2022/11/12

隻眼のハクビシンは川の洪水を生き延びたか?【トレイルカメラ:暗視映像】

前回の記事:▶ 仲間を待つ間に夜の獣道で毛繕いするハクビシン【トレイルカメラ:暗視映像】

2022年8月上旬 

トレイルカメラで川沿いの獣道を監視していると、集中豪雨による川の増水前後に常連のハクビシン(白鼻芯、白鼻心;Paguma larvata)が登場しました。 

シーン1:8/3・午前3:47 
2頭のハクビシンが相次いで左から(上流から)歩いて来ました。 
おそらく♀♂つがいだろうと想像しているのですが、私には性別を外見で見分けられません。 

右目が潰れている(失明した)隻眼の個体は、いつものように健常個体のパートナーに先導してもらっています。 
立ち止まってコンクリート護岸に生えた下草の匂いを嗅いでから右へ(下流へ)立ち去りました。 

ハクビシンの家族群は少なくとももう1頭いたはずです。 
子別れした後なのかな? 

その日の晩から激しい大雨が降り続き、川の水位が急上昇しました。 
増水した川の水がコンクリート護岸を越えて河川敷へと氾濫する前に、水位が下がり始めました。 


シーン2:8/6・午後21:30頃 
川の増水がすっかり引いた3日後、ハクビシンが右から(下流から)通りかかりました。 
両目が白く光っている健常個体です。 
そのまま左へ(上流へ)立ち去ったと思いきや、ハクビシンはすぐに獣道を引き返してきました。 
左から右へ(上流から下流へ)カメラの前を一気に駆け抜けました。

顔見知りのハクビシンが水害(洪水)を無事に乗り切ったのは喜ばしいことですが、片目というハンディキャップを持つパートナーがカメラに写らなかったのは気がかりです。
両眼視ができないと距離感が掴めませんから、不測の事態で何か障害物を咄嗟に飛び越えないといけないときや木登りなどに支障が出るはずです。
(隻眼の個体が珍しく先に通過してトレイルカメラが撮り損ねた可能性もなくはありませんが…。) 
その後、都合によりトレイルカメラをこの調査地点から撤去してしまったので、隻眼ハクビシンの安否は不明のままです。

 

タヌキの溜め糞場に浅いトンネルを掘って隠密行動するオオセンチコガネ【10倍速映像】

 

2022年7月下旬・午後14:30〜15:05頃・
前回の記事:▶  
タヌキの溜め糞場から糞の欠片を後ろ向きに転がして運ぶオオセンチコガネ 
トレイルカメラが捉えたオオセンチコガネの糞転がし行動【5倍速映像】

ホンドタヌキNyctereutes viverrinus)とニホンアナグマMeles anakuma)が共有している溜め糞場sをトレイルカメラで監視しています。 
カメラの電池を交換するために現場入りすると、タヌキの糞が残されていました。 
黒い泥状の下痢便が乾きかけています。 

ピンク(赤紫)の金属光沢に輝くオオセンチコガネPhelotrupes (Chromogeotrupes) auratus auratus)が1匹だけ溜め糞場sで活動していました。 
私が近づくとノソノソ歩いてスギ落葉の下に潜り込み、隠れてしまいました。 
スギ落ち葉の下におそらくオオセンチコガネの巣があるのでしょう。 
その後、地表には現れませんでした。 
どうやら見に来る時間帯が遅過ぎたようです。 
他にはニクバエの仲間やメタリックグリーンのキンバエの仲間が糞塊に集まっています。 

スギ林の薄暗い林床でときどき溜め糞がモコモコと上下動するので、糞虫が地中で活動していることは間違いありません。 
私がトレイルカメラの電池交換をしている間に、溜め糞の横に三脚を立てて微速度撮影してみました。 
10倍速の早回し映像をご覧ください(@0:24〜)。 

溜め糞から飛び去ったイチモンジチョウが戻って来ることを期待したのですが、予想は外れ、長撮りしても戻りませんでした。
▼関連記事(同所同日に撮影) ホンドタヌキの溜め糞から吸汁するイチモンジチョウ
ハエ類が集まりタヌキの糞を舐めているだけかと思いきや、タイムラプス映像を見直すと意外に面白い活動が繰り広げられていました。 
画面の奥(上)にあるスギ落葉の下から赤紫のオオセンチコガネが地表直下の浅いトンネルを掘り進めて糞塊の下に忍び寄り、地表に姿を現しました。 
スギ落葉の下を徘徊してから、糞の下に潜り込みました。 
糞塊の右上など他の場所でも地面がモコモコと動いているのは、別個体の糞虫がトンネル内で活動しているのでしょう。 
リアルタイムの観察では気付けなかった(見落としていた)現象です。 
通りすがりに溜め糞を一瞥しただけでオオセンチコガネが居ないと判断するのは軽率なのだと分かりました。
溜め糞をほじくって真面目に糞虫を探す必要があるのですが、今季の私は動画撮影を優先することに決めているので、現場を乱したくありません。

