2013/06/01
シホンハマダラミバエ♂の身繕いと翅の誇示行動
2013年4月下旬〜5月上旬
鳥糞に群がっていたシホンハマダラミバエ♂(Acidiella sapporensis)を3匹採集してからしばらく飼っていました。
(実はミバエ自体の飼育が目的ではなくて、冬から飼い続けているヤガタハエトリの生き餌として与えたのですが、結局捕食されなかったようです。)
複雑な黒紋がある翅を誇示するかのように、ときどき独特な動きをするのが面白いと思いました。
♀は居なかったようで、求愛交尾行動は観察できませんでした。
また、見栄え(ミバエ)を気にしてか脚を互いに擦り合わせて身繕いしています。
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アブ・ハエ・カ・ガガンボ(双翅目),
化粧
タンポポの種子を食すカワラヒワ♂(野鳥)
2013/05/31
春山の雑木林を移動するニホンカモシカ
2013年4月下旬
山道で静かに虫を長時間撮影していると、奥の山からガサガサ物音が聞こえてきました。
もしやクマかと緊張が走りました。
静かに熊よけの護身スプレーとカメラの両方を用意して待ち構えていると、ニホンカモシカ(Capricornis crispus)が現れ一安心。
雑木林の斜面をトラバースして行きました。
潅木の茂みが邪魔でほとんどピントが合いません。
最後は姿を見失ってしまいました。
積雪・落葉期はあれほど容易だったカモシカの観察・追跡も、山に緑が戻ると非常に困難になります。
後半、ようやくカモシカにピントが合いました。
気のせいかもしれませんが、左脇腹にかさぶたのような物が見えます。
遭遇地点を縄張りとする個体を思い出してみると、もしかすると次のカモシカが成長した同一個体かもしれません。
関連記事→「ニホンカモシカ幼獣の歩行異常(蹄の病変?奇形?)」
飛べ! ツマグロオオヨコバイ【ハイスピード動画】
2013年4月下旬
山地の道端に生えたエゾユズリハの群落に多数のツマグロオオヨコバイ(Bothrogonia ferruginea)が続々と飛来して葉に止まっていました。
なぜユズリハの潅木に集まってくるのか不思議です。
吸汁シーンも確認できず、お気に入りの食草という訳でもなさそうです。
レック(集団お見合い場)にしては交尾行動などは見られません。
テラテラした光沢の葉がツマグロオオヨコバイの眼には魅力的に映るのでしょうか。
飛び立ってもまた戻って来ます。
集合フェロモンでも放出したのかな?
飛び立つ瞬間を240-fpsのハイスピード動画に撮ってみました。
虫を驚かせたりせず、自発的に飛んでくれるまでひたすら待ちます。
個体によっては横這いで葉裏に逃避してから、またすぐに葉表に戻って飛び立つ者もいます。
捕食者を警戒したフェイント行動なのでしょうか?
翅を広げ勢い良く跳躍してから空中で羽ばたき始めるようです。
セミのように飛びながらオシッコしないかな?と期待したものの、スローモーションでも排泄シーンは映っていませんでした。
【追記】
本種の越冬態は成虫らしいので、もし集団越冬だとすれば、たまたまこの日に休眠から一斉に目覚めて活動を開始したのかもしれません。
『日本動物大百科8昆虫Ⅰ』p138-139より
- ツマグロオオヨコバイの出現時期は8月〜翌年6月(成虫越冬)。
- 越冬後に交尾を行うツマグロオオヨコバイの春における性比は1:1のままである。
Labels:
スローモーション,
セミ・カメムシ・サシガメ(半翅目),
飛翔
2013/05/30
鳥の糞に群がるシホンハマダラミバエとルリシジミ
2013年4月下旬
飛んでいるシジミチョウを目で追って、地面に着陸したのを撮り始めたら見慣れないハエの大群に気づきました。
道端に落ちたスギの枯葉に白っぽい鳥の糞が付着しています。
これに同じ種類と思われるハエが集まり、糞を舐めたり身繕いしたりしていました。
少なくとも9匹のハエを数えました。
複眼がきれいな緑色で、翅の黒い模様も独特です。
群がるハエ同士で喧嘩や求愛行動は見られませんでした。
ときどき翅の黒紋を誇示するような動きは、何の意味があるか思わせぶりです。
