2021/10/23

エゾクロツリアブ♀:産卵前の尾端接地行動?

 

2021年7月下旬・午前11:40頃・晴れ 

里山で砂利の敷かれた山道をエゾクロツリアブ♀(Anthrax jezoensis) が低空で忙しなく飛び回っていました。 
短い出会いを1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 
地面に繰り返し産卵しているのかと撮影中は思いました。 
しかしエゾクロツリアブの寄主は借坑性のマメコバチOsmia cornifrons)とのことで、だとすればこんな不毛の砂利道なんかに営巣するはずがありません。 (※追記参照)
山麓の果樹園まで下れば、大量のヨシ筒束がマメコバチの巣として用意されています。
関連記事(3ヶ月前の撮影)▶ リンゴ園でヨシ筒の巣箱に出入りするマメコバチ♀【HD動画&ハイスピード動画】
寄主の巣への産卵行動でなければ、産卵前の尾端接地行動かもしれません。 
この仲間のツリアブは産卵前に、卵がべたつかないように予め砂粒でコーティングするのだそうです。 
そのために腹端を砂やゴミなどに擦り付ける行動をするらしく、「sand chamber」と呼ばれる部位に砂を貯えておくらしい。
他の方のブログでは「尾端接触行動」と呼んでおられますが、「接触行動」では曖昧なので、「接地行動」と呼ぶことを素人ながら勝手に提唱します。 
関連記事(1、9年前の撮影)▶  
スキバツリアブ♀:産卵前の尾端接地行動 
ビロウドツリアブ♀がホバリング飛行しながらお尻を地面にチョンチョン
動画撮影の直後に私の履いていた迷彩柄のズボンにしばし止まってくれました。 
前翅の特徴的な黒紋からエゾクロツリアブ♀と判明したのです。

※【追記】 
別の可能性として、エゾクロツリアブの寄主はマメコバチに限らないのかもしれません。
掘坑性のコハナバチやヒメハナバチの巣ならこういう山道にあっても不思議ではありません。
だとすれば、今回のエゾクロツリアブ♀は寄主の巣に産卵していたのでしょう。
見下ろすアングルだけでなく、横からも撮影したいところでした。


アブラゼミ♀を庭木の枝の刺に突き刺して捕食するモズ♂(野鳥)

 

2021年7月下旬・午後14:45頃・くもり 

郊外の住宅地で何か茶色の獲物を運んで飛ぶモズ♂(Lanius bucephalus)を目撃しました。 
そのままモズ♂は、民家の庭に植栽された針葉樹の茂みに飛び込みました。 (映像はここから。) 
止まり木はイチイのようです。(秋に赤い実がなるかどうか、要確認。ヒマラヤスギやモミかも?) 
針葉がついてない枯枝の部分に止まってくれたので、撮影しやすくて助かりました。 
ちなみに、イチイ?の手前に見える低い針葉樹はドイツトウヒ(別名オウシュウトウヒ)です。 

今回の捕食メニューはアブラゼミ♀(Graptopsaltria nigrofuscata)でした。 
モズ♂はイチイの尖った枝先に獲物の胸部を背面から串刺しに固定し、茶色の翅を嘴で毟り取っていました。 
アブラゼミはもう既に死んでいて、全く暴れません。 
アブラゼミの腹面に発音器官の腹弁が見えなかったので、餌食となった個体は♀と判明しました。 
てっきり樹上で鳴いている声を頼りにセミの♂を捕食するのかと思いきや、鳴かない♀とは意外でした。
モズが一体どうやって捕まえたのか、興味があります。
飛んでいるアブラゼミ♀を素早く掴まえたのでしょうか?
それとも路上でよく転がって死んでいるセミの死骸を拾ってきたのかな?(スカベンジャー)

獲物の翅を完全に除去するとモズはアブラゼミ♀を串から外し、珍しく右足で掴みました。(@0:55) 
すぐにまた獲物を咥え直し、初めの枝の刺にしっかり刺し直しました。 
食材の下処理が済むと、ようやく獲物を食べ始めました。(@1:12) 
アブラゼミ♀の肉片を少しずつ啄むと、美味そうに食べています。 
食事の途中で食べ残しを枝の刺に残したまま、モズ♂はなぜか下の枝に跳んで移動しました。(@1:55) 
捕食で汚れた嘴を目の前の小枝で拭っています。 
再び食卓に戻ると、食事を再開。(@2:17) 
食べ進めると串に刺したセミが不安定になります。 
獲物を串から外して咥え、改めて刺にしっかり刺し直しました。(@3:04) 
完食する前に、啄んだ獲物をうっかり下に落としてしまいました。(@3:39) 
モズ♂は慌てて取りに行くも、見失ったようです。 

