season, both male and female mallards can become aggressive, driving off competitors to themselves or their mate by charging at them.[83] Males tend to fight more than females, and attack each other by repeatedly pecking at their rival's chest, ripping out feathers and even skin on rare occasions. Female mallards are also known to carry out 'inciting displays', which encourages other ducks in the flock to begin fighting.[84] It is possible that this behaviour allows the female to evaluate the strength of potential partners.[85]
その後はあぶれ♂が強姦のように交尾を迫ったり死姦したケースに関して詳しく書いてあったのですが、前提となる正常な求愛ディスプレイについての記述が不十分だと思います。

ネット検索で「Duck Displays」と題した文章をスタンフォード大学教育学部?のサイトで見つけました。
その中からmallard(マガモ)に関する部分を引用しておきます。
Most people's first observations of duck behavior probably are of Mallard courtship. Mallards perform in the fall and winter as well as the spring, so there is plenty of opportunity to watch their displays. They are also often rather tame, and perform in the open -- this is a good thing since, while frequent, their displays are subtle and brief. Males swimming in the presence of females may be seen shaking their heads (head-shake display) and tails (tail-shake), often doing the former with their breasts held clear of the water and their necks outstretched. They also raise their wingtips, heads and tails briefly and then swim with their necks outstretched and held close to the water (head-up-tail-up). Groups of four to five males may swim around females, arching their necks, whistling, then lowering their bills below the water surface and jerking their bills up to their breasts while spurting water toward the preferred female (water-flick or grunt-whistle). The water-flick may take only a fraction of a second to complete. The drakes in male groups give short, nasal "raeb-raeb" (two-syllable) calls, and short high-pitched whistles.

Female Mallards and other female ducks often demonstrate (inciting displays) and call to provoke males to attack other males or females. In some circumstances these displays may allow the female to observe the performance of males and to evaluate them as potential mates. To elicit displays from a group of males, a female Mallard may swim with her neck outstretched and her head just above the water (nod-swimming). When a strange male approaches a female Mallard, she often will do an inciting display, swimming after her preferred mate while producing a rapid staccato series of quacks and flicking her beak back and downward to the side. As pairs are formed, both sexes may be observed lifting a wing, spreading the feathers to expose the speculum (the patch of bright color at the trailing edge of the wing), and placing the beak behind the raised wing as if preening. Then just before copulation, the male and female typically float face-to-face and pump their heads up and down.
その中で、♀による「けしかけ(煽動)誇示」(inciting displays)が気になります。



【追記2】
山本浩伸、大畑孝二『これがカモ!カモなんでも図鑑』という本に「カモの結婚式場」と題した第17章があり、マガモの求愛行動を連続写真で紹介していました。
 マガモをよく見ていると、♂がへんなしぐさをしています。首をのばして、頭をつんとのばしたかと思うと、すぐにひっこめ、つぎはおしりをぴょんと持ち上げるのです。
 どうやらこれは、求愛のダンスのようです。1羽の♀に、数羽の♂が、さかんにダンスをおどっているようです。
 そのうち♀が気に入ったのか、2羽で仲よく泳ぐようになりました。どうやら、つがいができたようです。(中略)
 ♂、♀が仲よく泳いでいるのを見ていたら、さかんにおたがいに首をのばしたり、ちぢめたりする動作をくり返しはじめました。
 そして、♂が♀の背中に乗り、落ちないようにくちばしで、♀の頭をくわえています。これはどうやら交尾をしているようです。ほんの数秒のできごとです(中略)
 ♂は、かならず交尾後♀をひとまわりします。♀も、首を水面にのばす動作をし、最後にはばたきをしました。
 カモたちには、決まった作法があるようです。

マガモの交尾 

  1. ♂と♀がむかい合い頭を上下にふる
  2. ♂が♀に乗りはじめる
  3. ♀はかなり水面よりしずむ
  4. ♂は♀の頭をくちばしでおさえて交尾する
  5. 交尾後は♂がかならず♀をひとまわりする
  6. ♀は交尾後、水面で羽ばたきする(以上、p21より引用)
八木力『冬鳥の行動記』という本のp58にもマガモの交尾が連続写真で紹介されていました。
  1. 受け入れ体勢の♀
  2. ヘッドトッシング
  3. マウンティング
  4. (交尾終了後に)儀式的水浴びをする♀
どうやらマガモが実際に交尾するのは互いに気に入った♀♂ペアが形成されてからのことらしく、今回私が観察したのはその前段階の求愛行動だったようです。

コマツナ?の花で採餌するセイヨウミツバチ♀

 

2020年11月中旬・午前11:50頃・晴れ 

家庭菜園で菜の花のような黄色い花が咲いていました。 
アブラナ科の野菜だとおもうのですが、これはチンゲンサイそれともコマツナ(小松菜)ですかね?
もし間違っていたらご指摘願います。 
漠然と「冬菜」としておいた方が無難でしょうか。 

