2021/09/02

巣から落ちたシジュウカラの雛を襲うアリの群れ(野鳥)

 

2021年6月下旬・午後17:00頃・くもり 

住宅地の道端の地被植物の上でシジュウカラParus minor minor)の雛が静かに暴れていました。 
巣からうっかり落ちてしまったようですが、すぐ隣の民家の庭に植栽された2本のアカマツを見上げても、シジュウカラの巣は見あたりません。 
私が雛に近づいても警戒声を発して抗議するシジュウカラの親鳥♀♂の姿も周囲にありませんでした。 

シジュウカラの雛は目をときどき開くものの、辺りが見えているのか疑問です。 
体の羽根は未だ生え揃っていない状態で裸の部分もあり、個々の羽毛は未発達な刺毛(筆毛)の状態です。 
よく見ると、赤っぽい微小なアリ(種名不詳)が雛の体中に群がっていました。 
獲物を見つけた働きアリが群れを動員して捕食しに集まってきたのでしょうか? 
あるいは、雛が落ちた地面がちょうどアリの巣の真上だったのかもしれません。 
シジュウカラ雛がアリを嫌がって必死で翼をばたつかせて暴れても、振り落とせません。 
未だ歩くどころか立つことも出来ない雛は、アリから逃げることもできないのです。 
雛は鳴き声を発する元気もないようです。 

このときハシブトガラスCorvus macrorhynchos)の成鳥が近くの電柱でカーカー♪と頻りに鳴き騒いでいました。 
私に獲物を横取りされたと勘違いして抗議しているのでしょうか? 
それならばと私は現場から少し離れて、交差点の反対側から成り行きを見守ることにしました。 (以降は映像なし) 
 "Mind of the Raven: Investigations and Adventures with Wolf-Birds" by Bernd Heinrich という北米のワタリガラスに関する本を読むと、カラスが育雛中の鳥の巣を襲い、雛を拉致して「貯食」する例があることを知りました。 
日本でもカラスがスズメやツバメなど鳥の巣を襲って雛を捕食するのは周知の通りです。
この時期はカラスにとっても繁殖期ですから、雛や幼鳥に餌を与えて育て上げないといけないのです。

さて、気になるハシブトガラスは落鳥した雛の真上の電線に移動し、周囲を見張っています。 
今にも路上に舞い降りて落鳥したシジュウカラの雛を捕食するのではないかと期待して、私は遠くから撮影します。 
ところがカラスは電線上から脱糞したり、嗄れ声でガーガー♪とやかましく鳴き続けるばかりです。 
通行人や車がひっきりなしに通るので、警戒しているのでしょうか? 
それともカメラをずっと向けている私の存在が気に食わないのかな? 
意外にも最後はどこかへ飛び去ってしまいました。 
実はシジュウカラの雛の存在には気づいていなかった可能性もあります。 
もしかすると近くにカラスの巣があって、親鳥が雛を守るためヒトに対して威嚇していただけかもしれません。

この後、シジュウカラの雛がどうなったか、見届けていません。
誰か「心優しいヒト」に拾われたでしょうか?
ネコやヘビが通りかかって捕食した可能性が高いでしょう。 

シジュウカラは絶滅の恐れがない普通種ですし、私は自然界の営みになるべく介入しないように心がけています。 
「良かれと思って、可哀想だから」と特定の生き物(ヒトがかわいいと思い感情移入しやすい生物)だけを依怙贔屓するのは問題があります。 
腹を空かせたカラスやアリやネコの貴重な餌をヒトが勝手に取り上げるのは理不尽で残酷だ、という考え方もあるからです。 
巣から落ちた雛を親鳥が巣に運んで戻すことは不可能ですし、給餌に通って育て上げる可能性は低いでしょう。(おそらく見捨てるはずです。) 
これがもし幼鳥(巣立ち雛)なら、間違いなく親鳥に世話を任せるべきです。
関連記事▶ 巣立ち直後のヒヨドリ幼鳥をブロック塀から安全な場所に誘導する親鳥♀♂(野鳥)
一部の猛禽類などでは親鳥から受け取る餌を独占するために雛同士でつつき合ったり巣から落としたりして殺し合い、親鳥はその争いには介入せず黙認します。
そうした厳しい野鳥の世界にヒトの倫理観を持ち込んでも仕方がありません。
小坪遊池の水」抜くのは誰のため?~暴走する生き物愛』という話題になった新潮新書によると、
・野生の生き物、特に元々その地域にすんでいた生き物たちは、その場所で自然のままに生き、死んでいくのが本来の姿であり、人が必要以上に手を加えることは避けたほうがいい。(中略)そのまま死んでも、昆虫などが死体を食べ、さらに微生物に分解されていきます。死体も生態系の一員なのです。
・鳥や動物を保護するというのは、親切心からでも、法律(鳥獣保護管理法:しぐま註)違反になる可能性があります。
・保護のつもりでも、人が捕まえることは、生き物に大きなストレスを与えるといわれています。 (以上、「第2章:生き物ととるべきディスタンス」より引用)

…というのは建前というか、非難されたときのための理論武装です。
巣から落ちた雛を助けるかどうかは、私も実際に目の当たりにするとかなり悩む問題です。 
もし私に鳥の雛を育てるスキルやノウハウがあれば、違法でもこっそり持ち帰って飼育したい誘惑に駆られるかもしれません。 
今回は雛を発見した時刻が遅かったので、遠くのペットショップまで雛の餌を買いに行けませんでした。
逆に、例えば家でネコやヘビを飼って溺愛しているヒトが居て、たまたま道端で拾った鳥の雛を生き餌としてペットに与えたとしても(死にゆく雛の有効利用)、私は一方的に責める気になりません。
(残酷だと怒るヒトも中にはいるだろうな…というのも、もちろん理解できます。)
動物であれ鳥や虫であれ、肉食性の生き物を責任を持って飼育するということは、何かしらの獲物を定期的に捕食させる必要があります。
不殺生(自分の手を汚したくない・罪悪感を持ちたくない)など綺麗事では済みません。
シジュウカラの雛を育て上げるには大量の生きた虫の命を奪って食わせる必要があるのです。

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