2023/08/19

ニセアカシアの大木を逆さまに下りる雪国のハクビシン【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2023年1月中旬・午後23:00頃・気温-1℃ 

河畔林のニセアカシア(別名ハリエンジュ)大木の真下に残された溜め糞場bLを自動撮影カメラで見張っていると、深夜にゴソゴソという激しい物音と共にレンズの至近距離に獣が現れました。 
ニセアカシア老木の幹に巻き付いて育った太いフジ(藤)蔓をハクビシン(白鼻芯、白鼻心;Paguma larvata)が爪を立てて垂直に下り、雪面に降りました。 
凍結した雪面に達すると、溜め糞場bLには興味を示さず横切りました。 
1/3倍速のスローモーションでリプレイ。 

フジ蔓上に見慣れない異物を発見したハクビシンが、トレイルカメラを調べに来たのかな? 
それとも、ニセアカシアの樹上にハクビシンがねぐらとする樹洞があるのでしょうか? 
後日現場入りした際に調べてみたのですが、下から見上げた限りでは、樹洞や巣穴は無さそうでした。 
ハクビシンは果実を好むらしいので、ニセアカシア高木に巻き付いたツルウメモドキの熟果を食べに来た可能性もありそうです。




同じ流域の河畔林で数百m離れた地点(溜め糞場rvやコンクリート護岸)でもハクビシンの家族がトレイルカメラにこれまで何度も写っていたので、今回登場したこと自体には驚きはありません。 
元々ハクビシンは南方系の外来種のはずなのに、雪国(東北地方)の厳冬期でも冬ごもりや冬眠をしないで適応し、元気に活動している様子が撮れたのは初めてです。 
身軽なハクビシンは木登りが得意だと評判ですが、ほぼ垂直の大木を逆さまになって下りる様子を間近で撮影できたのも嬉しい収穫です。
木下りの次は、ハクビシンの木登りを撮影してみたいものです。






【追記】
郷土出版社『置賜ふるさと大百科』を紐解くと、ハクビシンに関するコラムがありました。
夜行性で木登りがうまく、長い尾でバランスをとりながら、樹間を移動する。(中略)現在置賜地方全域に生息し、最近では市街地でも見かけられるようになった。(p54より引用)


私が特に興味を持ったのは次の一節で、初めて聞く話でした。

戦前に中津川(現在の飯豊町) や山形県境に近い福島市庭坂で、タヌキの毛皮目的で繁殖が行われたという話を聞いた。タヌキと一緒に動物商から「台湾タヌキ」と称する動物を購入して飼育したが、毛皮が粗悪で売り物にならず、山に放したり、なかには逃亡したものもいたという。持参したハクビシンの写真を見せたところ、それは間違いなくハクビシンであった。わが国におけるハクビシンの渡来ルーツを解明するのに貴重な証言である。(p54より引用)



太いフジ蔓以外に多数巻き付いている細い蔓はツルウメモドキ



交通事故で死んだホンドテンの割れた頭骨をミールワームに除肉クリーニングしてもらう【50倍速映像】

 



2023年1月上旬・午後14:00頃 

ロードキル死骸のホンドテンMartes melampus melampus)を解剖したついでに頭骨標本も作りたかったのですが、走行車と正面から激しく衝突して頭蓋骨の頭頂部が骨折していたので使い物になりません。 
それでも冬の暇潰し(ブログのネタ)として、やれるところまでやってみました。 
頭骨の表面に少しへばりついている脳や筋肉組織などをきれいに取り除く必要があります。 
今回は残った組織を入れ歯洗浄剤(タンパク質分解酵素)で溶かしたりバクテリアに分解してもらうのではなく、ミールワームに食べさせることにしました。 




まずは皮を剥いで首から切り落としたホンドテンの頭部を専用の小鍋に入れて水から軽く茹でます(水煮)。 
煮汁を捨てて粗熱を冷まします。

左側面

右側面

上面。頭頂部の骨折が激しく、煮ただけで左右に割れて脳が飛び出した。

下面


ピンセットや爪楊枝などを使って頭骨からチマチマと除肉しました。 
それでもきれいに取り切れません。 

左側面

右側面

上面

下面

除肉片



ホームセンターのペットショップ・コーナーからチャイロコメノゴミムシダマシ(ミールワーム;Tenebrio molitor)幼虫を2パック買ってきました。 
容器には「10gまたは約150匹」と記載されていましたが、2パック分のミールワームを実際に数えると、計255匹でした。 
ホンドテン頭骨が収まる大きな容器にミールワームを餌のフスマごと全て移し替えました。 
下半分をカットした2Lペットボトルを飼育容器として再利用します。 
それまで水に浸しておいたホンドテン頭骨を容器に投入しました。 
乾燥しないように、飼料のフスマを被せて頭骨を埋めるべきだったかもしれません。 
(しかし、頭骨の状態が逐一見えなければ微速度撮影できません。)