セイヨウミツバチApis mellifera)のワーカー♀が数匹訪花していました。 
花に頭を突っ込んだままグルグル回って吸蜜しています。 
後脚の花粉籠には黄色の花粉団子を運んでいます。 

他にも様々なハナアブ類が来ていました。(シマハナアブ♀など)

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2021/04/09

柳の幹をつついて餌を探すシジュウカラ♂(野鳥)

 

2020年11月下旬・午後12:25頃・くもり 

郊外の落葉性雑木林でシジュウカラ♂(Parus minor minor)が柳の幹に止まり、ひび割れた樹皮や苔をあちこちつついていました。 
樹皮の裏などに隠れて越冬している虫を食べようと探し回っているのでしょう。 

実はこれと前後して、同じ雑木林でヤマガラの貯食行動を観察できました。
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混群としてヤマガラと行動を共にしている他のカラ類は、ヤマガラがせっかく苦労して幹の割れ目などに隠した木の実を探し出して隙あらば横取り(盗み食い)しようとしているのではないか?と思いつきました。 
互いにメリットがあるから異種のカラ類が混群を形成しているはずですけど、ヤマガラは泥棒につきまとわれて迷惑しているのかもしれません。
決定的な証拠映像が撮れるまでは、個人的な仮説として頭の片隅で温めておきます。 

もうすぐ冬なのに、近くの池からカエルの鳴き声♪が聞こえています。 
シジュウカラが来ていた木には落葉前の細長い葉が少しだけ残っていて、樹種は柳の仲間と判明しました。
柳は水辺を好むので、池の畔で大木に育っているのは納得です。

寄主ナシケンモン(蛾)幼虫の体外に脱出して繭を紡ぐサムライコマユバチ終齢幼虫の群れ(2)接写

 

ナシケンモン(蛾)の飼育#9

前回の記事:▶ 寄主ナシケンモン(蛾)幼虫の体外に脱出して繭を紡ぐサムライコマユバチ終齢幼虫の群れ(1)
2020年11月上旬・午後22:12〜22:21・ 

サムライコマユバチの一種Cotesia sp.)終齢幼虫の群れが口から白い絹糸を吐いて寄主のナシケンモンViminia rumicis幼虫の周囲で繭塊を作る様子をマクロレンズで接写してみました。 
フワフワで柔らかそうです。

たまたま同時に撮影していた別の飼育ネタ(微速度撮影)を泣く泣く終了させて、ハンディカムから高画質のメインのカメラに切り替えて撮影しました。

2021/04/08

真昼間に群飛するカラスの大群(野鳥)

 

2020年11月中旬・午後12:05頃・晴れ 

郊外の青空をカラスの大群が旋回していました。 
少なくとも57羽のカラスが集まって飛んでいます。 
私のフィールドではこれぐらいでも大きな群れです。 
群飛の中で隣り合う個体が軽く追いかけっこしている様子も見られました。
高高度の群飛には参加せず、単独で低空を横切る個体もいました。 

今回は群れ全体の飛び方を動画に記録することを優先したので、カラスの種類をしっかり見分けられるほどズームインしませんでした。 
鳴き声に耳を傾けると、カーカー♪澄んだ声とガーガー♪濁った声の両方が聞こえますから、ハシブトガラスCorvus macrorhynchos)とハシビロガモAnas clypeata)の混群なのかもしれません。
カラスの鳴き声を聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 

カラスが夕方の塒入り前に行う群飛は珍しくありませんが、真昼間にカラスの群飛を見るのは初めてかもしれません。 
ほぼ正午ですから、就塒前集合を目指す群飛にしては時刻が早すぎますし、集団塒から一斉に飛び立ったにしては時刻が遅すぎます。 
どこか目的地を目指して飛んでいるのではなく、広大な刈田の上空を行ったり来たり飛び回っているようです。 
大群で旋回しているのは一種の誇示行動(威嚇)なのかな?と思うものの、一体何に対してアピールしているのか目的が不明です。 
天敵の猛禽類に対してカラスはよくモビング(擬攻撃)を仕掛けますが、今回は飛んでいる猛禽を見かけませんでした。 
一番ありえそうなのは、刈田で採餌していたカラスの大群が何かに驚いて一斉に飛び立ち、群飛になったのかもしれません。 

