2021/06/26

ナガコガネグモ♀(蜘蛛)の円網にクロウリハムシを給餌してみると…

 

2019年8月下旬・午後15:10頃・晴れ 

マサキの生垣に垂直円網を張ったナガコガネグモ♀(Argiope bruennichi)がこしきで下向きに占座し、獲物がかかるのを待ち構えていました。 
近くのキカラスウリの葉で見つけたクロウリハムシAulacophora nigripennis)を手掴みで確保し、クモの網に給餌してみました。 
円網の左上に獲物が付着したものの、ナガコガネグモ♀は初め無反応でした。 
擬死していたクロウリハムシが動き出すとクモは振動で獲物の存在に気づいたようです。 
ところがナガコガネグモ♀は獲物に駆け寄ると、噛み付いたり捕帯ラッピングしたりせずに網からすぐ外してしまいました。 
スロー再生してみると、網から勝手に脱出した(落ちた?)ようにも見えます。 
獲物が小さ過ぎるのかな? 
もしかすると、クロウリハムシは臭い(苦い)汁を出すことをクモは学習済みで、異物を網から弾いて除去したのかもしれません。 
こしきに戻ったクモは再び下向きに占座して、次の獲物がかかるまで待機します。

 

ヤドリギに寄生された桜の花で吸蜜するヒヨドリ(野鳥)

 

2021年4月中旬・午後15:15頃・晴れ
前回の記事(3ヶ月前の撮影)▶ ヤドリギに寄生された桜の木に来たツグミ(冬の野鳥)
ソメイヨシノに寄生するヤドリギの定点観察に来てみると、宿主の桜は花盛りで満開に咲いていました。 
ソメイヨシノは花が散るまで若葉はほとんど芽吹かないので、花期に常緑のヤドリギは樹上でよく目立ちます。 

ヒヨドリHypsipetes amaurotis)が桜の花蜜を吸いに来ていました。 
正当訪花するヒヨドリの嘴は花粉でオレンジ色に汚れています。 
したがって、ヒヨドリは桜の受粉を媒介していることになります(鳥媒花)。 
ヒヨドリと桜の組み合わせは春の風物詩で、珍しくはありません。 
今回は寄生植物ヤドリギも一緒に撮れたことで、一味違う動画になりました。

2021/06/25

春の池畔に佇み眠そうなゴイサギ(野鳥)

 

2021年4月中旬・午後16:30頃・晴れ 

石垣で護岸された池の畔でゴイサギNycticorax nycticorax)の成鳥が佇んでいました。 
夏鳥のゴイサギを見たのは今季初です。 
夕方の西日を浴びて、更に水面からの照り返しもあり、なかなか絵になる立ち姿です。 
春風が吹くと池の水面が煌めき、ゴイサギの後頭部の冠羽が風になびきます。 
私がアングルを変えつつ対岸から撮影しても逃げようとしませんでした。 

本種は夜行性なので、いかにも眠そうです。 
赤い目を見開いて睡魔と戦っていました。 
瞬きすると赤い目が白い瞬膜で覆われます。 
昼間は眠いのなら、なぜもっと安全な樹上で寝ないのか不思議です。 
池の魚を狙って今にも飛び込むかと期待して長撮りしてみたものの、空振りに終わりました。

柳の花を摘んで中に潜む幼虫を捕食するシジュウカラ♀♂(野鳥)

 

2021年3月上旬・午後15:20頃・くもり 

河原の岸に自生する柳(樹種不明:カワヤナギ?)の灌木でシジュウカラParus minor minor)の♀♂つがいが奇妙な採食行動をしていました。 
早春のバードウォッチングで最も興奮した事件簿です。
初めシジュウカラ♀♂はもっと手前の茂みに居たのですが、河川敷の歩道を歩いてきた私に驚いて慌てて飛んで逃げ、少し奥にある柳の灌木に避難したのです。 
私に対して警戒声♪を発したものの、遠くに逃げて行かないのが不思議でした。 
柳の木またはこの場所に執着している印象です。 
近くに営巣しているのでしょうか? 
私がじっと立ったまま動画を撮り続けると、警戒を解いてあまり鳴かなくなりました。 

