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2025/03/21

早春のミズキから滴るオレンジ色の樹液に集まり吸汁するケシキスイの仲間

 

2024年4月上旬・午後13:30頃・晴れ 

細い用水路沿いにそびえ立つ落葉性高木の幹から鮮やかなオレンジ色の樹液が大量に滲み出していて、早春の二次林で非常に目立っていました。 
幹の数カ所の傷口から樹液が垂れ落ちながら、発酵してブクブクと泡立っています。 
樹冠を見上げると、枝先の冬芽から少しだけ若葉が芽吹き始めていました。 
樹種はおそらくミズキと思われます。 

カメラを上から下にパンしながらゲル状になった橙色の樹液を動画に撮っていると、ケシキスイの仲間(ケシキスイムシ科)と思われる微小な甲虫が計3匹写っていました。 
同定のために採集したかったのですけど、幹の高い位置だったので、手が届きませんでした。
図鑑『くらべてわかる甲虫1062種』に掲載された写真p80と見比べると、素人目にはホソコゲチャセマルケシキスイ(Amphicrossus hisamatsui)またはナガコゲチャケシキスイ(Amphicrossus lewisi)が似ていると思うのですが、どうでしょうか?
例えばホソコゲチャセマルケシキスイは、「6〜8月クヌギやコナラの樹液に集まる。いつも樹液に浸かっている」と記されていました。

他には薄い翅を持つ黒っぽいハチ?ハエ?の仲間も動画にチラッと写っていたのですが、撮影中の私はまったく気づかずにスルーしてしまいました。 

「オレンジ色の樹液」でネット検索すると、ミズキの樹液がヒットしました。 
もともとミズキの樹液は無色透明でさらさらした液体なのですが、早春の時期にはよくオレンジ色になるそうです。
Perplexity AIに解説してもらいました。(細かい点で間違いがあるかもしれませんので、お気づきの方はご指摘ください。)

ミズキの樹液が透明からオレンジ色に変化する現象は、微生物の活動と環境条件の相互作用によって起こります。主な要因を以下のように整理できます:

色変化のメカニズム

  1. 酵母菌の初期繁殖
    ミズキの樹液は春先に糖分を多く含み、透明でサラサラした状態で分泌されます。これにファフィア酵母(Phaffia rhodozyma)が付着し、オレンジ色の色素(アスタキサンチン)を生成します。この段階で樹液は白濁し始めます57

  2. カビの二次繁殖
    酵母が樹液の糖分を消費すると、フザリウム属のカビ(Fusarium aquaeductuumなど)が優占種に変化。このカビは赤~オレンジ色の色素を産生し、樹液を濃いオレンジ色に変えます14

  3. 微生物の共生関係
    酵母とカビは樹液内で「スライム・フラックス」と呼ばれるコロニーを形成。触るとプニプニしたゲル状になり、表面にヒダ状の構造が発達します23

色変化の条件

条件影響
糖分濃度ミズキの樹液は糖分が多く(特に春)、微生物の繁殖に最適
温度15-25℃の温暖な気候で活発に繁殖(春先に多く観察)24
酸素量樹液が滴り落ちる際に空気に触れ、好気性微生物が活性化
時間経過分泌後2-3日で酵母が繁殖→1週間程度でカビが優占種に16
物理的損傷剪定や虫食いによる傷口から樹液が持続的に分泌される必要あり38

色の持続性

オレンジ色は一時的な現象で、樹液の分泌が止まると干からびて黒っぽく変化します1。また、湿度が低い環境では色素生成が抑制され、色変化が起こりにくくなります4

生物学的意義

この現象は、樹木の傷口を微生物で覆うことで病原菌の侵入を防ぐ「生物学的防御機構」と推測されています8。オレンジ色の樹液はケシキスイなどの昆虫を誘引し、彼らが樹液に集まることで微生物の拡散を助ける共生関係も存在します24



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2025/02/18

山地の路上を歩くオオセンチコガネ

 

2023年10月上旬・午後13:15・くもり 

つづら折れの峠道でオオセンチコガネPhelotrupes (Chromogeotrupes) auratus auratus)が舗装路をゆっくり歩いて横断していました。 
金属光沢(メタリック)に輝く赤紫色がいつ見てもきれいですね。 
近くを探しても、獣糞は見つかりませんでした。 

最後にクロヤマアリFormica japonica)のワーカー♀とニアミス。 


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2025/02/02

スギ倒木横のタヌキ溜め糞場に集まる虫たち:オカダンゴムシ♂、ワラジムシ、クロボシヒラタシデムシの幼虫および成虫、サビハネカクシ、糞虫など

 