私の素人目には、有名なムクドリの群飛と同じく、カラスの群飛も特定のリーダーによって統率されているようには見えません。 
子供の頃に読んだ『シートン動物記』で「カラスの王 銀の星」という章が印象的でした。
頭部に「銀色の星」という分かりやすい目印を生まれつき持ったリーダー格のカラスを個体識別した上で何年も観察した記録らしいです。
しかしシートンの本は「お話」として抜群に面白くても擬人化やハッタリが多くて、動物行動学的にどこまで信頼できるのか分かりません。
年長カラスの隊長が号令をかけながら若鳥の群れを率いて教練のために飛び回るという話は、今の私が読み直すと眉唾に思えてしまいます。
カラスの群飛をヒトが地上から見上げても、ある1羽の頭にある目印の「銀の星」が確認できるとは思えません。
群飛の中でどの個体が鳴いているのか、達人になれば分かるようになるのかな?(私は懐疑的です。)
今のところ、私にはカラスの群れにリーダー(隊長)が居るとは思えないのです。 
シートンがカナダで観察したカラスと日本のカラスはおそらく別種ですから、その点でもシートンの記述を鵜呑みにはできません。
多数の個体に片端からGPSを装着するなど現代のテクノロジーでしっかり個体識別した上でカラスの群飛を調べることができたら、それだけでも面白そうです。

川岸で巣材の土塊を集めるオオハキリバチ♀

 

2020年8月下旬・午前8:30頃・晴れ
前回の記事(約2週間前):▶ 涸れた小川の土手に通い巣材の泥を集める2匹のオオハキリバチ♀【HD動画&ハイスピード動画】
2週間前には水が涸れていた素掘りの水路を再び訪れると、開かれた水門から浅いながらも水が流れていて川の本流に注いでいました。 
復活した水路の横の土手に沿って往復するようにオオハキリバチ♀(Megachile sculpturalis)が低く飛び回っていました。 
ようやく土手に着地すると、湿った土を大顎で掘り始めました。 
集めた巣材の土塊を咥えたまま、巣の方へ飛び去りました。 
帰巣する方角が、前回(川の対岸)とは全く違いました。 
河畔林の何処かに営巣地がありそうです。(おそらく小さな樹洞) 

飛び立つ瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると、離陸直後に土手を向きながら扇状に飛んでいました。 
これは採土場所を正確に記憶するための定位飛行です。

2021/04/07

チガヤ種子の風散布を実演してみる

 

2020年11月中旬・午前11:30頃・晴れ 

刈田の畦道に自生するチガヤの果穂が熟し、フワフワの綿毛が広がっていました。 
チガヤの種子は風散布型です。 
しかし茎を揺すっただけでは綿毛は飛散しませんでした。 
手で軽くしごいて穂をほぐすと、綿毛の付いた種子が秋風に乗って飛び去りました。 
最後は手に付いたチガヤ種子および綿毛をお見せします。

【追記】
チガヤは種子だけでなく地下茎からも繁殖します。
果穂の綿毛はきわめて引火しやすく、大群落では野火(山火事)が頻発するそうです。
背の高い他種のライバル植物(ススキなど)を焼き払った後でチガヤは地下茎から芽を出し、パイオニア植物として草原を占拠するらしい。(森林への遷移を抑制)
つまり、チガヤの綿毛は種子を風散布するためだけでなく、可燃性の引火材としても進化してきた形質かもしれません。

チガヤの穂から風に乗って綿毛が自然に飛んで行くシーンを実は見たことがありません。(今回の実演では「手助け」しています。)
よほど強い風が吹かないと自然に飛散することはないようです。
むしろ二番目の機能(引火性)の方がメインのような気がしてきました。

寄主ナシケンモン(蛾)幼虫の体外に脱出して繭を紡ぐサムライコマユバチ終齢幼虫の群れ(1)

 

ナシケンモン(蛾)の飼育#8

前回の記事:▶ 体内寄生されたナシケンモン(蛾)幼虫の異常な巣作り【200倍速映像】
2020年11月上旬・午後16:45〜21:15・室温22.0℃ 

ベニバナボロギクの葉裏で巣を作りかけたまま力尽きたように静止していたナシケンモンViminia rumicis)の幼虫から遂に寄生蜂の幼虫が一斉に脱出を始めました。 
この日はたまたま他の飼育ネタを撮影していたので、三脚もメインのカメラも使えません。 
仕方がないので、慌ててハンディカムで手持ち撮影することにしました。 
適当に時間を空けて1分間撮影した映像をつなぎ合わせ、タイムラプス風のステップビデオにしました。 
コマユバチ幼虫が寄主の体表を食い破って脱出する瞬間を撮り損ねたのが残念です。

白っぽい(薄黄色)蛆虫のような寄生蜂の終齢幼虫が寄主の背側から何十匹も一斉に脱出して蠢いています。 
各個体は脱出地点(寄主の体表)で後端を固定すると、口から白い(薄い黄色?)絹糸を吐きながら上半身を振り立てて繭を紡ぎ始めました。 
寄主のナシケンモン幼虫がしがみついていたベニバナボロギクの葉がどんどん萎れてくるので、撮影しやすいよう切り落として卓上に置きました。(向かって左が寄主の頭部です) 
これからコマユバチ幼虫の群れは合同で繭塊を紡ぐのですが、重力の向きが変わったせいで繭塊の形状に影響を与えてしまった(不自然な形になった?)かもしれません。 