やがて嘴で柳の花をちぎり取る謎の行動を繰り返すようになりました。 
初めて見る行動にワクワクして撮影しながら、色々と考えてみました。 
(1)私に対する威嚇行動?  
繁殖期にカラスの巣に近づき過ぎると親鳥がよくやる枝折り行動を連想しました。
関連記事(8年前の撮影)▶ 木の枝を折って威嚇するハシブトガラス【野鳥】
やはりこのシジュウカラ♀♂は近くで営巣しているのかな? 
しかし花を次々に摘んで落としても、別に迫力はありません。(威嚇効果なし)
(2)産座に詰める巣材集め? 
それにしては柳の花を嘴に貯めずに惜しげもなくその場で捨てています。 
フワフワした柔らかい巣材を集めたいのなら、ネコヤナギの花を選ぶべきでしょう。 
(3)採食行動?  
シジュウカラが花を食べるのは意外ですし、やはりその場で次々に捨てる意味が分かりません。 
柳の多くの種類で花期は葉前性です(若葉が出る前に花が咲く)。
今回シジュウカラ♀♂が摘んでいた柳の花は、枝に若葉が開き始めていることからも分かるように、萎れかけ(散りかけ)の花序でした。 
雄しべに黄色い花粉はほとんど残っておらず、見るからにぱさついている印象です。 
授粉が終わって、雌花の子房が膨らみかけているようです。 
したがって、鳥が花蜜や花粉を食べている可能性は低いでしょう。 
(4)花に隠れている虫を捕食? 

参考ブログ:カワヤナギ シジュウカラ by nenemu8921氏


映像の冒頭に登場するのは、黒ネクタイが太い♂です。 
柳の散りかけの花序を嘴でちぎり取ると、咥えたまま(安定した)太目の枝に移動します。
そこで足元の小枝に花を押さえつけ、嘴でつつきました。 
1/5倍速のスローモーション(@6:55〜)でじっくり見直すと、柳の花序の中に潜んでいた細長い幼虫を器用に取り出して食べていました!
手前味噌ながら、これは動画で記録しなければ分からなかった発見です。(写真では無理でしょう)
シジュウカラは残った花には興味を失い、蹴り落としたり捨てたりしています。 
捨てた柳の花が風に飛ばされます。
食事の合間にパートナーの♀と鳴き交わしているようですが、風が強くて聞き取れません。 
※ 動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 

シジュウカラは柳の花を摘んだり足で踏みつけたときの感触で幼虫の有無が直ちに分かるようで、空の花だと分かれば分解する前にすぐ捨ててしまいます。 
つまり、(害虫の有無に関わらず)花を片っ端からちぎり取ってしまうシジュウカラは柳にとって害虫を駆除してくれる益鳥とは言えません。 
花を食い荒らす虫と同罪でしょう。 
しかし害虫を捕食して減らしてくれるので、次世代の周囲の柳にとっては有益かもしれません。 
ただし、この柳がもしカワヤナギだとすれば、雌雄異株らしいので用済みの雄花を鳥が食べても問題ありません。
(雄花は消耗品なので、食べられても柳は困らない)。 

春風で絶え間なく揺れる柳の細い枝先をシジュウカラは次々に移動して、花摘み・捕食を続けています。 


しばらくすると、腹面の黒ネクタイが細い♀が左から登場します。(@1:50〜)
つがいの♀♂ペアが同じ柳の灌木でつかず離れず採食を続けます。 
♀の行動に注目してみると、♂よりも警戒心が強いようです。 
なかなか採食を始めず、常に私から離れた奥の枝で隠れるように行動していました。 
逆に、♂は♀をガードするように(私に近い)手前の枝で活動しています。 
ようやく♀が隣の枝先にピョンと移動し、♂と同様の花摘み行動を披露しました。 (左の個体@13:15)
茂みの奥で見にくいのですが、♀も摘んだ花を足で押さえつけ、中から器用に幼虫を摘出して捕食しました。 

