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2025/03/13

下半身が麻痺したまま巣口で座り込んで動けないホンドタヌキの横で巣材を集めるハシブトガラス【野鳥:トレイルカメラ】

 

前回の記事:▶  


2024年3月下旬 

ニホンアナグマMeles anakuma)が死んだ後も、自動撮影カメラでその営巣地(セット)の監視を続けています。 
ホンドタヌキ♀♂(Nyctereutes viverrinus)が巣穴を乗っ取ったようです。 

シーン1:3/30・午後16:04・晴れ・気温14℃(@0:00〜) 下半身を麻痺した個体と思われるタヌキが、巣口Lから顔を出して外の様子を伺っています。 
心なしか、ブルブル震えているようです。 
足が不自由で食べ物を充分に摂れず、カロリー不足で低体温なのでしょう。
夕方の時間帯は巣口Lの窪地は日が当たらず、日光浴もできなくなりました。 

そこへハシブトガラスCorvus macrorhynchos)がタヌキの目の前に舞い降りました。 
画角の左端でカラスの顔が見切れてしまい、何をしているのか分からなかったのですが、くるっと振り返って右を向いてくれたら、ハシブトガラスが嘴に獣の抜け毛の束を咥えていました。 
産座に敷き詰める巣材を集めているようです。 
アナグマの死骸を食べていたタヌキが死骸を巣口Rの近くまで引きずってきて、そこからカラスは毛を毟り取って来たのかな?


 ハシブトガラスは、巣口Lで身動きできない「いざりタヌキ」から体毛を直接毟りたそうにしていますが、実行しませんでした。 

しばらくすると、ハシブトガラスが2羽一緒に左から登場しました。 
まさか、スカベンジャー(死肉食)のカラスが衰弱したタヌキの死を待ちきれずに、襲って捕食するでしょうか? 
足腰の弱った「いざりタヌキ」は、カラスに襲われないように巣口Lに籠城しているのかもしれません。 
健常個体のタヌキなら、これほど至近距離にカラスが来て挑発したら、逆に襲いかかろうとしたりカラスを追い払ったりするはずです。 


シーン2:3/30・午後16:07・晴れ・気温20℃(@0:00〜) 
別アングルに設置した監視カメラで続きが撮れていました。 
(こちらのカメラには西日が直接当たって、気温が高く表示されます。) 

巣口Lの窪みに座り込んだ「いざりタヌキ」が身震いし、毛繕いを始めました。 
その近くでハシブトガラスがタヌキの様子を見ています。 
死期が近いのを知っていて、あわよくば生きているうちから捕食したいのでしょうか?
産座用の巣材としてタヌキの毛を直接毟り取りたいのかもしれません。 
カラスはトコトコ歩いて営巣地を横切ると、もうひとつの巣口Rに行くと中の様子を覗き込みました。 
林床で巣材となる枯れた落ち葉(アナグマの死骸由来の抜け毛かも?)を拾い集めると、右に飛び去りました。 


ハシブトガラスの巣材集めを1.5倍に拡大した上でリプレイ。(@2:00〜) 


シーン3:3/30・午後16:07・晴れ・気温16℃(@2:18〜) 
その後も、巣口Lで呆然としている「いざりタヌキ」の様子を5倍速の早回しでご覧ください。 
もしかすると、巣口Lの窪みにはまってしまって、抜け出すことが出来ないのかもしれません。 
下半身が麻痺した状態で地中の巣穴に出入りするのは大変です。 
下手したら、二度と地上に出れなくなるかもしれません。 

この後どうなったのか、とても気になりますが、監視カメラに写っていませんでした。 


つづく→

2025/03/09

早春の林床で落ち葉を拾い集めるハシボソガラスの謎(野鳥)産座の巣材集め?