素人目にはミバエ科の一種だと思うのですが、同定(写真鑑定)してもらうためハエを3匹採集しました。
気温が低いせいか、容器を被せても飛ばずにウロウロと歩き回るだけでした。
体長〜5mm。
シジミチョウの方はスギタニルリシジミではなくてルリシジミ(Celastrina argiolus)だと思いますがどうでしょう。
ミネラル補給のためミバエと一緒に鳥の糞を吸汁している筈ですが、伸びた口吻を確認できる接写アングルを確保できませんでした。
スギの枯葉に付着した鳥の糞 |
いつもお世話になっている双翅目の掲示板「一寸のハエにも五分の大和魂」に投稿して問い合わせたところ、ミバエに詳しいほげさんより以下の回答を頂きました。
動画&写真のミバエは
Acidiella sapporensis (Shiraki) シホンハマダラミバエ
でほぼ間違いないと思います!翅や腹部の模様からそう判断しました。本種はShiraki(1933)にて記載されましたが、これに掲載されている本種の原色図は、お写真のものにソックリです。
なお、本種のタイプ標本は札幌から得られており、これが種小名の由来と思われます。
いまのところはシホンハマダラは北海道にのみ記録があるので、山形県で得られたとなれば、本州初記録のはずです。
見た限り、全部オスっぽいのも興味深いです。※
これだけまとまっているということは、付近にホストのハリギリが生えているのだろうと推測します。
シホンハマダラが属するAcidiella属はアケビ科などの葉潜りであることが知られています。ハモグリバエのようなきれいな「字書き虫」ではなく、染みのような潜葉痕を残します。つづく→「シホンハマダラミバエ♂の身繕いと翅の誇示行動」
現地にハリギリ(センノキとも言います)があり、葉に染み状の潜葉痕があるようなら要注意、ということです。
【追記】
※ 獣糞で吸汁するチョウの多くは♂で、性成熟に必要なミネラル等を補給するのだと言われていますが、ミバエもそうなんですかね。
Labels:
アブ・ハエ・カ・ガガンボ(双翅目),
チョウ・ガ(鱗翅目),
食糞性
2013/05/29
巣にゴミを運ぶアカヤマアリと奴隷アリ
2013年4月下旬
ようやく雪が消えた峠道のピークで腰を下ろして休憩していると、路肩(舗装路の端で地面との境界)に見つけたアリの巣が気になりました。
ムネアカオオアリよりも薄い赤色で、見慣れない種類です。
帰ってから調べると、どうやらアカヤマアリ(Formica sanguinea)らしい。
未だ気温が低く動きが緩慢とは言え、黒いアリと遭遇しても激しい喧嘩にならず、一緒に働いているように見える点が非常に不思議でした。
しかも同じ巣穴に出入りしているようです。
アカヤマアリはクロヤマアリなどの巣を襲って奴隷狩りを行うと知って納得。
きっと同じ巣の仲間なのでしょう。
体長はアカヤマアリ>クロヤマアリ。
奴隷(クロヤマアリ)に働かせるだけでなく、アカヤマアリ♀も自ら働いています。
いつもそうなのか、それとも早春は奴隷の労働力不足なのでしょうか?
ワーカーは辺りから小さなゴミを拾ってくると大顎に咥えて巣穴まで運び、ポトリと落とす謎の行動をせっせと繰り返しています。
採餌行動ではないことは確かですが、意図が分かりません。
巣の入り口を塞ごうとしているのか、蟻塚を築くつもりなのだろうか?
しかし近縁種のエゾアカヤマアリとは違って、アカヤマアリは蟻塚を作らないはずです。
興味があるので定点観察に通ってみることにします。
【追記】
NHKの動物番組『ダーウィンが来た!』2014年8月17日放送の回「不思議いっぱい!身近なアリを大研究」を視聴し、とても興味深いことを知りました。
トビイロシワアリとクロオオアリの巣穴が近くにある場合の話です。
地面に餌を置いてやると体格で劣るトビイロシワアリは餌を奪われないように、クロオオアリの巣口にせっせと砂粒を運んで投下するそうです。
困ったクロオオアリが巣穴から土を搬出する隙に餌を占有して持ち帰るのです。
寄って集って嫌がらせをして、ライバル種を巣に釘付けにするという高等戦術に驚愕・感嘆しました。
今回、私が観察したアカヤマアリの行動はいたって穏やか(平和)に見えたのですが、実はライバルのコロニー間の工兵部隊による争いだったのかな?
