2013年4月下旬
ようやく雪が消えた峠道のピークで腰を下ろして休憩していると、路肩(舗装路の端で地面との境界)に見つけたアリの巣が気になりました。
ムネアカオオアリよりも薄い赤色で、見慣れない種類です。
帰ってから調べると、どうやらアカヤマアリ(Formica sanguinea)らしい。
未だ気温が低く動きが緩慢とは言え、黒いアリと遭遇しても激しい喧嘩にならず、一緒に働いているように見える点が非常に不思議でした。
しかも同じ巣穴に出入りしているようです。
アカヤマアリはクロヤマアリなどの巣を襲って奴隷狩りを行うと知って納得。
きっと同じ巣の仲間なのでしょう。
体長はアカヤマアリ>クロヤマアリ。
奴隷(クロヤマアリ)に働かせるだけでなく、アカヤマアリ♀も自ら働いています。
いつもそうなのか、それとも早春は奴隷の労働力不足なのでしょうか?
ワーカーは辺りから小さなゴミを拾ってくると大顎に咥えて巣穴まで運び、ポトリと落とす謎の行動をせっせと繰り返しています。
採餌行動ではないことは確かですが、意図が分かりません。
巣の入り口を塞ごうとしているのか、蟻塚を築くつもりなのだろうか?
しかし近縁種のエゾアカヤマアリとは違って、アカヤマアリは蟻塚を作らないはずです。
興味があるので定点観察に通ってみることにします。
【追記】
NHKの動物番組『ダーウィンが来た!』2014年8月17日放送の回「不思議いっぱい!身近なアリを大研究」を視聴し、とても興味深いことを知りました。
トビイロシワアリとクロオオアリの巣穴が近くにある場合の話です。
地面に餌を置いてやると体格で劣るトビイロシワアリは餌を奪われないように、クロオオアリの巣口にせっせと砂粒を運んで投下するそうです。
困ったクロオオアリが巣穴から土を搬出する隙に餌を占有して持ち帰るのです。
寄って集って嫌がらせをして、ライバル種を巣に釘付けにするという高等戦術に驚愕・感嘆しました。
今回、私が観察したアカヤマアリの行動はいたって穏やか(平和)に見えたのですが、実はライバルのコロニー間の工兵部隊による争いだったのかな?
関係ない行動かもしれませんけど、覚書として残しておきます。
【追記2】
丸山宗利『昆虫はすごい (光文社新書)』によると、
クビレアリ属の一種も別のミツツボアリと同じ場所で競合関係にあるが、彼らの戦術も面白い。
小石をくわえて、ミツツボアリの巣の入り口から放り込むのである。
これにより、ミツツボアリは巣から出にくくなり、餌をとりに行けなくなる。
この「投石行動」は別のアリでも独自に進化しており、同じく北米の乾燥地帯で、アミナガアリ属の一種がシュウカクアリ属の巣口を埋め、餌とり行動を妨害することがわかっている。(pXXX)
アカヤマアリの場合、奴隷がいなくても、単独でも生活が可能だ。
自分で餌をとることもできるし、食べることもできる。
奴隷はより効率よく巣の環境を維持し、幼虫を育てるための手段なのである。(p167)
頭楯前縁の中央部は凹む。 |
アカヤマアリ♀標本a:側面@方眼紙 |
アカヤマアリ♀標本a:背面@方眼紙 |
アカヤマアリ♀標本a:顔@方眼紙 |
アカヤマアリ♀標本b:側面@方眼紙 |
アカヤマアリ♀標本b:背面@方眼紙 |
アカヤマアリ♀標本b:顔@方眼紙 |
アカヤマアリ♀標本c:側面@方眼紙 |
アカヤマアリ♀標本c:背面@方眼紙 |
アカヤマアリ♀標本c:顔@方眼紙 |
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