 



2024年3月下旬・午前11:40・くもり後晴れ

林床に横たわっていたニホンアナグマMeles anakuma)の死骸がホンドタヌキによって持ち去られた後も、トレイルカメラによる監視を続けています。

昼前にハシボソガラスCorvus corone) が地上に現れ、落葉樹の枯れた落ち葉を拾い集めていました。
一旦集めた落ち葉を足で押さえながら、嘴で細かくほぐす行動も見られました。
遠くにいる仲間(つがいのパートナー?)と1回だけカー♪と鳴き交わしました。
集めた落ち葉を咥えたまま飛び去りました。
特定の樹種の落ち葉だけをカラスが選んで拾い集めているとしたら面白いのですけど、私には見分けられませんでした。


※ 動画編集時にモノクロ加工を施しています。 
トレイルカメラ旧機種の癖で昼間に撮った映像の画面全体で赤色が点滅する症状が出て目障りだからです。


【考察】
これを見た私はてっきり、産座の巣材集めだろうと思いました。
カラスの巣材は主に小枝や木質の蔓などです。 
枯れた落ち葉をカラスが産座の巣材として集めるのは珍しいかもしれません。 
日本鳥の巣図鑑:小海途銀次郎コレクション』 (大阪市立自然史博物館叢書5)でハシボソガラスの巣材について調べると、
産座には多量のスギ皮、シュロの繊維、獣毛、ビニールなどを敷き詰め…(p311より引用)


今回の行動で他の解釈ができるかどうか、Perplexity AIを使ってブレインストーミングしてみました。 (出典リンクURLは割愛。)
早春の林床でカラスが落ち葉(枯葉)を拾い集めて持ち去る行動について、産座の巣材収集以外にも以下のような解釈が考えられます: 
## 巣の修繕 
カラスは通年で巣のメンテナンスを行うことがあります[6]。秋や冬の間に傷んだ巣を修復するために、落ち葉を集めている可能性があります。 
## 食料探し 
1. 落ち葉の下や周辺に潜む昆虫や小動物を探している可能性があります[4]。 
2. 落ち葉に付着した水分を飲料水源として利用している可能性もあります[4]。 
## 巣以外の用途 
1. 落ち葉を使って食べ物を覆い隠すなど、食料の保管や管理に利用している可能性があります[1]。 
2. 落ち葉を使って他の物体を覆うなど、道具として使用している可能性もあります[1]。 
## 行動学的解釈 
1. 置き換え行動(displacement behavior)の一種である可能性があります[2]。カラスが何らかのストレスや葛藤状態にあり、それを解消するために落ち葉を集めるという第三の行動を取っている可能性があります。 
2. 好奇心や遊びの一環として落ち葉を集めている可能性もあります。カラスは知能が高く、様々な物体に興味を示すことが知られています[5]。 
## 繁殖行動の一環 
落ち葉を集めて運ぶ行動が、求愛行動や番いの絆を強める行動の一部である可能性があります。 この行動自体が、繁殖の準備や相手へのシグナルとなっているかもしれません。 
これらの解釈は可能性の一部であり、実際の理由を特定するにはさらなる観察や研究が必要です。カラスの行動は複雑で文脈依存的であるため、個々の状況に応じて解釈が異なる可能性があります。

食料探しの可能性については、個人的に納得できません。 
普通の食料探しなら落ち葉をめくって探したはずなのに、私が観察したハシボソガラスは、拾い集めた落ち葉を何枚も咥えたまま持ち去ったからです。 

 「落ち葉を使って食べ物を覆い隠す」という解釈はあり得るかもしれません。 
しかし早春の時期には落ち葉が地面のそこらじゅうにありますから、わざわざ隠蔽偽装材を予め集めてから貯食場所に持っていく必要はないはずです。 
貯食場所の近くで落ち葉を調達できるはずですから、ちょっと不自然な解釈のような気がします。 

数日前にアナグマの死骸が横たわっていた地点で落ち葉拾いをしていた、という点が重要かもしれません。 
産座の巣材として獣毛は貴重ですが、前日にハシブトガラスが持ち去ってしまった後です。 
あてにしていた獣毛が見つからないフラストレーションから、ハシボソガラスは置き換え行動(=転移行動)として落ち葉を拾い集めたのかもしれない、と想像してみました。 



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2025/03/03

外出前に巣口を念入りに隠蔽するホンドタヌキ♀♂【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年3月下旬 

平地の二次林で死亡したニホンアナグマMeles anakuma)の営巣地(セット)に住み着いた(乗っ取った)ホンドタヌキ♀♂(Nyctereutes viverrinus)の動向を自動撮影カメラで監視しています。 


