2021/05/22

マサキの落果を採食するヒヨドリ(冬の野鳥)

 

2021年2月下旬・午後16:30頃・晴れ 

夕方の路地裏でヒヨドリHypsipetes amaurotis)が何やら採食しています。 
民家の庭木(生垣が育ち過ぎた?)として植栽された常緑樹マサキの果実が赤く熟し始め、雪が積もったせいで多数の熟果が下に落ちたようです。 
ヒヨドリはマサキの落果を啄んでいたのでした。 
初めヒヨドリは庭木の下のブロック塀の縁に止まって落果を採食していました。 
やがて警戒を解いたヒヨドリは横の路地に降りて、除雪された路上に散乱したマサキの落果を次々に食べました。 
ヒヨドリは顔を横に寝かせて路上の落果を次々に拾い食いしています。 
どうやら嘴が細いヒヨドリは、小さな木の実を上手く摘めないようです。 
マサキの仮種皮を嘴で器用に取り除いて、赤い果実だけを食べています。 

再び飛び上がってブロック塀の上に戻りました。 
今度は雪に埋もれたマサキ落果を掘り出して採食しました。 
振り向くとブロック塀の上で尾羽根を少し持ち上げながら、黒い固形糞をポトリと排泄しました。(@1:40) 
未消化のマサキの種子が糞の中に含まれていれば、マサキの種子散布を助けたことになります。 
最後は警戒声を発することなく黙って飛び去りました。 

樹上性のヒヨドリが地上で採食するのはとても珍しく、私の記憶にはありません。 
今回のヒヨドリはどうして落果ではなくマサキ樹上で赤い果実を直接食べなかったのでしょうか? 
マサキの樹冠には雪が積もっていて(冠雪)、樹上には止まりにくいとヒヨドリは判断したのかもしれません。 

ヒヨドリが飛び去ってから現場検証しました。 
常緑樹の赤い実は4裂していることなどから、樹種はマサキと分かりました。 
積雪が多いこの冬は寒くて、マサキの果実がなかなか熟さないようです。 
山渓ハンディ図鑑『樹に咲く花:離弁花2』でマサキを調べると、
果実/蒴果。直径6〜8mmの球形で、11〜1月に紅色に熟し、4裂する。種子は橙赤色の仮種皮に包まれ、落ちずにぶらさがる。(p428-429より引用)

※ 動画編集時にコントラストではなく彩度を少し上げた結果、マサキ果実(蒴果)の赤味が少し強調されています。 

通りすがりで咄嗟にカメラを構えたものの、それまで手袋せずに歩いていたため素手が凍えそうに冷たくて、カメラを上手く操作できませんでした。 
カメラの起動が遅れたり、動画撮影中に上下に手ブレするなどしたのは、そのせいです。
ちなみに、マサキの隣に並んで植栽された落葉性の庭木はモクレンでした。 
春に咲いた花で樹種が判明しました。

鼻息で威嚇しながら深雪をかき分け里山の急斜面を登るニホンカモシカ

 

2021年1月下旬・午後13:00〜13:30頃・晴れ 

スノーシューを履いて里山を探索していると雪面を歩く足跡(蹄跡)を見つけたので、追跡を始めました。 
前日に降り積もった新雪がパウダースノー(乾雪)の状態で、午前中は絶好のアニマルトラッキング日和でした。 
しかし日が高く昇るにつれて気温も上がり、雪面がどんどん溶けて重い湿雪に変化します。
スノーシューで1歩ずつキックステップしないと登れないほど急な斜面を私が息を切らしながら直登していると、上からフシュフシュ♪というニホンカモシカCapricornis crispus)が発する鼻息威嚇が繰り返し聞こえました。 
足跡を残した主はイノシシかと内心期待していたのですが、どうやらカモシカだったようです。 
※ 動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 

 姿が見えないので、私もカモシカの真似してシュッ♪という鋭い歯舌音で応酬してみます。 
これが逆効果だったようで、ニホンカモシカの鼻息威嚇が次第に遠ざかってしまいました。 
しばらく見上げていると、急斜面の落葉樹林の間を縫うように動くカモシカを発見。 
深雪を力強くラッセルしながら急斜面を登って行くする後ろ姿がチラッと見えました。 
私の方を振り向かずに鼻息威嚇♪していました。 

