2023/03/04

珍しくタヌキの溜め糞のすぐ横に排便するニホンアナグマ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2022年9月中旬 

里山のスギ林道にトレイルカメラを設置して、タヌキとアナグマが共有する溜め糞場sを長期監視しています。 

シーン1:9/13・午後20:23・気温23℃ 
冒頭から、画面の左端にニホンアナグマMeles anakuma)が登場しました。 
おそらくスクワットマーキングで下草に匂い付けしているのでしょう。 
しばらくすると、また左から戻って来ました。 
自分たちの溜め糞場の匂いを嗅ぎ回ると、カメラの方を向いてしゃがみました。(@0:20〜) 
手前に向かって歩きながら脱糞したように思うのですが、横向きまたは後ろ向きになってくれないと肛門が見えず、排便の有無は分かりません。 
下草やスギ落ち葉にスクワットマーキングしただけかもしれません。 


シーン2:9/16・午後20:33・気温21℃ (@0:37〜) 
3日後もほぼ同じ時刻の晩に登場しました。 
林道上のあちこちで腰を落として尻を擦りつけながら歩き回ります。 (スクワットマーキング)
今回初めて、アナグマがタヌキの溜め糞のすぐ横で対抗するように排便しました。(@0:48〜) 
今までは同じ溜め糞場sの中でもタヌキとアナグマは棲み分けるように別々の場所に排便していたので、今回の所業に驚きました。
遂にタヌキとの長い冷戦(膠着状態)が破られて、アナグマが挑発行為に出たのでしょうか?

アナグマはいつものように糞切りが悪く、後半は軟便をボトボト垂れ流しながら左に立ち去りました。 
タヌキと違ってアナグマは溜め糞場の広範囲に匂い付けするために意図的に大便を撒き散らすのでしょう。

この個体はアルビノではなく、顔に黒い縦縞があるようです。 
(シーン1とは別個体のような気がするのですが、自信はありません。)

※ カメラから照射される赤外線が強過ぎるので、動画編集時に白飛びを少し和らげました。 



シラハギの花で採餌するハキリバチの一種♀【名前を教えて】

 

2022年9月中旬・午後16:00頃・晴れ 

墓地の片隅に咲いたシラハギ(白萩)にハキリバチの一種♀が訪花していました。 
ハエのような羽音♪を立てて、花から花へ忙しなく飛び回ります。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると、腹部下面のスコパに黄色い花粉を運んでいました。 
白萩の蝶形花で吸蜜し、花粉を集めていたようです。 

横の道を車が通ると、蜂は逃げてしまいました。 
風揺れにも悩まされ、他にはシジミチョウの仲間も来ていたのに撮り損ねてしまいました。

2023/03/03

雑木林の斜面を夜な夜な徘徊して餌を探す野ネズミ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2022年9月中旬 

里山の林道脇の斜面に育ったカラマツ大木の幹にひどく泥汚れがついていました。 
イノシシが林道で泥浴び(ヌタ打ち)した後に体を擦り付けに来るのではないかと期待して、監視カメラで見張っています。 
すると、野ネズミ(ノネズミ)が夜な夜な現れて、雑木林の林床で餌を探し回っていました。 

シーン0:9/12・午後16:09・ 
フルカラーで昼間に撮った現場の状況です。 


シーン1:9/12・午後19:19 (@0:04〜) 
カラマツ大木の右上の斜面に白く光る小さな目が動いていました。 
よく見ると、野ネズミが斜面をチョロチョロと右往左往しています。 


シーン2:9/14・午前00:50・ (@0:22〜) 
今度は左下の斜面で活動していました。 
シシガシラというシダ植物が生い茂る林床を登ると、一旦左に消えました。
しばらくすると再び戻ってきました。 


シーン3:9/15・午後22:44・ (@1:06〜) 
カメラが起動すると、画面中央(やや左寄り)の林床で野ネズミが立ち竦んでいました。 
警戒を解くと左下に向かって駆け下りて画面の外に消えてから、すぐに戻ってきて右へ走り去りました。 


シーン4:9/16・午後21:18・ (@1:25〜) 
画面の中央から現れ、カラマツの根本(手前)を右へ通り過ぎました。 


※ 動画編集時に自動色調補正を施して明るく加工しています。 

画面の中央下に生えている下草というか幼樹の葉がカメラの赤外線を至近距離で反射して白く光り、邪魔ですね。 
次回は取り除くことにします。 

画面左の斜面に野ネズミの巣穴があることが後々分かってきます。 




クルマバナの花蜜を吸うウラギンスジヒョウモン♂

 