シーン1:3/24・午後18:23・気温9℃(@0:00〜)日の入り時刻は午後17:58 
小雪がちらつく晩に、巣口L付近でタヌキの♀♂ペアがうろついていました。 
巣口Lの匂いを嗅いだだけで、2頭は相次いで巣穴Rに入りました。 タヌキが巣穴Lに入るのを一度も見たことがありません。 
巣穴Lは住心地が悪くて使われていないようです。 

巣穴Rを内見すると、また外に出てきました。 
タヌキの♀♂ペアは興奮したように(嬉しそうに?)、巣穴Rへの出入りを繰り返しています。 


シーン2:3/24・午後18:27(@0:38〜) 
タヌキの♀♂カップルは、相変わらず巣穴Rへの出入りを繰り返し、はしゃいでいます。 
やがて♀が出巣Rした後、身震いしてから林内へ入り、右へ立ち去りました。 
夜行性のタヌキは、これから♀♂ペアで一緒に採餌に出かけるのでしょう。 

外出する前に、後続の♂が興味深い行動をとりました。 
巣口Rを隠蔽するように周囲から落枝を咥えて集め、巣口Rに置いたのです。 
太い落枝と細い落枝を2本使って、外出前に巣口を隠蔽工作しました。 
しっかり戸締まりをして、留守中に外敵が侵入しにくくしているのでしょう。 
タヌキの知性を感じさせるこんな行動を見るのは初めてです。 

後続個体は更に、営巣地の端でミズキ灌木の根本に排尿して縄張り宣言しました。 
このとき左後足を軽く持ち上げたので、後続個体の性別が♂と判明しました。 
それでも戸締まりが不安になったようで、巣口Rに戻って複数の落枝をさらに組み上げました。 

その間に先行個体♀も画面の右下隅で小便でマーキングしたようですが、排尿姿勢がよく分かりませんでした。(@1:27〜) 
しかもその後、せっかく♂が戸締まりしたばかりの巣穴Rに、戻ってきた♀が潜り込んでしまいました。 


シーン3:3/24・午後18:28(@0:00〜) 
♀はすぐにまた巣穴Rの外に出てきて、いよいよ本当に右へ立ち去りました。 
後続の♂は再び巣口Rを落枝で念入りに隠蔽(戸締まり)してから、先行する♀の後を追って右下へ立ち去りました。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


【考察】
タヌキはキツネやアナグマと違って、自分で巣穴を掘れませんから、巣穴はとても貴重な守るべき資源(不動産)です。
繁殖期が近づくと穴居性の野生動物の間で巣穴の熾烈な争奪戦があることを、今回の戸締まり行動は伺わせます。

留守中に巣穴が誰かに奪われるのが嫌なら、♀♂ペアが同時に外出しないで1頭ずつかわりばんこに外出すれば良いと思うのですが、タヌキはそうした解決法(留守番で巣穴を防衛)を取りません。
タヌキは生きた獲物を狩る訳ではないのに、どうして♀♂ペアが一緒に採餌したがるのか、そのメリットが私にはいまいち理解できません。
もしかすると、留守番要員として血縁関係のあるヘルパーが採用されるのかな?




2025/02/27

ニホンアナグマ死骸の抜け毛を拾い集め産座の巣材として持ち去るハシブトガラス【野鳥:トレイルカメラ】

 

2024年3月下旬 

シーン1:3/29・午前11:49・みぞれ・気温11℃(@0:00〜) 
平地の二次林で死んだニホンアナグマMeles anakuma)の営巣地(セット)を自動センサーカメラで見張っていると、寒の戻りでみぞれが降る昼前に、ハシブトガラスCorvus macrorhynchos)が写りました。 
しかしすぐに林床から右へ飛び去ってしまいました。 


シーン2:3/30・午前6:07(@0:07〜)日の出時刻は午前5:25。 
翌日の早朝、アナグマの死骸が3日前に横たわっていた地点でハシブトガラスが何かを啄んでいました。 
林床に散乱していた落ち葉と一緒にアナグマ死骸の抜け毛を拾い集めて巣に持ち帰り、産座の巣材とするのでしょう。 
集めた巣材を嘴に咥えると、ぴょんぴょん跳んで(ホッピング)左へ立ち去りました。 
カラスの巣の外側は小枝を大量に集めて作られ、その後に巣の中央に柔らかな保温性の高い巣材で産座が作られます。
フィールドに落ちている動物の抜け毛や鳥の羽毛は、産座に敷き詰める巣材として貴重な資源であり、営巣初期の鳥たちの間で争奪戦になります。
ハシブトガラスの営巣開始にはまだ早い気がするのですけど、貯食行動のように、近い将来に必要となる産座の保温材(巣材)をどこかに保管しておく可能性もありそうです。 