5日後に微速度撮影してみました。 
50倍速の早回し映像をご覧ください。 
ミールワームの大群が蠕動徘徊するせいで、飼料や頭骨が波打つように動いています。 
残った屍肉をミールワームが食べて頭骨をきれいにクリーニングする様子を記録したかったのですが、ここで問題発生。 
どうやら撮影用の眩しい照明を嫌って(負の走光性)ミールワームがフスマの中に潜り込んでしまうようです。 
好き好んでホンドテン頭骨に殺到している様子はありません。 
それなら赤外線の暗視カメラに切り替えて暗所で微速度撮影すれば良かったのですけど、「どうせ激しく砕けた頭蓋骨だしなぁ…」とモチベーションが上がらず、ここで諦めてしまいました。 
古生物学者は細かく折れた骨からでもパズルのように丹念に組み合わせて嬉々として復元するのですから、凄いですよね。

暗所に放置して5日後の状態
頭骨を裏返した下面

一方、解剖後のホンドテン死骸の残りは人気ひとけのない野外の雪原に放置して、カラスなどのスカベンジャーに給餌することにしました。 
どんな生き物が来るのかトレイルカメラを設置して観察したかったのですが、複数のプロジェクトを同時並行でやっているためにトレイルカメラの数が足りず、泣く泣く諦めました。 
数日後に現場を再訪すると、ホンドテンの死骸は毛皮や内臓も含めてきれいさっぱり無くなっていました。

2023/08/18

ホンドタヌキがニセアカシア真下の雪深い溜め糞場で排便【トレイルカメラ:暗視映像】

2023年1月上旬 

これまでホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が通う河畔林の溜め糞場rvをトレイルカメラで長期間の定点観察をしてきました。 
しかし、どうもメインの溜め糞場として使われていないようで、タヌキの登場(排便)頻度が低いです。 
雪が積もったので、雪面に残るタヌキの足跡を辿ってみることにしました。 
すると、川沿いを下流に数百m移動した地点でニセアカシア大木の根本に新たな溜め糞場bLを発見。 
雪面の足跡を追跡できるのが雪国の強みです。
新鮮な糞が残されていたので、早速トレイルカメラを設置し直して、溜め糞場bLを見張ることにしました。






カメラを設置した日の夜から大雪が降り、レンズの直前に雪塊が積もったせいで、監視カメラの視界が遮られてしまいました。
その隙間から辛うじてタヌキらしき姿が何度か写ったのですが、どうもはっきりしません。(映像公開予定?)

 

2023年1月中旬 

シーン1:1/12・午前0:06・気温0℃・(@0:00〜) 
レンズの手前に積もった雪塊がようやく溶け落ちて、ようやくクリアな暗視映像が撮れました。 
深夜に右から(下流側から)来たタヌキが溜め糞場bLの手前で左折し、画面の右下に消えました。 
まさかトレイルカメラの赤外線照射エリアを警戒して迂回したのかな? 
新雪にタヌキの足跡が残ります。 


シーン2:1/13・午前2:21・気温-4℃・(@0:07〜) 
翌日も深夜にタヌキが登場。 
前回と同じコースで通り過ぎたタヌキがちらっと写っただけです。 
画面が少し曇っているのはレンズに霜が降りたのでしょうか。 


シーン3:1/13・午前5:54・気温-4℃・(@0:13〜) 
約3.5時間後の未明にタヌキが再登場。 
同一個体が戻って来たのか、別個体のタヌキなのか、不明です。 
小雨がしとしと降っていて、全身の毛皮が濡れています。 
画面の上から(西から)溜め糞場bLに来ると、頭を左に向けて(南向き:上流向き)排便しました。 
タヌキが西に立ち去ると、雪面に新鮮な固形糞が少量残されていました。 


シーン4:1/13・午後13:17・気温13℃・(@0:49〜) 
同日の昼過ぎの状況です。 
寒暖差が激しく、晴れると13℃まで気温が上昇しました。 
雪面からの照り返しが眩しいです。
林床の雪原に河畔林(落葉樹ニセアカシア)の影が落ちています。 

7.5時間前に排泄されたばかりのタヌキの糞は、雪の中に少し沈下していました。 
排便直後は体温(直腸温)の予熱でホカホカと温かい上に、晴れた日中は黒っぽい糞が太陽熱で温められるために、雪を溶かしながら沈んでいくのです。 

これで厳冬期にホンドタヌキが排便に通っているという証拠映像が得られました。
しかし驚いたことに、この溜め糞場bLはホンドテンも共有していることが分かりました。
糞便臭による匂い付けで互いに張り合っているのでしょうか?(縄張り争い?)