しばらくすると同じ食卓に戻って来てくれましたが、空荷でした。 
さほど落胆した様子もなく、食後のモズ♂は嘴をあちこちの枝に念入りに擦りつけて汚れを拭い取っています。 
どんどん上の枝に登り、イチイの枝葉の陰に隠れてしまいました。 
私が長時間ずっとカメラを向けているので、警戒したようです。 
ようやく落ち着くと、辺りをキョロキョロ見渡しています。 
視界の開けた枝に移動すると、こちらにお尻を向けてから白い糞をポトリと排泄しました。(@5:41) 
排便後は再び枝葉の茂みの陰に隠れました。 
時おり遠雷♪が鳴り響き、今にも夕立が降りそうです。 

関連記事(5年前の撮影:獲物はトンボ?)▶ 虫を解体・捕食するモズ♂(野鳥) 
モズの捕食シーンを初めてじっくり観察できて感動しました♪ 
モズ♂は獲物の固定具として木の枝の刺を使ったことになりますが、これは一種の道具使用と言えるでしょうか? 
他の種類の肉食性鳥類なら足で獲物を押さえつけながら嘴で獲物を引きちぎって食べますが、モズは足を(ほとんど)使いませんでした。 
嘴の形状からモズは小さな猛禽と例えられますが、猛禽類と違ってモズは足の力が弱いのでしょうか? 
足の代わりに木の刺を道具として使っているように見えます。 
モズのくちばしは、先がとがっていてカギの形にまがっています。するどいまなざしはハンターのしるし。それにくらべると、足は細長くてかよわそう。(中略)えだにつきさし、ひきちぎってたべています。たしかに、あの足の細さでは、えものをおさえつけてひきちぎることは無理ですよね。えだにつきさすのは、えさをたべるためのモズの工夫だったんです。人間でいえば、はしやフォークを使うのと同じこと。(嶋田忠『モズ:不思議なわすれもの』p10〜15より引用)
枯枝の横から生えた短い刺は鋭く、まるで血塗られたように赤茶色でした。 
モズは食事の度に適当な刺のある枝を縄張り内で臨機応変に探すのかな? 
お気に入りの食卓として、この枝を繰り返し使っているのかもしれません。 
もしもモズ♂がイチイの枯枝を嘴でポキンと折って折口を鋭く尖らせたのだとしたら、予め食事の道具(フォーク、串、食器)を自分で作ったことになります。(道具作り) 
定点観察でこの枝を見張っていれば、モズの捕食シーンを繰り返し観察できそうです。 
センサーカメラを近くの樹上に設置して無人で監視したら…と夢は膨らみます。 

私はこれまでフィールドで「モズの早贄」を一度しか見つけたことがありません。 
関連記事(4年前の撮影)▶ モズ(野鳥)の早贄にされたコオロギ♂ 

今回の捕食シーンの観察を踏まえると、「モズの早贄」はただの食べ残し(忘れ物)ではないかと個人的には思うようになりました。 
しかし、近年になってモズが早贄を立てる理由(究極要因)が生物学的に解明されています。
その研究結果によると、貯食した早贄はモズ♂の栄養食であり、繁殖期に早口で歌えるようになった♂は♀にもてるのだそうです。(日本語版プレスリリースのPDFはこちら。)
Nishida, Yuusuke, and Masaoki Takagi. "Male bull-headed shrikes use food caches to improve their condition-dependent song performance and pairing success." Animal Behaviour 152 (2019): 29-37.