最後にカー♪と澄んだ鳴き声が聞こえたのですが、編集ミスでカットしてしまいました。 


シーン3:3/30・午前9:50・くもり・気温11℃(@0:33〜) 
右から林床をトコトコ歩いてきたハシブトガラスが、落葉したマルバゴマキ灌木に飛び乗って、アナグマの巣口Lを覗き込んでいます。 
アナグマの亡き後、下半身が麻痺した瀕死のホンドタヌキが巣穴Lに潜んでいるのではないか? 中で死んでいるのではないか?と私はあらぬ想像をしてしまうのですけど、タヌキが巣穴Lに入った決定的な証拠映像は撮れていません。 
カラスはそのまま左へ立ち去りました。 


シーン4:3/30・午前9:53・くもり・気温12℃(@1:33〜) 
2分後に同一個体と思われるハシブトガラスが左からセットに戻ってきました。 
ホッピングで遠ざかり、最後は右上奥へ飛び去りました。 

健常タヌキが引きずって持ち去ったアナグマの死骸の行方をスカベンジャーのカラスも探しているはずですが、どこに隠したのか分かりません。 
アナグマの死骸はもう全てタヌキに食べ尽くされてしまったのかな? 

※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。




2025/01/29

ハクモクレンの樹上で半壊したコガタスズメバチの古巣は鳥のしわざ?

 



2024年1月下旬・午後15:30頃・晴れ 

道端で落葉したハクモクレンの樹上で見つけたコガタスズメバチVespa analis insularis)の古巣を定点観察しています。 
野鳥が外皮を横からつついたらしく、半分が壊されていました。 
中身がほとんどくり抜かれ、最上段の巣盤だけが残っていました。 厳冬期で餌がなくなり、飢えた鳥が蜂の子の死骸を捕食したのでしょう。 
強風が吹いて古巣が激しく揺れ、隣の枝に繰り返しぶつかって壊れたという可能性は、この場合は考えられません。

西日が当たって、露出した巣盤が午前中よりもよく見えるようになりました。 (以下の写真は同じ日の午前中に撮影)
ちなみに、撮影のため私が営巣木のハクモクレンに近づいたら、1羽のメジロZosterops japonicus)が飛んで逃げました。 
スズメバチの古巣をつついて壊したのがメジロの仕業とは考えにくいのですが、近くの庭木ナンテンで赤い実を採食していたのかな? 



2025/01/21

早春の尾根道で営巣地を探して飛び回り、野ネズミの巣穴に潜り込むクロマルハナバチ創設女王

 

2023年4月中旬・午後13:00頃・晴れ 

降雪量の少ない暖冬だったために、里山の尾根道に登っても残雪はほとんどありませんでした。 
雪の溶けた尾根道を低空で飛び回っていたクロマルハナバチ♀(Bombus ignitus)が、灌木の根元に開いた小さな穴に潜り込みました。 
早春の時期は、越冬明けの創設女王が営巣地を探索しているのです。 
野ネズミの古い巣穴を見つけると、中に潜り込んで内見します。 
もし気に入れば、そこで自分の巣を作り始めます。 
「穴があったら入りたい」 女王蜂の探索飛翔を1.5倍に拡大した上で1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 

山地なので、クロマルハナバチではなくオオマルハナバチBombus hypocrita)の創設女王♀かもしれません。 
あまりにも忙しなく飛び回るので、充分にズームインして見分けることができませんでした。 

女王蜂が巣穴の外に出てくるまで粘って待ちたかったのですが、撮影中に巣穴の位置を見失ってしまいました。

2024/12/31

冬眠の合間に追加の巣材を集める雪国のニホンアナグマ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年1月下旬

シーン0:1/22・午後13:46・くもり・気温20℃(@0:00〜) 
明るい昼間にたまたま撮れた現場の様子です。 
平地の二次林でニホンアナグマMeles anakuma)が越冬する2つの巣穴を同時に1台のトレイルカメラで監視しています。 
今季は異常な暖冬で積雪が少なく、まるで早春のように林床の地面があちこちで露出しています。 


シーン1:1/23・午後20:47・気温-2℃(@0:04〜) 
トーパーから覚醒して右の巣穴Rから外に出てきたばかりと思われるアナグマが、右端の林縁に居ました。 
ノソノソ歩いて右へ向かいました。 
何をしに行ったのでしょう?