つづく→

朝の川岸で羽繕いしながら羽根を乾かすカワウ(野鳥)

 

2022年8月上旬・午前6:35頃・晴れ 

カワウPhalacrocorax carbo hanedae)が止まり木として長年好んで使っている川岸の倒木があります。
最近の大雨で増水したのに、意外にも倒木は流出していませんでした。 




早朝から様子を見に行くと、カワウは未だ1羽しか来ていませんでした。 
右岸の倒木に上流を向いて止まり、大きく広げた翼を扇いで乾かしながら胸元の羽毛を嘴で整えています。 
倒木の辺りは木陰になっていて朝日が未だ射していません。 
朝日が高く昇れば、日光浴できるようになるでしょう。 

カメラを左にパンすると、枝葉が茂ったまま川に架ける橋のように大きく倒れた長いニセアカシア倒木にはカワウが1羽も止まっていませんでした。 
川面スレスレを低く飛んで左岸へ行ったのは、おそらくカイツブリでしょう。(@0:28〜) 
辺りではミンミンゼミ♂が鳴いており♪、ハグロトンボ同士が縄張り争いしています。

2023/08/17

ニセアカシア真下の雪深い溜め糞場で排便する冬毛のホンドテン【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2023年1月上旬〜中旬 

雪の積もった河畔林でニセアカシア(別名ハリエンジュ)大木の真下にタヌキが残したと思しき溜め糞場bLを新たに見つけました。 
早速トレイルカメラを設置して監視すると、タヌキではなく意外な珍客が何度も写りました。 


シーン1:1/7・午前2:15・気温-5℃・(@0:00〜) 
深夜に野生動物が登場し、監視カメラが起動しました。 
ニセアカシア大木に巻き付くフジの太い蔓にトレイルカメラを固定していました。 
根本の溜め糞場bLを見下ろすようにカメラ自体を俯角に設置すれば雨雪でレンズが濡れる心配はありません。 
ところが、直後に大雪が降ってフジ蔓の下部に雪が積もり、レンズ左側の視界を遮ってしまいました。 
レンズのすぐ目の前に雪が積もる可能性は全く想定外でした。 
自動ワイパーのような装置を付けたくなりますが、トレイルカメラの消費電力がますます増えそうです。
カメラの照射する赤外線を手前の雪塊が至近距離でほとんど反射してしまい、映像が眩しくて仕方ありません。 
手前の雪が露出オーバーで、肝心の奥が暗くなっています。 

動画編集時に逆光補正してみると、謎の獣の正体はタヌキではなく冬毛のホンドテンMartes melampus melampus)でした。 
ニセアカシアの根本の雪面を左から右へ横切り、雪に埋もれた溜め糞は素通りしました。 

同じ流域の河畔林で前の冬にテンがトレイルカメラに写っていたので、少し離れた今回の地点でもテンが撮れたのは不思議ではありません。(同一個体かも?)




シーン2:1/6・午後19:36・気温-2℃・(@0:07〜) 
順番が逆になりましたが、前日の晩にもテンが出没していました。 
右から登場すると、溜め糞場bLを横切って左の死角にスルスルッと消えました。 
テンは一体何をしに通っているのでしょう? 


シーン3:1/14・午後23:48・気温4℃・(@0:15〜) 
カメラの視界を遮っていた雪塊が溶け落ち、ようやく見晴らしが良くなりました。 
タヌキの溜め糞は新雪の下に埋もれています。 

深夜に登場した冬毛のホンドテンがニセアカシアの木の根元の匂いを嗅いでいるようです。
木の根元に尿でマーキングした可能性もありそうですが、この撮影アングルでは分かりません。 
やがて身を翻して画面右下に走り去りました。 
1/3倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:33〜) 
胴体も尻尾も白く、足だけが黒い靴下を履いたように黒い毛に覆われています。 