モズの『はやにえ』の機能をついに解明!―はやにえを食べたモズの雄は、歌が上手になり雌にモテる― (大阪市立大学の公式サイトより)


アブラゼミの翅を毟る
アブラゼミに腹弁が無いので♀
獲物を刺に再固定
食後の全景


2021/10/22

スギ幼木の葉裏に作った巣を守るキボシアシナガバチ♀の警戒態勢

 

2021年7月下旬・午前10:50頃・晴れ 

里山でヒトがあまり通らない山道(整備が行き届かず、ほぼ廃道状態)を薮漕ぎしながら進んでいると、前方にキボシアシナガバチPolistes nipponensis)の巣を見つけました。 
スギ(杉)幼木の葉裏に吊り下げられた巣上でこちらを威嚇している蜂に気づいた私は焦って立ち止まり、蜂に刺されずに済みました。 
幸い小規模なコロニーで、在巣の個体は3匹の♀だけでした。 
残りのワーカー♀は外役に出かけているのでしょう。 

巣の周囲の茂みを軽く揺らすと、こちらを向いていた2匹のキボシアシナガバチ♀が半開きにした翅を震わせて威嚇の姿勢(臨戦体勢)になりました。 
神経質そうに大顎を開閉させたり、持ち上げた足先をピクピク震わせたりしています。(武者震い?) 
巣盤の陰にいるもう1匹の個体は私の姿が見えてないのか、無反応でした。 
左下の個体は複眼が黒いので、羽化直後のワーカー♀と分かります。 
右下の個体は大型で複眼が茶色なので、これが女王蜂(創設女王)かもしれません。 

巣盤の中央部の育房は黄色い繭で蓋がされています。 
これはキボシアシナガバチの特徴の一つです。 
外側の育房には幼虫が育っています。 
巣柄付近の巣盤天井部だけ黒いのは、タール状のアリ避け物質を塗布してあるからです。
アシナガバチの天敵はアリです。 

巣を刺激しなければ、アシナガバチが私に対して飛びかかって刺しに来ることはありません。 
今回はキボシアシナガバチの営巣木を揺らさないで山道を直進するのは不可能だったので、少し迂回しました。 
アシナガバチ♀が示すボディランゲージを正しく読み取って正しく対処すれば、無闇に恐れることはありませんし、無用な殺生(駆除)も不要です。 
私の場合、アシナガバチに刺されるリスクが一番高いのは、山中でガサガサと強引に薮漕ぎしているときです。 
アシナガバチの巣があると知らずにヒトが激しく揺らしてしまうと、怒った蜂に刺されてしまいます。(経験済み) 
今回は直前で巣の存在に気づいてラッキーでした。 
低い位置に営巣していたので、少し離れてからしゃがんで動画に撮りました。
山道も人通りが減り整備しなくなるとあっという間に雑草が生い茂り森林への遷移が進んでしまいます。

アシナガバチ巣盤の繭キャップは白いのが普通ですが、キボシアシナガバチおよびヤマトアシナガバチ※の巣では繭キャップが鮮やかな黄色でよく目立ちます。
これは巣にうっかり近づきそうになってしまった敵への警告色かもしれません。
ただし、これは各々が図鑑で勉強するか、一度痛い目に遭わないと学習できません。


※【追記】
私のフィールドでヤマトアシナガバチを一度も見かけた記憶がありません。
不思議に思っていたところ、小松貴『絶滅危惧の地味な虫たち (ちくま新書)』という本を読んでいたら疑問が氷解しました。
(ヤマトアシナガバチは)関東あたりから西の日本各地の平地に広く分布し、温暖な地域ほど普通に見られる。(p211より引用)

そもそも寒冷な東北地方には分布していないと知りました。

そして近年めっきり数が激減し、その原因が不明なことから、環境省のレッドリストでは情報不足にしていされているそうです。

 

 

オミナエシの花を舐めるツマグロキンバエ

 

2021年7月下旬・午後14:40頃・晴れ 

郊外の家庭菜園の片隅に咲いたオミナエシの群落でツマグロキンバエStomorhina obsoleta)が訪花していました。 
長い口吻を伸ばして花蜜や花粉を舐めていました。 
少し飛んで隣の花序へ移動します。 
翅の先端部が黒いから「ツマグロ」です。
オミナエシの花から漂う独特の悪臭は、送粉者のハエを誘引するためかもしれません。 

マクロレンズを装着してツマグロキンバエの複眼の縞模様などをじっくり接写したかったのですけど、花の風揺れが止まないので諦めました。 
無風の日に改めて撮り直すことにします。 
遠雷が聞こえるので、天気が崩れて夕立が降りそうです。