謎の幼虫の正体について

柳の花序の中から摘出した細長い微小な幼虫は生きており、シジュウカラが飲み込むまで暴れています。 
花の中にある栄養豊富な謎の器官(例えば子房?)が外に取り出されて風でなびいているだけなのか?という可能性も頭によぎりました。
しかしスロー再生してもクネクネ動いて見えるので、幼虫の動きで間違いなさそうです。 
嘴で摘み出した細長い幼虫がクネクネと暴れるときには、足元の枝に何度も叩きつけて殺してから食べることもありました。(@25:35)
シジュウカラが柳の花から摘出した幼虫の色は様々なので、複数種いるのかもしれません。 
冬芽の段階から幼虫が蕾の中で越冬しているのかな?
あるいは、蕾の表面に産みつけられた卵が越冬した後で、早春に孵化した幼虫が花の中に潜って食害を始めるのでしょう。

今回シジュウカラは、展葉し始めた柳の若葉には全く興味を示しませんでした。 
柳の若葉を食害する幼虫は居ないということになり、ちょっと意外でした。 
もしかすると、柳の花は若齢幼虫の昼間の隠れ家なのかもしれません。
天敵(捕食者)の少ない夜になると隠れ家から出て若葉を食べるという作戦の幼虫がいても不思議ではありません。 

柳の害虫と言えばヤナギハムシをまっさきに思いついたのですが、ヤナギハムシは成虫越冬らしいです。 
ヤナギハンドブック』を紐解くと関連コラムも充実していて、「ヤナギ属の害虫」や「ヤナギにつく虫こぶ」についても解説してありました。 
しかし、柳の花を食べる虫については全く記述がありませんでした。 
謎の幼虫を同定するためには、自分で採集・飼育する必要がありそうです。 
これは来年になったら是非追求してみたいテーマです。
この映像を見る限り、柳の花の幼虫寄生率はかなり高そうです。 



シジュウカラの利き足について

樋口広芳『森に生きる鳥:ヤマガラのくらし』という本によると、鳥にも利き足があるのだそうです。
昆虫などの動物質のもののときには、かたほうのあしのあしゆび全体で、それをおさえ、くちばしでつついたり、ひきちぎるようにしてたべます。  このさい、どちらのあしでおさえるかは、それぞれの鳥でかなりはっきりときまっています。(中略)このような右きき、左ききがあることは、鳥ではほかに、シジュウカラやオウムのなかまなどでしられています。(p56より引用)
今回の動画で利き足に注目してスローモーション(@6:55〜)を見直すと、興味深いことが分かりました。 
シジュウカラ♂は両利きでした。 
斜めに伸びた枝に止まっている場合、体重のあまり掛かっていない上側に置いた足で餌を押さえることが多いです。 (例外@6:04、12:40、22:51、23:15)
一方、♀の利き足は左でした。 
斜めの枝に止まっている場合でも、♀は常に左足で摘んだ花を押さえていました。 
シジュウカラの♀は♂よりも体重が軽くて足首にかかる負担が少ないのかな? 
ただし、♂に比べて♀の採食行動の撮影時間が短いので(サンプル数が少ない)、今回の結果はたまたまかもしれません。 
茂みの奥にいる小鳥にはピントが合わず、撮影しにくいのです。
今後もシジュウカラの利き足について注目していきたいと思います。

 
♀左、♂右

以下の写真は全て♂





柳の樹種について

まずは、この柳の種類を調べないといけません。 
なんとなく、カワヤナギですかね? 
どなたか柳に詳しい方がいらっしゃいましたら、教えて頂けると助かります。 


小宮輝之(監修)『鳥の食べもの&とり方・食べ方図鑑 おもしろふしぎ鳥類学の世界』によると、鳥がよく来る柳としてネコヤナギが挙げられていました。
鳥は新芽を食べる姿が目撃されています。キレンジャク、アカゲラ、マヒワ、シジュウカラ、キクイタダキ、ヤマガラ、エナガなどが観察されている。 (p146より引用)
ただし、今回私が観察した柳は明らかにネコヤナギではなさそうです。
右の枝にヒヨドリが止まっている