2022年7月中旬・午前11:30頃・晴れ

休耕田に咲いたクルマバナの群落でウラギンスジヒョウモン♂(Argyronome laodice japonica)が訪花していました。 
翅を開閉しながら口吻を伸ばして吸蜜しています。

2023/03/02

スズメバチが飛来しても怯まずに払い除ける樹上のニホンザル

 


2022年9月中旬・午前11:15頃・くもり 

林道脇でコナラの二又になった部分の枝に腰掛けた若いニホンザルMacaca fuscata fuscata)が体を手でボリボリ掻きながら、咀嚼したノブドウ果実の残渣を吐き出しています。 
そこへ左からスズメバチのワーカー♀が飛来しました。 
樹上にスズメバチの巣があって猿を攻撃しに来たという訳ではありません。
猿が食べていたノブドウ果実の糖度は、スズメバチを誘引するほど高いはずがありません。 
コナラの枝から甘い樹液が少し滲んでいたのかもしれません。 
(私の鼻では樹液の発酵臭は嗅ぎ取れませんでした。)
1/5倍速のスローモーションでリプレイしても(@1:03〜)、スズメバチの種類をしっかり見分けられませんでした。 
ニホンザルはスズメバチを恐れる素振りもなく、無邪気に右手を軽く振って追い払いました。
 咄嗟に蜂を手掴みしようとしたのかもしれません。 
これは我々ヒトがスズメバチと遭遇した際に絶対やってはいけないことです。 
飛んでいるスズメバチが顔に向かってこられるとどうしても反射的に腕を振り回したくなるのですが、特にスズメバチの巣の近くでこれをやると蜂を一層怒らせることになります。
怒った蜂は警戒フェロモンを放出して仲間を呼び寄せることになって致命的です。 
野外でスズメバチと出会ったときの対処法は、鉄の意志で身を固くして動きを止めて(フリーズ)スズメバチをやり過ごすか、ゆっくり後退するしかありません。
話が少し逸れましたが、毒針をもつ有剣類の蜂がせっかく黄色と黒の縞模様(警告色)でミューラー型擬態しているのに、ニホンザルには恐怖を抱かせる効果があまりなかったことになります。 
このニホンザル個体はスズメバチの怖さを未だ学習してない(刺されて痛い目にあった経験がない)のでしょう。
しかし、スロー再生すると一瞬だけ歯を剥き出したのは軽い恐怖の現れなのかな? 



その後、ニホンザルは手に持っていた何か黒い謎の塊を口に運びました。 
手前の枝が邪魔で採食メニューの正体を見極めることができません。 
なんとなく、樹皮から剥ぎ取ったキノコを食べたような気がするのですけど、どうでしょうか? 
オニグルミの腐りかけた果実のようにも見えますが、堅果の回りの黒ずんだ果皮はタンニンが渋くてとても食べられないはずです。 
口を使ってオニグルミの果皮を剥いだところで、硬い殻を割って食べる方法を猿は知っているのでしょうか? 
賢いカラスは高いところから硬い路面に繰り返し落としてその衝撃でクルミの殻を割り、中身を食べます。 
ニホンザルは硬い石や枝をハンマーのように打ち付けてクルミを叩き割るしかないはずですが、私は未だ彼らの道具使用を実際に見たことがありません。 
このニホンザルは若い個体ですから好奇心が旺盛で、採食中に遊び半分でクルミの実を弄んでいただけかもしれません。
ちなみに、猿が登っていたコナラの枝には未熟なドングリが大量に実っていました。 

最後はおまけの映像です。
(おそらく)同一個体が木から木へ渡り歩いたり、しつこく撮影する私に嫌気が差して木から地上に下りて走り去るところまで見届けました。

タヌキの溜め糞を崩し、後ろ向きに転がして巣穴に運ぶセンチコガネ

 

2022年9月中旬・午後12:00頃・晴れ・気温33℃ 

溜め糞場sを長期監視するトレイルカメラの電池を交換するために、里山のスギ林道にやって来ました。 
枯れたスギ落ち葉および落枝の上に、水気の多い緩い軟便がこんもりと残されていました。 
監視カメラの映像をその場でチェックすると、この位置に排便したのはアナグマではなくホンドタヌキNyctereutes viverrinus)と判明。 