シーン4:1/18・午前4:16・気温-7℃(最低気温を更新)・(@0:51〜) 
4日後の未明、遂にホンドテンの全身像を暗視映像で記録できました! 
林床の積雪が少し溶けた結果、タヌキ?の溜め糞bLが再び雪面に露出しました。 
右から登場した白いテンが、糞の匂いを嗅いでいます。 
驚いたことに、テンはニセアカシア大木に向かって(画面下を向いた姿勢で)排便しました! 
この溜め糞場bLは複数種の哺乳類の共同トイレだったのです!(タヌキ、キツネ?、ホンドテン) 
脱糞後のテンはニセアカシアの木の根元で何かしています。 
尿マーキングではないか?と予想するものの、監視カメラをもう1台増やして別アングルで撮らない限り分かりませんね。 
テンは方向転換して自分の糞の匂いを嗅ぐと、左へ立ち去りました。 
雪面には新鮮な細長い糞が1個追加されていました。 
未明の極低温(放射冷却現象?)により雪面はクラスト凍結してるので、テンが歩いても足跡は残りません。 

テンの排便シーンをしっかり動画撮影できたのは初めてです。


シーン5:1/15・午前2:01・気温4℃・(@1:14〜) 
順番が前後してしまいましたが、数日前の深夜にもテンらしき白毛の獣がちらっと写っていました。 
1/3倍速のスローモーションでリプレイ。(@1:17〜) 
溜め糞場には立ち寄らなかったようで、左に素早く移動する後ろ姿だけでした。 

ニセアカシアを主体とする河畔林は冬に落葉すると吹きさらしとなります。 
強風が吹くと、カメラを設置したニセアカシア老木が左右に大きく揺れ、センサーが誤作動しがちです。






ヒメウコギの花に集まるヒラタハナムグリ♂

 

2021年5月下旬・午後16:45頃・晴れ 

山形県南部では棘のある落葉灌木ウコギを生け垣として植栽し、若葉を食用とする伝統があります。 
民家の生垣で見慣れない微小の甲虫がヒメウコギに訪花していました。 
ヒメウコギの花粉や花蜜を食べているようです。 

コアオハナムグリにしては異常に小さいです。 
よく見ると、鞘翅にゴツゴツした小さな突起が2対あります。 
マクロレンズを装着して接写すればよかったですね。 

微小甲虫の名前が分からなくてずっとお蔵入りにしていた動画です。
最近『くらべてわかる甲虫1062種』という図鑑をパラパラと眺めていたら、ヒラタハナムグリNipponovalgus angusticollis angusticollis)だろうと判明しました。 
別の古い図鑑にも標本写真が載っていたのですが、原寸大のため印刷が潰れて細部が見えず、役に立ちませんでした。 
電子書籍の図鑑は写真を自由に拡大できるので便利です。

別の花序にもう1匹のヒラタハナムグリを発見。 
本気で探せば、ウコギの生け垣でもっと多数のヒラタハナムグリが集まっているのを見つけられたかもしれません。 
花に来るヒラタハナムグリは♂で、♀は朽木に集まるのだそうです。 
(ほんまか?と内心疑ってしまいます。私も調べてみたいので、こんなに小さな甲虫の性別を外見でどう見分けるのか、教えて欲しいです。) 

アリ(種名不詳)もウコギの花に集まり、吸蜜したり蜜源植物を防衛(ガード)したりしているようです。 
硬い鞘翅に守られている甲虫に対しても、アリは脚を噛んだりして攻撃できるはずなのに、ヒラタハナムグリ♂はアリに攻撃・排除されず見逃されているのが不思議でした。
まさか体表の組成を化学的にアリ擬態しているのでしょうか?
このアリの種類をどなたか教えてください。
クロヤマアリではなさそうです。
 

2023/08/16

獲物を求め三毛猫は枯野を駆けめぐる

 

2022年11月中旬・午後15:30頃・くもり 

山麓の農村部にて枯れ草に覆われた原っぱ(休耕地)を散歩するイエネコFelis silvestris catus)を発見。 
体色は白がメインで、所々に黒と茶色の模様がある不思議な三毛猫でした。 
下半身の模様も独特(左右非対称)で、右脚だけ茶色が入り、左脚は黒。 
遺伝学的な理由により、三毛猫は♀と考えてほぼ間違いありません。 
後ろ姿の股間で外性器を確認しようとしても、草むらに隠れてよく見えませんでした。 

枯れ草の茂みの奥に野ネズミ(ノネズミ)などの獲物が潜んでいるのか、三毛猫♀は尻尾の先を左右にくねらせながら様子を伺っています。 
枯れ草のトンネルを通り抜け、奥の土手を登ると、休耕地を探索しています。 
コオロギなどの虫を捕食しようと探し歩いているのかもしれません。

ヤマオニグモ(蜘蛛)の垂直円網に囚われて暴れるヒグラシ

 