2023年6月下旬・午後14:55頃・晴れ 

ホンドタヌキ♀♂(Nyctereutes viverrinus)が平地のスギ防風林に残した溜め糞場phを定点観察しています。 
すぐ横に風倒木が転がっているのが目印です。 
新鮮な糞が追加されていて、
糞の一部には未消化の獣毛が混じっています。 
換毛期に毛繕いしたタヌキが自分の体毛を飲み込んでしまったのか、それとも動物の死骸を食べた(腐肉食)のか、野ネズミなど小型哺乳類を捕食したのでしょうか? 
糞をDNA解析すれば、たちどころに分かるはずです。 

糞食性の様々な虫が集まっていました。 
動画に登場した虫たちを列挙してみます。 

1匹のオカダンゴムシ♂(Armadillidium vulgare)が溜め糞の匂いに誘引されて来ました。 
背中に斑点が無くて真っ黒(黒光り)なので、♂と判明。 

ワラジムシPorcellio scaber)も何匹かいました。 

クロボシヒラタシデムシOiceoptoma nigropunctatum)の成虫だけでなく幼虫もいました。 
写真にはオオヒラタシデムシNecrophila japonica)の成虫も写っていました。 

小型の糞虫が糞塊に潜りかけていたのですが、全身を見せてくれず、種類を見分けられませんでした。(センチコガネではない) 

サビハネカクシOntholestes gracilis)と、別種のハネカクシ(種名不詳)もいました。 
肉食性のハネカクシ類がダンゴムシやワラジムシを襲って捕食することはありませんでした。 
もっぱらハエの幼虫(蛆虫)を捕食するのでしょう。 

ショウジョウバエのような微小なハエも来ていたのですが、真面目に同定していません。

2025/01/17

ホンドタヌキの溜め糞に群がる虫たちの活動【10倍速映像】

 



2023年5月下旬・午前11:30〜午後13:10頃・ 

平地のスギ防風林に残されたホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の大きな溜め糞場wbc1を定点観察しています。 
実際ここに複数個体のタヌキが代わる代わる通って排便していることをトレイルカメラで確認済みです。 

多種多様な食糞性の昆虫(および捕食者)が糞塊に群がっています。 
私が横に立っている間は警戒して隠れてしまう虫もいるので、三脚を立てて微速度撮影で長撮りしてみました。 
(その間、私は現場を離れていました。) 
鬱蒼としたスギ林の林床は、晴れた昼間でもかなり薄暗いので、予めカメラの設定でゲインを上げてから撮影します。 
「うんちレストラン」に集まる魑魅魍魎が正午前後(1時間40分間)に活動する様子を10倍速の早送り映像でご覧ください。 

最も目についたのは、クロボシヒラタシデムシOiceoptoma nigropunctatum)の成虫および幼虫です。 
多数の成虫が溜め糞上で活発に徘徊し、配偶行動(求愛および交尾)を繰り広げていました。 
その恋愛ドラマだけ注目しても、交尾(マウント)中の♀♂ペアにあぶれ♂がしつこく横恋慕したりして、なかなか面白いです。 
♂は♀の産卵まで交尾後ガード(配偶者ガード)しているのかもしれません。 
クロボシヒラタシデムシの幼虫は三葉虫のような形ですが、幼虫よりも成虫の方が動きが素早い(歩行速度が早い)です。 


途中から1匹のヨツボシモンシデムシNicrophorus quadripunctatus)が糞塊の中央部から表面に現れて徘徊を始めました。(@6:03〜) 
最後はタヌキの溜め糞場wbcから離れて行きました。 
もしかして産卵を済ませた♀なのかな? 


糞塊を時計盤と見立てたときに、3時の位置から青紫色の金属光沢があるセンチコガネPhelotrupes laevistriatus)が1匹、溜め糞の表面に顔を出てました。(@1:51〜) 
幼虫の餌として自分の巣穴にタヌキの糞を搬入するかと思いきや、すぐに奥へ引っ込んでしまいました。 
その後もときどき巣口に出入りしているものの、頭隠して尻隠さずの状態です。 
どうやら巣穴を奥に掘り広げているようです。 
周囲を徘徊する他の虫たちも、隙あらばセンチコガネの巣穴に潜り込もうとしています。(穴があったら入りたい) 


ハネカクシ類の成虫も溜め糞上をうろついていますが、肉食性で動きが素早いために、早回し映像では分かりにくいです。 
アカバトガリオオズハネカクシ(旧名アカバハネカクシPlatydracus brevicornis)かな? 