私も頑張ってカモシカに追いつきたかったのですが、脚の疲労も考え、追跡を諦めて下山することにしました。 
とにかく斜度があまりにも急峻過ぎます。 
今回の山行で右膝を捻って古傷を少し痛めてしまいました。 
急斜面で雪質が重い「腐れ雪」になると、スノーシューの取扱いが難しくなります。 
むしろスノーシューを脱ぎ捨てて、壺足で登るべきでした。 
こういうときにドローンという文明の利器があれば、一気に形勢逆転して野生のカモシカを空撮できたかもしれません。

下山中に複数個体のカモシカの足跡(ラッセル跡)を見つけました。 
単独行動を基本とするカモシカには珍しく、2〜3頭の家族群だったようです。 

捕食者や天敵に追われたら急斜面を登って上に上に逃げるのがカモシカの生存戦略なのでしょう。 
ニホンカモシカは同じ有蹄類のイノシシよりも急斜面に強くて健脚です。 
岩山でも雪山でも急峻な山岳地帯を難なく直登するので、追跡するのは困難です。

2021/05/20

雪の降る川で潜水漁を繰り返すキンクロハジロ♂♀とホシハジロ♀(冬の野鳥)

 

2021年1月上旬・午後13:20頃・雪 

激しい雪が降りしきる冬の川でキンクロハジロ♂♀(Aythya fuligula)が水中に何度も潜って採餌していました。 
一旦潜ると、次にどこから浮上するか予測不能です。
▼関連記事(1年前の撮影) 
川に潜って獲物を捕食するキンクロハジロ♀♂(冬の野鳥)
2羽のキンクロハジロ♂が潜るタイミングを揃えているのは偶然なのか、それとも共同で魚を追い込んだりしているのかな? 
いつか水中カメラで撮影してみたいものです。
 

たまにキンクロハジロ♂とホシハジロ♀(Aythya ferina)が異種なのになぜか仲良く寄り添うように潜水漁を繰り返すことがありました。 
この2種のカモ類は雑食性らしいので、採食メニューは川底に生えた水草などの植物かもしれません。 
必ずしも魚を捕食する潜水「漁」と決めつけてはいけませんね。 

電線とカキノキを飛んで往復するツグミ♀♂(冬の野鳥)

 

2021年1月下旬・午後13:50頃・くもり
前回の記事:▶ ヤドリギに寄生された桜の木に来たツグミ(冬の野鳥)
郊外の電線に止まっていたツグミTurdus eunomus)が飛び立つと、雪原を飛び越えて民家の庭木に止まり直しました。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイすると、電線から飛び去った直後に後ろから別個体が追いかけて来ていることが分かりました。 
この2羽は♀♂つがいなのでしょうか? 

逆光で庭木(落葉樹)の樹種がよく分からないのですが、枝に熟柿らしき物が残っているので、おそらくカキノキではないかと思います。 
果実の採食シーンが見れるかと期待したものの、2羽のツグミは残念ながらすぐにまた飛んで電線に戻ってしまいました。 

私が近づいて電線の下から見上げるように撮影しても、ツグミは逃げませんでした。 
厳冬期の食料源として熟果がついたカキノキと、ヤドリギが寄生した桜の老木を含んだエリアをツグミ♀♂は縄張りをしているようです。 
同じく果物好きなヒヨドリと餌場を巡る縄張り争いをしていることが予想されます。
ツグミがヤドリギに戻るまで見届けたかったのですが、私は寒さで尿意を我慢できずに撮影を切り上げました。

 

2021/05/19

冠雪した桜樹上に貯食しておいた餌を掘り出して食べるハシボソガラス(冬の野鳥)

 

2021年2月下旬・午後16:15頃・晴れ 

結氷した池の畔に立つ桜の大木(おそらくソメイヨシノ)に雪が積もってすっかり雪化粧していました。 
冠雪した樹冠に止まったハシボソガラスCorvus corone)が嘴で除雪しています。 
雪そのものを食べているのではありません。 
新雪に嘴を刺してから横に払い除け、何かを掘り起こそうとしているようです。 
しかし、ハシボソガラスの細い嘴ではいかにも効率が悪そうです。 

何をしているのか気になって動画の撮影を続けると、雪に埋もれていた食物を掘り出してその場で食べました。 
食物は茶色と白で、なんとなくパンの塊のように見えます。 
柔らかそうなので、凍ってはいないようです。 
どうやら天然の冷蔵庫(雪室ゆきむろ)に貯食物を隠しておいたようです。 
厳冬期の桜の枝は落葉していて冬芽しかありません。 
他には桜の樹上に生えたキノコを採食したという可能性も考えられますが、映像を見る限り、貯食していたパンだと私は思います。 