脱出したコマユバチ終齢幼虫は30〜40匹?
体内を散々食い荒らされ体表のクチクラを一斉に食い破られても、寄主のナシケンモン幼虫は「虫の息」ながら依然として生きていました。 
葉裏の主脈に口を付けるように静止していますが、ときどき緩慢に動いています。 
途中から採寸代わりに1円玉(直径2cm)を横に並べて置いてみました。

初めは寄主の右側から脱出したコマユバチ幼虫の方が多いように思ったのですが、どうでしょう?(左右非対称に脱出?) 
それぞれの寄生蜂(コマユバチ科サムライコマユバチの一種?)幼虫の下部から次第に薄黄色のフワフワした絹糸で覆われてきました。 
繭塊の土台から作っていくようです。 
寄主ナシケンモン幼虫の姿が寄生蜂の繭塊に覆われて見えなくなってきています。 
コマユバチ幼虫の体も自ら紡ぐ繭塊の中にほぼ埋没しつつあります。 

もしピンセットなどで寄生蜂の終齢幼虫を寄主から引き剥がして単独で放置したら、自力で個別の繭を紡げるのですかね? 

繭塊が少しずつ大きくなると、寄主の体表を離れて左右にもはみ出して営繭しているコマユバチ幼虫の数が増えました。 
ナシケンモン幼虫がしがみついていた葉の向きを私が途中から撮影のために変えてしまったので、重力環境の変化が繭塊の形状に影響を与えてしまったかもしれません。 
もし葉が自然に垂れ下がったままコマユバチ幼虫群に営繭させたら寄主の体全体を覆う球状の繭塊になったはずです。 

三田村敏正『繭ハンドブック』のp90に、ナシケンモンを寄主とするコマユバチ科サムライコマユバチの仲間(Cotesia sp.)が作った繭塊が紹介されていました。 
同種かどうか分かりませんが、私が今回観察したのもおそらくサムライコマユバチの一種なのでしょう。
▼関連記事(13年前の撮影) 
ツガカレハ(蛾)幼虫に寄生していた蜂の造繭@接写

『寄生バチと狩りバチの不思議な世界』という凄い本を読んだばかりなので、興味深いです。 
本をただ読むだけと自分の目で観察するのでは大違いです。
今回のトピックと一番関係の深いのは、中松豊「内部寄生の謎:危険な体内環境を支配する」と題した第6章です。
アワヨトウという蛾の幼虫に寄生するカリヤサムライコマユバチの生活史を詳しく研究した結果をまとめた総説です。
カリヤサムライコマユバチの寄生様式を専門的に分類すると、飼い殺し型の内部捕食性多寄生蜂になります。 
カリヤサムライコマユバチ幼虫は脱出の際、足場を作るためにアワヨトウ幼虫の体内で糸を吐くが、これはアワヨトウ幼虫の体を内側から縛り、動けなくするという機能も兼ねていた。(p127より引用)
おおまかなストーリーを既に知っていた私が、本書を読んで一番驚いたのはこれでした。
寄生バチ幼虫が一斉に脱出する前に寄主の幼虫が動けなくなるのはてっきり体内の筋肉組織を食い荒らされたせいだと私は思い込んでいたので、とても勉強になりました。
少し長くなりますが、コマユバチ幼虫が寄主から脱出する方法について更に詳しい解説を引用します。
ここまで詳細な脱出過程の記述を他の本で読んだことがありません。
 カリヤサムライコマユバチ幼虫は、アワヨトウ幼虫から脱出する際、アワヨトウ幼虫の体液を一斉に飲む。そうするとアワヨトウ幼虫の体の体積は減って、ハチ幼虫の体の体積は増える。そのため、カリヤサムライコマユバチ同士の距離が近くなり、この機会を捉えて一斉に糸を吐き出す。このアワヨトウ幼虫体内に縦横無尽に走る糸の隔壁が、カリヤサムライコマユバチ幼虫のアワヨトウ幼虫から脱出する際の足場となる。
 普段アワヨトウ幼虫の体液のなかでカリヤサムライコマユバチ幼虫は浮遊生活をしているが、これから脱出するにあたってアワヨトウ幼虫の皮膚を大あごで切り裂かなければならない。そうすると、足場のない水中で皮膚に圧力をかけるのが難しい。しかしサムライコマユバチは前述の糸でつくった隔壁を足場として、大あごを立ててアワヨトウ幼虫の皮膚に圧力をかけ、さらに頭を前後に振ることによって物理的に切断していく。(p126より引用)
下線を引いた「寄主の体液を一斉に飲む」という点も初耳でした。
今回ナシケンモン幼虫が営繭準備のために巣を作り出したということは終齢幼虫のはずです。
それなのに正常な(寄生されていない)終齢個体より体長が小さかった理由がこれで分かりました。