2022年7月中旬・午後14:00頃・晴れ 

里山の斜面を直登する細い山道が廃れて使われなくなり、左右から灌木の枝が伸び放題になっていました。 
そこを少し整備すると、ヤマオニグモAraneus uyemurai)などが網を張るようになりました。 
クモの巣に捕らわれたセミが逃れようと必死に羽ばたいて暴れていました。 
(私が獲物をクモの網に給餌したヤラセ映像ではありません。) 
鳴き声を発してないので♀かもしれません。

同定のために暴れるセミを手にとってじっくり接写すべきでしたが、夏の廃道登山でヘロヘロにへばっていた上に先を急いでいたので動画に撮っただけです。 
腹部全体が茶色く透けて見えるのでエゾハルゼミまたはヒグラシだと思うのですが、エゾハルゼミは時期的に少し遅いです。 
周囲でカナカナカナ…♪と寂しげに鳴き交わしているのは、ヒグラシ♂(Tanna japonensis)でした。 

セミがかなりパワフルに羽ばたいても、粘着性のあるクモの横糸は強力で切れません。 
獲物が疲れておとなしくなるまで、網の主はどこかに避難しているようです。 
以前ここにヤマオニグモAraneus uyemurai)が造網しているのを見ています。 


2023/08/15

深雪に潜って獲物を探す冬毛のホンドテン【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年1月上旬・午後18:03・気温-4℃ 

里山のスギ林道はサラサラの(乾いた)新雪に覆われ、道端に突き刺さっていたスギ落枝も完全に埋もれました。 
左下から登場した冬毛のホンドテンMartes melampus melampus)が立ち止まると、深雪に頭を突っ込んで穴を掘り始めました。 
テンの体が完全に新雪の中に埋もれました。 
おそらく雪の下にトンネルを張り巡らせて冬も活動する野ネズミ(ノネズミ)の気配を感じてテンが狩りを試みたのでしょう。 
深雪の中で方向転換したテンが、逆向きに雪の中から顔を出しました。
口に獲物を咥えていないので、残念ながら狩りに失敗したようです。 

諦めたテンは、元気に雪道を右へ走り去りました。 
前後の足を揃えて細長い胴体を尺取り虫のように伸縮させて跳びはねるように走ります。 
1/3倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:16〜) 
それにしても、雪深い厳冬期になるとテンの登場頻度が急に上がりました。

雪山で野生動物が残した足跡を追跡(アニマルトラッキング)していると、足跡が乱れた狩りの痕跡が見つかることがたまにあります。 
今回ホンドテンが雪面に残した足跡および穴掘り跡をもし見つけたら、狩りに失敗したと正しく読み解けるでしょうか? 

熊谷さとし『動物の足跡学入門』によると、
 雪の深い地方にすむテンは、雪の中に「テンの雪室ゆきむろ」とよばれるウロ(ほら穴)を掘る。テンは嗅覚が強いので、雪の下にある食べ物をとるために掘った跡だと言われているけど、俺はシェルターなのではないか?と思っているのだ。(p167より引用)

つづく→ 厳冬期の雪山でスギ林道を駆け抜ける冬毛のホンドテン【トレイルカメラ:暗視映像】

雪山のスギ林道で正月に写った謎の尻尾【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2023年1月上旬・午後22:47・雪・気温-2℃ 

里山のスギ林道に設置した自動撮影カメラに奇妙な物体が写りました。 
元日の深夜で、雪がしんしんと降っています。 
画角の左上から謎の物体が垂れ下がっています。 
レンズに近過ぎてピントが合っておらず、大きさも分かりません。 
もしこれが静止していれば氷柱つらら)の先端かな?と思うのですが、ピクピクと上下に動いている(不規則な動き)ので生き物のようです。 

林道を挟んで逆側から狙うアングルで監視カメラを設置していれば、謎の生物(UMA)の正体が分かったはずです。 
なんとなく、ニホンリスSciurus lis)の尻尾の先端部ではないか?と推理してみました。 
リスの尻尾はもっとフサフサしてる?
リスがカメラを設置したスギの木に登り、幹にしがみついているのでしょう。 

スギの幹に飛来して止まった冬尺蛾の腹端という可能性も考えましたが、スギ林にいるとは思えませんし、そもそも変温動物にはトレイルカメラのセンサーが反応しないはずです。 
残念ながら、UMAが居なくなる(飛び去る)シーンは撮れてませんでした。 

2023/08/14

雪深いスギ林道で休むニホンカモシカから立ち上る吐息の湯気【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年1月上旬・午後19:45・気温-2℃ 