シーン2:1/23・午後20:49(@0:20〜) 
約2分後に、アナグマが後ろ向きで右から戻ってきました。 
前脚で林床の落ち葉を大量に掻き集めながら巣内Rに搬入します。 
夏に見られた巣材集めと同じ行動ですが、今回は気温が低いせいか、ピョンピョン跳ぶように後退する動きはしませんでした。 
真冬の巣内はよほど寒いのでしょう。 
濡れている(凍っている)落ち葉に寝床としての断熱効果があるとは思えないのですが、無いよりましなのでしょう。 
自分の体温で落ち葉を乾かしてから寝床として使うのかな? 
あるいは、隙間風を防ぐために詰め込む巣材なのかもしれません。 
(それなら穴掘りの得意なアナグマは、土で隙間を埋めるかも?)
意外にも、巣材集めを繰り返すことはなく、この1回だけでした。 
翌日から再び大雪が降ったので、落ち葉掻きができる最後のチャンスでした。 
まさかアナグマに天気予報の能力があるのか?とまたひとつ謎が増えました。 

今季は異常な暖冬です。 
雪国に生息するアナグマにとって暖冬や地球温暖化が朗報なのかどうか、観察1年目ではまだ判断できません。 
積雪による断熱効果が期待できず、巣穴が地中の浅いところに掘られている場合、放射冷却現象の夜明け前などに巣内も零下までひどく冷え込むのではないかと想像しています。 

越冬に入ったアナグマは、冬眠の合間にたまに巣外へ出てきても、動きがとにかく緩慢でぼんやりしていました。 
今回は珍しく(久々に)、巣材集めという活発な行動を見れてよかったです。 



シーン3:1/23・午後21:02・気温-1℃(@1:11〜) 
12分後に再び出巣Rしたアナグマが、巣口Rの左で小刻みに震えています(体温を上げるためのシバリング?)。 
さっき巣材集めをしたアナグマと同一個体とは限らないので、注意が必要です。
(個体識別ができていません。) 
危なっかしい足取りで、巣口Rの横でマルバゴマギ落葉灌木の根元をうろついています。

右の林内へ向かう途中で林縁に座ったのは、スクワットマーキング(縄張りの匂い付け)かもしれません。 
この個体が巣材集めに行ったのかどうか、その後の動向がなぜか動画に記録されていませんでした。 


シーン4:1/23・午後22:33・降雪・気温-1℃(@2:11〜) 
1時間半後、アナグマが巣口Rの左に戻って来ていました。 
細いマルバゴマギ落葉灌木の根元をよじ登ろうとしてスリップし、地面に座り込みました。 
また緩慢な動きに戻ってしまいました。 
擬人化すると、まるで泥酔しているような、足が痺れているような、覚束ない足取りです。 
雪がちらつく中、頻りに振り返って監視カメラの方を気にしています。 
今回はあえて早回し加工せずに、アナグマの動きが緩慢な様子をお伝えしました。 


シーン5:1/23・午後22:42・降雪・気温0℃(@3:11〜) 
10分後、アナグマは営巣地(セット)をゆっくり回り込んでから、巣口Rに戻ってきました。 
巣口Rの手前で身震いしてから、ようやく中に潜り込みました。 
この個体は左右の瞳の大きさが均等だったので、ここで出産・育児した母親♀(右目<左目)ではないことだけは分かりました。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


越冬中のニホンアナグマは、厳密な意味での冬眠ではなく、トーパー(torpor)と呼ばれる状態になります。 
トーパーとは、体温を一時的に環境温度近くにまで下げ、代謝を低下させる状態のことです。
冬眠する動物に比べて体温の低下幅は小さいものの、心拍数も通常の半分程度にまで低下します。(AIのGeminiに教えてもらいました。)
ニホンアナグマは冬眠期間中に体温の周期的な低下と上昇がみられ(異温性)、体温が上昇したときに覚醒して巣外活動するのだそうです。
異温性(heterothermy)とは、恒温動物において部位、もしくは生理状態の違いにより体温が大幅に異なることをいう[1]。(wikipediaより引用)


2024/12/12

暖冬で早く雪が溶けたニホンアナグマの越冬用営巣地で換気口を発見?野ネズミの巣穴?

