2022年7月下旬・午後14:30〜15:05頃・
ホンドタヌキ(Nyctereutes viverrinus)とニホンアナグマ(Meles anakuma)が共有している溜め糞場sをトレイルカメラで監視しています。
前回の記事:▶
・タヌキの溜め糞場から糞の欠片を後ろ向きに転がして運ぶオオセンチコガネ
・トレイルカメラが捉えたオオセンチコガネの糞転がし行動【5倍速映像】
カメラの電池を交換するために現場入りすると、タヌキの糞が残されていました。
黒い泥状の下痢便が乾きかけています。
ピンク(赤紫)の金属光沢に輝くオオセンチコガネ(Phelotrupes (Chromogeotrupes) auratus auratus)が1匹だけ溜め糞場sで活動していました。
私が近づくとノソノソ歩いてスギ落葉の下に潜り込み、隠れてしまいました。
スギ落ち葉の下におそらくオオセンチコガネの巣があるのでしょう。
その後、地表には現れませんでした。
どうやら見に来る時間帯が遅過ぎたようです。
他にはニクバエの仲間やメタリックグリーンのキンバエの仲間が糞塊に集まっています。
スギ林の薄暗い林床でときどき溜め糞がモコモコと上下動するので、糞虫が地中で活動していることは間違いありません。
私がトレイルカメラの電池交換をしている間に、溜め糞の横に三脚を立てて微速度撮影してみました。
10倍速の早回し映像をご覧ください(@0:24〜)。
溜め糞から飛び去ったイチモンジチョウが戻って来ることを期待したのですが、予想は外れ、長撮りしても戻りませんでした。
▼関連記事(同所同日に撮影) ホンドタヌキの溜め糞から吸汁するイチモンジチョウハエ類が集まりタヌキの糞を舐めているだけかと思いきや、タイムラプス映像を見直すと意外に面白い活動が繰り広げられていました。
画面の奥(上)にあるスギ落葉の下から赤紫のオオセンチコガネが地表直下の浅いトンネルを掘り進めて糞塊の下に忍び寄り、地表に姿を現しました。
スギ落葉の下を徘徊してから、糞の下に潜り込みました。
糞塊の右上など他の場所でも地面がモコモコと動いているのは、別個体の糞虫がトンネル内で活動しているのでしょう。
リアルタイムの観察では気付けなかった(見落としていた)現象です。
通りすがりに溜め糞を一瞥しただけでオオセンチコガネが居ないと判断するのは軽率なのだと分かりました。
溜め糞をほじくって真面目に糞虫を探す必要があるのですが、今季の私は動画撮影を優先することに決めているので、現場を乱したくありません。
昼間のオオセンチコガネは、野鳥などに捕食されないようにトンネル経由で糞の欠片を自分の巣穴へ運搬しているのかもしれません。
天敵対策だとすれば、もっと長時間の微速度撮影をしたら、地表に糞虫の姿が見えなくても糞塊は徐々に減る様子が記録されるはずです。
溜め糞場の近くでウロウロしている私を警戒してオオセンチコガネが地表に出てこないのだとしたら、捕食圧が高いことが予想されます。
溜め糞場に通う野生動物や野鳥が糞虫を捕食したら面白いのですけど、トレイルカメラにそのような決定的瞬間が写るかどうか、楽しみです。
舘野鴻『うんこ虫を追え(たくさんのふしぎ2022年6月号)』によると、
オオセンチコガネが活発に活動するのは、春と秋でした。もし春の観察に失敗すると、次の秋まで待たなければなりません。時間はあっという間にすぎていきました。(編集部より)夏はオオセンチコガネの活動が低調なのでしょうか?
この本の筆者と私は観察フィールド(地域と植生)がかなり違いますし、調べ方のアプローチも違います。
本に書いてあるオオセンチコガネの習性がどれだけ一般的なのか分かりません。
実は、この本に書かれた筆者の(暫定的な)結論にちょっと納得できない(私の観察結果とずれている)点がいくつかあるのです。
例えば、この本では傾向としてセンチコガネの生息地が森林性でオオセンチコガネが草原性だと書いています。(棲み分け仮説)
今回私が観察している溜め糞場sは山林にあります。
また、雑食動物であるアナグマやタヌキの糞を与えてもオオセンチコガネは巣内で育児塊を作らなかった、と同書には記されています。(作るのはシカやウシなど草食動物の糞を与えたときだけ。)
私はタヌキの溜め糞でセンチコガネとオオセンチコガネを見つけたものの、アナグマの溜め糞では未だ見つけたことがありません。
私がこれまで夏に観察してきたのは、オオセンチコガネの成虫が獣糞から育児塊を作るためではなく、成虫が自分で獣糞を食べるための貯食活動なのかな?
偉大な先人の観察記録をありがたく参考にさせてもらいますが、結局のところ、自分のフィールドのことは自力で解明するしかありません。
私は未だ糞虫の観察歴が浅いので、追試するだけで何年もかかりそうです。
オオセンチコガネが巣穴の奥でタヌキの糞を材料として育児塊を作ったかどうか、今季の私は発掘調査で確認できていません。
本格的に調査するなら、山中でも牧場など糞虫の個体数が多いフィールドを選ぶべきかもしれません。
つづく→
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