昼間のオオセンチコガネは、野鳥などに捕食されないようにトンネル経由で糞の欠片を自分の巣穴へ運搬しているのかもしれません。 
天敵対策だとすれば、もっと長時間の微速度撮影をしたら、地表に糞虫の姿が見えなくても糞塊は徐々に減る様子が記録されるはずです。 
溜め糞場の近くでウロウロしている私を警戒してオオセンチコガネが地表に出てこないのだとしたら、捕食圧が高いことが予想されます。 
溜め糞場に通う野生動物や野鳥が糞虫を捕食したら面白いのですけど、トレイルカメラにそのような決定的瞬間が写るかどうか、楽しみです。

 舘野鴻『うんこ虫を追え(たくさんのふしぎ2022年6月号)』によると、
オオセンチコガネが活発に活動するのは、春と秋でした。もし春の観察に失敗すると、次の秋まで待たなければなりません。時間はあっという間にすぎていきました。(編集部より)
夏はオオセンチコガネの活動が低調なのでしょうか? 
この本の筆者と私は観察フィールド(地域と植生)がかなり違いますし、調べ方のアプローチも違います。
本に書いてあるオオセンチコガネの習性がどれだけ一般的なのか分かりません。 
実は、この本に書かれた筆者の(暫定的な)結論にちょっと納得できない(私の観察結果とずれている)点がいくつかあるのです。
例えば、この本では傾向としてセンチコガネの生息地が森林性でオオセンチコガネが草原性だと書いています。(棲み分け仮説)
今回私が観察している溜め糞場sは山林にあります。
また、雑食動物であるアナグマやタヌキの糞を与えてもオオセンチコガネは巣内で育児塊を作らなかった、と同書には記されています。(作るのはシカやウシなど草食動物の糞を与えたときだけ。)
私はタヌキの溜め糞でセンチコガネとオオセンチコガネを見つけたものの、アナグマの溜め糞では未だ見つけたことがありません。
私がこれまで夏に観察してきたのは、オオセンチコガネの成虫が獣糞から育児塊を作るためではなく、成虫が自分で獣糞を食べるための貯食活動なのかな?
偉大な先人の観察記録をありがたく参考にさせてもらいますが、結局のところ、自分のフィールドのことは自力で解明するしかありません。 
私は未だ糞虫の観察歴が浅いので、追試するだけで何年もかかりそうです。
オオセンチコガネが巣穴の奥でタヌキの糞を材料として育児塊を作ったかどうか、今季の私は発掘調査で確認できていません。 
本格的に調査するなら、山中でも牧場など糞虫の個体数が多いフィールドを選ぶべきかもしれません。

つづく→

2022/11/11

霧の立ち込める夜も池を飛び回るコウモリの群れ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2022年7月下旬
前回の記事:▶ 日没直後の黄昏時に水場を飛び回り始めたコウモリの群れ【トレイルカメラ:暗視映像】

山中の水場の周囲は湿度が高いので、気温が下がる夜には霧が断続的に発生します。 
冷たい湧き水(地下水)が溜まった池なので、夏は気温と水温の差が大きいのです。
その上空をコウモリが夜な夜な飛び回ります。 
コウモリは有視界飛行ではなく超音波によるエコロケーションですから、霧がかかっていても飛翔には全く支障がないようです。 
トレイルカメラの記録映像の中で、夜霧の中を飛び回るシーンをまとめてみました。 

ときどき夜蛾や蚊も暗い池の上を飛び回っていますが、そうした夜行性の昆虫をコウモリが空中で狩るシーンは一度も捉えたことがありません。 
コウモリが低く飛ぶと池の水面(しかも特定の場所)に一瞬だけ着水して波紋が広がるので、ツバメのように飛びながら水を飲んでいるのか、あるいは素早く体を濡らして水浴しているのだと考えています。 


シーン1:7/26・午後20:00 

シーン2:7/26・午後23:09 (@1:03〜) 
濃い霧が出ると、水面に触れたかどうか映像では見えなくなってしまいます。 

シーン3:7/26・午後23:37 (@1:30〜) 
煙のような濃い霧が風に巻かれています。 

シーン4:7/26・午後23:54 (@1:55〜) 

シーン5:7/27・午前1:03 (@2:03〜) 

シーン6:7/27・午前1:20 (@2:12〜) 
対岸の森から夜蛾が池に飛来し、その後を追うようにコウモリも飛んで来たものの、蛾には目も来れずに水面を掠めるように飛んで飲水しました。 
この夜蛾はコウモリの発する超音波に対してステルス性能を備えているのですかね? 

