2022/05/20

雪山で排尿するニホンカモシカ♂

 

2022年1月上旬・午後13:25頃・晴れ 

雪深い里山で採食活動するニホンカモシカCapricornis crispus)を見つけました。 
杉林の林縁に居る私が斜面の上から見下ろすアングルで、カモシカは私の存在に気づいていないようです。 
雪原をラッセルしていたカモシカは木立の間で立ち止まり、腰を少し屈めて排泄中のようです。 
初めは脱糞かと思ったのですが、肝心の下半身(肛門)が立木の陰に隠れているために確信がもてません。 
脱糞中なら黒くて小さな俵状の糞を肛門からポロポロと排泄したはずです。
撮影アングルを求めて私が下手に横へ動くと、気づいたカモシカに逃げられそうな気がしたので、じっと我慢しました。 
ズームインしたら、カモシカは下腹部から透明な尿を前方に排泄していました。 
腰を深く下ろさない排尿姿勢であること、前方へ小便を放出していたことから、この個体はおそらく♂だろうと判明しました。 
しかし下腹部も長い毛が密生していて、陰茎や睾丸などの外性器は全く見えませんでした。 
カモシカの性別を外見で見分けるのは至難の業なのですが、唯一見分けられるのが排尿時なのです。(※追記参照) 

以前、カモシカの排尿シーンを観察したときには上から背側を見下ろすアングルでした。
今回は真横からしっかり動画撮影できました。
関連記事(8年前の撮影)▶ ニホンカモシカ♂(左角欠け)の排尿
今回は小便だけしたのか、それとも大便と小便を一緒に排泄したのか、残念ながら不明です。
撮影後に現場まで降りて行って雪上に糞塊の有無を確認すべきでしたが、同一個体を追跡しながら採食シーンをひたすら撮影することになりました(映像公開予定)。 

おしっこを済ませたニホンカモシカ♂は深雪のラッセルを再開しました。 
一歩進むごとに腹が雪面に付きそうなぐらい深い雪に潜っています。 
ようやく立ち止まると、採食を始めました。 





※【追記】
カモシカは排尿時の姿勢に性差があることが知られています。
参考文献から復習です。

♂は後ろ足を開き気味にし腰を少し低くしておしっこをするが、♀はお尻が地面に着くくらいまで腰をおとす。これが典型的なおしっこスタイルである。では、典型でない場合があるかといえば、ちゃんとあるのだ。斜面の傾斜が急だったせいか♀が中腰でおしっこをしたことがあったし、若い♂が♀と見間違えるがごとく腰をおとすのも何回か見た。結局、排尿するときの姿勢はある程度の手がかりとはなるものの、より確実なのはおしっこがペニスのある腹のほうから放出されているのか、それとも♀の性器がある尾の下から出ているのかを確認することと言える。 (『カモシカの生活誌:十八歳の夏、僕は初めてアオシシに出会った』p46-47より引用)



(カモシカの)♂と♀では、おしっこのスタイルがちがうことに気づきました。♂は歩くときとほぼおなじ姿勢でおしっこをするのに対し、♀は腰をおろし、低い姿勢でおしっこをしたのです。 (宮崎学『森の写真動物記〈7〉草食獣』p16-17より引用)


カモシカの迷信。(中略)外見からは性差はわからないが、立ったままでオシッコをするのが♂、腰をかがめてオシッコをするのが♀…とも言われていた。でも、これもウソだよ!♂も腰をかがめて用を足す。(『哺乳類のフィールドサイン観察ガイド』p93より引用) 


 冬に深く積もった雪上で排尿すると、尿の温度で雪がとけ、細い穴が出来ます。この穴の角度は♂と♀でやや違います。♂の場合は陰茎が腹面に斜め前向きについているので斜めの穴が出来、♀の場合は肛門の下方に接して排尿口があり、腰を下げる姿勢になるので、ほぼ垂直(縦に真っすぐ)な穴となります。(平田貞雄『ニホンカモシカ・ミミの一生』p80より )

本書は♀のカモシカを長期飼育した記録で、「排泄時の姿勢」と題した分かりやすい写真も掲載されていました(p80およびp97)。明らかに♂よりも深く腰を落としていました。



2022/05/19

スギ山林の雪道を嗅ぎ回る冬毛のニホンノウサギ【暗視映像:トレイルカメラ】

前回の記事:1月下旬▶ 雪深い杉林を深夜にうろつくニホンノウサギ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2022年3月下旬・午後21:57・晴れ 

未だ雪深い低山の杉林をトレイルカメラで監視していると、晴れた夜に再びニホンノウサギLepus brachyurus angustidens)が現れました。 
杉林にはウサギが好んで食べる餌植物は生えてないと思うのですが、通り道になっているようです。 
林道脇でスギ横枝の葉の匂いを嗅いでから、左へ立ち去りかけたところでなぜか立ち止まりました。 
何やら念入りに雪面の匂いを嗅ぎ回っています。 
ようやく画角の外に消えました。
雪面はガリガリに凍結しているようで、ノウサギの足跡は残りません。