2021/10/21

ムラサキツユクサの花で集粉するヒメハナバチの一種♀【HD動画&ハイスピード動画】

 

2021年7月下旬・午前5:45頃・晴れ 

農村部の道端に咲いたムラサキツユクサの群落でミツバチの群れに混じって(映像公開予定)、ヒメハナバチの一種♀が訪花していました。 
後脚の花粉籠に黄色の花粉団子を満載しています。 
240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:37〜) 
訪花中も口吻を伸ばしていないので、吸蜜せずに集粉に専念していることが分かりました。 
訪花中に広げた前翅の翅脈が一瞬見えた?(@1:41)

電柱の天辺でさえずる♪キジバト♂(野鳥)

 

2021年6月中旬・午後16:05頃・くもり 

山麓の農村部で電柱の天辺に1羽のキジバト♂(Streptopelia orientalis)が止まり、デーデーッポッポー、デーデーッポッポー♪と鳴き続けています。 
冒頭では私に対して少し警戒しているようです。 
風切り音がうるさくて肝心の鳴き声があまり聞き取れないかもしれませんが、音量を上げてヘッドフォンでお聞き下さい。 
※ 動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 

途中で2羽のカワラヒワCarduelis sinica)が飛来し、左の電線に並んで止まりました。 
そのカワラヒワはすぐに鳴きながら飛び去ったものの、キジバト♂は電柱の天辺に居座ったままです。 
胸を膨らませて鳩胸になり、キジバト♂は再びさえずり始めました。 

キジバトの鳴き声を声紋解析するための素材が欲しいのですけど、風切り音、大工仕事で使うインパクトドライバーの騒音、および近くを流れる用水路の水音、という3種類のノイズに悩まされました。 

飛び立つ瞬間を動画に撮るつもりで私が長々とカメラを向けても、キジバト♂はなぜか全く逃げませんでした。 
何度かアングルを変えて撮影できました。 
私の方が根負けして、立ち去りました。 

キジバトの囀りさえずりには地方によって方言があるらしく、調べてみるのも面白そうです。
▼関連記事(ねとらぼ生物部によるネット記事) 
キジバトの鳴き方は個体や地域によって違う? 考察漫画に「うちの地域はこうです」と意見が集まる

2021/10/20

コムラサキの花で採餌するトラマルハナバチ♀【HD動画&ハイスピード動画】

 

2021年7月下旬・午前5:50頃・晴れ 

山麓の農村部で庭に植栽されたコムラサキの灌木にピンクの小さな花が満開に咲いています。 
早朝の朝日を浴びながらトラマルハナバチBombus diversus diversus)のワーカー♀が忙しなく訪花していました。 
この組み合わせは初見です。 
多数の個体がブンブン♪と羽音を立てて飛び回っています。 
吸蜜するトラマルハナバチ♀の後脚を見ると、花粉籠に橙色の花粉団子を満載しています。
周囲ではニイニイゼミ♂(Platypleura kaempferi)♂の暑苦しい蝉しぐれ♪が絶え間なく聞こえます。 
トラマルハナバチ♀はコムラサキの花序で振動集粉しているような気もするのですが、セミの鳴き声がうるさくて聞き取れません。 


花から花へとあまりにも忙しなく飛び回るので、普通に撮った映像は見ると目が回りそうです。 
採餌(吸蜜・集粉)および花から飛び立つ瞬間を240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:29〜) 
これぐらいスローモーションにすれば、じっくり観察することができます。 
逆に、マルハナバチがいかに生き急いで働いているか、よく分かります。 
複数個体を撮影。

 
8月下旬に同じ場所で撮った未熟果の写真です。




10月中旬にも同じ現場を再訪し、紫色に色づいた熟果の写真を撮ってきました。 
果実の付き方から、ムラサキシキブではなくコムラサキと確定しました。

ノギランの花序で交尾するシロホシヒメゾウムシ♀♂

前回の記事:▶ ノギランの花蜜を吸い飛び立つシロホシヒメゾウムシ【HD動画&ハイスピード動画】

2021年7月下旬・午前9:35頃・晴れ 

山道の横に咲いたノギランの群落で交尾中のシロホシヒメゾウムシ(=シラホシヒメゾウムシ;Baris dispilota)♀♂ペアを見つけました。 
マクロレンズで接写してみましょう。 