シーン7:7/27・午前1:57 (@2:43〜) 
霧がほとんど晴れたのですが、此岸付近から煙のように水蒸気が立ち昇っています。 

シーン8:7/27・午前2:07 (@3:17〜) 

シーン9:7/27・午前2:59 (@3:30〜) 

シーン10:7/27・午前3:29 (@3:41〜) 

シーン11:7/27・午前3:39 (@3:51〜) 
同一個体が池の上をグルグルと何周も回っています。 
水を飲むのが目的なら、水場上空に長居するのはなぜでしょう? 
途中から別個体も飛来しました。 
これだけ切り出して見ると、「霧がかかるとエコロケーションが不調になる」ように見えます。 

シーン12:7/29・午後21:50 (@5:19〜) 
風が吹かないと霧が停滞します。 
トレイルカメラの電池が消耗し、数秒間しか撮れていません。

シーン13:7/29・午後23:58 (@5:22〜) 
電池切れで数秒間しか撮れていません。



柳の樹液酒場に集うカナブン♂とコクワガタ♂

 

2022年7月中旬・午後14:05頃・晴れ
前回の記事:▶ 柳の樹液に集まるコクワガタ♂♀、シロテンハナムグリ、コムラサキ♀♂

河畔林の柳(樹種不詳)の樹液酒場へ4週間ぶりに来てみると、新しい顔ぶれが集まっていました。 
枝の小さな窪みの奥にコクワガタ♂(Dorcus rectus rectus)が潜んでいて、穴の外で吸汁しているカナブン♂(Rhomborrhina japonica)を大顎で牽制しています。 
樹液をめぐる激しい縄張り争い(占有行動)というほど激しくはありませんでした。
コクワガタ♂の大顎の長さが微妙に左右非対称(左>右)でゆがんでいるのは生まれつき(軽い奇形)なのでしょう。

カナブン♂の鞘翅は鈍いオレンジ色の構造色をしていて、雨の水滴が付着しています。 
口吻を伸縮させて柳の樹液を舐めています。 
河野修宏『雑木林で虫さがし―はっけんかんさつフィールドノート』p7によると、カナブンは前脚の脛節を見れば性別を見分けられるのだそうです。 
この個体は突起が鋭くないので♂と判明。

ハエ類(種名不詳)も数匹集まっていました。 
しばらくするとコクワガタ♂は体の向きを変え、穴の中(ミニ樹洞)に籠もってしまいました。 
それでも外から姿は丸見えです。 
この樹液酒場にコクワガタ♀が来るのを待ち構えているのでしょう。 
コクワガタ♂の背中にハエが乗ると嫌がり、その身動きでハエは逃げました。 

撮影後に手を伸ばして捕獲を試みると、カナブン♂は逃げてしまいました。 
ありあわせの単3乾電池ケースでコクワガタ♂を捕獲することができしました。 
プラスチックケースのサイズ(63×54mm)と比べれば採寸代わりになります。 
まずは仰向けにして腹面を確認。 
自力で起き上がると脱出し、地面に落ちました。 
舗装路で仰向けになっても自力ですぐに起き上がり、逃走開始。 
私の手に乗せてみても、とにかく元気で、すぐに掌から落ちてしまいます。 
採集したコクワガタ♂を持ち帰って飼育することにします。 

2022/11/10

深夜に氾濫した川の激流に押し流されるカイツブリ【野鳥:トレイルカメラ:暗視映像】

 

2022年8月上旬・午前00:17・大雨
前回の記事:▶ 2022年8月3日〜4日:集中豪雨による最上川上流域の水位変化【100倍速・トレイルカメラ暗視映像】

一時は雨が止んだのに、停滞する線状降水帯によって再び激しい雨が降り始めました。 
増水した川面を小さな水鳥が流されてきました。 
小柄で翼が短いので、たぶんカモ類ではなくカイツブリTachybaptus ruficollis)だと思うのですが、どうでしょうか。
激流に逆らって足の水かきで必死にかいています。 
なんとか上流に戻り、姿を消しました。 
無事に川岸(左岸)へ上陸できたかな? 
カイツブリは昼行性なので、真っ暗闇の水難事故は周囲の状況が見えずにかなり不安だと思います。 
しかしカイツブリは遊泳も潜水も得意な水鳥なので、洪水でも溺れる心配は無用でしょう。 

オオスズメバチ♀が草むらで探餌飛翔

 

