2015年6月上旬・室温23℃
▼前回の記事
マイマイガ幼虫を寄主とする寄生蜂の羽化【微速度撮影】
羽化が一段落してから飼育容器全体を撮ると、繭塊から羽化した寄生蜂は計11匹でした。
容器内を徘徊したり、飛び回ったり、化粧したりしています。
寄主マイマイガ(Lymantria dispar japonica)幼虫は息絶えてしまったのか、もう動きません。
寄生蜂の羽化率や性別、割合(性比)などを細かく調べていませんが、腹端に産卵管がある個体が♀でしょう。
羽化直後に交尾している♀♂ペアや、寄主へ産卵している♀などは見られませんでした。
触角を掃除したり後脚を擦り合わせたりして身繕いしています。
※ サランラップの蓋越しにマクロレンズで蜂を接写した部分の映像は、動画編集時に自動色調補正を施してあります。
以下は寄生蜂の標本写真。
2009年に同様の飼育で得られたのと同じく二次寄生蜂のヒメバチ科トガリヒメバチ亜科、Acrolyta属の一種ではないかと思います。
マイマイガ幼虫の一次寄生蜂(多寄生のコマユバチ科)を未だ見たことがないので、ちょっと残念でした。
マイマイガ幼虫が死ぬまでボディガードのように繭塊を守っているように見えても、二次寄生蜂♀によるアタックを全く防御できていないことが今回も分かりました。
▼つづく
ラップを噛み破ろうとする寄生蜂(寄主マイマイガ幼虫から新たに出現)
2015年6月中旬
道端に咲いたサラサウツギ(=ヤエウツギ)の灌木でウラギンスジヒョウモン♂(Argyronome laodice japonica)が訪花していました。
初めは翅を閉じたままで翅表を見せてくれないため、性別不明でした。
ようやく翅を開閉してくれた際に、翅表の先に白い紋様が無く、♂と判明しました。
2015年6月中旬
平地の生垣に挟まれ、きれいに草刈りされた小径でメスグロヒョウモン(Damora sagana liane)の♀♂ペアが目まぐるしく飛び回っていました。
求愛の乱舞を240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。
本種は翅の色が著しい性的二形なので、求愛行動を観察する上で非常に助かります。(♀が名前の通り黒っぽい青色、♂が茶色)
♀は不規則な動きでひたすら逃げ回っているように見えます。
わざと複雑な飛び方をして♂の力を試しているのかな?
♀を追尾する♂の飛び方に何か規則性はあるでしょうか?
♂は♀の下を飛んで翅表を見せたがっている気がしました。
♂は♀にぶつかる勢いで飛んで行くこともありました。
逆になるべく地面に近いところを低く飛ぶのが♀の交尾拒否(焦らし?)なのかもしれません。
メスグロヒョウモンの求愛飛翔に関する文献は見つけられませんでしたが、分類学的に近縁なミドリヒョウモンについて『エソロジカル・エッセイ 無名のものたちの世界I』p93「雄をよぶ色とにおい:チョウが雌を見い出す仕組み」によれば、
♀を見つけたミドリヒョウモンの♂は、特殊な追跡飛翔をはじめる。♀のうしろからその下側に出て、さらに目の前を急上昇するのである。これが♀を強制着陸させる信号となる。
これを読む限り、今回観察したメスグロヒョウモン♂の追跡飛翔もたぶん同じだと思います。
▼関連記事
メスグロヒョウモン♀に求愛するミドリヒョウモン♂(異種間求愛と交尾拒否行動)
交尾まで見届けたかったのに、雑草が深く生い茂った方へ飛び去ってしまい残念。
2015年6月中旬
道端に咲いたサラサウツギ(=ヤエウツギ)の灌木で様々な昆虫が訪花していました。
それを狙ってコガタスズメバチ♀(Vespa analis insuralis)が飛び回っています。
恐ろしいスズメバチが飛来すると、おそらくその羽音に反応して、他のハナバチ類が慌てて逃げ出します。※
運良く狩りの瞬間を撮影することができました。
逃げ遅れて餌食となったのはセイヨウミツバチ(Apis mellifera)のワーカー♀でした。
茂みの奥で獲物を噛みほぐして肉団子を作り始めました。
その途中で獲物を咥えたまま飛び去ってしまいました。(帰巣?)