2022/05/18

雪山のスギ林を遊動するニホンザルの群れ【トレイルカメラ】

 

2022年3月下旬・午後13:30〜14:13・晴れ 

未だ雪深い里山で野生ニホンザルMacaca fuscata fuscata)の群れがスギ林の林道を続々と通りかかり、トレイルカメラの前を横切りました。 
この低山にニホンザルが生息していることは分かっていたのですが、トレイルカメラで撮れたのは初めてで、嬉しい収穫でした。 
ニホンザルにとって杉林は餌が無い「緑の砂漠」なので、杉を植林した区画にはあまり来ません(塒として使ったり、通り過ぎるだけ)。 

初めに登場した個体は林道を外れると、奥の斜面を斜めに下って行きました。 
画面奥(下り斜面)の雪原をニホンザルが遊動する姿もスギ林の隙間から辛うじて見えました。(赤枠@0:23〜0:32) 
次に登場した個体は初め林道沿いに立つスギの横枝に登っていました。(@0:35) 
そこから雪道に降りて右へ遊動して行きました。 
最後に左から登場した子ザルはカメラに気づいてカメラ目線をくれました。 
口に黒い果実?を咥えているようです。(@0:50) 

常緑樹であるスギの林床には昼間でもあまり日照が届かず、雪面はガリガリに凍っているようです。
そのため、ニホンザルが歩いても足が雪に潜りません。 




2022/05/16

ニホンカモシカが雪山の杉に眼下腺マーキング【暗視映像:トレイルカメラ】

 

2022年3月上旬 

まだ雪深い低山の杉林をトレイルカメラで監視していると、夜に通りかかったニホンカモシカCapricornis crispus)が眼下腺マーキングしました。 
豪雪地帯のため、カモシカが往来する林道の雪面がカメラの設置位置よりもだいぶ高くなっています。 
この時期(3月上旬)には新たな積雪はほとんどなくなり、林道の雪面はガリガリに凍っています。 


シーン1:3/1・午後18:40・晴れ 
同じ日の早朝に登場したカモシカと同一個体なのかどうか、定かではありません。
前回の記事:▶ 夜明け前の雪山で杉の木の下に佇むニホンカモシカ【トレイルカメラ:暗視映像】
カモシカが林道脇のスギの幹に顔を擦り付けていました。 
後ろ姿でいまいち分かりにくいのですが、おそらく顔の眼下腺で匂い付け(マーキング)しているのでしょう。 
続けて横枝の匂いも嗅ぎました。 


シーン2:3/9・午前3:11・晴れ 
8日ぶりにカモシカがやって来ました。 
全く同じスギの幹の同じ場所で眼下腺マーキングしています。 
今回はカモシカの立つ角度がバッチリで、顔を幹に擦り付ける行動をしっかり見せてくれました。 
単独で生活するカモシカはこうして縄張り内のあちこちで眼下腺マーキングして縄張りを宣言しているのです。

横枝の匂いも念入りに嗅いでいます。 
右に立ち去る際にペロペロと舌を出し入れする謎の行動が気になりました。(@1:22) 
フェロモンに対するフレーメン反応に付随する行動なのかな? (当てずっぽう)
あるいは、ただ幹に付着した水滴や雪を舐めた後なのかもしれません。


2022/05/15

珍しく日中に雪山の獣道を歩くホンドタヌキ【トレイルカメラ】

 

2022年3月上旬・午後13:30・晴れ
前回の記事:▶ 根雪が積もる前後に杉林の溜め糞場をチェックするホンドタヌキ【暗視映像:トレイルカメラ】

里山の杉林の林道を通る野生動物をトレイルカメラで監視しています。 
珍しく明るい時間帯にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が現れました。 
雪道に立ち止まってトレイルカメラを見つめています。 
ただしカメラに鼻を近づけて匂いを嗅ぐことはありませんでした。 
最後は右から左へと歩き去りました。 

タヌキはほぼ夜行性と考えられていて、昼間にトレイルカメラの前に現れるのは珍しいです。
ただし、カメラのバッテリーを節約するために夜間しか監視しないようにタイマー設定にすることが多く、終日監視すれば意外に日中も活動しているのかもしれません。

林道のこの区画は晩秋までタヌキの溜め糞場sだったのですが、冬になって根雪が積もるとタヌキはたまに通りかかるだけで、なぜか排便しなくなりました。 
積雪期でも使い続ける溜め糞場との違いは何なのか、不思議です。 
ここではタヌキの通行頻度が低いことは確かです。
例えば同時期に並行して調べている平地の河畔林では複数のタヌキが溜め糞場rvに通い続け、ときどき排便していました。 
もし調査地を1ヶ所だけに絞って調べていたら、雪国のタヌキの生態について私は偏った印象を抱いていたはずです。 
したがって、今後もトレイルカメラによる観察例数を地道に増やしていくことが大切だと痛感しました。 



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