2022年7月中旬・午後14:35頃・晴れ 

里山の山腹をトラバースする林道沿いの山側の草むらでオオスズメバチVespa mandarinia japonica)のワーカー♀が飛び回っていました。 
恐ろしげな重低音の羽音♪が辺りに響き渡ります。 
昨年はこの辺りの藪の奥にキイロスズメバチの巣があったので、今回も営巣地が近いのかと思って撮り始めました。 

しかし、どうやら獲物を探索して飛び回っているようです。 
途中で法面の枯れ枝にしがみついたので、樹皮を齧って巣材を集めるのかと期待しましたが、すぐに飛び立ちました。 
オオスズメバチ♀の探餌飛翔を1/5倍速のスローモーションでまずはご覧ください。 
最後に等倍速でリプレイ。(@4:44〜) 
あまりにも忙しなく草むらを飛び回るので、等倍速のまま動画を見ると激しい手ブレで酔いそうになります。 
スローモーションにすれば、それなりに見れる映像になります。 


私がしつこく撮影していたら、最後はオオスズメバチ♀を怒られせてしまいました。 
黒いカメラにまとわりつくように飛んで来る蜂をいなすように、ゆっくり後退して難を逃れました。(映像なし) 
このときオオスズメバチ♀が大顎をカチカチ♪と鳴らす威嚇音は聞き取れなかったので、本気を出してはいないと分かります。 
スズメバチに攻撃されても、絶対に大声を上げたり手で振り払おうと腕を振り回したりしてはいけません。 
夏の野山に行く際には、黒い服は厳禁です。 
黒髪のヒトは必ず帽子や白いタオルなどで頭を覆いましょう。 
匂いのきつい香水やシャンプーなども避けましょう。 
飛びながら空中で毒液を噴射してくることがあり、目に入ると危険なので、目を見開かずに薄目にしておきます。
オオスズメバチ♀と出会っても正しい対処をすれば刺されることはない、と私は確信するに至りました。 
ただし、うっかりオオスズメバチの巣に近づいてしまったときが問題です。
五感を常に働かせて、営巣地の存在をいち早く気付いてその場を離れるしかありません。
関連記事(13年前の撮影)▶ オオスズメバチの巣に御用心(刺傷例)


【おまけのネット記事】 
「アジアの」「殺人」スズメバチに新たな英名、なぜ?:侵略的外来種のオオスズメバチ、米昆虫学会が「北の巨大スズメバチ」を採用(@ナショナルジオグラフィック日本語版)

私がフィールドで観察しているオオスズメバチは日本産の亜種(Vespa mandarinia japonica)なので、 英語に翻訳する際にはJapanese giant hornetと呼び続けます。

個人的には、Japanese giant hornetやAsian giant hornetという英名が日本人(アジア人)に対する差別表現になり得るという認識はありません。
オオスズメバチがあまりにも強くて畏怖の対象だから、内心誇らしい気分があるのでしょう。
外来種の害虫として問題になっているマメコガネがJapanese beetleと呼ばれて忌み嫌われていることの方がむしろ、黄禍論に繋がりかねない英名かなと思います。
攻撃性の強いアフリカ産ミツバチをAfrican killer beeと呼んでいたことに欧米在住の黒人が怒るのは理解できます。
逆に日本語で無自覚に使っている「ナンキンムシ」も南京に対する酷い名前だなと思います。

2022/11/09

前脚も生えてきたオタマジャクシの大群(アズマヒキガエル幼生?)

 

2022年7月下旬・午後15:20頃・くもり
前回の記事:▶ オタマジャクシの群れが池の中で日陰に偏って分布する謎

5日ぶりに山中の水場を訪れると、オタマジャクシを捕食していたアカショウビンの鳴き声はもう周囲の森から聞こえませんでした。 
夏鳥ですから、もう繁殖を終えて南国に渡去したのかもしれません。 
聞こえるのはヒグラシ♂♪の蝉しぐれだけです。 

池の岸辺で蠢く夥しい数の黒いオタマジャクシは健在でした。 
相変わらず日陰の左岸に多いのが不思議です。 
透明ケースで大群の一部を掬って観察しようとすると、気温に対して水温が低いために、プラスチックの表面を拭いても拭いてもすぐに結露してしまいます。 
今回も温度計を持参し忘れて、水温を測定できませんでした。 
観察容器(13.5×3.5×7.0cm)の真上から見下ろすように撮影すれば、オタマジャクシを明瞭に撮れます。 
容器内でも互いに群れる性質があるようです。 

オタマジャクシの変態が進み、一部の個体には後脚だけでなく前脚も生えていました。 
しかし四肢はまだ動かせないようで、長い尻尾を左右にくねらせて泳いでいます。 
これから尻尾が短くなれば変態の完了で、子ガエルとなって上陸するはずです。 
サンプリング調査の後で、オタマジャクシを元の泉に放流しました。 

アズマヒキガエルBufo japonicus formosus)の幼生だと予想しているのですが、どうでしょうか? 