飛び立つ瞬間を1/4倍速のスローモーションでリプレイしてみたら、コガタスズメバチと判明。
先程の同一個体が狩りの成功に味をしめて戻って来たのか、ウツギの花の手前で見事なホバリング(停空飛翔)を披露してくれました。
※ 録音したスズメバチの羽音を花の近くでスピーカーから流し続けると、ハナバチ類がその花に近寄らなくなるでしょうか?(プレイバック実験)
2015年6月中旬
堤防に咲いたウツギの群落でモンシロチョウ(Pieris rapae)が訪花していました。
一つの花から長時間吸蜜しています。
風が少し吹いても花にしがみついています。
ようやく自発的に飛び立ったと思ったら、スズメバチ(種名不詳)が獲物を物色しに飛来しました。
モンシロチョウはしばらく辺りを飛んでやり過ごすと、近くの別の花に着陸しました。
この日はウツギの花粉がほとんど残っていませんでした。
ハナバチがせっせと集粉するので午後になると花粉がほとんど無くなるのか、それとも花期が終わりに近いのかもしれません。
今年は雨が降ったりしてタイミングが合わず、定点観察にあまり通えませんでした…。
2015年6月上旬・室温23→22℃
▼前回の記事
マイマイガ幼虫(蛾)に寄生したサムライコマユバチの繭塊
雑木林の下草(クヌギの幹に伸びた蔓性植物)にマイマイガ(Lymantria dispar japonica)幼虫と寄生蜂の繭塊を見つけました。
羽化してくる寄生蜂を調べるために、採集して飼育することにしました。
同じ葉の表面と裏面に2組の寄主と繭塊が付いていたので、葉を切り離して別々に隔離しました。
以下の記録では、葉表に居た寄主と繭塊に注目します。
3日後の朝、微小の蜂が羽化していました。
6年前に飼育したときに得られた寄生蜂と似ているかもしれません。(二次寄生蜂かも?)
▼関連記事
マイマイガと二次寄生蜂
寄生蜂が繭から羽化する瞬間を動画に記録するのが一つ目の目標です。
羽化の前兆が不明なので、取り敢えず10秒間隔のインターバル撮影で監視してみることにしました。
すると1匹の寄生蜂が羽化しました。
夜22:02、白い繭の端が開き始めました。
22:03には蜂の黒い頭部が見え始め、次のコマ(10秒後)では既に羽化脱出した寄生蜂が繭から離れた位置に写っていました。
やはり羽化は一瞬なので、インターバル撮影ではなく動画で記録すべきだと分かりました。
引き続き、繭塊を10倍速の動画で夜通し監視・録画しました。
続々と寄生蜂が羽化してきました。
毛虫の下に隠れている繭からも羽化しました。
羽化の予兆は外から見て全く分かりません。
寄主(マイマイガ幼虫)は下半身で繭塊に覆い被さるような姿勢のまま静止しています。
その胸部第2〜3節辺りだけ妙な(不自然な)蠕動が認められました。
まさにその体節の背面および側面に付着している白い米粒のような物はヤドリバエの卵なのかな?
寄主の体内で寄生蜂とはまた異なる寄生者が跳梁跋扈しているようです。
予想通り、後にこの寄主からヤドリバエ終齢幼虫が1匹脱出してきました。(映像なし)
栄養不足だったようで、とても小さな蛆虫でした。(容器内で小さな囲蛹になったものの、成虫は羽化せず。)
▼つづく
マイマイガ(蛾)幼虫の二次寄生蜂(Acrolyta sp.)
2015年6月中旬
溜池の岸辺の階段で一羽のスズメ(Passer montanus)が物欲しそうにしているので、これはもしや…と予感がして望遠で撮り始めました。
すると案の定、おずおずと水を飲み始めました。
一番下の階段から水面を覗きこんでいます。
危険はないか調べつつ階段を横に移動。
階段の端まで来ると、ここなら目立たないと安心したように、スロープを降りて岸から水面に嘴を浸しました。
群れではなく単独行動のためか、かなり辺りを警戒しているようです。
上空を飛来したカラスに驚いて、飛んで逃げました。
スズメの飲水行動を観察できたのはこれが2回目です。
行動から意図や予兆を読み取るのが肝心だと分かってきました。
▼関連記事
川の水を飲むスズメの群れ(野鳥)
※ YouTubeの動画エディタで自動色調補正を施してあります。
2015年6月上旬
平地の雑木林でクヌギの幹にマイマイガ(Lymantria dispar japonica)の幼虫が大量に止まっていました。
今年もやはり大発生したようです。
昼間はこのように樹皮に隠れて休み、夜になったら枝に移動して葉を食害するのかもしれません。(実際に夜に観察しに行ったら分かるはずです。)
それとも樹皮に静止している幼虫は、脱皮や営繭する前の眠のステージなのでしょうか?