タヌキの糞塊で1匹のセンチコガネPhelotrupes laevistriatus)がせっせと働いていました。 
頭楯の前縁が半円形なので、オオセンチコガネではなくセンチコガネと見分けられます。 
柔らかい糞塊をほぐして小さな塊に切り分けると、前脚で糞玉を手前に掻き寄せるように転がしながら後ろ向きに(後ずさり)運んでいました。 
どうやら糞塊のすぐ横のスギ落ち葉の下にセンチコガネの巣穴があるようです。 
しばらく待つと、センチコガネが再び巣口から顔を出し、次の糞玉を採取しに向かいます。
糞塊上で奮闘しているセンチコガネが腹面を向けてくれました。 
腹面は鈍い青緑色の金属光沢があります(構造色)。 
この搬入(糞ころがし)を何度も繰り返す結果、タヌキの溜め糞は次第に地中へ埋められて食べ尽くされてしまいます。
 
関連記事(2ヶ月前の撮影@同地点)▶ タヌキの溜め糞場から糞の欠片を後ろ向きに転がして運ぶオオセンチコガネ

ハエ類は緑と青のキンバエ(種名不詳)やオオマダラヒロクチバエ、キバネクロバエ?の他、メタリックに輝く微小のハエも溜め糞場に来て、獣糞を舐めていました。(吸汁) 
♀のハエは溜め糞に卵を産み付けるはずですが、ハエの産卵シーンは未だ見たことがありません。 

アカバトガリオオズハネカクシ(旧名アカバハネカクシPlatydracus brevicornis)およびサビハネカクシOntholestes gracilis)が糞塊を徘徊し、ハエなどの獲物を狩るチャンスを虎視眈々と狙っています(獲物を待ち伏せ)。 
アカバトガリオオズハネカクシがミドリキンバエ?の狩りに失敗した直後にセンチコガネの後を追って巣穴に侵入することもありました。 
しかし肉食性のハネカクシも硬い甲冑で身を守る糞虫には歯が立たないはずです。 
まさかセンチコガネの卵や幼虫を捕食するのかな? 
いつかファイバースコープを使って、センチコガネの巣内を観察してみたいものです。 (巣穴に差し込んでも先端のレンズがすぐに汚れてしまって撮影は無理なのかな?)

ムネアカオオアリ♀やもっと微小なアカアリ(種名不詳)も溜め糞場sに来ていました。 

タヌキの溜め糞には多種多様な虫が訪れ、複雑な食物連鎖の生態系が成立していることがよく分かります。 

2023/03/01

シロハラ?親鳥に巣外給餌してもらう幼鳥の餌乞いは鳴き声も行動も独特【野鳥:トレイルカメラ】

 

2022年9月中旬・午前 

里山のスギ林道にある溜め糞場sを監視する自動センサーカメラに2日連続で鳥の親子が写っていました。 


シーン1:9/15・午前11:03・気温23℃・晴れ 
カメラが起動したときには、2羽の地味な鳥が林道上に降り立っていました。 
これはシロハラTurdus pallidus)ですかね? 
自信がないので、もし間違っていたらご指摘ください。(※追記参照) 
1羽がスギの落ち葉が敷き詰められた林道をピョンピョン跳んでスギ大木の根元に素早く移動すると、苔むした幹から何か虫を捕食しました。 
そして後ろで待っていた個体に、口移しで給餌しました。 
どうやら親鳥から幼鳥への巣外給餌のようです。 
 ♀♂つがい間の求愛給餌という可能性もありますが、「シロハラの求愛給餌」でネット検索しても過去の報告が何もヒットしませんでした。 
親鳥が次の獲物を探しに行った間、幼鳥は見様見真似でスギの苔むした幹を啄みました。 
自力で餌を取る練習をしているようです。 

シロハラ幼鳥への給餌だとすると、色々と気になる点があります。
まず、他の種類ではよく見られるような、幼鳥が翼を半開きにして震わせる餌乞い行動をしませんでした。 
また、空腹の幼鳥が餌を催促する騒々しい鳴き声♪も聞き取れませんでした。 
親鳥が虫取りしている間、幼鳥は近くでおとなしく待っているだけのように初めは見えました。 