 



2024年1月上旬・午後14:25頃・くもり 

久しぶりに平地の二次林にあるニホンアナグマMeles anakuma)の越冬用営巣地(セット)に現地入りしました。 
異常な暖冬のために、林床に積もった根雪がほとんど溶けて地面が露出していました。 

アナグマの巣口Lから少し南に位置する地面に小さな穴が開口していました。 
その穴は斜め下に掘られています。 
積雪期に見つけたときは、アナグマの換気口(空気穴)かと思ったのですが、野ネズミ(ノネズミ)が出入りする巣穴のような気もしてきました。 
雪が積もったときに、この穴の上だけ雪がきれいに丸く溶けているのが不思議でなりません。 
野ネズミの体温や呼気が雪を溶かすほど暖かいことになってしまいます。 
小さな巣口の周囲の雪面に野ネズミの足跡が付いているのも見たことがありません。 
謎の小さな穴から野ネズミが出入りしているかどうか、トレイルカメラをもう1台追加して監視したかったのですが、限られた数の撮影機材で複数のプロジェクトを同時並行で進めているため、諦めざるを得ませんでした。 

折衷案として、たまたま野ネズミが勝手に掘った巣穴がアナグマの居住区画に合流してしまい、意図せずして換気口になってしまったのではないか、と考えています。 
つまり、野ネズミとアナグマが同居しているという説です。 
隙間風が吹き込んで寒いかもしれませんが、大雪が積もってメインの巣口が埋もれてしまったときには、予備の空気穴がないと巣内で冬眠するアナグマたちは窒息してしまいます。 
アナグマが同じ巣穴に居候する野ネズミに対して寛容なのは、そんなメリットがあるのかもしれません。 


つづく→

2024/11/30

雪で埋もれたニホンアナグマの越冬用営巣地で換気口を発見?

 



2023年12月下旬・午後・晴れ 

平地の落葉した二次林でニホンアナグマMeles anakuma)が越冬する営巣地(セット)を定点観察しています。 
トレイルカメラ2台の電池やSDカードを交換したついでに、根雪で埋もれかけた2つの巣口L、Rの様子を動画に撮りました。 
今季は異常な暖冬で積雪量が少ないです。
雪面の雪質は湿雪(いわゆる腐れ雪)のため、獣道に残る足跡は不鮮明でした。 
巣口付近の雪面は、アナグマが出入りするために黒い土で汚れています。 

巣口Lから2〜3m南の地点の雪面に開口している小さな丸い穴が気になりました。 
謎の穴の横に私の右手を並べて、大きさの比較対象としました。 
動画では眩しい雪面とのコントラストの差が大き過ぎて、穴の奥は真っ暗で何も見えません。 
肉眼で見ると、穴の奥に地面が露出していて、地中に小さな丸い穴が開いていました。

野ネズミの巣穴かと初めは思ったのですが、巣口に出入りする野ネズミの足跡や尻尾の跡が雪面に全く残っていません。
トレイルカメラをもう1台設置して、謎の小穴から野ネズミが出入りしているかどうか監視したかったのですが、限られた数の撮影機材をやり繰りして複数のプロジェクトを同時進行しているために、実現できませんでした。

野ネズミの仕業ではないとすれば、ここだけ地熱が高い理由は何でしょう?
もしかするとアナグマの巣穴の換気口(空気穴)かもしれない、と思いつきました。 
中で冬眠・越冬するアナグマ家族の吐く息が暖かいために、換気口の周囲の雪だけが早く溶けたと考えれば説明できそうです。 
地面の黒い土が雪原に少しでも露出すれば、昼間の太陽光で温められて周囲の雪が更に急速に溶けるでしょう。
雪国では冬に巣口が積雪で埋もれてしまうことがありますから、換気口を別に開けておかないと、巣内のアナグマは窒息してしまいます。 
アナグマが意図的に作った換気口とは限らず、トンネルが地中の浅いところに掘られている場合は、天井の薄い部分がたまたま崩落して小さな穴が開いてしまった可能性もあります。 
寒い冬に謎の小さな穴から白い湯気が立ち昇っていたら換気口だと確信がもてるのですけど、それはまだ見たことがありません。
精密に測定できるサーモグラフィカメラは高嶺の花ですが、もしそれで謎の巣穴を撮ったら、穴居性動物の暖かい呼気を検出できるでしょうか?