晩にニホンカモシカCapricornis crispus)が右からゆっくり登場しました。 
雪は止んでいますが、雪面はスギ樹上からの落雪で荒れています。
カモシカが蹄を踏み出すと、雪に少し沈みます。 
カメラを固定した林道脇(法面)のスギに近づいてきます。 
林道を見下ろすアングルで設置していたのに、積雪量が増えた結果、トレイルカメラの高さが相対的に下がりました。 


手前の死角で立ち止まったカモシカは一体何をしているのでしょうか? 
雪の重みで折れたばかりのスギ落枝から新鮮な葉を食べているのなら、落枝がもっと動くはずです。 
画角の外でカモシカが大きく息を吐き、白い湯気(水蒸気)が立ち昇りました。(@0:42〜) 
これまでカモシカが好んで眼下腺マーキングしていた道端のスギ落枝は、深雪にすっかり埋もれてしまいました。 
その結果、新たなマーキング対象物を求めて、スギの幹の匂いを嗅いでいるのかもしれません。 
顔をスギの幹に擦り付けて眼下腺マーキングをしているのなら、ゴシゴシ・ゴリゴリ♪と物音が至近距離で録音されているはずです。 

27秒後に動きがあり、トレイルカメラが再び起動しました。 
どうやらカモシカはスギの木の下の雪面に座り込んで一休みしていたようです。 
立ち上がると左へゆっくり歩き去りました。 

林道を挟んで逆側から狙う別のトレイルカメラを設置していれば同時に2アングルでカモシカの行動を撮影できたはずなのに、残念でした。 
限られた台数でフィールドのあちこちに設置しているので、仕方がありません。 

杉の木の下でカモシカが排泄(排便、排尿)した可能性も考えましたが、4日後に現場検証した際には雪上にカモシカの糞塊は残されていませんでした。 
この冬は、なんとかカモシカのトイレ(溜め糞場)を探し出して排便シーンを隠し撮りするのが目標です。 



晩秋の朝、スギ林道に出没したトラツグミ【野鳥:トレイルカメラ】

 



2022年11月上旬・午前7:20頃 

里山のスギ林道にあるタヌキの溜め糞場sを監視する自動センサーカメラにトラツグミZoothera aurea)が写りました。 

画面右下の赤丸に注目してください。 
地味な斑模様が林床で実に見事な保護色(迷彩)になっています。 
やがて手前の死角にピョンピョン跳んで移動し、林道脇の法面を登ったようです。 
タヌキの溜め糞には興味を示さず、落ち葉をかき分けて虫を探すトラツグミの得意な探餌行動も見られませんでした。 


朝の明るい時刻なのですが、トレイルカメラの古い機種で撮ると画面全体がピンク色になってしまいます。 
※ 動画編集時に自動色調補正を施してモノクロに加工しました。 
動画の冒頭はフルカラーで撮れた現場の様子です。 (カメラを設置した直後だけ正常に撮れるのです。) 


2023/08/13

交通事故死したホンドテンを解剖してみる

 



2022年12月下旬 

閲覧注意! モザイク処理なしの解剖写真が続きます。

交通事故死(ロードキル)が疑われるホンドテンMartes melampus melampus)の新鮮な死骸を家に持ち帰ったものの、師走は忙しくてすぐには解剖できませんでした。 
腐敗しないように野外で雪の下に埋めておきました。 
ようやく時間がとれた2日後に、剖検を始めました。 
雪の下からテンの死骸を掘り出すと、凍結しておらず、程よく冷蔵保存されていたようです。 
死後硬直は解けているのか、関節は柔らかいままでした。 

床にビニールシートと古新聞紙を敷き、その上にアルミ製トレーを置いて作業します。 
感染症予防のため、マスクとビニール手袋を装着しました。 
当然ながらロードキル死骸には絶対に素手で触れないように注意します。 
途中経過の写真を撮るのに毎回手袋を外すため、大量の使い捨て手袋が必要となります。 

この機会に解剖キットをネット通販で注文しようかと思ったのですが、良いメスは高価ですし年末年始は届くまでに時間がかかります。 
待っている間に死骸の腐敗が進みそうなので、普通のカッターナイフで代用することにしました。 
やってみると大型のカッターナイフ1本ですべて解剖できました。(弘法メスを選ばず) 
ピンセットやハサミなども使わずに済みました。 
切れにくい部位で力を入れるときは、自分の手指をカッターナイフで切らないよう刃の向きに注意します。 
死骸の血糊や脂肪で切れ味が悪くなったら、いちいち研がなくても刃先を折れば復活します。 