側面を向いてくれた際に、♂がオレンジ色の陰茎を挿入しているのがしっかり見えました。 
交尾後ガードではなく、本当の交尾中ということになります。 
♀は♂を背負ったまま花穂を歩き回り、交尾中も吸蜜に余念がありません。 
マウントした♂の体重のせいで♀はもう飛べませんから、花蜜が少なくても同じ花穂の上を歩き回るしかありません。 

後で思うと交尾が終了するまで見届けて、♀の腹端に交尾栓の有無を確認すべきでした。
関連記事(8年前の撮影)▶ シロホシヒメゾウムシの早漏♂(交尾失敗と体外射精)

ちなみに、背後の森でジーーーーーー♪と耳障りな低音で鳴き続けている声は、エゾゼミ♂(Lyristes japonicus)の合唱だと思います。

2021/10/19

セグロアシナガバチ♀が柳で木登り

 

2021年7月中旬・午後14:10頃・晴れ 

湿地帯に自生する柳の木(樹種不詳)にセグロアシナガバチPolistes jokahamae)のワーカー♀が来ていました。 
斜めに伸びた幹をどんどん上に登って行きます。 
樹液酒場を探しているのか、獲物を探しているのか(探餌徘徊)、どちらでしょう?
関連記事(3年前の撮影)▶ 肉団子を作るセグロアシナガバチ♀?

滑翔するノスリの鳴き声♪を声紋解析してみる(野鳥)

 

2021年7月下旬・午後12:15頃・晴れ 

山麓の林道を私が歩くと、ノスリButeo japonicus)がピーピー♪と甲高く鳴きながら私の頭上の青空を旋回し始めました。 
林の中に居るらしいもう1羽と鳴き交わしているようです。 
営巣地の本命はこの辺りなのかもしれません。 
スギ林の上空を羽ばたくことなく、ぐるぐると滑翔しながら鳴き続けています。 
逆光でも翼の下面にノスリ特有の斑紋(翼角に黒斑)がしっかり見えました。
個体識別できていませんが、おそらく私と顔馴染みの同一個体が警戒の鳴き声を発しているのでしょう。
関連記事(1ヶ月前の撮影)▶ 対人威嚇の波状飛翔ディスプレイを繰り返しながら鳴くノスリ(野鳥)
以前に聞いた威嚇ディスプレイ飛翔の際の鳴き声と音程が明らかに違います。 
この違いは威嚇する親鳥の切迫度の違い(文脈の違い)によるものなのか、それとも巣立った幼鳥など別個体の鳴き声なのかもしれません。 



 『フィールドガイド日本の猛禽類vol.04ノスリ』によると、
 ノスリはサシバと同様によく鳴く鷹で、最もよく効かれるのは「ピーエー」や「ピィー」と強く鳴く声である(鳥との距離によっては「ヒャー」あるいは「ピャー」と聞こえる)。この声は1年を通して成鳥、幼鳥とも飛びながら発することが多く、その意味は鷹や人などの外的に対する威嚇や興奮である。(p3より引用)
山渓カラー名鑑『日本の野鳥』によれば、
割合によく鳴く鳥で、繁殖期には巣の上やその付近で「ピィーヨ」とか「ピィヨー」と優しい声で鳴く。また、飛翔中には「プィヨー」と少し調子を変えた声で鳴くこともある。なお、トビの声に似た鳴き声を聞いたという記録もある。(p152より引用)

 

※ 動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。

林道を更に少し進んだ所にある、いつもお気に入りの止まり木(スギ樹冠)に今回ノスリは居ませんでした。 
 

帆翔するノスリの鳴き声を声紋解析してみる 

絶対音感が無い私でも鳴き声を比較できるように、スペクトログラムを描いてみましょう。 
まずいつものように、オリジナルの動画ファイルから音声をWAVファイルに抽出します。 
周囲の山林で絶え間なく鳴いているニイニイゼミ♂(Platypleura kaempferi)の蝉しぐれ♪でかき消されそうなので、そのピンクノイズを音声編集アプリのAudacityで除去します。 
ノスリが鳴いている部分を適当に切り出してから、スペクトログラムを描いてみました。