謎の穴にファイバースコープを突っ込んで調べてみたいのはやまやまなのですが、越冬中のアナグマ家族を怖がらせたり邪魔したくありません。 
高性能の長いファイバースコープは高嶺の花なので、翌年(2024年)の秋に、一脚の先端に取り付けたハンディカメラを巣口Lにそっと差し込んで巣内を初めて撮影してみました。(映像公開予定) 
一脚の長さが短いために、奥の居住区まで見れませんでしたが、少なくとも巣口Lからトンネル(巣坑)は南に向かって真っ直ぐ伸びていることが確かめられました。 
つまり、雪深い厳冬期に見つけた謎の穴はアナグマの換気口だろうという仮説を私はまだ信じています。






【追記】
実は5日前にもアナグマの越冬用営巣地(セット)に現場入りしていて、このとき初めて換気口らしき謎の小穴を雪面に見つけていました。
写真だけ撮っていたので、載せておきます。
このときも穴の周囲の新雪に小動物の足跡は残っていませんでした。








2024/11/29

畦道に残る謎の巣穴と爪痕【フィールドサイン】

2023年12月上旬

平地の水田が減反でソバ畑となり、ソバの実の収穫も終わりました。 
関連記事(同所で4ヶ月前の撮影)▶ ソバ畑に集まり芽生えを食べるキジバトの群れ(野鳥)

私が畦道を歩いて探索すると、野生動物が残した奇妙なフィールドサインを見つけました。 
古い畦道には、コケのたいが一面に生えていました。 
用水路から水を引いている訳でもないのに、見るからにジメジメした土壌です。 
枯れたソバ畑の周囲は、スギの防風林に囲まれています。 

畦道にときどき小さな穴が開けられているのは別に珍しくないのですが、今回は周囲の黒土に爪痕がくっきり残っていて気になりました。 
小さな穴は、畦道を貫通していました。 
これはモグラが巣穴を掘った跡なのでしょうか? 
それとも、もう少し大きな肉食獣(ネコなどの捕食者)が例えば野ネズミを狩ろうとして巣口を掘り広げた爪痕なのでしょうか? 
アナグマやタヌキがミミズや土壌昆虫を捕食しようとして穴を掘った跡なのかな? 
写真を撮るときに、大きさを伝えるために定規を置いて写し込むのを忘れてしまいました。

トレイルカメラを設置して誰の仕業か突き止めたら面白そうです。
しかし、謎の野生動物が同じ場所に通ってくるとは限らず、次に畦道のどこに穴を掘るのか、予想がつきません。 

水田だった頃は、水を張る前に毎年きれいに畦塗り(畦作り)をして、水漏れしないようにする必要があります。 
野ネズミやモグラが水田の畦に穴を掘ると、水漏れが発生して稲作に深刻な影響が出ます。 
米農家は畦に穴を開けられないように、様々な防除対策を求められるのだそうです。
(この部分はAIのCopilotに調べてもらいました)
・物理的バリア: ネズミやモグラが通れないような細かい金網や防獣ネット、鉄板などを畦道に設置する。 
・防除植物の植栽: モグラが嫌う香りを持つ植物(タイムやローズマリーなど)を畦道に植える。 
・超音波装置: 超音波で小動物を追い払う装置を設置する。 
・電気柵の設置 
・天敵の導入: 野生の捕食者(ヘビやフクロウなど)が活動しやすい環境を作る。
言うは易しで、実際にきっちり対策しようとするとコストが大変そうです。 
例えば流行りの超音波装置を設置すると、当然ながらフクロウやヘビなどの天敵にも忌避効果が出てしまうらしい。
そもそも土壌の中で超音波は伝播しにくく、地中のモグラや野ネズミへの効果は薄いと考えられます。
ちなみに、この農地では周囲のスギ防風林のてっぺんにノスリが止まっているのをよく見かけますし、フクロウもよく鳴いています。
野ネズミなどの小動物を狙って猛禽が狩りに来ているのだろうと予想しています。
(捕食シーンは未見です)