トレーに死骸を仰向けに寝かせてから、まずは足の裏に注目しました。 
足の裏が黒いのがテンの特徴です。 
川口敏『哺乳類のかたち ~種を識別する掟と鍵~』によれば、
・テンとイタチを見分けるポイントは足だ。足の裏を見てもいいし、毛の色でもいい。テンの足は黒いがイタチは黄褐色から茶褐色で黒ではない。 (p26より引用) 
・テンとイタチでは、足の裏の肉球の数や配列の違いで識別できる。  (p30より引用)
過去に撮ったイタチのロードキル写真と見比べると、確かにその通りでした。
関連記事(0、5年前の撮影)▶  
ニホンイタチの死骸 
車に轢かれたニホンイタチの死骸に群がるハエ他

指の本数は前足も後足も5本で、鋭い爪が生えています。 
肉球が白くなっているのは、雪道を歩いて毛が抜け落ちたのでしょうか?
手根球については写真にうまく撮れていません。

右前足裏

左前足裏

右後足裏

左後足裏


今後、足跡の付き方を見分けられるように資料としてホンドテンの足裏を写真で記録しておきましょう。 
熊谷さとし『動物の足跡学入門:‐形とつき方から推理する』という本のp165にテンの足の裏の細密画が掲載されていました。 
熊谷さとし・安田守『哺乳類のフィールドサイン観察ガイド』p58にはホンドテンの足の裏の写真が掲載されています。
掌球しょうきゅう手根球しゅこんきゅうにテン特有の特徴がある。前足は掌球がシンメトリーで、手根球がある。後ろ足の掌球(足底球(そくていきゅう))は、第1指側(親指側:しぐま註)に流れており、手根球がない。(p58より引用)


剥皮が下手糞で血管を傷つけてしまい、血が滲んできました。


次にいよいよ腹部正中線をカッターナイフで切開します。 
毛皮が意外に丈夫で厚く、刃先が最初に貫通するまで少し手間取りました。 
腹膜を破らないよう注意しながら、毛皮を少しずつ剥いでいきます。 
四肢の足先は靴下を脱がせるように毛皮をきれいに剥けるかと思いきや、途中で行き詰まりました。 
時間がないので、足の骨ごと強引にゴリゴリと切断しました。 
尻尾も途中までしか毛皮を剥げず、諦めて切断。 
全身骨格標本を作るのなら、剥皮作業をもっと丁寧にやる必要がありそうです。
テンの肩甲骨(軟骨?)は遊離していて、鎖骨や背骨に連結していませんでした。
肩甲骨の大部分は膜性骨化によって形成される。 周囲の部分には出生時には軟骨であり、その後軟骨内骨化によって形成されるものがある。(wikipedia:肩甲骨より引用)
前腕の骨をきれいに取り出すのは大変そうです。





腹膜を切開し、内臓を露出しても消化器官に内出血は認められませんでした。 
胃の上部を取り囲む赤黒い臓器が肝臓です。
肝表面の肉眼所見は正常で、毒入りの餌を食べた可能性は却下。 
胃の下部にある赤黒くて細長い臓器は脾臓です。 
興味深いことに、腎臓の位置が左右非対称でした。 
右側の腎臓が上で左が少し下にあります。 
心臓や肺を詳しく調べるのを忘れました。 

子宮や卵巣、精巣の有無など内部生殖器については勉強不足で、解剖してもよく分かりませんでした。 
下腹部(肛門周り)の内臓や脂肪をやみくもに切ると臭腺・肛門腺を傷つけてひどい悪臭を発するのではないかと恐れたからです。 
しかし後でネット検索してみると、テンに臭腺は無いそうです。 
あまり自信がないのですが、性別は若い♀だと思います。 
股間に陰茎や睾丸がありませんし、腹面に乳首も無いからです。 

 

↑【参考動画】
「テンの解剖(グロ注意)」 by 高貴 
専門家による手際の良い解剖動画です。 
執刀者の実況を聞くと、どうやら同じく交通事故死した個体(ロードキル)のようです。 
毛皮をきれいに剥いだ状態から始まります。 
テン死骸の足先はやはり切断されていました。 
血抜きしてあるのか、素手で作業しても全く汚れていません。 
膀胱の近くにある内部生殖器(未発達の子宮)から若い♀とのことです。 

先にこの動画を閲覧して予習しておくべきでした。 
解剖中に手を止めて参考書やインターネット情報を調べたいのはやまやまですけど、汚れたゴム手袋をいちいち着脱するのが面倒臭くて、我流で一気に解剖しました。 
使い捨てゴム手袋の残量が少なかったので、無駄にできなかったのです。 
解剖の途中でゴム手袋を脱いで、写真に記録するだけで精一杯でした。 