2021/10/18

ガガンボ♀の打泥産卵飛翔【HD動画&ハイスピード動画】名前を教えて

 

2021年7月下旬・午前7:50頃・晴れ 

里山の細い山道の傍らでガガンボの一種♀が飛びながら産卵していました。 
山道の谷側は斜面に杉が植林されていて、その下には渓流が流れています。 
逆の山側は雑木林の斜面になっていました。 
ガガンボ♀が産卵していたのは山側の道端で、かなりジメジメした林縁の環境です。 
ガガンボ♀は湿った林縁を低空で飛びながら腹端をチョンチョンと地面に繰り返し付けていました。 
初めは気に入った地点(半分に割れたオニグルミの殻の横の地面)に繰り返し卵を産みつけていました。 
途中から産卵場所を変更したのですが、泥の表面だけでなく腐りかけの落ち葉や小石の表面などにも手当り次第に産卵しています。 
地面に倒伏した草(ウワバミソウ?)の表面にも産卵しています。 

ガガンボ♀の産卵行動を240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@2:04〜) 
日陰に入るとかなり薄暗い林縁なので、カメラの設定で明るさ(ゲイン)を上げる必要があります。 
スローモーションで見ると、腹端を接地して産卵している間はいつも羽ばたきを止めていることが分かりました。 
産み終わると再び羽ばたいて飛び立ちます。
つまり、ガガンボ♀は産卵中にホバリング(停空飛翔)していません。 
初めはトンボ♀の単独打泥産卵と似ていると思ったのですが、この点は異なります。 
たまに地上でもう少しだけ長く、翅を休めることもありました。 
翅の羽ばたきだけに頼らず、長い脚をリズミカルに屈伸しながら繰り返し産卵しているようですが、細長い脚の動きは光量不足でよく見えませんでした。 
腹端を接地する距離を脚の先で何度か探ってから産卵してるのかもしれません。 
1匹の♀が恐ろしい数(何千個またはそれ以上?)の卵を休みなく産んでいることになります。
ガガンボの卵は微小で、私の肉眼ではとても見つけられませんでした。
関連記事(5,13年前の撮影)▶  
地面に産卵するガガンボ♀  脚の屈伸運動だけ。全く羽ばたいてない。気温が低いから省エネ? 
苔に産卵するガガンボ♀【名前を教えて】  翅に特徴的な斑紋あり。脚の屈伸運動だけ。全く羽ばたいてない。気温が低いから?
撮りためたガガンボ♀の産卵行動の動画が少しずつ増えてきました。 
産卵法の細かい点が少しずつ違います。 
特に、飛びながら産卵するガガンボは今回が初見です。 
トンボのようにガガンボも種類(細かい分類群)によって産卵法が異なるのでしょう。 
面白いテーマだと思うのですが、まずはガガンボの種類を見分けられるようにならないといけません。
写真鑑定で今回のガガンボ♀の種類が見分けられる達人がいらっしゃいましたら是非教えて下さい。

クリ樹洞の巣口を守り迎撃に飛び立つモンスズメバチ♀門衛

 

2021年7月下旬・午前4:55頃・晴れ(日の出時刻は午前4:34) 

道端にそびえ立つクリ(栗)大木の根元付近に樹洞があり、そこに長年ニホンミツバチApis cerana japonica)が自然営巣していました。
関連記事のまとめ(3年前の撮影)▶ クリの樹洞に営巣したニホンミツバチ:2018年
1ヶ月前(6月下旬)に来たときにはクリの樹洞に出入りするミツバチの姿はなく、クロスズメバチの一種♀を見かけただけでした。 
ニホンミツバチのコロニーは冬を越せずに滅びてしまったのでしょうか?(駆除された?) 