映像を何度も見直すと、まるで鈴虫など直翅目のような澄んだ鳴き声が何度も繰り返し聞こえることに気づきました。 
謎の鳴き声を文字で表すのは難しいのですが、高音のジュリリリ…♪を早口にしたような澄んだ声です。 
こんな鳴き方をする鳥を私は知りません。 
映像を何度も見返すと、幼鳥が嘴を開けたときにこの謎の鳴き声が聞こえました。 
ということは、幼鳥が親鳥に対して餌乞いするために発している鳴き声ということになります。 
ただし、リップシンクロが毎回一致するとは限らず、画面の外で別個体が鳴いているのか、あるいは腹話術のように嘴をあまり開かなくても発音できるようです。 
さえずりや地鳴きなど鳥の鳴き声をまとめた図鑑で調べても、シロハラ幼鳥の餌乞いの鳴き声について情報は何も得られませんでした。


シーン2:9/16・午前5:54(日の出時刻は午前5.18)・気温17℃ (@1:00〜)
翌日には早朝にまた現れました。 
前日と同じシロハラの親子なのかな? 
画面中央の林道上(タヌキの溜め糞の少し右)で親鳥が虫を捕らえました。 
親鳥の後ろから幼鳥がピョンピョン跳ぶように(ホッピング)追いかけて来ました。 
親鳥は一旦タヌキの溜め糞場を通り過ぎました。 
シロハラ親鳥は振り返ってから幼鳥の元に駆け寄り、口移しで巣外給餌しました。 
画角の外に消えた親鳥の後を追って、シロハラ幼鳥も手前の死角へ移動しました。 

今回もシロハラの幼鳥は典型的な餌乞い行動をやりませんでした。
幼鳥の嘴の動きをよく見ると、親鳥を呼び寄せるために小声で一声鳴いたようです。 
前日に聞いたのと同じ、虫の音っぽい鳴き方♪でした。 
幼鳥が森の中で天敵(捕食者)に襲われないように、このように進化したのだと予想できます。
こういう場合、鳥が鳴き声を虫に似せている(音声擬態の一種)、と言って良いのでしょうか?
シロハラは巣立ち前の雛鳥も独特な餌乞いをするのかどうか、知りたいところです。
鳥の餌乞い行動の比較行動進化学も面白そうです。

シロハラの採餌行動と言えば嘴で落ち葉をめくって虫を探す行動が有名ですが、そんな苦労をしなくても虫を捕食していました。
溜め糞に群がる糞虫などを直接狙って効率よく捕食すれば良いと思うのですが、糞虫は糞塊の下に潜り込んで身を隠していたのかもしれません。 
それとも不潔な糞虫は不味くてシロハラは嫌いなのかな?

余談ですが、最後に黒っぽい謎の鳥が素早く飛んで画面を右上から左下へ横切りました。 
スロー再生しても、黒い鳥の正体は不明です。
このとき缶ジュースのプルタブを開けるような音が聞こえました。 
その前には、電子機器のボタンを押したときの効果音のようなノイズが聞こえました。
これも鳥の物真似だとしたら、非常に気になります!
山奥なのにこういう人工的な鳴き真似をするのはカケスかな?
まさかトレイルカメラの近くに誰か登山客が来ていたのか?と疑いたくなります。

 ※ 謎の鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げつつ、トレイルカメラ自体が発する内部ノイズを除去しました。



※【追記】
冬鳥のシロハラを9月に見たのはちょっと変(早過ぎ)ですね。
夏の東北地方で繁殖したことになってしまいます。
やはり誤同定かも?
虫のように鳴く鳥と言えば、夏鳥のヤブサメ♂がシシシシ…♪とさえずるのを思い出しました。

モンスズメバチのワーカー♀が巣穴を掘る間に外出を繰り返す創設女王の謎

 



2022年6月中旬・午後13:45〜14:00頃・晴れ 

芝生に覆われた河川敷でブタナの根際に掘られたモンスズメバチVespa crabro)の巣穴を観察していると、謎の黒い甲虫(種名不詳)が巣口の周辺を徘徊していました。 
もしや鬼の居ぬ間に巣内に侵入して寄生または居候するのか?と期待して見守ります。
関連記事(8年前の撮影)▶ 巣に侵入するナミクシヒゲハネカクシ?を殺すモンスズメバチ♀門衛
しかしモンスズメバチ♀が外出から戻ってくると、謎の甲虫は巣穴には入らず慌てて逃げて行きました。 
帰巣した蜂が怪しい侵入者を追い払ったり排除したりするまでもありませんでした。 
謎の甲虫をその場で狩って獲物とすることもありませんでした。 
思わせぶりで怪しげな行動でしたが、ただの無害な(モンスズメバチの暮らしとは無関係な)甲虫がたまたま巣口の横を通りかかっただけかもしれません。 