 

↑【おまけの映像】 
近くで喧しく鳴いていたヒヨドリが、途中から同じ柳の灌木に飛来しました。 
ところが枝に止まって休んでいるだけで、シジュウカラ♀♂と同様の花摘み行動(幼虫の捕食)を全くやりませんでした。 
嘴の大きさや形状の違いから、ヒヨドリはシジュウカラほど器用な食べ方ができないのかもしれません。 (採食法を知らないだけ?)
関連記事(7年前の撮影)▶  柳の花外蜜腺を舐めるヒヨドリ
ヒヨドリは柳の木からシジュウカラ♀♂を追い払う占有行動もしませんでした。 
どうやらヒヨドリ同士で縄張り争いがあるようで、シジュウカラに対しては寛容でした。
それでもシジュウカラ♀♂はいつの間にか餌場の柳灌木から居なくなりました。 

2021/06/24

ミヤマアカネ♀♂:連結打水産卵の競演【HD動画&ハイスピード動画】

 

2019年9月下旬・午前11:10頃・晴れ 

川の本流に注ぐ浅い水路でミヤマアカネSympetrum pedemontanum elatum)の♀♂ペアが尾繋がり状態で飛びながら産卵していました。 
ミヤマアカネの産卵様式は「連結打水産卵」です。 
2ペアが競演するように連結打水産卵していて、なかなか絵になります。 

産卵地点は抽水植物の根際の周辺だけでなく、コンクリート護岸の水際など、水中ならどこでも良いようです。 

ミヤマアカネ♀♂の産卵飛行を240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:35〜)
♀が腹端で水面を打つ度に波紋が水面に広がります。 
よく晴れているので、水面に反射するトンボの影の動きを見ているだけでも美しいですね。

畑に撒いた米糠?を採食するムクドリ(野鳥)

 

2021年4月上旬・午後16:40頃・くもり 

民家の家庭菜園の地表でムクドリSturnus cineraceus)の群れが何かを採食していました。 
私がカメラを向けると、ほとんどの個体が警戒して真上の電線に避難してしまいました。 
1羽だけ逃げ遅れたというか鈍感(大胆)な個体を撮影します。 
耕す前の畑に何か白っぽい粉が疎らに撒かれていて、ムクドリはそれをチビチビと啄んでいました。 
石灰を鳥が食べるという話は聞いたことがないので、おそらく米糠などの肥料を撒いたのではないかと思います。 
道路の雪を早く溶かすために塩を撒くこともありますが、塩害になりますから畑にわざわざ塩を撒くはずはありません。 
現場に近寄ってから謎の粉を写真で記録すべきだったのでした。
ところが私は電線に逃げたムクドリの群れが気になって、その写真を撮りました。 
私は少し疲れていたこともあり、畑の現場検証を忘れてしまいました。

あるいは、微小なアリなどを捕食していのかもしれません。

2021/06/23

川で水浴びするハシボソガラスのつがい(野鳥)

 

2021年4月上旬・午後15:30頃・くもり 

河原の岸辺近くの浅瀬で2羽のハシボソガラスCorvus corone)が仲よく行水していました。 
この時期はカラスの繁殖期ですから、おそらく♀♂のつがいなのでしょう。 
今回は珍しく水浴の合間に羽繕い行動をほとんどしませんでした。 (時短の水浴行動?)
最後は相次いで飛び立つと、右旋回して対岸の土手を飛び越えて行きました。 
(営巣地は不明です。)
その後、私は上流に向かって川沿いをラインセンサスしたものの、これ以外に夕方の河原で水浴するカラスを見かけませんでした。

夏羽のノビタキ♂を見つけた!(野鳥)

 