私が更に驚愕したのは、寄主幼虫の皮膚を内側から一斉に食い破って大量の寄生バチ幼虫が脱出してくるのに体液が1滴も漏れない理由も解明されていたことです。
カリヤサムライコマユバチ幼虫が脱出する際、最後の幼虫脱皮をおこない、自身は3齢幼虫となって外へ出ていくが、アワヨトウ幼虫体内に残された2齢の脱皮殻が、破れた皮膚の栓となって、アワヨトウ幼虫の体液が外に漏出しないよう防いでいる。(同書p129より引用)
次に機会があれば、寄主幼虫の死骸を解剖して、皮膚の裏側に埋め込まれたコマユバチ幼虫の抜け殻を探してみるつもりです。



 ↓【おまけの動画】 
同じ素材を5倍速と10倍速に早回しにした映像をブログ限定で公開しておきます。 
せっかちな方はこちらをご覧ください。 
手持ちのハンディカムで撮ったので手ブレがあります。

 



2021/04/06

笹薮から次々に飛び去る2羽のヤマドリ(野鳥)

 

2020年12月上旬・午後14:00頃・くもり 

私が晩秋/初冬の里山で林道を歩いていると、横の茂みから得体の知れない鳴き声やガサゴソと足音が聞こえました。 
まさかツキノワグマではないよな?と思いつつも、近接遭遇に備えて念の為に護身用の強力な熊よけ催涙スプレーを素早く取り出して構えながら、動画に撮り始めました。 

笹薮の奥に潜んでいたのはヤマドリ(亜種キタヤマドリ:Syrmaticus soemmerringii scintillans)でした。 
残念ながら動画を撮り始めるのが少し遅れてしまい、ヤマドリの鳴き声(ペアの鳴き交わし、地鳴き)は録音されていませんでした。 
1羽のヤマドリが路上の私に気づくと笹薮から大きな羽音で勢いよく飛び立ちました。 
下り坂の林道に沿ってスーッと滑空し、左カーブを道なりに曲がって姿を消しました。 

 私の経験上ヤマドリはペアで活動することが多いのですが、しばらくすると予想通り、同じ藪の中から別個体も飛び出してきました。 
山中でヤマドリを1羽見つけたら近くにもう1羽居ると思って、動画を撮り続けるのが吉です。 
1羽目よりも斜面の高い位置から飛び立ったので、2羽目はより高く飛びました。 
パートナー(1羽目)の後を追うようにほぼ同じ飛行ルートを辿り、滑空して行きました。 
キジと異なり、ヤマドリは2羽ともに飛びながら大きな警戒声を全く発しませんでした。 (繁殖期なら鳴くのか?)
それ以上多くのヤマドリは茂みから飛び出してきませんでした。 

ヤマドリ2羽の飛翔シーンを1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 
ようやくヤマドリの飛翔シーンをしっかり撮れて嬉しいです。 
残念ながら性別は見分けられませんでした。 
おそらく♀♂つがいではないかと思います。 

▼関連記事(半月前に別の里山で撮影)

林道法面から急に飛び立って逃げるヤマドリ(野鳥) 



高木清和『フィールドのための野鳥図鑑―野山の鳥』でヤマドリについて調べると、
鳴き声:クッ、クッ/クゥー、クゥー/コッ、コッ、コッ/コッコッコ、クックッ(つがいで行動中、小声で)。(中略)冬季は♂♀別に行動する。(中略)体に比して短く丸っぽい翼で、大きな羽音をたてて飛び上がり、低いほうへ滑空する。 (p32より引用)
とまさに私が観察した通りの飛び方でした。 

一方、『日本の野鳥 さえずり・地鳴き図鑑 ~CDで鳴き声を聴き分ける全152種~』によれば、ヤマドリの地鳴きは
コココまたはクククあるいはウォッと低い声で鳴く(p88より引用)


ニホンミツバチ♀がナギナタコウジュの花で採餌

 

2020年10月上旬・午後14:40頃・くもり 

山間部の道端に咲いたナギナタコウジュの群落でニホンミツバチApis cerana japonica)のワーカー♀が忙しなく訪花していました。 
正当訪花で吸蜜している蜂の後脚をよく見ると、花粉籠は空荷でした。
▼関連記事(1年前の撮影) 
ナギナタコウジュの花で採餌するニホンミツバチ♀