食後のハシボソガラスはすぐに飛び立つと、池を飛び越えて近くの電柱の天辺に止まり直しました。 
濡れた嘴を足元の水平アルミ支柱で拭うと、最後は少量の白い固形糞をポトリと排泄。 

カラスが余った餌を隠す貯食シーンは何度か観察したことがあるものの、記憶しておいた貯食場所から再び餌を取り出して食べるシーンは初めて見れて興奮しました。

オトコエシの花で身繕いするツヤハナバチの一種♀

 

2020年9月上旬・午前8:00頃・晴れ


里山で峠道の横に咲いたオトコエシの群落で訪花していたツヤハナバチの一種♀が採餌の合間に身繕いを始めました。 
化粧行動をマクロレンズで接写してみます。 
まるでアッカンベーしているように、黒くて(焦げ茶色)長い口吻を伸縮させながら、長々と身繕いしています。 

私がこれまで見慣れていたヤマトツヤハナバチとは異なり、頭楯が真っ黒で斑紋がほとんど無かったので別種のようです。 
後脚の花粉籠は全く空荷でした。 
雄蜂♂なのかな?と思い『日本産ハナバチ図鑑』で調べてみても、採集して標本を精査しないと難しそうです。 
ヤマトやキオビでないとすると、脚の色では性別を判定できないらしい。 
♂なら頭楯に斑紋があるはずです。

2021/05/18

雪国の山林に響くルリビタキの警戒声♪(冬の野鳥)

 

2021年1月下旬・午前10:30頃・晴れ

新雪が積もった里山で雪面に残るキツネの足跡を追跡していると、斜面の上の雑木林の方から今まで聞いたことのない奇妙な鳴き声が繰り返し聞こえました。(標高320m地点) 
甲高い「コンコンコン…」または「ヒンヒンヒン…」というような鳴き声です。 
単調な口笛を繰り返し吹いているようにも聞こえます。 
スノーシューを履いて雪山を歩きながら、鳴き声が聞こえる度に立ち止まって耳を傾けました。 

※ 動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 

この時期は地元の選挙期間中で、山麓を走る選挙カーの喧しい連呼が迷惑でした。 
選挙カーが通り過ぎて辺りの静けさが戻ると、謎の鳴き声はしなくなりました。 
飼い犬が選挙カーのアナウンスに反応して遠吠えする現象を連想しました。

残念ながら鳴き声の主の姿は見つかりませんでした。 
私は野生のホンドギツネが実際に鳴くシーンを未だ見たことがないのですが、てっきり追跡中のキツネが近くでコンコン♪鳴いているのかと早合点しました。 
帰ってから調べてみると、キツネやタヌキの鳴き声は全く違うと知りました。 

それなら野鳥の鳴き声だろうと思い直し、調べてみるとルリビタキTarsiger cyanurus)とジョウビタキPhoenicurus auroreus)が候補に残りました。 
スノーシューを履いた私が縄張りの山林にズカズカと踏み込んだので、警戒声を発していたのでしょう。 

シンフォレスト『野鳥生活記Wing』には次のように書いてありました。
(ルリビタキは)冬は暖地に移動する。育雛時は「ヒッ、ヒッ、ヒッ」と盛んに警戒声で鳴く。
フィールドのための野鳥図鑑:野山の鳥』p78には、ルリビタキの警戒声は「ヒッヒッヒッヒッ…グック、グググッ、ヒッヒッ…(高い声で連続的に)」と聞きなしてありました。 

『日本の野鳥さえずり・地鳴き図鑑』でルリビタキを調べると、
・地鳴きは、ヒッ、ヒッ、クククとかググと聞こえる。 
・秋冬には市街地周辺の平地林などにも越冬のために飛来する。  郊外に近い植栽木の多い公園で越冬することもあるが、ジョウビタキのように開けた環境へはあまり出てこない。 
冬でも1羽ずつなわばりを構えて活動する。 
鳴き声が似ている鳥はジョウビタキ。地鳴きはジョウビタキのほうがやや高音でゆっくりしたテンポに感じるが、識別は困難。 (p100より引用)

『やまがた野鳥図鑑』 によると、ルリビタキが山地で越冬するのは極めて少数なのだそうです。(p98より)
ジョウビタキは平地から低山の開けた場所で越冬する。しかし虫を主食としているため、積雪の多い地域ではあまり多く見られない。(同書p159より引用)
現場の標高は低いものの雪深い里山なので、ジョウビタキの可能性は低いだろうと判断し、消去法でルリビタキの警戒声としました。 

▼関連記事(9年前に同じ里山で撮影)


ルリビタキ?の警戒声を声紋解析してみる? 