さて、このとき空荷で帰巣した♀の胸背の小楯板が(花粉で?)白く汚れていることに注目してください。 
人為的にマーキング(標識)しなくても個体識別できそうです。 

その後も謎の黒い甲虫が2匹、巣口付近の地上を徘徊しています。 
(この甲虫の名前が分かる方がいらっしゃいましたら、教えてください。) 
巣口の直下のトンネル内で1匹のモンスズメバチ♀が門衛として警戒しているせいか、謎の甲虫が巣内に侵入することはありませんでした。 

しばらくすると、大型の♀が巣口から地上に這い出て来ました。 
胸背に付着した白い花粉(?)の汚れから、先ほど帰巣した同一個体と分かりました。 
続けて別個体のワーカー♀が掘った土塊を搬出するために巣穴から外に出てきました。 
地上で2匹のモンスズメバチ♀が並ぶと明らかな体格差があり、創設女王と小型のワーカー♀と判明しました。 

地上に出てきた巨大な創設女王は、巣口の周辺を少しうろついただけで巣穴に戻りました。 
巣口を守り、出入りするワーカー♀を誰何する門衛は女王蜂の役目なのでしょうか? (ここまでは想定内)
営巣地の地表をうろつく怪しい謎の甲虫の足音が気になって、女王蜂が直々に様子を見に地上に出てきたのかな? 
あるいは、横で撮影している私の足音に警戒しているのでしょうか? 

15分後にも再び創設女王が地上に現れました。 
胸背(小楯板)が白く汚れている大型の♀個体です。 
今回も飛び去らずに巣口の周囲で安全確認(?)しただけで、後退して巣内に戻りました。 
飛び立つかどうか巣口で逡巡しているようにも見えます。 

すぐにまた巣穴から女王蜂が這い出てくると、遂に草葉の上から飛び立ちました。(@2:30〜) 
重低音の羽音♪がかすかに聞こえます。 
女王陛下の飛び立つ瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@2:37〜) 
出巣直後に定位飛行(ホバリングしながら扇状に飛んで営巣地周囲の景色を記憶する)をしなかったということは、何度も外出していて巣穴の正確な位置を学習済みなのでしょう。 

同じ日の午前中に撮影した映像を見直しても、創設女王は写っていませんでした。
ワーカー♀と異なり、女王蜂が巣内で掘った土砂を自ら外に捨てに行くことは一度もありませんでした。

スズメバチの創設女王は単独営巣期を無事に乗り越えてワーカー♀が羽化すると、自ら危険を冒す必要はなくなります。 
危険な外役や雑用をワーカー♀に任せて創設女王は巣内で産卵に専念するのだとばかり私は思い込んでいました。 
まさか営巣中期(コロニー拡張期)になっても外出するお転婆な創設女王がいるとは知らず、とても驚きました。
映像の冒頭を振り返ると、創設女王の帰巣シーンが撮れていたことになります。 
女王蜂はどうして外出を繰り返すのでしょう?  
おそらく空腹に耐えかねた女王が自分で樹液や花蜜を吸って栄養補給するのでしょう。 
本来ならば帰巣したワーカー♀が口移しで女王に栄養交換するはずですけど、この日は巣穴の拡張工事を優先して誰も女王様に給餌しなかったようです。 
育房内の幼虫からも成虫に口移しで栄養交換するはずですが、多数の成虫を養うには幼虫の数が未だ足りないのかもしれません。
営巣地周辺の河川敷にはブタナの黄色い花が咲き乱れていますが、近場のブタナで訪花吸蜜するモンスズメバチ♀を見ることはありませんでした。 
もしかして、他のコロニーでも創設女王を個体標識してじっくり調べてみると定説とは異なり、営巣中期〜後期でも女王の外出行動は別に珍しくないのかもしれません。 
もしも外出中の創設女王の身に何かあって死んでしまうと、残されたコロニーは衰退するしかありません。
創設女王の権勢が衰えたり不在になったりすると、巣内のワーカー♀が未受精卵を産んで次世代の雄蜂♂を残すことが知られています。
それから、営巣後期に多数の新女王が巣から飛び去るのは珍しくありません。(結婚飛行)
これはあくまでも営巣中期の話だからこそ珍しいのです。