関係ない行動かもしれませんけど、覚書として残しておきます。
【追記2】
丸山宗利『昆虫はすごい (光文社新書)』によると、
クビレアリ属の一種も別のミツツボアリと同じ場所で競合関係にあるが、彼らの戦術も面白い。
小石をくわえて、ミツツボアリの巣の入り口から放り込むのである。
これにより、ミツツボアリは巣から出にくくなり、餌をとりに行けなくなる。
この「投石行動」は別のアリでも独自に進化しており、同じく北米の乾燥地帯で、アミナガアリ属の一種がシュウカクアリ属の巣口を埋め、餌とり行動を妨害することがわかっている。(pXXX)
アカヤマアリの場合、奴隷がいなくても、単独でも生活が可能だ。
自分で餌をとることもできるし、食べることもできる。
奴隷はより効率よく巣の環境を維持し、幼虫を育てるための手段なのである。(p167)
頭楯前縁の中央部は凹む。 |
アカヤマアリ♀標本a:側面@方眼紙 |
アカヤマアリ♀標本a:背面@方眼紙 |
アカヤマアリ♀標本a:顔@方眼紙 |
アカヤマアリ♀標本b:側面@方眼紙 |
アカヤマアリ♀標本b:背面@方眼紙 |
アカヤマアリ♀標本b:顔@方眼紙 |
アカヤマアリ♀標本c:側面@方眼紙 |
アカヤマアリ♀標本c:背面@方眼紙 |
アカヤマアリ♀標本c:顔@方眼紙 |
Labels:
ハチ・アリ(膜翅目),
造巣
2013/05/28
キクザキイチリンソウの花に群がるチビケシキスイ(甲虫)
2013年4月下旬
林道脇で早春の花(スプリング・エフェメラル)の一つキクザキイチゲ(=キクザキイチリンソウ)が群落で咲いていました。
白い花の中央を覗き込むと、非常に小さな黒い甲虫が群がっていました。
新たに飛来する個体や花から飛び去る個体など、活発に出入りしています。
一輪の花に5〜6匹が集まっています。
激しく歩き回る個体と、静止して食事中の個体の2タイプがいます。
接写してみると、雄しべの葯に取り付いて花粉を食べているようです。
花の奥に頭をつっこんでいる個体は花蜜を舐めているのでしょうか。
全景 |
しかし体長〜2mmと余りにも小さ過ぎて、標本を接写しても甲虫に疎い素人にはさっぱり分かりません。
せめて科名だけでも知りたいところです。
【追記】
YouTubeにて甲虫好きのkiokuimaさんから以下のコメントを頂きました。
保育社の甲虫図鑑(Ⅲ)の中では、大きさ・色・つやから判断して「チビケシキスイ属」かな??と考えました。その中でも、体長が2mmなので、「アオチビケシキスイ(北海道・本州)Meligethes praetermissus」「クロツヤチビケシキスイ(北海道)Meligethes nitidicollis」「エチゴチビケシキスイ(本州・九州)Meligethes astacus」あたりかな?
微甲虫a標本:背面@方眼紙 |
微甲虫a標本:腹面@方眼紙 |
微甲虫a標本:顔@方眼紙 |
微甲虫b標本:側面@方眼紙 |
微甲虫b標本:背面@方眼紙 |
微甲虫b標本:腹面@方眼紙 |
微甲虫b標本:顔@方眼紙 |
微甲虫c標本:腹面@方眼紙 |
飛べ!カワラヒワ【野鳥:ハイスピード動画】
2013年5月上旬
街中で電線に止まったカワラヒワ(Carduelis sinica)が飛び立つ瞬間を240 fpsのハイスピード動画に撮ってみました。
飛ぶと翼と尾のきれいな黄色斑が目立ちます。
ラストはおまけで脱糞シーンもご覧下さい。@1:14
2013/05/27
タヌキの溜め糞で婚活するクロボシヒラタシデムシの群れ
2013年4月下旬
里山の細い尾根道に新鮮なタヌキの溜め糞が二山並んでありました。
多数のクロボシヒラタシデムシ(Oiceoptoma nigropunctatum)が溜め糞に集まっています。
交尾中のペアや糞食している個体も居ます。
こんな早春から出るということは、成虫越冬なのだろうか?
それとも蛹から羽化したばかりなのかな?
関連記事→「クロボシヒラタシデムシ♂は交尾中♀の触角を噛む性癖がある」
溜め糞を舞台にした糞虫の動きを長時間かけて微速度撮影してみれば面白そうです。
しかし生憎この日は三脚を持って来るのを忘れてしまいました。
後日、再訪したらこの溜め糞はサインポストとして最早タヌキに使われていないようで分解が進み、クロボシヒラタシデムシの姿もありませんでした。
やはりフィールドでは一期一会の撮影チャンスを確実に仕留めないといけませんね。
【追記】
岸本真弓『タヌキが糞をためる理由』によると、山で見つかる溜め糞は
経験的にいえば、地形的には山の斜面よりも尾根の上、緩い鞍部になっているところ、急な上りあるいは急な下りの後のほっとする平坦なところなどに多いと感じています。尾根上でも傾斜がきついところより緩いところでたくさんのタメ糞が見つかるのです。それに、下層植生が繁茂しているところよりも、糞をするときにタヌキの体がほかのものに接しないほどにすいたところのほうが多いように思います。 (『動物たちの気になる行動〈2〉恋愛・コミュニケーション篇』p171-172より引用)確かに、私がこのとき尾根道で見つけた溜め糞の場所はこの記述通りでした。
2013/05/26
カケス(野鳥)の警戒声♪を声紋解析してみる
2013年4月下旬
谷川の近くでカケス(Garrulus glandarius)がスギの枝に止まっていました。
「ジェー、ジェー♪」と2回鳴いてから飛んで逃げました。
警戒心の強いカケスをこれだけ至近距離から隠し撮りできたのは初めてでした。
カケスの警戒声を声紋解析してみる
近くを流れる谷川の水音が混入していますが、試しに2回鳴いた警戒声を切り出してスペクトログラムを描いてみました。
どうやらダミ声はきれいな声紋にならないようです。
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