▼関連記事(前年に同じ場所で撮影)
クヌギの木に群がるマイマイガ(蛾)老熟幼虫
害虫扱いされているマイマイガの強力な天敵として期待されるのが寄生蜂です。
クヌギ樹皮の裂け目の奥に潜む一頭のマイマイガ幼虫の体内からサムライコマユバチの一種(例えばブランコサムライコマユバチ[Protapanteles liparidis])と思われる寄生蜂の幼虫が一斉に脱出して近くに繭塊を紡いだようです。
小さな白い繭が10個集まっていました。
寄主の毛虫は体内を食い荒らされても未だ生きていて、虫の息ながら自発的に少し動きました。
頭部を繭塊に向けていて静止しています。
自由に徘徊したり摂食したりする運動能力は奪われているようです(単に弱っているだけ?)。
捕食寄生されたマイマイガ幼虫がこのまま死ぬまで寄生蜂の繭塊を守るように行動操作されているかどうか、昔から非常に興味があります。
寄生蜂の繭に更に寄生する二次寄生蜂がいるので、もし無防備な繭を守るボディガードとして寄主(マイマイガ幼虫)をマインドコントロールで雇うことができれば有利になります。
▼関連記事(6年前に調べた映像)
マイマイガ幼虫から脱出した寄生蜂の繭
6年ぶりにチャンスが巡ってきたので、調べてみることにしました。
草の茎の先で毛虫をつついてみました。
体に触れると威嚇する(嫌がる)ぐらいの元気は残っていました。
元気な個体なら触られると這って逃げ出すはずですが、そのような運動能力はないようです。
(おそらく体内の筋肉や運動神経が食い荒らされているのでしょう。)
幹を上下するアリが毛虫や繭塊を攻撃してくれないかと期待したのですけど、横を素通りするだけでした。
アリは力関係でマイマイガ幼虫よりも弱く、近寄りたがらないことを示す映像が後日撮れました。(映像はこちら)
寄生蜂による行動操作の可能性については、残念ながら今回もはっきりした結論は得られませんでした。
実験のアイデアとして、確かめるべきことは明快です。
- マイマイガ幼虫を寄生蜂の繭塊から少し離した時に自力で繭塊の傍に戻ってくるかどうか?
- 寄生蜂の幼虫が脱出した後の寄主を解剖して筋肉や内臓器官の状態を調べる。
- 寄生蜂の繭塊から寄主のマイマイガ幼虫を除去した場合と残した場合とで、二次寄生を受ける割合がどう変化するか?(素人が想像するに、二次寄生蜂の分布が一様とは限らないので、フィールドではかなり多数のデータを取って統計処理しないといけない気がします。)
- それならむしろ飼育下で直接的に実験した方が楽かもしれません。(二次寄生蜂♀をどうやって手に入れるか?)
実はこのクヌギの木の下草で、同じく寄生蜂の繭塊に随伴するマイマイガ幼虫を3頭見つけました。
羽化してくる寄生蜂を調べるために、採集して飼育することにしました。
クヌギの樹皮からは採集しにくかったので、映像の個体は見送りました。
つづく→寄生蜂の羽化(微速度撮影)
【追記】
動物行動の映像データベースに「サムライコマユバチに操作されボディーガードとして振る舞うマイマイガ幼虫」と題した動画が公開されています。その説明文を読んでもタイトルのように寄主操作を言い切ってしまって良いのか、個人的には疑問です。私と似たような簡単な実験をしてるのですが、繭塊に覆い被さっている毛虫に直接触れたら嫌がるのは当然です。近くにある寄生蜂の繭塊だけに触れた時にも毛虫が威嚇・防御するかが問題です。
2015年6月上旬
街中を流れる川沿いで2羽のオナガ(Cyanopica cyana)が電線に止まっていました。
こちらを警戒してるのか、電線から電線へ飛んで移動。
鳴き交わしているように思ったのですが、川の水音で鳴き声がかき消されてしまいます。
一羽が対岸の民家の庭木に移動しました。
巣があるのか?と一瞬頭をよぎりました。
樹上で何か採食したように思いましたが、はっきり見えません。
樹種不明の木の実(サクランボ?)は未熟な黄緑色ですし、虫を捕食したのかな?