2021/04/05

夜明け前に塒から飛び立つダイサギの群れ【10倍速映像】:「情報センター仮説」の直接検証

前回の記事:▶ ヒマラヤスギ樹上に塒入りするダイサギの群れ(冬の野鳥)
2020年11月中旬・午前5:43〜6:07(日の出時刻は午前6:22)・晴れ 

前回の観察から2日後の夜明け前からダイサギArdea alba)が群れで寝ている集団ねぐらの様子を見に来ました。 
快晴のため、無風でも放射冷却現象で気温がかなり下がりました。 
水たまりが凍ったり地面に霜柱ができるほどではありませんが、下草に白い霜が降りていました。 
ダイサギが塒を離れて朝食採餌に出かける様子の一部始終を動画で記録してみましょう。 
気温が下がる早朝にレンズの結露を防ぐため、鏡筒にUSBレンズヒーターを巻いてモバイルバッテリーから給電しました。 
朝日に対して順光のアングルになるように三脚カメラを設置。 

手持ち夜景モードに切り替えたカメラに動画撮影を任せ、私は木陰に身を隠しました。 
あいにくこの現場には本格的なブラインドを張れそうな場所が無くて、隠し撮りするのに苦労します。 
暗いうちは良いのですが、明るくなると私の姿を見つけた途端に警戒心の強いダイサギは塒から飛び去ってしまいそうです。 
しかし、今回ダイサギは警戒声を発せず黙って塒から1羽ずつ飛び去り、他個体がつられて連鎖的に(一斉に)飛び去ることもありませんでした。 
したがって、私の撮影行為自体がダイサギに及ぼした影響は小さいはずです。 

離塒の間隔を分かりやすくするために、10倍速の早回し映像に加工しました。 
(等倍速の映像も下に掲載しています。)
動画編集時にコントラストを少し上げました。 
実際の空より少し暗くなるものの、白鷺が際立ちます。 

ヒマラヤスギ高木のあちこちの枝で白鷺の群れが互いに少し離れて寝ています。 
針葉樹林の黒いシルエットにまるで白い花が咲いたようです。 
未だ真っ暗な時刻に中程の高さの枝から1羽のダイサギが飛び立ったものの、すぐに舞い戻って来ました。 
寝ぼけて夢遊病のように飛び出してしまった個体なのか、あるいは暗くても私の存在に気づいた個体が警戒したのかもしれません。

やがて目覚めた個体から順に樹上で背伸びをしたり翼をバサバサと羽ばたいたり、身震いしたりしています。 
続いて朝の羽繕いを始めました。 

結論を先に述べると、朝日が昇る(午前6:22)前の午前6:06にはダイサギの全個体(計13羽)の離塒りじが完了しました。 
1羽ずつばらばらに離から飛び去ったことが重要なポイントです。 
しかも塒から飛び出す方角はまちまちでした。 
塒の上空で旋回してから採餌場へ飛び去る個体もいます。 
相次いで塒を離れた場合でも、先行する個体を慌てて追いかけるのではなく、別方角へ飛び去りました。 
おそらく空腹に耐えられなくなった個体から順に離塒するのでしょう。 
大型の鳥ダイサギが飛び去ると、それまで止まっていたヒマラヤスギの枝がしばらく揺れています。 

夜が明けると、周囲ではカラスが鳴き始めました♪。 
毎朝午前6:00には大音量でサイレンがウーーーー♪と鳴り響きます。 
ダイサギはこのサイレンの音を合図にして一斉に離塒している訳ではありませんでした。 
サイレンが鳴る前にも後にも個々に集団塒のヒマラヤスギ樹上から飛び去っていました。 

ヒマラヤスギ林を占拠していた白鷺の群れが居なくなると、ハトやカラスなど他種の野鳥が飛来して止まり木として利用するようになりました。 
まるでダイサギが居なくなるのを待ちかねていたようです。 
ただの偶然かもしれませんが、猛禽でもないのに大型のダイサギを恐れていたのですかね? 