食糞性のハエ類は、メタリックな青色や緑色に輝くキンバエ類が少数ながらも来ていました。 
地味なハエ(ニクバエの仲間?)は種類を見分けられませんでした。 
他には微小なハエが多数、溜め糞上で翅を開閉誇示しています。 
溜め糞に産み付けられたハエの卵から孵化した幼虫(蛆虫)が多数、蠢いているはずですが、この映像では小さくてよく見えません。 
ウジ虫は油断していると、ハネカクシの成虫に捕食されてしまいます。 

ときどき黄色のハエが溜め糞の上を低空で飛び回っていますが、糞塊に着陸することはありません。 
ベッコウバエかもしれませんが、おそらくキイロコウカアブPtecticus aurifer)でしょう。 


微小なアリ(種名不詳)も集まっていました。 


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2024/09/05

ヤブガラシの花蜜を吸うコアオハナムグリとセグロアシナガバチ♀

 

2023年9月上旬・午後14:15頃・晴れ 

道端に蔓延るヤブガラシのマント群落でセグロアシナガバチPolistes jokahamae)のワーカー♀およびコアオハナムグリGametis jucunda)が訪花していました。 
意外にも、コアオハナムグリとヤブガラシの組み合わせは初見です。 



採寸していませんが、このセグロアシナガバチはとても小型のワーカー♀でした。 
連日の酷暑で獲物が取れず(獲物となるイモムシが少ない)、小型のまま成虫が羽化したのだろうと推測しました。 

ヤブガラシの花から花へ忙しなく歩き回るセグロアシナガバチ♀が、じっとしているコアオハナムグリの背中に乗って踏みつけたのですが、コアオハナムグリは特に気にする様子もありません。 
セグロアシナガバチはコアオハナムグリを獲物として認識してませんし、コアオハナムグリは脚を高々と持ち上げる威嚇姿勢になりませんでした。 

少し飛んで隣の花に移動したセグロアシナガバチ♀は、蜜量が多い花を見つけると、じっくり吸蜜を始めました。 


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2024/07/09

池で溺れたノシメトンボ♂を捕食するクロゲンゴロウの群れ

 

2023年10月上旬・午後14:20頃・くもり時々晴れ(小雨)

山麓にある小さな池に久しぶりに来てみると、ガマなどの抽水植物が生えていて、水面で何かが暴れていました。 
よく見ると、溺れかけたノシメトンボ♂(Sympetrum infuscatum)の胸背に水面下でクロゲンゴロウCybister brevis)が食いついていました。 

すぐ隣りにあるもう一つの池で早春にクロゲンゴロウを見たのが生まれて初めてで、今回が二度目の出会いでした。 
捕食行動はもちろん初見で、興奮しながら長々と撮影しました。

そもそもノシメトンボ♂がなぜ池で溺れたのか謎です。 
寿命で弱っていたのか、それとも羽化直後なのかな? 
ノシメトンボ♀は水のある場所には産卵しないはずなのに、♂は水辺で交尾相手の♀を待ち伏せするとは思えません。

関連記事(3、4、7、9年前の撮影)▶  


見つけたときにはノシメトンボ♂はまだ生きていて、脚を動かしたり翅を力なく羽ばたかせたりして暴れていました。 
しかし、水中から空に飛び立つことは不可能で、もはや逃れることはできません。 

撮影中は気づかなかったのですけど、水面下に沈んだガマ(?)の枯れ葉にヤゴ(種名不詳)が捕まっていました。 
断末魔のノシメトンボ♂が水面で激しく羽ばたいて波紋が広がったので、ヤゴは水中に潜って逃げてしまいました。 
ヤゴも肉食性なのに、獲物の争奪戦に参戦しませんでした。 
丈夫な装甲に守られたクロゲンゴロウには勝ち目がないのでしょうか。 

しばらくすると、クロゲンゴロウaはトンボの右後翅を根元から食い千切りました。 
獲物から取り外した翅だけ抱えて持ち去ろうとしても、トンボの翅は浮力があるので、クロゲンゴロウは潜水できません。 
切除した翅の根元に付いた肉片を齧ってから手放しました。 
獲物の本体を見失ったようで、しばらく水中をうろうろと泳ぎ回っています。 