2021年4月中旬・午後15:45頃・晴れ 

田んぼ(この時期は刈田の状態)に面した住宅街で、見慣れない鳥が私に驚いて柳の灌木に避難しました。 
夏羽のノビタキ♂(Saxicola torquata)は初見です。 
春になり、夏鳥のノビタキが繁殖のために渡来してきたようです。 
未だ換羽の途中らしく、これから胸の茶色い部分がもっと縮小するようです。 

風で揺れる細い枝先には柳の花が咲いています。 
ノビタキ♂は尾羽根を上下させてバランスを取っています。 
横の道を子供が通りかかると、ノビタキ♂は飛んで逃げました。 
飛び立つ瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。


【追記】
山形新聞社『やまがた野鳥図鑑』によれば、
夏羽の♂を見る機会は、本県の場合、春先だけに限られる。春秋だけ本県を通過していき、主に北海道で繁殖し、日本より南で越冬する体。ノビタキが通過していくのは、河川敷や農耕地。春は4月上旬から3週間程度だろうか。秋なら稲刈りの時期だ。(p199より引用)
私の観察でも、まさにこの記述通りです。
 

2021/06/22

朝の川から群れで飛び立つコハクチョウの雄姿【HD動画&ハイスピード動画】(冬の野鳥)

 

2021年3月下旬・午前6:20、6:55、7:10、735および7:40・晴れ 

コハクチョウCygnus columbianus bewickii)の越冬群が毎晩集まって一緒に眠る集団塒の川があります。 
朝日が登ると白鳥の群れは続々と川から飛び去り、朝の採食に出かけます。 
大型の水鳥であるコハクチョウが一斉に助走を始め、川面から飛び立つ様子は何回見ても感動します。 

白鳥はまず、川面で上流を向いて隊列を整えてから首を上下に動かし、鳴き交わし始めます。 
群れの離陸準備が整い鳴き交わしが最高潮に達すると、翼を広げ力強く羽ばたきながら上流に向かって助走を始めます。 
川から飛び立つとそのまま隊列(雁行陣)を組んで採食地へ向かいます。 
我ながら大迫力の映像が撮れました。 

次は離陸直後の羽ばたきを240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@2:35〜) 
高度が充分に上がるまでは、翼を打ち下ろすたびに先端の羽根が水面に触れています。 
羽繕いで油分を含ませた羽根は水を弾くので、濡れて重くなることはありません。

 

↑【おまけの動画】 
 同じ日の午前5:20分頃、カメラの位置や画角をしっかり決める前に白鳥の第一陣による離塒が始まってしまいました。
慌てて撮り始めたのでいまいちの映像ですが、個人的な記録としてブログ限定で公開しておきます。
単独で飛び去る一匹狼の個体もいるのですね。

浅い繁殖池の底に隠れるヤマアカガエルの群れ

前回の記事:▶ 繁殖池の岸辺の枯草に潜り込むヤマアカガエルの抱接ペア♀♂

2021年3月中旬・午後12:10〜13:15・くもり 

残雪に覆われた里山の緩斜面に2つ並んでいるヤマアカガエルRana ornativentris)の繁殖池のうち、低いところにある小さくて浅い池L(lower)についての記録です。 
深い池Hと異なり、夏になると抽水植物が生えるのがこの池Lの特徴です。 
池Hと比べて池Lに集まるヤマアカガエルの数は少ないようですけど、3日前に見たときは無かった卵塊が岸辺に少し産みつけられていました。
私が現場入りする直前まで♂が鳴いていたのに、残雪の上を歩き回る私の足音に警戒して鳴き止み、水中に潜って隠れてしまいました。 
長時間待っても警戒を解いてくれません。 
私が池畔に近づいただけで驚いたヤマアカガエルが岸辺から水底に慌てて潜ってしまいます。 