地中に営巣したモンスズメバチのコロニーを見るのは初めてなので、今後も定点観察に通うことにします。 
梅雨の大雨で巣穴に浸水しないのかな?という素朴な疑問が湧いてきます。 
雨が降り出したらアリのように巣口を塞ぐのでしょうか? 
モンスズメバチと言えば夜行性の活動も撮影したいところです。 
河川敷を定期的に草刈りする作業員がモンスズメバチの巣穴を見つけて駆除してしまうのは時間の問題なので、その前に頑張って撮影しないといけません。 



【追記】
創設女王が外出を繰り返す理由として、全く別の可能性も考えられます。
モンスズメバチはコロニーが繁栄して初期巣が手狭になると、新たな営巣地に引っ越しすることが知られています。
引っ越しに関連して女王蜂がそわそわしていたのかもしれません。(新しい二次巣を下見しに飛び去った?)
しかし多数のワーカー♀が巣穴の拡張作業に従事していたことから、少なくともここが引っ越し前の一次巣とは考えにくいです。
最後に外出した女王蜂が帰巣するまで見届けるべきでしたね。

2023/02/28

渓流沿いの土手で下草を食べるニホンカモシカの母子

 

2022年9月中旬・午後15:10頃・くもり 

里山の渓流沿いの土手でニホンカモシカ♀(Capricornis crispus)を見つけました。
野草の生い茂った土手に佇み、正面から私を見据えています。 
途中から横向きにもなりました。 
カモシカの眼球は顔の横に付いているため、正面からよりも真横から横目で見た方がしっかり見えるのでしょう。 
口をモグモグと動かしているので(草を咀嚼)、どうやら採食中だったようです。 
カモシカは近視で私の姿がよく見えないらしく、頻りに鼻を上げて風の匂いを嗅いでいます。 
湿った鼻孔がヒクヒクと開閉していて、風上に立つ私の体臭を嗅ぎ取ったはずです。 
耳介の向きを変えて辺りの物音を油断なく聞きとっています。 
たとえ視覚が弱くてもカモシカは嗅覚と聴覚で警戒を怠りません。 
顔を激しく振ったのは、顔にたかる虫を追い払ったのでしょう。 
(私に対する苛立ちからの転移行動かも?) 

ようやく警戒を解くと、採食を再開してくれました。 
頭を下げて下草を採食するので、首から胸元にかけての毛皮に「ひっつき虫」が大量に付着しています。 
林道や土手の草地にはイヌタデ、キンミズヒキ、ツリフネソウなどの花が咲いている他、オニグルミの幼木なども生えていました。 
残念ながらカモシカ♀の採食メニューの詳細(植物種)まではしっかり観察できませんでした。 
カモシカ♀はイネ科の単子葉植物ではなく、広葉の草をむしゃむしゃと食べています。 
あまり植物種の選り好みをしているようには見えません。 

何か気配を感じた私がカメラを少し左に振ると、いつの間にかカモシカの幼獣も傍に来ていました。 
このとき初めて、撮影していたカモシカ成獣が母親♀なのだと分かりました。 (外性器は見えませんでした。)
草深い林道上で母子が向かい合って採食しています。 

しばらくすると幼獣も顔を上げて、私の存在に気づいたようです。 
見知らぬヒトとの遭遇で不安になったのか、幼獣は歩いて母親に近づき、顔を寄せました。 
母親の匂いを嗅ぐと安心するようです。 
幼獣に角は未だ生えておらず、頭部から1対の突起が生えかけているだけです。 

遂に母親♀は採食を止めて移動し始めました。 
土手を登ると林道をゆっくり横断し、左の山に帰って行きました。 
幼獣も母親の後を追います。 

この間、母親のニホンカモシカ♀は私に対して鼻息を荒げた威嚇♪を全くしてきませんでした。 
顔馴染みの私に対してある程度は信頼してくれているとしたら、嬉しいことです。 
鼻息威嚇は♂だけの行動なのかな?(要確認)

関連記事(同日に別地点で撮影)▶ ニホンカモシカは野山で有毒植物のトリカブトを味見するか?