撮影地点で測定した気温は、午前5:44で気温4.7℃・湿度54%。 
午前6:10には気温2.4℃・湿度76%まで下がりました。 

さて、種々の鳥類がなぜ群れで集まり塒をとるのか?という鳥類生態学の問題に対して、これまで幾つかの仮説が提唱されてきました。 
その一つの「情報センター仮説」をここでは検討します。 
少し長くなりますけど、上田恵介『鳥はなぜ集まる?:群れの行動生態学』という本の第2章「ねぐらはエサの情報センター」から引用します。
エサを見つけられなかった鳥が餌探しに成功した鳥のあとをついてエサ場に行くのではないだろうかというのがワードとザハビの「情報センター仮説」です。(中略) ワードとザハビの論文が出されるなり、これにすばやく反応して研究をおこなったのが、オックスフォード大学のJ・R・クレブスでした。彼は留学していたカナダの、オオアオサギのコロニーでこの仮説が正しいかどうかを調べたのです。  彼はこう考えました。もしサギたちがコロニーを情報の交換場所に使っているならコロニーを飛び立つ時に、サギたちはバラバラに飛び立っていくのではなく、前日に十分エサをとった鳥のあとを、エサがとれなかった鳥がついていくように飛び立つだろうと予測しました。彼は朝、飛び立つサギたちの飛び立ち間隔を調べ、それをサギたちがもしランダムに飛び立ったらどうかという理論値と比較してみました。するとオオアオサギたちは、バラバラに飛び立っているのではなく、ある個体が飛び立つとそのあとを何羽かの個体がついていくように飛び立つ傾向にあることを発見しました。 よく引用されるクレブスの仕事です。しかし先に飛び立った鳥が前日にエサを十分に食べた鳥かどうかはわかっていませんし、グループで採食に行くということ自体、情報センターを仮定しなくてもサギたちにとって十分有利なので、彼のこのデータはあくまでも状況証拠にしかすぎません。直接的には個体識別した鳥をねぐらとエサ場で観察すればよいのですが、それがなかなかむずかしいのです。(p20-21より引用)
ちなみに原著論文はこちらです。
Krebs, J. R. (1974). Colonial nesting and social feeding as strategies for exploiting food resources in the Great Blue Heron (Ardea herodias). Behaviour, 51(1-2), 99-134.
原著論文の要旨だけでもよく読むと、筆者のクレブスはオオアオサギの塒ではなく繁殖期のコロニー(巣の集まり)から朝に飛び立つ個体を調べていました。 
私にとってこの区別は結構重要に思えるのですが、孫引きした総説や鳥の入門書では区別せずにさらっと流している(混同している)ことが多いです。 
鳥の巣と塒は基本的に別物です。

今回私が観察したダイサギは冬季の集団塒から1羽ずつバラバラに飛び去ったので、サギ類では定説になっているはずの「情報センター仮説」(the Information-Centre Hypothesis;ICH)はあっさり否定できそうです。 
ただし、私の観察したダイサギの群れは文献の生データよりも個体数(13羽)が少なすぎる点が問題となる(証拠として弱い)かもしれません。
定量データ(離塒間隔)の統計処理もしていないので、クレブスの研究の厳密な追試ではありません。 
しかし塒から個別に飛び去った証拠映像があれば反例として充分ではないかと思います。
クレブスの時代(1970年代)にはビデオカメラを野外で気軽には使えなかったので苦肉の策として統計処理に頼ったのではないでしょうか?
次回の撮影では、離塒したダイサギの各個体がどの方角に飛び去ったか餌場の方角をしっかり確認するために、もっと広角で記録する必要がありそうです。

そもそも冬にこの地域の川や池には魚影が薄い(ダイサギの餌となる獲物の密度が低い)ので、個々のダイサギが広い餌場を必要とします。
つまり昼間にダイサギは群れを作らず単独で採食します。
仮に仲間について行っても分け前が更に減るだけですから、喧嘩になるでしょう。
夕方になるとダイサギは各自の餌場から再び集団塒に戻って来るのですが、ダイサギの冬塒で「情報センター仮説」が成り立たないのは当然かもしれません。

 

↑【おまけの動画】 
長撮りしたオリジナル素材の長編動画(21:05)をブログ限定で公開します。 

4日後にも定点観察で追試しました。


体内寄生されたナシケンモン(蛾)幼虫の異常な巣作り【200倍速映像】

 

ナシケンモン(蛾)の飼育#7

前回の記事:▶ 体内寄生されたナシケンモン(蛾)終齢幼虫が繭を作る場所を探索【10倍速映像】
2020年11月上旬 

ナシケンモンViminia rumicis)の被寄生終齢幼虫は食草だったベニバナボロギクの葉裏に落ち着くと、営繭用の巣を作り始めました。 
微速度撮影したので200倍速の早回し映像をご覧ください。 
白い絹糸を口から吐いて周囲の葉を綴り合わそうとしています。 
三田村敏正『繭ハンドブック』によると、ナシケンモンは
餌植物の葉を綴って繭を作る。(中略)繭層は非常に薄く、中の蛹が透けて見える。(中略)繭全体が葉でくるまれていることもある。 (p61より引用)
ところが巣作りが遅々として進まず、休んでいる時間の方が長いです。 
寄生されていない正常個体の営繭行動を私は未だ観察したことがないのですが、もしかすると、オトシブミのように葉裏から葉脈に噛み傷を付けて萎れさせ、巣材を加工しやすくしているのか?と初めは思ったりしました。 
ベニバナボロギクの葉がみるみる萎れていくのは、至近距離から照明を当てているためのようです。 
対策として、途中で花瓶の水を追加しました。 