タヌキが排泄したばかりの溜め糞に群がり吸汁する夜蛾【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2022年7月下旬・午後21:08 

里山のホンドタヌキNyctereutes viverrinus)がスギ林道上の溜め糞場sで排便してから約15分後、トレイルカメラがコウモリの飛来に反応して起動しました。
関連記事 ▶ スギ林道を夜な夜な飛び回るコウモリ【トレイルカメラ:暗視映像】
新鮮なタヌキの糞にいつの間にか3頭の夜蛾が集まって吸汁していました。 
蛾は変温動物なので、残念ながら飛来シーンはトレイルカメラに撮れていません。 
糞を舐めてミネラル成分を摂取しているのでしょう。 
赤外線の暗視映像で蛾の複眼が白く光って見えます。 
ときどき翅を羽ばたいて飛び上がるものの、黒々とした糞塊上で少し移動するだけでした。
 

やや遠くてはっきり見えないのですが、翅形から夜蛾ではなくキバネセセリBibasis aqulina chrysaeglia)という蝶と似ている気がします。 
ただし私の知る限り、キバネセセリは昼行性です。 
関連記事(1、14年前の撮影)▶  
タヌキの溜め糞にオシッコをかけて吸い戻しをするキバネセセリ♂ 
獣糞に集まるキバネセセリ
食糞性の謎の蛾を同定するためには夜に現場入りして張り込み、ストロボ写真を撮るしかありませんが、ここは危険なツキノワグマが出没するので無理はできません。
もしも排便しに来たタヌキと夜に鉢合わせして逃げられ、二度と溜め糞場に来なくなってしまったら本末転倒です。
ストロボ写真が撮れるトレイルカメラ(無人監視カメラ)をどこかで売ってるかな?
夜の樹液酒場に集まる蛾や夜の灯火下に集まる蛾については散々調べ尽くされていますけど、夜の溜め糞場に集まる蛾についてはあまり調べられていない気がします。
もし万一、溜め糞に夜行性の蛾が産卵していたら新発見!…と妄想が止まりません。
今回の夜蛾は、アナグマの糞ではなくタヌキの糞を選んで吸汁しているのでしょうか(糞の種類の嗜好性)。

林道の上空を別の夜蛾が何頭も飛び交っているのですが、糞便臭に誘引される動きは示さずに通り過ぎるだけでした。
おそらく蛾の種類が違うのでしょう。 
1時間10分後にトレイルカメラが再び起動した時には、タヌキの溜め糞から夜蛾は居なくなっていました。 
溜め糞場に集まる夜蛾をコウモリが捕食していれば非常に面白いのですけど、そのような証拠映像は撮れていません。

※ 後半だけ動画編集時に自動色調補正を施しています。

2022/11/08

2022年8月3日〜4日:集中豪雨による最上川上流域の水位変化【100倍速・トレイルカメラ暗視映像】

 

2022年8月上旬・大雨
気象庁は3日午後7時15分、山形県に『大雨特別警報』を発表しました。山形県で出されるのは、初めてです。大雨特別警報が出されたのは、米沢市、長井市、南陽市、高畠町、川西町、飯豊町の6つ。
川沿いの獣道を監視するために設置したトレイルカメラ(自動撮影カメラ)の安否を確かめに行くと、奇跡的に水没を免れていました。 
最上川の堤防が決壊した水害地域よりも上流の左岸です。 


トレイルカメラが記録していた動画の総撮影時間は1.5時間。 
インターバル撮影した訳ではなく、激しく動く川面や風で揺れる枝葉などでカメラのセンサーが頻繁に誤作動した結果です。 
大雨・増水時の野生動物の動向が気になるところですが、まずは急激な水位変化が分かりやすいように、100倍速の早回し映像に加工しました。 
もともと夜行性の野生動物を記録するために設置したので、タイマー設定で昼間は撮っていません。 
画面左が上流で、川の水は右に向かって流れています。

カメラを固定していたニセアカシアの木というのが水際に立っていたのです。
以前の増水で根際の土がごっそり流出しており、トンネルのようにえぐれていました。 
地盤がもともと不安定になっていたはずなのに、今回の増水でもニセアカシアの木が倒伏・流失せずに立っていたのには驚きました。 
映像を見ると、川の激流に洗われてもカメラを固定したニセアカシアの木はびくともせずに頼もしく耐えています。 
大風が吹いたら揺れるのに、今回の増水した川の水流では揺れませんでした。 