カモシカが毒草を食べないのは先天的な本能で忌避するのか、味見して学習するのか、親から教えてもらうのか、という問題が最近気になっています。 
ニホンカモシカ母子の採食行動を観察したのは今回が初めてです。 
これを見る限り、母親は子供に食草をいちいち教えたりしていませんでした。 
ただし、「教育期間はもう終わっている(修了)」とか「今回の現場に有毒植物は生えていなかったので指導する必要がなかった」と言われたら、そうかもしれません。 
カモシカの幼獣は母親と行動を共にして母親が採食する様子を離乳前から見ていますから、見様見真似で自ずと食べられる植物と食べてはいけない有毒植物を学習するのでしょう。

ハネフリバエ科Euxesta属の一種がタヌキの糞を舐める様子を接写してみる

 

2022年9月中旬・午後13:35頃・晴れ 

里山の尾根道にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が残した溜め糞場cに様々なハエが多数群がっています。
その中でハネフリバエ科Euxesta属の一種(Euxesta sp.)に注目してマクロレンズで接写してみました。 
小さいながらも綺麗なハエで、緑色の金属光沢が直射日光を浴びて美しく輝いています。 
一緒に居たキンバエ類の鮮やかなメタリックグリーンとはまた違う、ちょっとくすんだ渋いメタリックグリーン(緑がかった金色?)です。 
最近名前を知ったばかりのちょっとレアなハエなので、ここにも来ていたか!という嬉しさがあります。 
まさに知る人ぞ知る「掃き溜めに鶴」。 

冒頭でEuxestaの足元の糞塊がモコモコと大きく上下したのは、おそらく糞虫がその下で活動しているためでしょう。

Euxestaには透明な翅に黒い縁紋が2つあり、それを誇示するように左右の翅を絶えず開閉しています。 
口吻を伸縮させて獣糞から吸汁している間も、身繕いする間も、ひたすら翅紋誇示を続けています。 
左右の翅を同時に動かしたり別々に動かしたり、素人目には不規則な動きに見えます。 
Euxestaは「手旗信号」で一体どんなメッセージを誰に対して発しているのか、解読したくなります。 
普通に考えれば、求愛か威嚇のディスプレイ(誇示行動)でしょう。 
千客万来で繁盛している「うんちレストラン」で隣客(キンバエ類やオオマダラヒロクチバエ、ニクバエ類など)が図々しく割り込んできたりして距離が近くなり過ぎると、Euxestaは翅開閉の頻度を上げるようです。 
激しく翅紋を誇示して牽制したところで、結局は体の大きなハエに遠慮して場所を譲ってしまいます。 
次に機会があれば、Euxesta同種間で交流しているときの翅紋誇示をじっくり観察してみたいところです。 

快晴の尾根道は自然光の光量が強く、マクロレンズを装着した接写には絶好のコンディションでした。 
ちなみに前回はやや日陰での接写でした。

2023/02/27

スギ林道を跳んで横切る夏毛のニホンノウサギ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2022年9月中旬・午前3:10頃・気温17℃ 

杉山林に設置した自動センサーカメラに夏毛のニホンノウサギLepus brachyurus angustidens)が写りました。 
実はこの地点でノウサギが撮れたのはかなり久しぶり(半年ぶり)です。
前回の記事:3月下旬 ▶ スギ山林の雪道を嗅ぎ回る冬毛のニホンノウサギ【暗視映像:トレイルカメラ】
画面の下に立ち止まっていたノウサギが林道を手前に横切り、画角の外へ消えました。 
短い跳躍移動を1/4倍速のスローモーションでリプレイ。 
林道脇の法面を登って行ったのかもしれません。 
トレイルカメラが起動する前も、おそらく画面奥の斜面を登って来たのでしょう。

赤外線の暗視カメラはモノクロの映像になりますが、それでもノウサギの夏毛と冬毛の違いは歴然としています。 
冬毛に変わると暗視映像でも本当に純白に写ります。 



モクゲンジの花蜜を吸うオオチャバネセセリ

 

2022年7月中旬・午後15:55頃・くもり 

民家の裏庭に植栽されたモクゲンジオオチャバネセセリZinaida pellucida)が訪花していました。 
いつものように、翅を閉じたまま吸蜜しています。 
性別は? 

2023/02/26

スギ林道でクルミの実を運ぶニホンリス【トレイルカメラ】

 



2022年9月中旬・午前

里山のスギ林道に設置した監視カメラに写ったニホンリスSciurus lis)の記録です。 
秋の晴れた午前中に活動していました。 
リスは林道上を駆け回ってもタヌキとアナグマの溜め糞場sには興味を示さず、ひたすら己の採餌行動に励んでいるようです。 