ナシケンモンの幼虫は自身の体の周りの葉裏に辛うじて少量の絹糸を張り巡らしただけで動かなくなりました。 
あまりにも異例尽くめなので、この時点になると体内寄生されてることを確信しました。 
絹糸腺は寄主の生存に不可欠な器官ではありませんから、おそらく寄生蜂の幼虫にほとんど食われてしまい、巣作りや営繭に必要な絹糸を吐けなくなったのでしょう。 
この個体の徘徊運動がギクシャクとぎこちないのは前からですが、葉裏に静止している間もピクピクと不規則に蠕動しています。 
筋肉組織や運動神経系も寄生蜂の幼虫にどんどん食い荒らされているのでしょう。 

体内寄生虫が寄主の行動を操作して自らの生存に都合の良い構造物(巣)を作らせる「延長された表現型」の事例はいくつか知られています。 
しかし、今回の観察例もそうなのかどうかは疑問です。 
せいぜい、寄主が力尽きる前に全身を植物にしっかり固定させているぐらいだと思います。
比較のために、寄生されていない正常個体の営繭行動を観察するのが次の宿題です。

    

↑【おまけの映像】 
 同じ素材で早回し速度を半分の100倍速に落とした動画をブログ限定で公開します。 

2021/04/04

潜水漁で川魚を捕食するカワウ(野鳥)

 

2020年11月中旬・午後15:20頃・晴れ 

夕方の川で1羽のカワウPhalacrocorax carbo hanedae)がマガモ♀♂の群れの間を縫って水面を左へ横断しています。 
途中から向きを変え、下流へ向かって川面を遊泳し始めました。 
やがて水中に潜って川魚を捕り始めました。 (単独潜水漁)

獲物の正体を突き止めるには、カワウが浮上した直後にすかさずズームインする必要があります。 
ところが、カワウが潜水すると次にどこから浮上するか予測できないため、一旦ズームアウトしないといけません。 
したがって、いつもカメラが寄る前にカワウが獲物を呑み込んでしまい、間に合いません…。

▼関連記事(同じ日に同じ川で撮影)

 

池で溺れるアキアカネ♂を捕食する鯉(コイ)

 

2020年12月上旬・午後12:15頃・くもり 

晩秋に生き残った赤トンボ♀が農村部の溜池(釣り堀?)で最後の力を振り絞って打水産卵していました。(映像なし) 
それより気になったのは力尽きた2匹の赤トンボで、池の水面で溺れています。 
沈まずに水面で浮いているので、すぐに溺れる心配は無さそうです。 
しかし水難トンボがいくら激しく羽ばたいても、水面に波紋が広がるだけで、表面張力を振り切って飛び立つことが出来ません。 
翅が濡れるとトンボは重くて飛び立てないのかもしれません。 
もしかして、岸を目指して必死で泳いでいるのかな? 
疲れると水面でしばらく休息。 

映像を見る限り、溺れているトンボの種類はおそらくアキアカネ♂(Sympetrum frequens)だと思います。
翅先に黒斑が無いので、ノシメトンボではありません。 

一方、この池には黒いコイ(鯉;Cyprinus carpio)が何匹も泳いでいました。 
小魚の群れも水中に見えます。 
水面で暴れるトンボが立てる波紋に気づいたようで、鯉が集まってきました。 
同一個体のコイが2匹の水難アキアカネ♂を続けざまに捕食しました。 
パクリと丸呑みです。 
トンボが水面で暴れずにじっとしていれば魚に察知されずに済んだかな? 

捕食シーンが撮れたので満足した私がズームアウトしかけると、事件が起こりました。 
撮影中は気づかなかったのですが、新たに別のトンボ♂が池に飛来し、水面で溺れている個体に体をぶつけてそのまま自分も溺れてしまったのです。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 
水難♂を♀と誤認し、交尾を試みて水面に囚われてしまったようです。 
「ミイラ取りがミイラになる」とはまさにこのことで、トンボの繁殖池が「死のトラップ」と化しています。 
池の鯉にしてみれば、餌となるトンボが勝手に連鎖反応で水面に落ちてくれるので食べ放題のお祭りでしょう。
私の推察が正しければ、実験で再現できるはずです。
つまり、囮となるトンボの標本(死骸)を水面に浮かべておけば、交尾しようと次々にトンボ♂が水に飛び込んでくる「死のダイブ」が再現できるはずです。
晩秋の静かな溜池で人知れずドラマチックなことが起きていて、私も結構感動しました。 

※ 動画編集時にコントラストではなく彩度を少し上げました。 
水面から照り返しが眩しくて、撮影中はあまりよく見えませんでした。 
こういうときこそ横着せずに偏光フィルターをレンズに装着すべきでしたね。


【追記】
新井裕『トンボ入門』p81によると、
トンボが水を飲もうとしておぼれ死ぬケースもよくある

トンボの飲水行動を私は未見なので、次からは注意して観察することにします。 


 

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