カメラが浸水しなかったということは、最大水深は150cmに達していないことになります。 
画面の手前から奥に向かって緩やかな上り坂の護岸となっていて、コンクリートのブロックが敷き詰められていました。
その斜面を登った先が河畔林(ニセアカシア、オニグルミ、柳など)と河川敷になっています。
その更に奥には、町を守る本格的な堤防が作られています。
この上流域では幸い、いわゆる河川敷までは冠水せず、堤防も決壊していません。 
停滞する線状降水帯がもたらした8月2日12時から8月3日19時までの降り始めからのアメダス総雨量は140mm(速報値)だったそうです。 
川の水位が下がるのも早く、4日にはすっかり収まっていました。 

次回からは、川辺の生き物が大雨の晩をどう過ごしたのか、トレイルカメラに写った映像をピックアップして紹介していきます。 

つづく→

 

↑【おまけの映像】
早回し加工しないで、素材をただ繋げただけの長編動画(1:29:43)をブログ限定で公開しておきます。
8/3 午前3:47に撮り始めたときには雨が未だ降っていません。
次に撮れた午後20:20には叩きつけるような大雨が降っていて、コンクリートブロック護岸の半分の高さまで川の水面がひたひたと迫っていました。
ゴーッという川の音が恐ろしげに聞こえ、流木が次々に流れて来ます。
護岸を横切る獣道は既に完全に水没しています。
カメラを少し斜め下に向けていたので、レンズに雨がかからずクリアに撮れました。
川の水位がみるみる上昇し、コンクリート護岸の上端から溢れそうになる寸前で低下に転じました。
撮り終わりは8/4 午後19:14。

雄蜂♂が羽化したセグロアシナガバチの巣

 

2022年7月下旬・午後17:10頃・くもり
前回の記事:▶ フタモンアシナガバチの巣を襲い老熟幼虫を捕食するヒメスズメバチ♀

物置小屋の軒下に作られたフタモンアシナガバチの巣がどうなったのか4日後に様子を見に行くと、コロニーは全滅しており、フタモンアシナガバチ創設女王は巣を見捨てて(廃巣)どこかに逃去していました。 

軒下にずらりと並ぶ古巣の間に混じってセグロアシナガバチPolistes jokahamae)のコロニーを見つけました。 
ヒメスズメバチに襲われたフタモンアシナガバチの巣のある区画から右に2つ離れた区画で、前回は見落としていました。 
巣盤の天井部が黒光りしているのは、タール状のアリ避け物質(+防水性)を塗布したからです。 
アシナガバチは古巣にそのまま引っ越してきたり、古巣の素材を再利用したりすることはありません。 
ドロバチやクモバチとは異なり、必ず新しい巣材を使って一から造巣します。 
古巣には寄生蛾の幼虫が潜んでいたり、巣材が劣化していたりするからでしょう。 
その結果、寄生蛾に食い荒らされない限り、古巣は何年もその場に残ることになります。 

キアシナガバチの多い当地でセグロアシナガバチの巣は珍しいので、嬉しい発見でした。 
この巣がヒメスズメバチに襲われなかったのは、たまたま発見を免れたのか、それともフタモンアシナガバチの巣よりも防衛力が高かった(手強かった)からでしょうか? 

在巣の蜂の中に見慣れない個体が混じっています。 
寄生蜂が来ているのか?と思って動画に撮り始めました。 
よくよく見ると、セグロアシナガバチの雄蜂♂でした。
(在巣の蜂は、見えている範囲で♀2♂2) 
セグロアシナガバチ♂は初見ですが、胸背が黒く煤けたような体色です。
「セグロ」アシナガバチって、そういう意味なのかな?
てっきり、「前伸腹節に黄紋が無くて黒色」というマニアックな識別点を表しているのだと思っていました。
♂は顔の頭楯が白く、触角の先端がややカールしています。 
♂の腹端は丸みを帯びています。(毒針を持つ♀の腹端は尖っている。)
ワーカー♀よりも大型なのは意外でした。 
というよりも逆に、小型で生まれたワーカー♀が留守番を務めているのでしょう。 
それほど大きな巣ではありませんが、新女王の羽化に先立って、雄蜂♂が早くも羽化していたようです。 (雄性先熟)

在巣の成虫が育房内に頭を深く突っ込んでいる行動は、点検するついでに「栄養交換」と言って、幼虫が吐き戻す液体(流動食)を吸汁しているのです。 
アシナガバチは成虫になると固形物を飲み込めなくなるので、幼虫に栄養交換してもらう必要があります。 
一方で幼虫にはイモムシなどの獲物を丸めた肉団子(固形物)を給餌します。 