この池Lは水深が浅いので、水中に潜んでいるカエルが比較的鮮明に写っています。 
水中に潜んでいるカエルの体表を赤外線温度計で測ってみると、水温は3.1℃でした。
小型の個体は♂だと思うのですが、中型・大型の個体の性別が私には外見で見分けられません。 
水中に♀が単独で居たら周りの独身♂が放っておくはずがありませんから、登場個体はおそらくすべて♂だろうと予想しています。(間違っていたらご指摘願います。) 
池の底で泥の上にじっとしていると、見事な保護色になっていて見つけるのは困難です。 
目をつぶっているので冬眠状態なのかと思いきや、前足で頭を掻きました。 
池の底を移動し始め、泥(堆積物)の底に潜り込んで身を潜めました。 
どうやら私に見られていることを気づいているようです。 

水中で2匹目を見つけて撮り始めたら泳いで移動し、岸辺へ上がってきました。 
ここで縄張りを張り、♀が来るのを待ち構えるようです。 
水中で枯れた抽水植物の上で休んでいる個体もいました。 

池Lの底に隠れているヤマアカガエル♂のうち1匹が少しでも動くと、連鎖反応のように互いに居場所が入れ替わります。 
♀と抱接ペアを形成する♂は早い者勝ちですから、独身♂は近くで動く物に対して何でも反射的に跳びつかないといけないのです(誤認抱接)。 
しかし今回は蛙合戦と呼ぶほど激しい展開にはならず、相手に軽く触れただけですぐに別れたので全て♂なのでしょう。 
岸辺と異なり、池の底では♂同士の縄張り争いは起こりません。 


早春の池でヤマアカガエルの繁殖行動を初めて観察してみたのですが、残念ながら産卵行動まで見届けることはできませんでした。
あえて予習せずに観察を始めたのですけど、とにかく警戒心が強くて難しかったです。 
わずか2回(3日おきの2日間)の観察では分かったことよりも疑問や課題の方が多いので、来季の調査が今から楽しみです。 
抱接ペア形成の瞬間も見れていません。 
池の底で冬眠することも確認する必要があるます。 

雪国のヤマアカガエルの繁殖行動は暖地の個体群と少し異なるのではないか?と個人的には疑っています。 
当地のヤマアカガエルは定説に反して、独身♂が繁殖池の岸辺に並んで縄張り争いをしているように見えたのです。
 
↑ 【おまけの動画】 

この池Lを見ていて不思議だったのは、池の水が一部白濁していることです。
今回メインで紹介した動画でもラストシーンに写っています。
てっきりヤマアカガエル♂が放精したのかと私は早とちりしたのですが、その辺りを探しても抱接ペアや卵塊は見当たりませんでした。 
池の底でカエルが慌てて動き回る際に水底の泥を巻き上げた訳でもありません。

首をひねりつつ観察を続けると、池Lの岸からときどき白い泥が流れ込んで水中に拡散していると判明しました。 
白濁した泥水が雲のようにモクモクと水中に流れ込んでいます。 
斜面の上にある池Hから溢れた雪解け水が常にチョロチョロと下の池Lに流入するのに、白い泥水の流入はなぜか間欠的です。 
2つの池H、Lの間の土壌がときどき崩れているようです。 
ヤマアカガエルの繁殖活動とは直接の関係は無いものの、いずれ池Lの養分となるのでしょう。 
池Lが池Hよりも水深が浅いのは、このように土壌が少しずつ流入してきた結果と分かりました。 
抽水植物が毎年冬に枯れて腐った遺骸も池Lの底に溜まっていきます。 
生態学の教科書に書いてある湿性遷移がまさに進行中の現場なのだと納得しました。 

最後に池Lの全景を撮った写真を掲載しておきます。(別アングル)

2021/06/21

緑のイモムシを巣に運ぶアリ

 

2019年9月下旬・午後14:30頃・晴れ 

河原のコンクリート護岸の上をクロヤマアリFormica japonica)のワーカー♀が獲物を引きずって巣に運んでいました。 
蟻は緑色の青虫(種名不詳の幼虫)の細長い体の中央部を咥えて、後ろ向きに引きずって歩いています。 
イモムシはなぜか少し萎びている印象で、腹面を向けているために種類が見分けられませんでした。 
面倒でもアリから一時的に獲物を取り上げて、写真に記録すべきでしたね。 