シーン1:9/15・午前10:25・気温22℃・晴れ 
林道の左から右にピョンピョン跳びはねるように走り去りました。 


シーン2:9/15・午前10:29・気温23℃ (@0:11〜) 
5分後にリスが再び現れ、画面左下隅を右下方向に走り去りました。 


シーン3:9/18・午前7:20・気温22℃・晴れ (@0:21〜) 
3日後の朝にもリスが登場しました。 
林道を横断して手前に駆け抜けました。 
1/3倍速のスローモーションでリプレイしてみると、口に何か黒っぽくて丸い物体を咥えていました。(@1:08〜1:14) 
どうやら近くに自生するオニグルミの大木から果実(堅果)を運搬している途中だったようです。 

リスがクルミを運ぶシーンがトレイルカメラに写ったのは、これで2回目です。
関連記事(3週間前に別の地点で撮影)▶ 夏の朝にクルミの実を運ぶニホンリス【トレイルカメラ】


シーン4:9/18・午前7:23・気温23℃ (@0:27〜) 
2分後にリスが再登場。 
画面の右端で、リスがスギの落ち葉の下に顔をつっこんでから、すぐに右へ走り去りました。 
スギ林の林床でリスが餌を探すとは考えにくいです。 
後ろ姿でよく分かりませんが、まさか先程運んでいたクルミをスギ落ち葉の下に隠した(貯食)のかな? 

女王と一緒に引越しするクロオオアリ♀の群れ

 

2022年9月中旬・午後13:15頃・くもり 

里山の尾根道でクロオオアリCamponotus japonicus)の行列を見つけました。 
クロオオアリは地中営巣性で、この尾根道にも巣穴があるのを昔観察しています。 

関連記事(9年前の撮影)▶
  
行列の中に巨大な女王アリが1匹混じっていたので、コロニーごと新しい巣へ引っ越し中なのだと気づきました。 
周りの働きアリ(ワーカー♀)は女王の護衛と思われますが、特に大型の兵アリ(ソルジャー♀)ではなさそうです。
女王アリも自分の足で歩いていますが、護衛から離れて行列の端を歩きたがるので、見ていてハラハラします。 

クロオオアリの引っ越しは初見です。
秋に引っ越しする(ことがある)とは知りませんでした。
クロオオアリの生活史でコロニーがミツバチのように分蜂(巣別れ)するという話は聞いたことがないので、何か不慮の災害で引っ越しを余儀なくされたのではないかと思います。 
前日の雨で巣内に浸水したのか?と疑ったものの、尾根道の地面は乾いていました。 
観察時は曇り空で、蒸し暑い午後でした。 
クマなどアリを食べる捕食者に巣を壊されたのかな?

引っ越しにしては、白い卵や幼虫、繭などを大顎で咥えて運ぶワーカー♀個体が見当たりません。 
若い成虫を口に咥えて運ぶ様子(adult transport)が冒頭でちらっと写ったのに(@0:00〜0:05)、撮影中は気が急いて(後述)見落としていました。 
好蟻性昆虫(アリの巣の居候)も一緒に引っ越しするはずですが、短い観察では見つけられませんでした。 
千載一遇の機会なのに、女王アリが新しい巣に辿り着くまでじっくり見届けることができませんでした。 
私の背後から遠足に来た小学生の集団が賑やかに近づいてくる声がしました。
細い尾根道に私が居座っていると通行の妨げになりますし、観察を諦めて泣く泣く現場を離れました。
女王アリごと一網打尽に採集すれば、コロニー全体を飼育できたかもしれません。 


クロオオアリの生活史をまとめた集英社カラーサイエンス (4)『クロオオアリ』という本を見返しても、引っ越しについては書いてませんでした。
「クロオオアリの引っ越し」でネット検索してみると、千葉県立中央博物館サイト内の記事がヒットしました。
「2009/05/08(金)」と記してある日付が記事の公開日なのか観察日なのか、重要なので明記して欲しいです。
校庭を歩いていたら、クロオオアリが巣を引っ越ししていた。巣と巣の間は約8m。(中略)アリ達をよくみたら、写真のようにアリをくわえて運んでいるものが結構いることに気がついた。これがアダルトトランスポートだ。くわえられたアリはおとなしく体を曲げて、巣口近くか巣へ入るまで、運んでくれているアリに身を任せていた。

アリ屋のトップランナー、大御所である「ありんこ日記 AntRoom」ブログの記事もヒットしました。
これは飼育下での観察記録です。
女王アリは大きくて持ち上げることはできないので、このようにアゴを咥えて引っ張ります。
しばらく引っ張られると、引っ越しが始まったことを知り、女王アリは自ら歩いて新居へ向かうのです。
 
左端に見切れているのは私の長靴の爪先

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