その間に別個体bのクロゲンゴロウが左から泳いで登場し、獲物に食いつきました。 
やはり獲物の胸背に背後から噛み付いています。 
細長い口吻を獲物に突き刺して体外消化するカメムシ目の水生昆虫と違って、ゲンゴロウの仲間は獲物を本当に齧って咀嚼して食べてしまいます。 

クロゲンゴロウbの背後から先客の個体aが戻ってきました。 
獲物をめぐる争奪戦が始まり、ぐるぐると水中を追い回しました。 
後脚を広げて互いに相手を蹴ろうとしても、流線型の体なので滑って打撃の効果はなく、獲物を独り占めするのは無理なようです。 
ようやく折り合いをつけると、仲良く並んで獲物の腹背の上部を齧り始めました。 
よく見ると、2匹が後脚を伸ばして互いに牽制しながら獲物の別々の部位を捕食しています。 

池に日光が射すと、クロゲンゴロウの鞘翅が光沢のある深緑色と判明しました。 
腹端(鞘翅の下)からときどき泡が出ているのは、呼吸のための気泡なのでしょう。 

餌食となったトンボは絶命したのか、暴れなくなりました。 
2匹のクロゲンゴロウが互いに逆方向から獲物に食いついています。 
1匹が獲物から一旦離れ、泳いで戻ってこようとすると、ライバルと争奪戦になりました。 
互いに干渉しないように位置取りする必要があります。 

クロゲンゴロウがノシメトンボ♂の胸部を食べ進んだ結果、その頭部が切り離されました。 
(断頭の瞬間を撮り損ねてしまいました。 )
強い風が吹くと、水面にぷかぷか浮いているノシメトンボ頭部が流されていきます。 
クロゲンゴロウは獲物の生首には見向きもしないで胴体にかじりついています。 
ノシメトンボの脚も胸部から食いちぎられて外れ、水中のガマ?枯れ葉の上に落ちていました。 

後半になって、3匹目のクロゲンゴロウcが獲物に集まっていたことに気づきました。 
ときどき三つ巴の争奪戦になります。 
1匹のクロゲンゴロウがライバルを出し抜いて獲物を持ち去ろうとしても、獲物の傷口から体液が水中に滲み出るので、その匂いをライバルが嗅ぎつけてしまうようです。 

水生昆虫に詳しい人なら、クロゲンゴロウの性別を外見で見分けられるのですかね? (教えて欲しいです。)
今回は捕食行動のみで、求愛や交尾などの配偶行動は全く見られませんでした。 

獲物が食べ尽くされるまで一部始終を微速度撮影したかったのですが、この日は三脚を持参していなくて残念でした。 
おまけに小雨がぱらつき始めてカメラが濡れそうになり、気が気ではありませんでした。
 
次回はトンボなどの生き餌を池に投入して溺れさせれば、暴れる動きに反応してゲンゴロウなどの捕食者が集まってくる様子を観察できるかもしれません。 
撮影後にクロゲンゴロウを捕獲しようか迷ったのですが、採集用の網も持ってきていませんでした。 
被っていた帽子で掬えば採れたかな?
レッドデータブックによれば、クロゲンゴロウは山形県で絶滅危惧種Ⅱ類(VU) に分類されているらしいので、採集禁止かもしれません。

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2024/07/07

真っ二つに切断されたヒラタクワガタ♀変死体の謎

2023年9月下旬 

里山で急斜面の細い山道を登っていたら、クワガタの死骸が転がっていました。 
周囲は雑木林です。 
腹部から分離した頭胸部がすぐ隣に落ちていました。 
鳥に捕食されかけたのかな? 
体を真っ二つに切り離されて死んだのか、それとも死後に分解されたのか、不明です。
クワガタの死骸にアリも群がっていないのは不自然ですけど、死後間もない新鮮な死骸なのかもしれません。 

クワガタ類に疎い私は、てっきり普通種のコクワガタ♀だと初め思ったのですが、どうやらヒラタクワガタ♀(Dorcus titanus)のようです。 

参考サイト:クワガタ メスの見分け方
・頭部と胸部の縁が丸く連続。 胸部は真ん中付近が一番幅が広い。 
・前肢脛節のふくらみが大きくバチ状に広がり外縁が丸まったラインを描く。
ヒラタクワガタだとしたら、私にとって嬉しい初見になります。(♂も見つけたことがありません) 
山形県の2015年レッドリストでは「情報不足」とされています。
分布の北限は日本海側は山形県酒田市らしいのですが、雪国では住みにくくて個体数が少ないのかな?
熱帯地方出身のため幼虫が冬期零度以下の温度に耐える耐寒越冬状態になれない (wikipediaより引用)