この河原ではジガバチ♀が活動していたので、もしかするとジガバチが麻酔した獲物を運搬中に落としてしまい、その落とし物をアリが持ち去ったのではないか?となんとなく妄想しました。
実はこのコンクリート護岸で借坑性のハキリバチが営巣していて、私はその定点観察観察に来たのです。
妙に細長い葉片を運んでいるように見えてギョッとして撮り始めたらアリでした。

繁殖池の岸辺の枯草に潜り込むヤマアカガエルの抱接ペア♀♂

前回の記事:▶ 繁殖池の底で♀の死骸に抱接を続けるヤマアカガエル♂(屍姦)
2021年3月中旬・午後12:50頃・くもり 

ヤマアカガエルRana ornativentris)の抱接ペア♀♂が繁殖池Hの底から岸辺の方に登ってきました。 
個体識別できていないので、この日見たのと同じペアかどうか不明です。
池の岸では残雪の雪解け水がポタポタと池に滴り落ちています。 
抱接ペアは周囲の安全を確かめてから、岸辺に生えていた草が枯れた茂みの下に潜り込みました。 
ヤマアカガエルの体色は枯れ草に紛れて見事な保護色(迷彩)になっています。 
岸辺の枯草付近で産卵を始めてくれるかと期待したのですが、なぜかいつまで経っても産卵してくれません。 
私もいい加減、待ちくたびれました。 
実はカエルは視力が良くて、池から少し離れたところからじっと見ている私を警戒しているのかもしれません。 

つづく→

2021/06/20

クルミの殻を投げ落として割り抱卵中の♀に給餌するハシボソガラス♂(野鳥)

 

2021年3月下旬・午前9:50頃・くもり 

舗装された堤防路でハシボソガラスCorvus corone)がオニグルミの実を嘴でいじくり回していました。 
これからクルミ割り行動が見れそうです。 
ようやくクルミを咥えると飛び立ち、急旋回してから近くの電柱に止まりました。 
すぐに電柱から飛び上がると、空中でクルミを離して落としました。 
堤防路から横の土手に転がりかけたクルミをハシボソガラスが追いかけて拾いました。 
落下の衝撃でクルミの硬い殻が上手く割れたようです。 
カラスは足でクルミを押さえながら割れ目に嘴の先を叩き込んで割り、中身をほじくり始めました。 
しかしハシボソガラスの喉袋が膨らんでいることから、自分で食べているのではないようです。 
これから誰かに給餌するのか、それともどこかに隠すのかな?(貯食) 
しかし、クルミを貯食するのなら殻付きのまま隠さないと保存性が低下するはずです。
やがてカラスはクルミの殻を路肩に残して飛び去りました。 
近くの枯木の天辺に止まり直したカラスの喉袋が明らかに膨らんでいます。 
ここで私は動画の撮影を中断してしてしまったのですが、その隙をついてカラスは枯木から飛んで帰巣しました。 
河畔林の樹々は未だ落葉したままですが、近くのニセアカシア(別名ハリエンジュ)樹上に立派な巣が完成していました。 
私が慌てて巣にカメラを向けると、カラスはすぐに巣を離れてしまいました。 
繁殖期の野鳥はとにかく巣の場所をヒトに知られたくないのです。 
出巣したハシボソガラスは止まり木(落葉樹)で嘴を拭いました。 
このとき喉袋の膨らみが無くなっていることから、クルミの実を誰かに給餌した直後であることが分かります。 
シャイなカラスは、私から見えない枝の死角に隠れようとしています。 

改めて私がハシボソガラスの巣にズームインしてみると、巣の上から黒い頭が少しだけ覗いていました。 
♀が抱卵しているのでしょう。 
ということはつまり、投げ落としでクルミの殻を割っていた♂が、巣で抱卵中の♀に甲斐甲斐しく給餌したと分かりました。
クルミを詰め込んだ喉袋が膨らんでいる
抱卵している♀の黒い頭がほんの少しだけ見える?