早朝に通りかかった今回も、ニホンミツバチ♀は居ませんでした。 
ところが驚いたことに、モンスズメバチVespa crabro)のワーカー♀がスリット状(縦の裂け目)の樹洞に出入りしていました。 
モンスズメバチ創設女王がニホンミツバチの古巣(空巣)を乗っ取って、クリ樹洞内で営巣を始めたようです。 
あるいは、最近になってコロニーが引っ越してきた二次巣かもしれません。 

クリの幹にモンスズメバチの♀が早朝から止まって辺りを油断なく警戒しています。 
羽ばたいてはいないものの激しく腹式呼吸しているので、胸部の飛翔筋を激しく動かして飛び立つ前の準備運動をしているのかもしれません。 
サーモグラフィカメラで撮れば体温の上昇が分かるはずです。
そのまま動画を撮り続けると、幹から飛び立ちました。 
しばらく定位飛行してから再び営巣木の幹に着地。 
幹のほぼ同じ場所に戻ると身繕いを始めました。
その日初めて外役に出かけるワーカー♀は、出巣の直後にしばらく営巣木の方を向いてホバリングしながら扇状に飛んで、巣の周囲の風景を正確に記憶するのです。 
ところが、今回の個体は必ずしも営巣木の方を向いて扇状に飛ばなかったので、何か変だと思いました。 

樹洞入り口の横の幹から再び飛び立つと、帰巣した別個体と空中で相打ちになり、また同じ場所に舞い戻りました。 
どうやら巣口の横に居た♀個体は門衛を務めているのだと、これで分かりました。 
怪しい蜂が巣に向かって飛来するとたちまち迎撃のために飛び立ち(スクランブル発進)、同じコロニーのメンバーかどうか誰何するのです。 
モンスズメバチ門衛の過敏な防衛行動は、以前も観察しています。

外役から戻ったワーカー♀(帰巣個体)の中には門衛のスクランブルをかいくぐり、入れ違いで無事に入巣することもあります。 

後半になって帰巣したワーカー♀が赤茶色のパルプ玉を咥えて搬入しました。 (@3:14)
早朝から巣材を集めて来たようです。 
巣口(スリットの右)に着地すると、しばらくウロウロしてから歩いて入巣しました。 

門衛と帰巣ワーカー♀との攻防(軽い空中戦)を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 (@3:40〜)

今後も定点観察に通ってみることにします。 
樹洞の内部をなんとか観察してみたいのですが、スズメバチ専用の防護服とファイバースコープ(スネークカメラ)が必要になりそうで、なかなか手が出ません。


2021/10/17

カノコガ(蛾):朝の日光浴と飛び立ち【HD動画&ハイスピード動画】

 

2021年7月下旬・午前6:10頃・晴れ 

山麓にある神社の境内で、カノコガAmata fortunei fortunei)が小さな祠のコンクリート基礎部分の北面に止まって朝日を浴びていました。 

少し離れた所で別個体がアキカラマツ(別名タカトグサ) の茎にしがみついていました。 
カノコガはいつも翅を広げたまま止まります。 
アキカラマツの株を手で揺らしても飛んでくれませんでした(映像省略)。 
次は右手の人差し指でカノコガの右翅に軽く触れると、準備運動なしで慌てて飛び立ちました。 
緊急離陸の羽ばたきを240-fpsのハイスピード動画で撮影。(@0:23〜)

関連記事(5、8年前の撮影)▶ 



この日は里山に入山すると、多数のカノコガ個体が林縁を低く飛び回っているのをあちこちで目撃しました。(映像なし)
♂の探雌飛翔ではないかと思うのですが、定かではありません。

アリの群れに襲われても耐え忍ぶ、ど根性アズマヒキガエル【10倍速映像】

前回の記事:▶ 切り株で獲物を待ち伏せるアズマヒキガエルがアリを捕り損ねた

2021年7月下旬・午前9:50〜10:14頃・晴れ 

アズマヒキガエルBufo japonicus formosus)が虫を捕食する瞬間を動画に記録しようと、真横にそっと回り込んでから三脚を立てました。 
ところが20分近く長撮りしても、空振りに終わりました。 
切り株の断面は水平ではなく、やや斜めに傾いています。 
そこに座ったヒキガエルは目の前のミズナラ幹をじっと凝視しています。 
瞬きもせず喉をかすかにヒクヒクさせているだけです。 
たまにアリが幹を徘徊しても、ヒキガエルは無反応でした。 
この撮影アングルでは遠近感が分からないのですが、おそらくヒキガエルの顔の正面にアリが来なかったり、ヒキガエルの舌の射程範囲の外だったのでしょう。 