【参考動画】 
「冬の ルリビタキ "Tarsiger cyanurus" の鳴き声」と題した見事な生態動画をFuruse CSさんがYouTubeに公開していました。 
今回私が聞いた鳴き声とよく似ています。  



【追記】
長野県軽井沢をフィールドとする自然観察をまとめたピッキオ『森のいろいろ事情がありまして』という本を読み返すと、「冬のルリビタキ」と題した章がありました。
雪国での観察記録はとても参考になります。
 ときには海を越えなければならないような危険な旅が一段落ついた初冬、ルリビタキは1羽ずつ、沢沿いの林のふちなどになわばりを構えます。夏の繁殖期以外はなわばりを持たない小鳥が多い中で、珍しい習性です。このときは「ヒッ、ヒッ」という高い声で、おそらく他のルリビタキに自分の領地を主張しているのでしょう。そして近づいたライバルやあやしげな私たち人間に対しては、「ガッガッ」という低い声で、「出て行け」と言っているのでしょう。(p140−141より引用)

鳴き声の解釈(さえずりと警戒声の違い)については、見解が異なるようです。 


走行車を回避しながら雪道から飛び去るツグミ(冬の野鳥)

 

2021年1月下旬・午後13:55頃・くもり 

郊外で除雪された車道の端をツグミTurdus eunomus)が歩いて餌を探していました。 
前後から車が走って来ると、ツグミは慌てて雪の壁の陰に避難したものの、パニックになって車道に飛び出しました。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると、あわや走行車と衝突しそうになりながら、なんとか回避して飛び去っていました。 
車のドライブレコーダーにはもっと迫力の映像が記録されていたことでしょう。

2021/05/17

雪道で餌を探し歩くハクセキレイ♀(冬の野鳥)

 

2021年1月上旬・午後12:45頃・晴れ 

除雪された堤防路の端をハクセキレイ♀(Motacilla alba lugens)がこちらに向かってどんどん歩いて来ます。 
枯れた植物が露出した雪面を調べて餌を探したものの、諦めて車道に戻りました。 
しばらくすると立ち止まって身震いし、羽繕いを始めました。 
急に飛び上がると死角の雪面に着陸しました。 
空中で虫を捕食しようとしたようです。(フライング・キャッチ) 
最後は川の対岸へ飛び去りました。 
飛び立つ瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 

留鳥として厳冬期も雪国に居残っているハクセキレイが春まで一体何を食べて命をつないでいるのか、不思議でなりません。

ニホンイノシシが真冬のリンゴ園で雪を掘って落果を食べた痕跡

2021年1月中旬・午前10:20〜10:50頃・晴れ
前回の記事:▶ 雪山に残されたニホンイノシシのフィールドサイン(その2)足跡、糞、小便跡、血痕など

野生のニホンイノシシSus scrofa leucomystax)に雪山で生まれて初めて遭遇した日の出来事を、時間を遡って発端から記録しておきます。 
今回の記事は動画無しの写真ネタです。 
スノーシュー(西洋かんじき)を履いた私が雪山を登り始めたら、雪面に有蹄類の獣が残した足跡を見つけました。 
てっきりニホンカモシカの蹄跡だろうと思い込み、追跡を始めました。 
新雪だと足跡が明瞭でアニマルトラッキングしやすいのですが、この日の雪質は表面が固く凍っていて(クラスト状態)、足跡を読み解くのが少し難しかったです。 
雪上でアニマルトラッキングするのは1年ぶりで、私の推理力はすっかり鈍っていました。(細かいノウハウを忘れていた)
初めは足跡の進行方向の見極めも覚束ないほどでした。 
リンゴ園の横を一度通り過ぎてから足跡の進行方向の読み間違いに気づいた私は、逆に辿って戻りました。 



なるべく新しい明瞭な足跡を選び、進行方向を読み解いてトラッキング(追跡)します。 
雪が少し深いところはラッセル跡の獣道になっていました。 
ときどき蹄の跡があまりきれいに付いていない(二重に踏みつけられている)点が気になりました。 
カモシカは群れを作らず単独行動をするのが普通です。 
同一個体のカモシカが同じ1本の獣道を往復しているのでしょうか? 
追跡者(私?)に気づいて、まこうとしているのかな? 