繁殖池の底で♀の死骸に抱接を続けるヤマアカガエル♂(屍姦)

前回の記事:▶ 岸辺の卵塊に潜り込むヤマアカガエルの抱接ペア♀♂

2021年3月中旬・午前11:35〜午後13:35頃・くもり 

ヤマアカガエルRana ornativentris)が繁殖する池Hの底に沈んだまま仰向けで白い腹を見せている大型の個体が気になります。 
多数の独身♂が殺到して激しい蛙合戦が繰り広げられているので、おそらく♀なのでしょう。 
池の中央部で最も深い底でした。

しかし、この♀は池の底で仰向けのまま長時間全く動かないので、どうやら死んでいるようです。(溺死?)
雪解け水が溜まったこの池は水温が低いですから、死骸が腐敗する進行は遅いはずです。 
♀溺死体の腹部が膨満しているのは、腐敗してガスが溜まっているというよりも、産卵前の卵が卵巣に詰まっているからでしょう。(体内にガスが溜まった死骸は浮くはず) 
 
数時間後、♂同士の蛙合戦の決着が付いたようです。 
1匹の勝者♂が死んだ♀の腹側に抱きついていました。 
蛙のカップル♀♂にとってこの体勢は「正常位」ではありません。 
カエルの♂が抱接するには♀の腹側ではなく背側にしがみつかないといけないのですが、とりあえず相手を確保しておきたいのでしょう。 
♀の死骸に抱きついたまま、♂は水底でじっとしていました。 
抱接ペアが形成されると、それ以降の行動(産卵地探索など)は♀が主導権を握ります。 
この♂は水中で息が続く限り、動かない♀の死骸を抱き続けるのでしょう。 
激しい♀争奪戦の末に♀を殺してしまうのも、♀が死んだことに気づかずに抱接し続けるのも、本能行動の愚かしさの一例です。
遺伝子でプログラムされた本能行動は長い進化の結果、おおむね上手く働くのですが、決して完璧ではありません。
♀死骸に執着している♂よりも、「何かおかしい」と気づいてすぐに離れる♂個体の方が次世代を残す上で適応的と言えます。 
ヤマアカガエルの独身♂は動くものなら手当たりしだいに飛びつくらしいので、ゴム製のカエルの玩具やリアルなルアーなどを繁殖池に投入する実験をしたら面白そうです。

ヤマアカガエルは池の底で冬眠するらしいのですが、いくら雪解け水の水温が低くて代謝が抑えられるとは言え、無呼吸でどれだけ耐えられるのでしょう? 
水中の皮膚呼吸だけで生存可能なのでしょうか? 
厳冬期のヤマアカガエルの様子を私は未だ見てません。(この池の水面は凍結していました) 
早春の繁殖期が始まると、水中での蛙合戦の合間に♂はときどき息継ぎのため水面に浮上しているようです。
関連記事(3日前の撮影)▶ 早春の池で水面に浮かぶヤマアカガエル♂
水中の蛙合戦はヒトの水球競技やシンクロナイズド・スイミングよりも体力を消耗しそうです。
無呼吸で永遠に続けられるはずはありません。
多数の♂に抱きつかれ蛙合戦で長時間もみくちゃにされた結果、♀が溺死してしまったのだろうと私は死因を推理しました。
しかし別の死因として、冬眠に失敗して凍死した♀個体という可能性もありそうです。 
ヤマアカガエルの喉には斑紋があるのが特徴らしいのですが、この溺死体では見えません。(まさか別種のカエルなのかな?) 
あいにく私はタモ(手網)を持ってこなかったので、死骸を回収して確かめられませんでした。

池の底に横たわる死骸はいずれ、ヤマアカガエルの卵塊から孵化したオタマジャクシ(幼生)や他のスカベンジャー達の餌となるはずです。 

風で水面が波立つと、深い池の底の様子がグニャグニャに歪んでしまいます。 
来年は水中カメラで蛙合戦を撮影してみたいものです。 

つづく→ 

以下に掲載するのは、不鮮明だった写真を自動色調補正処理したものです。

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