巣上で小型の♀が大型の♂を邪険に追い立てたのが、興味深く思いました。 
力関係は体格に関わらず♀>♂のようです。(コロニー内の優劣行動) 

他に、成虫は身繕い(化粧)していました。

カメラのレンズが汚れていて、お見苦しいです…。

2022/11/07

杉林の夜道を彷徨う野ネズミ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2022年7月下旬・午後21:40頃
前回の記事:▶ 深夜の林道で野ネズミが跳び上がって驚いた訳とは?【トレイルカメラ:暗視映像】

杉林道の溜め糞場sを監視しているトレイルカメラに夜行性の野ネズミ(ノネズミ)が写りました。 
対面のスギ大木の根際右に登場すると、そのまま右へピョンピョン跳ぶように走り去りました。 
林道沿いの草むらで餌を探し歩いているのでしょう。 
白く光る目が移動すると、草むらで見え隠れするので点滅して見えます。 

タヌキとアナグマが共有している溜め糞場sに野ネズミは近寄りませんでした。
糞に含まれている植物の種子を野ネズミが食べに来るのではないかと期待したのですが、夏の山林にはもっと美味しい餌が他にいくらでもあるのでしょう。

これは別に大して面白い動画ではありませんが、このスギ林で野ネズミが夜活動しているという記録が後々重要になります。 
次は夜行性の捕食者(野ネズミの天敵)が登場するので、お楽しみに。


アナグマの溜め糞に群がるクロボシヒラタシデムシとニクバエ

 

2022年7月下旬・午後13:05頃・ 

里山のスギ林を通る林道の真ん中にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)とニホンアナグマMeles anakuma)が共有している溜め糞場sがあります。 
2種の食肉類の糞塊が並んでいるうち、アナグマのやや緩い糞(軟便)にクロボシヒラタシデムシOiceoptoma nigropunctatum)とニクバエの一種が集まっていました。 
ハエは口吻を伸ばして糞を舐めています。
シデムシは糞の上をウロウロと歩き回っています。
小型の甲虫エンマムシ?(エンマコガネ?)も来ているようですが、よく見えません。 


隣りにあるタヌキの溜め糞と違い、センチコガネの仲間は居ませんでした。 
アナグマの糞の下に潜り込んでいるのかもしれませんが、ほじくって探すことはしませんでした。 
動画撮影を優先するために、現場を乱したくなかったのです。 

うんちレストランに集まる昆虫にも、糞の種類によって微妙な好みがあるのかもしれません。 
タヌキとアナグマがそれぞれ何を食べているのか?という食性にも関係してきそうです。 
ただし、糞の鮮度(排泄からの経過時間)が違うため、安易な比較はできません。 

※ 横に設置したトレイルカメラによって、アナグマとタヌキの排便シーンを確認しています。

2022/11/06

昼間のスギ林道に現れトレイルカメラに興味を示すツキノワグマ

 

2022年8月上旬

里山で杉林道の溜め糞場sを見張っているトレイルカメラ(自動撮影カメラ)にツキノワグマUrsus thibetanus)が初登場。 
スギ林にツキノワグマの食べる餌があるとは思えないので、移動しやすい便利な回廊として林道を利用しているだけでしょう。 


シーン1:8/9・午後14:25・気温30℃ 
明るい昼間に黒いクマが林道を左からやって来ました。 
タヌキやアナグマが残した溜め糞には全く興味を示しませんでした。 
道端のスギの幹に固定してあるトレイルカメラの直下で立ち止まり、死角で何かをしています。 
スギの根元の崖を掘り返して土を舐めているのか?(塩分摂取?)と想像したものの、証拠映像が無いことには分かりません。 
後日の現場検証でも手がかりとなる痕跡は得られませんでした。 
(アリの巣などもありません。 )

1分後には同一個体が林道を右に立ち去りました。 
ノシノシ歩きながら途中でタヌキの溜め糞の匂いを嗅ぎ、右後足で踏みつけて行きました。 


シーン2:8/10・午後18:01・気温26℃ 
翌日の夕方に、今度は逆の右から歩いて登場しました。 
胴体の左側(カメラに向けている側)に「ひっつき虫」(動物散布型の種子)が幾つも付着しています。 

溜め糞場には興味を示さず、今回もトレイルカメラの真下で立ち止まりました。 
画角の外で一体何をしているのか、気になります。 
やはり崖の土を舐めに来たのかな? 
カメラを固定したスギの幹に毛皮を擦り付けようとしたのかもしれません。 
逆の向きから同時に狙えるようにトレイルカメラをもう1台設置したくなりました。 