痕跡を残した動物の正体がイノシシと分かってしまえば、それまでの謎が全て明快に説明できるようになりました。 
1頭が往復したように見えた足跡は2頭のイノシシが縦列で歩いた結果であり、蹄の跡が重なったり重ならなかったりしていたのです。 
イノシシはカモシカよりも体高が低い(脚が短い)ので、深雪では腹を擦ってラッセルした跡が残ります。 

山麓に広がるリンゴ園(標高295m地点)に戻って辺りを見渡しても獣の姿はありませんでした。
足跡の主がリンゴ園で何をしていたのか、痕跡を調べてみることにしました。 
ところが蹄跡はリンゴ園内で錯綜していて、私は何度も見失いかけました。 
足跡を見失った地点からグルグルと螺旋状に広がりながら歩けば、新しい(きれいな)足跡を再び見つけることができます。 

リンゴの木の下の根元で雪を掘り返した穴があちこちに開いていました。 
リンゴ園には多数の落果が雪に埋もれたまま凍っていて、野生動物はそれを食べに来たのだと分かりました。
雪を掘り返した辺りにはリンゴ落果の食べ残しと、見慣れない形状の糞が残されていました。 
カモシカは草食性ですけど、果実を食べるイメージが私には無かったので、そこでまず違和感を覚えました。 
餌の乏しい積雪期なら、カモシカは雪に穴を掘ってリンゴ落果を食べてもおかしくないのかな? 









リンゴ園の雪面に残された糞塊は、黄色みが強い黄土色でした。 
見慣れたカモシカの糞とは色も形も明らかに違うので、私の頭は更に混乱しました。 
タヌキの溜め糞、またはニホンザルが残した糞なのかと思い直しました。 
それならタヌキやニホンザルの足跡が雪面に残っていないのは変です。 
雪が降って足跡が一度埋もれてしまったのか?と苦しい推理をしました。 
それなら雪面に露出している糞塊を説明できません。
雪面がクラストしていれば、体重の軽い動物は足跡を残さずに歩けるのかもしれません。
矛盾が出ないよう仮定に仮定を重ねる無理な推論よりも、シンプルな仮説の方が正しいはずだ、という「オッカムの剃刀(思考節約の原理)」は真理だと今回つくづく実感しました。 
ここ山形県で長年イノシシは絶滅状態だったので、まさかリンゴ園で落果を食べに来た容疑者がイノシシという可能性が私の念頭には全く無かったのです。 











リンゴ園での調査を終えてから足跡を辿って雪山を登り返すと、途中でスギの根元を掘り返した跡があり、土が露出していました。(標高308m地点)
イノシシが細い根などを採食したのでしょう。





この後、足跡を追跡して雪山を更に登ると、寝床で油断していたイノシシ2頭と出会ったのです。(標高335m地点)

ニホンイノシシとの初遭遇に味をしめた私はこの冬、雪深い裏山や果樹園に足繁く通いました。 
ところがイノシシとは二度と再会できず、痕跡も見つかりませんでした。 
リンゴの落果が他の動物や野鳥に食べ尽くされて、果樹園に来る理由が無くなったのかもしれません。 
雪山で蹄の跡を辿っても、出会えたのはニホンカモシカだけでした。 
この地域に出没するイノシシの個体数は未だ少なく、あの2頭だけだったようです。 
私の執拗な追跡で山の反対側に追い払ったことになり、逃げた2頭のイノシシはすっかり懲りて戻って来なくなったのでしょう。 
もし春までイノシシ2頭がこの地域に留まり続ければ、農作物に大きな被害が出たでしょう。
私が結果的にイノシシを追い払ったことで、食害に苦しむ農家のための害獣対策にはなりました。 
しかし、動物カメラマンとしての心境は複雑です。(残念…) 

逃げたイノシシをしつこく追い回すのではなく、山中の寝床(ねぐら)やリンゴ園内に無人カメラを設置して監視したら、長期の観察が出来たかもしれません。 
わずか一日でも集中的なフィールドワークが出来たので、イノシシの生態やフィールドサインについてかなり勉強になりました。 
これからはイノシシが残したフィールドサインを見つけたら、自信を持って見分けることができそうです。