2024/11/28

落葉したハクモクレンの樹上に見つけたコガタスズメバチの古巣



2023年12月下旬・午後15:10頃・くもり 

やや郊外の住宅地で、落葉した庭木の樹上にコガタスズメバチVespa analis insularis)の丸い古巣がぶら下がっているのを見つけました。 
冬芽(つぼみ)の特徴から、営巣木の樹種はおそらくハクモクレンだと思われます。
(春に咲いた白い花で確認できました。) 
ちなみに、ハクモクレンの隣にはシダレザクラが植栽されています。 

気温の低いこの時期(初冬)はコガタスズメバチのコロニーがとっくに解散した後ですから、落ち着いて古巣をじっくり観察することができます。
巣口があったと思われる面の外皮が削ぎ落とされたように壊されていて、中の巣盤の構造がよく分かります。
おそらく蜂の子を捕食した野鳥の仕業だと予想されます。


現場では気づかなかったのですが、撮った写真を拡大すると、興味深い発見がありました。
巣内の巣盤の下に何か謎の昆虫が潜り込んで隠れていたのです。
コガタスズメバチの新女王が古巣で越冬している可能性もありますが、謎の虫は体型が扁平です。
おそらくコガタスズメバチと同居していたゴキブリの一種(ヤマトゴキブリ?)ではないかと予想しています。

関連記事(3、8年前の撮影)▶ 



 

2023年12月下旬・午後14:40頃・晴れ 

2日後に晴れたので、古巣の動画を撮りに出かけました。 
完全に落葉したハクモクレンの枝先に吊り下げられたコガタスズメバチの古巣が風に揺れています。
雨や雪が降ると巣の外皮の上面は濡れる訳ですが、日陰では薄氷のまま溶けずに残っていました。

古巣を下から見上げると、育房の白い繭キャップが破れています。
これはコガタスズメバチの成虫が羽化した痕跡です。
巣盤の隙間に潜んでいた謎の虫の姿は居なくなっていました。
外皮の破損(鳥による食害?)が前回よりも明らかに拡大しているので、今後もときどき定点観察に通うことにします。


現場は交通量の多い車道(子供の通学路)の道端です。
スズメバチの巣が駆除されずに無事にコロニーが解散するまで営巣を全うできたのが奇跡です。
私も夏に何度も横を歩いて通り過ぎていたのに、樹上に生い茂った葉が散るまではコガタスズメバチの巣の存在に全く気づきませんでした。
コガタスズメバチのコロニーは通行人を刺したりしないで、ひっそりと暮らしていたようです。
ヒトとコガタスズメバチが「知らぬが仏」で共存できているという実例がまたひとつ増えました。
夏に大きくなる巣を放っておいても刺傷事故は起きなかった、ということです。
少なくとも当地(雪国の街なか)では、このぐらいの巣(コロニー)の大きさが限界で、これ以上は大きくなれないと分かってきました。
蜂嫌いの人々がすぐ感情的に反論してくるのが予想できるので、観察に基づいた私の主張は注意深く限定され、安易な一般論にしてないことにご注意下さい。
過去にスズメバチに刺された経験があり、次に刺されたらアナフィラキシー・ショックで死ぬと恐れている人は、エピペンを常に携帯していれば安心できます。

庭木のハクモクレンにコガタスズメバチが巣を構えたことで、周囲の様々な昆虫を日々大量に狩って捕食したはずですから、庭や家庭菜園に発生する害虫の数の抑制に貢献してくれたはずです。
益虫、天敵農薬生物的防除生態系サービスなどと様々な言い方に変えても、社会性のスズメバチ類を殲滅してはいけない理由を一般の人になかなか分かってもらえません。
生態系ピラミッド(食物連鎖)の上位に位置する捕食者が絶滅してしばらくすると、初めてその役割やありがたみが身にしみることになります。
ニホンオオカミを安易に絶滅させたせいで現代の山林でニホンシカなどが爆発的に増え、生態系に破壊的な打撃を与えています
年々悪化するシカ問題への対応(駆除や防除など)に未来永劫膨大なコストがかかり、日本経済への負担となっています。
これを教訓として、スズメバチ問題にも活かしてもらいたいものです。




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