ハンディカムで撮ったのでズーム倍率が弱く、画質もいまいちです。
風が強く吹き、枝葉が常に揺れている悪条件でした。
オナガは木の枝から飛び立つと、近くの民家の屋根に止まりました。
すぐにまた飛び立ち、川を渡ると頭上を通り過ぎ住宅地の死角に消えました。
オナガは警戒心が強く滅多に撮れないので、嬉しい出会いでした♪
以下は1か月後に撮った木の写真です。
実が見当たらなくなっていました。
樹種は何ですかね?
お分かりの方は教えて下さい。
【追記】
2018年4月下旬には、桜の花が散った後に、白い花が咲いていました。
2015年6月中旬
道端に咲いたサラサウツギ(=ヤエウツギ)の樹冠でウラギンヒョウモン(Fabriciana adippe)が訪花していました。
翅を閉じたままで翅表を見せてくれないため、性別不明です。
(翅表の翅頂を見たかった)
良いアングルを確保できず、おまけに風で常に枝が揺れる難条件での撮影でした。
2015年6月上旬
街中を流れる川の堤防で2羽のコムクドリ(Sturnus philippensis)と出会いました。
♀♂の番のようです。(頬が茶色の個体が♂)
ニセアカシア?の樹上から堤防の地面に降りたものの、警戒してすぐ飛び去りました。
鳴き声♪はムクドリそっくりだと思いました。
冬の雪の重みでひん曲がったガードレールに乗って休息。
最後はキュルル♪と鳴きつつ対岸へ飛び去りました。
近くに私が居なければ堤防で地上採食したかったのでしょう。
『ムクドリ (カラー版自然と科学50) 』p14によれば、
コムクドリは樹上にいることがおおく、地上にはめったにおりません。
2015年6月上旬
▼前回の記事
ウツギの枝に営巣したキボシアシナガバチ創設女王(扇風行動など)
キボシアシナガバチ(Polistes nipponensis)の初期巣を見つけた翌日の夜中(23:12 pm)にそっと様子を見に行ってみました。
夜の女王様はどんな寝姿なのでしょう?
赤外線の暗視カメラで初めは巣盤の真下から狙うと、 創設女王は巣盤の上部に居て翅先だけが見えました。
私が不注意で付近の枝葉に触れてしまったせいで、女王が振動に気づいてしまい警戒体勢になりました。
巣盤の下面に回りこんできたものの、昼間のようにこちらを向いて正面から睨みつけたり育房の点検も行いませんでした。
暗い夜は目が見えず活動できないのでしょう。
白色LEDを点灯した動画も撮ればよかったと後悔したのですが、 女王が警戒して初期巣を逃去するのが心配で遠慮しました。
このコロニーを定点観察するつもりだったのに、残念ながらこれが最後の記録になりました。
その後はいつの間にかウツギの茂みに巣が無くなったのです。
誰かにきれいさっぱり駆除されてしまったのか、スズメバチに襲撃されたのか、不明です。
ウツギの枝ではなく葉柄に作られた巣なので、何かの弾みに葉と一緒に巣が落ちてしまったのかもしれません。
更に日が経つとウツギの灌木を覆うようにクズが生い茂り藪のようになったので、そもそもアシナガバチの営巣環境としてあまり向いていなかった気がします。(営巣地をここに選定した女王のミス)
2015年6月中旬
民家の屋根の軒先にできた破れ目にスズメ(Passer montanus)が営巣しているようです。
逆光ですけど、巣穴から巣材(藁?)が覗いています。
この巣に親鳥が飛び込んだのを見て、次に出てくる瞬間を240-fpsのハイスピード動画に撮ろうと待ち構えました。
初めは親鳥の尾羽が見えていたのですが、羽ばたいて入巣し直しました。
雛に虫を給餌したのかな?
その後は巣口から頭を出して外界を窺っています。
巣穴から出て羽ばたくと空中で急旋回し、トタン屋根の角に一旦止まりました。
少し休むと採餌のため飛び去りました。
帰巣シーンもハイスピード動画で記録したかったのですが、先を急ぐ用事があるので観察を打ち切りました。
ヒトが近くで見ていると親鳥は警戒して巣に近寄らないのかな?