近年の地球温暖化や暖冬で分布を北に広げているのかもしれません。

wikipediaでヒラタクワガタの生態に関する記述を読むと、
気性は大変荒く、大顎で挟む力は強烈であり、この大顎が凶器となってオスがメスを殺すことも多い。 
とありますが、ストレスの多い飼育下ならともかく野生状態でも同種の♀殺しがあるのでしょうか?
そんな野蛮な形質が進化の過程で淘汰されずに残っている理由が気になります。
求愛しても交尾拒否した♀を殺してしまうのですかね?


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カブトムシとクワガタの最新科学 (メディアファクトリー新書)
大顎の内歯を見るため、挟まっていた枯葉の欠片を取り除いた。
発見時の状況。採寸し忘れました。裏返して腹面の写真も撮るべきでしたね。

2024/06/12

ヒヨドリの腐乱死体に群がるハエとヨツボシモンシデムシ(野鳥)

 

2023年9月中旬・午後13:40頃・晴れ 

里山で急斜面の細い沢を下っていると(沢登りの逆)、急に強い死臭がしました。 
辺りを探すと、沢の横でヒヨドリHypsipetes amaurotis)の死骸が仰向けで転がっていました。 
死後数日経っているようで、腐敗が進んでいます。
ヒヨドリの死因が不明です。 
沢の水を飲んだり水浴びしていたヒヨドリが捕食者に襲われたのだとしたら、どうして死骸が何日もまるごと残っているのでしょう?


私が近づくと死骸からハエの群れが飛び立ち、辺りを飛び回るハエの羽音がウヮーンと鳴り響きます。 

死肉食性の昆虫を観察するために、拾った小枝でヒヨドリの死骸を裏返してみると、鮮やかなオレンジ色が目に付きました。 
少なくとも6匹のヨツボシモンシデムシNicrophorus quadripunctatus)が腐敗の進む死骸の下面に潜り込んでいて、腐肉を食べていました。 
腐肉に執着しているようで、ヨツボシモンシデムシを小枝でつついても逃げようとしません。
仰向けにひっくり返り、起き上がろうともがいている個体もいます。 
「頭隠して尻隠さず」の状態で腹端を振っているのは、威嚇行動かもしれません。 
死骸の横の小石の下にもヨツボシモンシデムシが隠れていました。

後になって気づいたのですが、ヒヨドリが死んだ地点は必ずしも沢の横とは限りません。
ヨツボシモンシデムシは死骸を見つけるとその下に潜り込み、力を合わせて運んでから地中に埋めるからです。


現場では気づかなかったのですが、フラッシュを焚いて撮った写真を見直すと、ヨツボシモンシデムシ以外の小さな甲虫も数匹写っていました。 
謎の甲虫の名前が分かる方がいらっしゃいましたら、教えて下さい。
しばらくすると、キンバエLucilia caesar)の仲間やニクバエの仲間が死骸に舞い戻ってきました。 

足元が不安定な崖で体勢が悪かったこと、死臭をなるべく吸い込まないように息を止めて撮影していたこと、飛び回るハエが私の顔に絶え間なくぶつかってくるのに閉口したことから、撮影が雑になってしまいました。 
状況説明の動画を撮る際に、カメラを焦って振り回してしまう悪癖が出ました。 
酔いそうな映像になってしまったので、仕方なくスローモーションに加工しました。 

ヒヨドリの死骸ごと採集してヨツボシモンシデムシを飼育すれば、有名な育児行動を観察できたかも知れません。 
今回はあまりの強烈な腐臭にたじろいでしまい、そこまでする根性がありませんでした。 
野鳥の腐乱死体を運んでいる途中で警察に職務質問されたりしたら、説明するのが厄介です。
それが無理でもヨツボシモンシデムシを採集して、鞘翅の裏面の色を確かめるべきでしたね。 



自然界でヒヨドリの死骸が生物分解される様子を微速度撮影しても面白そうです。 
残念ながら今回はトレイルカメラなどの機材を持ってきていませんでした。 

沢登りしていると清流に見えて、沢の水を直接飲みたくなります。
しかし、源流域で野生動物が沢に糞尿を排泄したり死骸が転がっているのを知ると、そんな気は失せてしまいます。
関連記事(1年前の撮影)▶ 