近年、夏の山中で謎の穴掘り跡や寝床を何度か見つけたことがあります。
思い返すとあれはイノシシの仕業だったのかもしれません。 
過去に山中で見つけた蹄の跡は全てカモシカだと決めつけていたのですが、イノシシの可能性を含めて再検討する必要がありそうです。
私のフィールドで未だ見たことのない有蹄類はシカだけになりました。 

シリーズ完。



【追記】
リンゴ園ではイノシシの糞以外の細長い獣糞も見つけました。
タヌキかキツネではないか思うのですが、どうでしょうか?
それともテンなどのイタチ系かな?
少し古い糞らしく、周囲に明瞭な足跡は見つかりませんでした。
フィールドで複雑に絡み合った痕跡を読み解いていくのは大変です。
実は同じ雪山でホンドギツネにも出会えたのですが、それはまた後の話。(映像公開予定)







2021/05/16

ヤドリギに寄生された桜の木に来たツグミ(冬の野鳥)

 

2021年1月下旬・午後13:45頃・くもり 

道端に立つソメイヨシノの樹上に冬鳥のツグミTurdus eunomus)が居ました。 
少量の糞を排泄すると、なぜか足元の枝に嘴を頻りに擦り付けました。(@0:29) 
鳥が食後によくやる行動なのですが、この場合は場違いなので、カメラを向けている私に対する苛立ちから来た転移行動かもしれません。 
しばらくするとツグミは飛び去りました。 
脱糞および飛び立ちの瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。
映像に写っていませんが、実は同じ桜の木の少し離れた枝にツグミがもう1羽いました。 
動画で聞こえる鳴き声は、その別個体が発しているようです。 
(※ 動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。) 

カメラのバッテリーが切れてしまい、私が慌てて交換している間に2羽のツグミが軽く小競り合いになりました。 
交尾のように見えたのですが、ツグミは真冬に交尾しますかね?? 
動画に撮り損ねたのは残念です。 

ツグミが来ていたソメイヨシノには落葉した枝の中で青々と茂った葉が鞠のように育っていました。 
ズームインしてみると、寄生植物のヤドリギでした。 
厳冬期にヤドリギを間近で見れたのは初めてです。 
常緑の葉は意外にも色あせていました。 
今年の冬は雪が多いので、日照不足や低温障害なのかもしれません。 

▼関連記事

冬になるとヤドリギの果実(液果)を野鳥が食べに来て、脱糞することで種子散布に貢献しているという話が有名です。 
今回もツグミはヤドリギの実を目当てに来たのかと思ったのですが、撮影アングルを変えながらヤドリギにいくらズームインしても果実は全く見当たりませんでした。 
鳥に全て食べつくされてしまった後なのかな? 
調べてみると、ヤドリギは雌雄異株らしいです。 
今回見つけたヤドリギが雄株なら、実がならないのは当然です。 
雌株だけでも受粉できなければ、結実しません。 
つまり宿主となる1本の樹木に複数のヤドリギ(しかも雄株および雌株)が寄生しなければ、ヤドリギは結実できない(子孫を残せない)ことになります。 
定点観察に通って、桜を宿主とするこのヤドリギ個体の季節変化を追うことにします。 

※ 動画編集時にコントラストではなく彩度を少し上げました。


【追記】
日本には居ない鳥らしいのですが(まれに迷鳥)、ヤドリギツグミというツグミ科の種がいるそうです。
好物であるヤドリギの実がなった株を縄張りとして防衛し、種子散布に貢献することでヤドリギと共生関係にあるそうです。(詳しくは英語版wikipediaを参照)


【追記2】
ヤドリギの種子散布者は鳥に限らず、ニホンザルの場合もあるそうです。
ただし、今回の観察地点は郊外ですけど山からだいぶ離れているため、ニホンザルの群れが採食のために遊動してくるとは考えにくいです。

 ヤドリギの果実は人間が食べてもおいしいが、この被食型散布(鳥などが食べるときに種子を嘴や身体にくっつけて運ぶことがあり、複合動物散布型とされることもある)をする。この種子の表面は粘着質で、排泄された後、樹木に付着するようになっている。この実をたくさん食べたニホンザルを観察していたところ、サルは、この種子からなる粘着質の糞が肛門の周りにくっついてしまったのを嫌がり、手でこそげとって、登っていた木の枝に擦りつけていた。 (大井徹『獣たちの森』p135より引用)

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