クマに驚いた野鳥が慌てて飛んで逃げて行きます。 
ツキノワグマが急に立ち上がり、鼻面がちらっと写りました。 
顔や胸の月の輪は、カメラに近過ぎてしっかり写りませんでした。 
トレイルカメラの存在に気づき、ヒトの匂いを嫌って逃げたのでしょうか? 
カメラを壊されなくて良かったです。 


2日連続で写ったクマが同一個体なのか別個体なのか、私には未だ見分けられません。 
夜行性とは限らず、明るい時間帯も活動するようです。 

トレイルカメラの電池やメモリーカードを交換するために現地入りする際には、熊とニアミスしないように、緊張感を持って細心の注意が必要です。 
気休めの鈴だけでなく、護身用のクマよけスプレーを必ず携帯します。



仲間を運んで引っ越すムネアカオオアリ♀の行列

 

2022年7月下旬・午後12:15頃・くもり 

里山の山道を登り始めたら、ムネアカオオアリCamponotus obscuripes)の行列と出会いました。 
白い幼虫(蛹?)を咥えて運んでいるワーカー♀が行列に混じっているので、初めは奴隷狩りかと思いました。 
「ムネアカオオアリは奴隷狩りする習性があったっけ?」と混乱しつつ観察を続けると、同種の成虫を口で咥えて運んでいる個体もいました。 
それでようやく、引っ越し中のコロニーなのだと判明しました。
関連記事(11年前の撮影)▶ 仲間の成虫を咥えて引越しするムネアカオオアリ
仲間(幼い妹)を運ぶのは大型のワーカー♀の仕事のようです。 
空荷で歩く個体は何も持たずに身一つで引っ越しするのか、それとも随伴護衛を務めているのかな? 
行列を逆行する個体と出会うと、触角で挨拶するだけですれ違います。 
微小の白い卵を口に咥えて運んでいる個体も動画にちらっと写りました。 

運んでいる白くて大きな物体が幼虫なのか繭なのか、マクロレンズでしっかり接写すべきでした。 
ムネアカオオアリの幼虫は繭になるので、裸の蛹を運ばないはずです。 
白い幼虫の一端に見える黒い点は、終齢幼虫の口器なのか、それとも蛹化前に排泄した糞なのかな? 

白くて太った幼虫を運ぶ個体に注目して接写しようとしたら、砂利を踏む私の足音に驚いて引き返してしまいました(行列を逆行)。 
草の根際に隠れるように静止しています。 
アリの引っ越し作業を邪魔しないように望遠マクロに戻しました。 

運ばれていくアリ成虫の胸が赤いかどうか、見下ろすアングルでは確認しにくかったです。
マクロレンズを装着して、横からじっくり接写すべきでしたが、先を急ぐ用事のあった私は億劫で横着してしまいました。
成虫運搬のシーンのみ1/5倍速のスローモーションに加工しました。 
直後に等倍速でリプレイ。
ムネアカオオアリの成虫同士が互いに大顎で噛み合って運んでいました。 
赤色が薄い羽化したばかりの若い個体を運搬してあげているのでしょう。 
若い成虫は自力で遠くまで歩くのも未だ覚束ないのかな? 
古川晴男『蟻の結婚』第9章アリの引越し によると、 
アリは仲間の働き蟻を口に咥えて運ぶことがある。これは社会生活をするハチ類等に絶対見られないことである。(中略)運んでもらう方のアリは親虫に成り立ての若いものが多いようである。運ぶ方のアリが仲間を咥えようとすると、運ばれる方のアリは脚を縮めたりして相手が運びやすいように気を配るのである。 仲間の体をもつ持ち上げ方は種類によって多少形式が違っている。ヤマアリ類やオオアリ類では、運ぶものは自分の大腮で運ばれるものの大腮を咥え、運ばれる方は髭と足を縮めて腹側と腹側が向き合うような姿勢で運ばれて行くのである。 (p182より引用)
【ムネアカオオアリ飼育日記 2】ついに働きアリが羽化 ネット検索で見つけたブログサイトによると、
胸から腹部前方にかけて赤いのがムネアカオオアリの特徴ですが、羽化して間もない働きアリはその色が薄く、薄いオレンジ色に見えます。
行列の源流を突き止めようと遡ると、山道を少し登ってから、路肩の法面に生えた枯れ草(イネ科)の上をムネアカオオアリが乗り越えていました。 
最後は藪の中に見失ってしまいました。 
ムネアカオオアリは森林性で木の腐朽部に営巣するそうです。 
逆に、行列の下流を辿ってムネアカオオアリの新しい巣を探すべきでしたね。 

9日後に現場の山道を再訪したときには、当然ながらアリの行列は無くなっていました。  

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