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・舘野鴻『しでむし』 

2024/05/28

枯木の蔓を登り化粧するヤハズカミキリ♀

 

2023年8月下旬・午後14:05頃・晴れ 

平地の二次林で枯れかけの灌木(樹種不明:ミズキ? オニグルミ?)に巻き付いた木質の太い蔓(種類不明:フジ? ツルウメモドキ?)に見慣れないカミキリムシが止まっていました。 
図鑑で調べてみると、ヤハズカミキリ♀(Uraecha bimaculata bimaculata)と判明。 
コブヤハズカミキリとは全くの別種らしいのに、紛らわしい名前です。 
図鑑の記述を読むと、ここでヤハズカミキリを発見できた理由も納得しました。
平地から山地に生息し、雑木林や河畔林などで普通に見られる。成虫は6〜8月に出現し、枯れ葉を後食する。昼間、折れてぶら下がった枝に付いた枯れ葉の中によく潜んでいる。 ホスト:各種広葉樹の枯れ枝 (『新カミキリムシハンドブック』p85より引用)

 

新しい枯れ葉や枯れ枝によく集まり、昼間は枯れ葉の丸まった中に潜んでいることが多い。またそのような枯れ葉を成虫は食べる[3]。 (wikipedia:ヤハズカミキリより引用)
私がレンズを近づけて接写しても、初めは無反応でした。 
側面から見ても腹端の産卵管を伸ばしていないので、産卵行動ではなさそうです。 

やがて警戒を解くと、長い触角を左右にゆっくり振り立てて、太い蔓を伝って登り始めました。 
立木の幹には移らず、木質の蔓を上に登り続けます。 

蔓の途中で立ち止まると、身繕いを始めました。 
左の前脚と中脚同士で擦り合ったり、触角を左脚で拭ったりしています。 
このとき、左上に丸まった枯れ葉(オニグルミ?)が見えますが、その中に潜り込むことはありませんでした。 

化粧が済むと、再び木登りを再開。 
翅を広げて飛び立つかと期待したのですが、ひたすら上に登っていきます。 
 手の届かない高所に登ってしまう前に捕獲しようと私が手を伸ばしたら、身の危険を感じたヤハズカミキリ♀は死んだふり(擬死)して地面に落ちました。 
擬死落下のシーンを撮れてないのが残念です。 
焦げ茶色の目立たない保護色なので、林床で見失ってしまいました。 
捕虫網の代わりに帽子などを広げて下で受け止めるべきでしたね。 


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2024/05/13

夜明け前の林床でニホンアナグマとニアミスした謎の発光生物?【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年8月下旬・午前4:18(日の出時刻は午前4:58) 

夜明け前にニホンアナグマMeles anakuma)が単独で旧営巣地にやって来ました。 
地面の匂いを嗅ぎながらゆっくりと左に移動すると、対面のミズキ立木に固定したトレイルカメラの赤外線LEDが点灯しました。 

アナグマの登場自体は別に面白くもなんともありませんが、気になる謎の発光生物?が監視映像に写っていました。 
アナグマのすぐ手前の地面にある細い落枝(蔓?)を伝って、謎の小動物が白い点のように発光しながら右へ移動していたのです。 
白点の動きは緩慢なので、後半は1.5倍に拡大した上で5倍速の早回し映像にしてみました。(@0:37〜) 
初めはなんとなく、落枝に沿って歩くカエルの目が暗視カメラの赤外線を反射しているのかと思いました。 
最後に白点が消えたのは、死角に移動したのか、それともカエルが目をつぶったと考えれば説明できそうです。 
落枝上をアリの行列が昼も夜も往来しているので、そこでカエルが待ち伏せしていれば食べ放題で獲物を捕食できそうです。 

もしかすると、謎の発光生物は陸生ホタルの幼虫かもしれない、と思いつきました。 
やや遠いので拡大しても正体が見えませんし、ホタルの幼虫にしては動きが速すぎるかもしれません。 
マドボタルの幼虫なら、発光が点滅するはず?



