2023年10月中旬・午後15:00頃・晴れ
街なかの花壇に咲いたヒャクニチソウ(百日草)の群落でオオタバコガ♀(Helicoverpa armigera armigera)が訪花していました。
この組み合わせは初見です。
左前翅の翅頂が欠けた同一個体を撮り続けました。
花弁が色とりどりの品種が咲いている中で、赤、白、黄色の花で吸蜜しました。
筒状花から口吻を引き抜くと、オレンジ色の花粉が付着しています。
次の花へと移動する前に、触角を前脚でぐいっと拭うことがありました。(身繕い)
隣接する花に移動するときには、省エネのためにわざわざ飛ばずに歩いて行きました。
『くらべてわかる蛾 1704種』という図鑑でオオタバコガを調べると、
♀は(翅表が:しぐま註)橙褐色
食草:イネ科、キク科、ウリ科、ナス科、バラ科など広食性 (p115より引用)
農薬メーカー?シンジェンタジャパンのサイトでは、次のように書いてありました。
前翅は雄は黄色味を帯び、雌は赤味を帯びる。
翅色の個体変異なのか、それとも強い日差しで翅の色が白飛びしてしまったのかな?
訪花中も葉に止まっているときも、ほぼ休みなく翅を小刻みに震わせています。
足を着地していますから、ホバリング(停空飛翔)ではなくて、いつでも飛び立てるように飛翔筋を震わせて体温を上げる準備運動(アイドリング)をしているのでしょう。
暖かい日向ですから気温が低い訳ではないのですが、本種は寒がりなのか、特有の習性のようです。
もしかして、捕食圧の高い地域なのでしょうか?
関連記事(約20日後の撮影)▶ ホトトギスの花蜜を吸うオオタバコガ(蛾)【FHD動画&ハイスピード動画】
オオタバコガがヒャクニチソウの花から飛び立つ瞬間を狙って、240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:08〜)
撮影中は気づかなかったのですが、黄色い花の品種のヒャクニチソウで花蜜を吸いながら、腹端を前方に屈曲させて筒状花の側面に付けました。(@1:13〜)
元の姿勢に戻るときに産卵管を伸ばしていたことから、産卵行動と判明しました。
つまり、この個体は♀でした。
準備運動していた羽ばたきが力強くなると、次の花に飛び去りました。
前後の動画をじっくり見直しても、産卵していたのはこのときだけでした。
オオタバコガ♀の産卵行動を観察できたのは、これが2例目です。
関連記事(3年前の撮影)▶ ナスの葉に産卵するオオタバコガ♀(蛾)
オオタバコガの産卵習性についてネット検索すると、石川県の病害虫防除室が公開しているPDF資料『オオタバコガ - 石川県 防除室だよりvol12』 がヒットしました。
雌は夜間に葉裏や新芽、花蕾付近等に1粒ずつ、一晩で200~300 粒、期間中に2000粒程産卵します。卵を何個もまとめて産み付けるのではなく、1個ずつしか産まないというのは、私が観察した通りです。
今回は花に産卵したので驚いたのですけど、オオタバコガ♀では珍しくないことを知りました。
撮れた写真や映像を改めて見直すと、ヒャクニチソウの群落で虫食い跡のある葉や花弁があちこちに見つかります。
卵から孵化したオオタバコガ幼虫による食痕とは限りませんが、可能性はあります。