やがて切り株から微小のアカアリ(種名不詳)がヒキガエルの体に次々とよじ登ってくるようになりました。 
ヒキガエルは皮膚が厚くて触覚が鈍いのか、ほとんど無反応でした。  
顔に来た蟻が目や口元を這い回っても平気です。 
アリは群れの仲間を動員してヒキガエルを攻撃しているのでしょうか? 
しかしヒキガエルの体に噛み付いたり蟻酸を掛けたりしているようには見えません。 
どうやらアリは、ヒキガエルの眼球から涙を吸汁したり、湿った唇を舐めたりして、水分を摂取しているだけのようです。 
ヒキガエルの閉じた口の隙間から唾液の小さい泡が出ています。 
アリに目尻を舐められたアズマヒキガエルはさすがに目を瞑るようになりました。 
カエルの瞬膜は眼球の下から現れて上に閉じます。 
ヒキガエルは左右の目を独立に瞬きできると分かりました。 
ヒキガエルの鼻孔内にアリが侵入することはなかったものの、鼻孔をヒクヒク動かすようになりました。 
喉をヒクヒクさせる動きが激しくなったのは、ストレスや苛立ちの現れでしょうか? 
右脇腹も呼吸で波打っています。 

煩わしいアリをヒキガエルが前脚で払い落とそうとしないのは不思議で仕方がありません。
よほど面の皮が厚くて鈍いのかな?
口元のアリをパクっと食べようとしないのは何故でしょう? (※追記参照)
まるでアリ責めの拷問を受けているようですが、ヒキガエルは身震いしたりアリを手で払い除けたりする行動が全く見られず、ただひたすら耐え忍ぶだけでした。(ガマん大会?) 
脂汗(ガマの油)を流すどころか、修行僧のような佇まいで平気の平左。 

 一部の鳥には蟻浴という習性があります。
アリ塚の上にわざと居座ってアリを怒らせ、羽毛に蟻酸をかけてもらい、ダニなどの体外寄生虫を駆除することがあるそうです。 
このヒキガエルもまさか蟻浴中だったのでしょうか? 

ヒキガエルの体表には毒液(ブフォトキシン)が分泌されているはずなのに、アリ避けの効果は全くありませんでした。 
ブフォトキシンは強心配糖体という心臓毒なので、おそらく脊椎動物にしか毒性を発揮しないのでしょう。
アリは昆虫(無脊椎動物) ですから、その心臓に影響しないのも納得です。

遂に アズマヒキガエルは度重なるアリの攻撃に堪りかねて右前脚で顔のアリを拭い、少し左に体の向きを変えました。 
切り株上でノソノソと歩いて前進を始め、終いには切り株から池の岸辺に飛び降りました。 

ヒキガエルの体長を採寸できず残念でした。 
かなり大型の個体で、目測では成人の拳より大きかったです。 

撮影中の私はカメラの近くで見守っていたものの、ヒキガエルの体に集る微小な蟻に全く気づきませんでした。 
なぜヒキガエルが急に逃げたのか理由が分からなかったのです。 
横に居る私の存在が気になり、警戒したヒキガエルが逃げたのでしょうか? 
あるいは、日向に長居するとヒキガエルの皮膚が乾燥するので、水辺に戻ったのかな?と思ったりしました。 
それとも、私が体中に振りかけた虫除けスプレーの匂いがきつ過ぎたせいで、ミズナラの幹に虫が近寄らなくなってしまい、ヒキガエルが狩場を変えたのか?と思ったりしたのです。 
撮れた映像を見て初めて、アリの群れから執拗に陰湿な攻撃を受けていたと真相を知りました。
ヒキガエルが立ち退いた後で切り株を現場検証しても、アリの巣は見つかりませんでした。 


↑【おまけの動画】 同じ素材でオリジナルの等倍速映像です。


※【追記】
西田隆義『天敵なんてこわくない―虫たちの生き残り戦略』という本を読むと、トノサマガエル(捕食者)とヒシバッタ(被食者)の関係について研究結果が詳しく書いてあり、興味深く読みました。
 カエルに限らず多くの捕食者は、採餌の効率が高くなるようにさまざまな工夫をしている。その一つが、小さすぎたり、大きすぎる餌を無視するというものだ。(p133より引用)

今回の動画で微小なアリが口元に来てもヒキガエルは食べようとしなかった理由は、小さ過ぎて腹の足しにならないからと考えられます。 



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