謎の発光生物の正体が何にせよ、アナグマは暗闇の林床で動く獲物に気づかなかったのか、見逃して立ち去りました。 
(カメラの赤外線を反射していただけだとすれば、アナグマの目には光って見えていません。) 
ホタルの発光が天敵に捕食されないようにする警告色だとすれば、アナグマは見事に忌避したことになります。 
ホタルは体内に毒を溜め込んでいて、緑色の光は夜行性の捕食者に対する警告なのです。 
アナグマが立ち去って捕食されるリスクが無くなったから、発光を止めたのかもしれません。 
以上、ホタルの幼虫だと面白いのにな…という私の願望(妄想)だけで記事を1本書いてみました。

実際に現場入りして夜の二次林で陸生ホタルの幼虫を探してみたら面白そうです。 
しかし、夜行性のアナグマやタヌキとニアミスしてしまう可能性が高いです。
夜間調査のせいで野生動物が怖がって森から逃げてしまい、トレイルカメラに写らなくなってしまうのでは本末転倒です。 
それでも、トレイルカメラの暗視映像で夜に蛍の光を撮ったときにどのように写るのか、別な場所で確かめる必要がありますね。
飼育下のアナグマにホタルの幼虫を給餌してみて、捕食するかどうか、誰か実験して欲しいものです。







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2024/05/12

ベニカナメモチ(レッドロビン)の花蜜を舐めるツマグロキンバエ

 

2023年5月下旬・午後12:30頃・くもり強風 

車道に面したベニカナメモチ(=レッドロビン)の生垣に花が咲いていました。 
レッドロビンに白い花が咲くとは知らず、初見でした。 
ツマグロキンバエStomorhina obsoleta)が訪花していました。 
強風で激しく揺れる花にハエは必死にしがみついていました。 
動画撮影には最悪のコンディションです。 
花序の風揺れを抑えるために、動画を撮りながら左手で枝を押さえ、手前にそっと引き寄せました。 
普通こんなことをしたら、警戒心の強いハエはすぐに逃げてしまうはずなのに、強風下では飛びたくないようです。 
口吻を伸縮させる動きが無いので、ただ花序に止まって風が止むのを待っているだけのようです。 
後半はようやく警戒を解いて、レッドロビンの花序を歩き回るようになりました。 

撮影中は気づかなかったのですが、同じ花序の右下に微小なゴツゴツした甲虫が来ていました。 
おそらくヒラタハナムグリ♂(Nipponovalgus angusticollis angusticollis)と思われます。 

関連記事(2年前の撮影)▶ ヒメウコギの花に集まるヒラタハナムグリ♂ 
右下に別種のキンバエ?が止まってたのに気づきませんでした。

2024/05/10

タヌキの溜め糞場で必死に配偶者ガードするオオヒラタシデムシ♂

 

2023年7月下旬・午後14:35頃・ 晴れ 

防風林でスギ倒木の横にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が残した溜め糞場phでオオヒラタシデムシNecrophila japonica)が三つ巴で組んずほぐれつしていました。 
どうやら、交尾中の♀♂ペアにライバル♂が横恋慕して♀を強奪しようとしているようです。 
横倒しになった♀♂ペアもマウントしているだけで交尾器は結合していません。 
交尾した後も♀が産卵するまで浮気しないように♂は配偶者ガードしているのでしょう。 

♀にマウントした♂が腹端を左右に激しく振っているのは、ライバル♂に対する威嚇牽制のつもりだと思うのですが、有効な反撃になっているとは思えません。 
腹端から何か刺激臭でも放出しているのかな? 
そんなことよりも早く(再び)♀と交尾して結合を続ければ、何よりも有効な浮気防止になると思うのですけど…。
溜め糞場で栄養を摂取して産卵したい♀にとっては迷惑なだけかもしれません。 

武器を持たないオオヒラタシデムシ♂同士は♀を巡る闘争に一体どうやって決着をつけるのでしょう?
早い者勝ちで交尾するしかない気がします。 
他に急ぐ用事のあった私は、この3匹の成り行きを見届ける余裕がありませんでした。

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2024/05/02

ホンドタヌキの溜め糞場に誘引され新鮮な糞を食すオオヒラタシデムシ

 

2023年8月上旬・午後12:00頃・晴れ 

防風林のスギ倒木横にあるホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の溜め糞場phを定点観察しています。 
スギの落ち葉が堆積した林床を1匹のオオヒラタシデムシNecrophila japonica)成虫が溜め糞場phに向かって歩いて来ました。 
新鮮な糞便臭を触角で嗅ぎ取って誘引されたのでしょう。 
 溜め糞上で獲物を待ち伏せしていた肉食性のサビハネカクシOntholestes gracilis)は慌てて逃げ、糞塊の小穴に潜り込みました。 
頭かくして尻隠さず。 
体が大きくて硬い鞘翅で守られたオオヒラタシデムシは、サビハネカクシが狩る対象にはならないようです。