頭蓋骨の頭頂部が大きく割れていて、脳が少し流出していました。 
死因は走行車にはねられた(正面衝突)衝撃による脳挫傷と推定しました。 
おそらく即死で、苦しまずに逝ったようです。 

体の他の部位は無傷で、内臓に内出血もありませんでした。 
罠にかかったテンの頭部を鈍器で殴って撲殺した可能性も考えましたが、四肢は無傷で罠にかかった痕跡がないので却下。 
この機会にホンドテンの頭骨標本を作りたかったのに、残念ながら損傷がひどくて試料に使えませんでした。 




両顎の歯式を記録するために、開口した内部を写真に撮りました。 

上顎の歯列

下顎の歯列


開口状態で下顎の歯列を撮る際に、下顎の小さな門歯(切歯)を私の指で隠してしまっています(痛恨のうっかりミス)。 
哺乳類の歯式は、左右片側について切歯I(門歯)・犬歯C・小臼歯P(前臼歯)・大臼歯Mの順で本数を表します(I,C,P,M)。 
分数のように表記され、分母が下顎、分子が上顎の歯です。 
ホンドテンの典型的な歯式をネット検索で調べると、切歯、犬歯、前臼歯、臼歯の順に I3/3,C1/1,P4/4,M1/2=38 とのことでした。 
私が調べた個体の歯式は、 I3/?,C1/1,P3/5,M2/2=? 
下顎の前臼歯および上顎の臼歯が普通よりも多いのが謎です。 
小さな乳歯が生え残っているのでしょうか? 
しかし常識的に考えると、永久歯よりも乳歯の数の方が少ないはずです。 
不慣れな素人ゆえに、歯の数え方が間違っているのかもしれません。 
それとも過剰歯の個体なのかな? 




次に摘出した胃の内容物を調べてみましょう。 
内臓の中で胃が最も大きく膨らんでいました。 
死亡時のホンドテンは空腹状態ではなかったことになります。 
胃を切開した途端に、解剖実習で馴染みのある生臭い悪臭が辺りに漂います。 
胃内容物は柔らかい泥状に消化されていて、指で丹念に探ってもめぼしい収穫はありませんでした。 
死後に低温冷蔵でも胃内で消化がゆっくり進行したのかもしれません。
今回は残渣を茶漉しで丹念に水洗いする余力がありませんでした。 






胃に残っていたオレンジ色の小さな破片は、熟柿の果肉と思われます。 



カキノキに特有のひらべったい種子が1個だけ出てきました。 
種子の先端が尖っていますが、全体的に無傷です。 
テンは液果の果肉ごと噛まずに種子も丸呑みしたのでしょう。 
この未消化のカキノキ種子を鉢植えで栽培すれば更に楽しみが広がったはずですが、熱湯消毒したので発芽は期待できなくなりました。 

ホンドテンは熟した液果を好んで食べることが知られています。 
そのお返しに、テンは果樹の種子散布に貢献しています。(共生関係) 
テンは食後に遠くまで移動してから、未消化の種子を糞と一緒に排泄するからです。 


腸の内容物も回収して糞から未消化の種子や残渣を調べるべきでした。 (糞内容物調査と同じ手法) 
初めての解剖で疲労困憊していた私は、そこまでやり遂げる余力がありませんでした。 


冬毛のホンドテンは毛皮がとても美しいのですけど、長期保存するにはタンパク質が腐らないように毛皮のなめし方を学ぶ必要があります。 
忙しくて今回は泣く泣く諦めました。 
ゆくゆくは毛皮の剥製や全身骨格標本を自分で作れるようになりたいものです。

解剖する前にホンドテンを身体測定するのを忘れていました。 
仕方がないので、剥皮した毛皮(背側)に巻き尺を当てて採寸。 
正式な測定法よりも少し誤差がありそうです。
全長73cm(鼻先から伸ばした尾端まで)。 
尾長は30cm。 
したがって、頭胴長(体長)は43cm。 
前脚を左右に広げた幅は42cm。 
体高(四足で立ったときの前足の裏から肩までの高さ)を測り忘れましたが、前脚を左右に広げた幅42cmの半分だとすると約21cmでしょうか? 

解剖に使った道具類を熱湯消毒して終了。 
暖房のない極寒の部屋で慣れない解剖を長時間やったので、疲労困憊しました。 
手抜きが多く、細かい点で色々と不備がありますが、それでも1例目の解剖でこれだけ出来れば上出来です。(自画自賛) 
死因をロードキルと確定できました。
これで経験値が一気に上がりました。 
本で動物解剖学を学ぶだけよりも、実際に自分の手で解剖してみると、より深く理解できて記憶に残ります。




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