溜め糞の縁に辿り着くと、オオヒラタシデムシは直ちに新鮮な糞を食べ始めました。 
咀嚼する口器の動きがしっかり見えます。 
いつも背側から見下ろすように撮影していたので、食糞シーンは初見です。 

オオヒラタシデムシの体表に付着した赤ダニ(種名不詳)が何匹も動き回っています。 
このダニはシデムシに寄生しているのではなく、ただ便乗(ヒッチハイク)しているだけです。 
…と言われているのですが、溜め糞や死骸などの新天地に辿り着いた後で赤ダニがシデムシの体から降りるシーンを私は未だ見たことがありません。 


関連記事(7年前の撮影)▶ オオヒラタシデムシに便乗するダニ 


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以下の写真は、同じ日に撮った溜め糞場phの様子です。
動画撮影を優先してから写真撮影のために近づくと、溜め糞に集まっていた虫がすべて逃げてしまいました。

2024/04/28

ホンドタヌキの溜め糞場に集まるオオヒラタシデムシとクロボシヒラタシデムシについて

 

2023年7月中旬・午後12:30頃・晴れ 

ホンドタヌキNyctereutes viverrinus)がスギ防風林の倒木横に残した溜め糞場phを定点観察しています。 
溜め糞に集まるシデムシ類に変化がありました。 



それまでは赤黒のクロボシヒラタシデムシOiceoptoma nigropunctatum)の成虫および幼虫だけだったのに、真っ黒なオオヒラタシデムシNecrophila japonica)の成虫も多数来るようになりました。 
ペアが成立して交尾しているオオヒラタシデムシ♀♂も居ます。
並んで糞食していたシデムシ幼虫同士の小競り合い(闘争・逃走シーン)が撮れていて、興味深く思いました。(@0:20〜) 
餌は豊富にありますから、占有行動の必要はないと思っていました。(金持ち喧嘩せず) 

甲虫(鞘翅目)では他に、肉食性のサビハネカクシOntholestes gracilis)も1匹だけ、下に掲載した写真に写っています。 

次は双翅目について。
メタリックグリーンに輝く常連のキンバエ(種名不詳)とは別に、見慣れない微小でカラフルなハエが溜め糞上で翅紋を誇示していました。 
この気になるハエは別の溜め糞場wbc-1にも来ていたので、改めて別の記事で紹介することにします。



昆虫以外では、オカダンゴムシArmadillidium vulgare)およびワラジムシPorcellio scaber)の等脚目が溜め糞に群がっています。 


【考察】 
私のフィールドで溜め糞場に集まるシデムシ類の季節消長を定量的にきっちり調べた訳ではありませんが、どの溜め糞場でも毎年春になって真っ先に現れるのがクロボシヒラタシデムシで、オオヒラタシデムシは遅れてくるという印象があります。 
まるで登場役者が交代するように、クロボシヒラタシデムシが居なくなった後もオオヒラタシデムシがしばらく残ります。 
つまり、この2種は出現季節を少しずらすことで、溜め糞場という同じニッチに棲み分けをしているようです。

クロボシヒラタシデムシは成虫越冬で、いち早く休眠越冬から覚めるようです。 
それに対してオオヒラタシデムシの成虫は夏になってようやく羽化してくるのか?と推測したのですが、wikipediaによるとオオヒラタシデムシも成虫越冬らしい。 
となると、オオヒラタシデムシ成虫が遅れて溜め糞場に出現する理由が分かりません。 
・まさか夏になるまで休眠越冬から覚めないのでしょうか?
雪国では幼虫または蛹で越冬するのではないか?と定説を疑いたくなります。 
もしかするとオオヒラタシデムシは寒さに弱くて、雪国では越冬に成功する成虫の数がきわめて少ないのでしょうか?
・今のところ私は目視で溜め糞場のシデムシ類を探しているだけです。
したがって、もしもオオヒラタシデムシが獣糞の中に潜り込んでいるとしたら、見えてないだけという可能性があります。
・あるいは越冬直後のオオヒラタシデムシは、獣糞よりも死肉への嗜好性が高いのかもしれません。
腐肉を使ったトラップを仕掛けてみて、オオヒラタシデムシの成虫が春から現れるかどうか、確かめてみたいものです。

シデムシ類の幼虫は三葉虫みたいな形態をしているのですが、私は種類の見分け方を知りません。 
シデムシ類の幼虫を飼育してみることが謎解きのヒントになるかもしれません。

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