2017/12/09

朝ムクドリの大群が高圧線鉄塔の集団塒から飛び去るまで【後編:10倍速映像:野鳥】



2017年8月上旬・午前4:12〜5:25 (日の出時刻は午前4:49)

▼前回の記事
朝ムクドリの大群が高圧線鉄塔の集団塒から飛び去るまで【中編:野鳥】

高圧線鉄塔#30および下の電柱、電線で一夜を過ごしたムクドリSturnus cineraceus)の大群が、夜明けとともに集団塒内で上下に移動したり、少しずつ塒から飛び去る様子を、10倍速の早回し映像に加工してみました。

黒い点々のように見えるムクドリの塒内分布や時間変化に何か法則やパターンが見出せたら面白いですね。

鉄塔の背景となる西の空を流れる雲の動きも味わい深いです。


動画編集した結果、無音となり、せっかくの音声情報(ムクドリの鳴き声)が失われてしまいました。

シリーズ完。



【おまけの映像】
早回し速度を少し落とした6倍速映像をブログ限定で公開します。
このバージョンには、ムクドリの鳴き声などの音声も含まれています。




ハスの葉で翅を開閉誇示するハグロトンボ♀



2017年8月上旬

蓮池でハグロトンボ♀(Calopteryx atrata)がハス(蓮)の葉に止まって翅を開閉していました。
ハグロトンボが地上で翅を繰り返し開閉するのは、縄張りを主張する誇示行動なのだそうです。
開いた翅は褐色のはずなのに、所々にドット欠けのように抜けている点がありました。
胴体が黒いので♀ですね。



ときどき蓮の葉から素早く飛び立つものの、すぐに元の場所や隣の葉に舞い戻ります。
口をモグモグ動かしているので、飛んでいる小さな昆虫を空中で捕食しているのでしょう。
ハイスピード動画に撮ってみれば良かったですね。

▼関連記事
川沿いで捕食活動するハグロトンボ♀♂の群れ【HD動画&ハイスピード動画】

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。



2017/12/08

朝ムクドリの大群が高圧線鉄塔の集団塒から飛び去るまで【中編:野鳥】



2017年8月上旬・午前4:50〜5:27(日の出時刻は午前4:49)
▼前回の記事
朝ムクドリの大群が高圧線鉄塔の集団塒から飛び去るまで【前編:野鳥】

長撮りした定点動画の、日の出直後からのつづきになります。
ムクドリSturnus cineraceus)の群れが集団塒内で木の葉落としのように下へ下へと移動しているのは、左右に走る高圧線の一番上に止まっているハシボソガラスがムクドリを鉄塔から追い出そうと圧力をかけているのでしょうか?
画面には写っていませんが、鉄塔の左側の高圧線にもカラスが止まっていました。
ところが、しばらくするとカラスは高圧線から飛び去りました。
カラスが居なくなってもムクドリの群れの全体的な動きに変化は無かった(鉄塔の上部に戻らなかった)ので、カラスの存在は別に気にしていなかったようです。

画面右下に少しだけ見えているケヤキ並木の樹冠に、相変わらず群れの一部が次々に飛び込んで行きます。
もしかすると、葉の茂った枝で毛虫を捕食するなどの採餌活動があるのかもしれませんが、未確認です。
ケヤキ並木に集合していた群れが何かに驚いて一斉に飛び立ち、再びすぐ上の電線や鉄塔に戻りました。(@6:01)
ほとぼりが冷めると、また群れの一部が続々とケヤキ並木の樹冠に飛び込み始めました。
早朝から集団塒内で上下に飛び回る移動は、本格的な離塒に備えて各自が朝の準備運動をしているのかもしれません。
休みなくひたすら鳴き続けるムクドリの大群は我々の耳にはただうるさいだけですけど、例えば夜の間にはぐれてしまった家族群が互いの鳴き声を個体認識して、家族群を単位として少しずつ再集合している可能性も考えられます。

(もちろん常識的に考えれば、繁殖期が終われば家族は解散してしまう気がします。)

鉄塔#30から右に伸びた一番上の高圧線に止まっていた2羽のハシボソガラスが急に飛び立ち、鳴きながら鉄塔の最上部に止まり直しました。(@6:53)
これに驚いたムクドリの群れが鉄塔の天辺から一斉に飛び立って少し下の鉄骨に避難しました。
そのハシボソガラスもお山の大将のように鉄塔の頂上部を占拠する訳でもなく、すぐに飛び去ってしまいました。
いかにも性格の悪いカラスらしい行動(ムクドリに対するただの嫌がらせ)ですね。
ムクドリのことはあまり眼中になくて、2羽のカラス同士で追いかけっこのように遊んでいるだけのような印象も受けました。

ムクドリが集団塒から出て行く際は、夕方に見られるような派手な(誇示的な)群飛をやりませんでした。

▼関連記事 
日没と同時に就塒前群飛を始めるムクドリ(野鳥)の大群 
ムクドリ(野鳥)大群の飛翔乱舞
小群あるいは単独で四方に散って行くだけで、まとまりがありません。
日中の活動域は各所に広く分散しているのでしょう。
鶴の一声のようにリーダーが合図して一斉に離塒するのでも無さそうです。



菅原光二・丸武志『カラー版自然と科学:ムクドリ』によると、
 夜があけると、ムクドリたちはす早くねぐらをとびたちます。大群となるねぐらでも、ムクドリたちはほとんどいっせいにといえるほど短時間に、いくつもの群れにわかれ、つぎつぎにねぐらからでていきます。 
 ムクドリは、行動範囲がとてもひろく、ねぐらから40キロぐらいまででかけるものがいます。(中略) 
 ねぐらの場所は、えさ場の変化や落葉、はんしょく場所などにえいきょうされて季節とともにかわります。 (p34-35より引用)


水野仲彦『野鳥のくらし―卵から巣立ちまで』でムクドリの項目を読むと、

 朝のねぐら離れも見事で、羽音と鳴き声でゴーッという音を立てて黒煙が吹き出るように次々と舞い上がり、採食地へと飛び去って行く。(p16より引用)
先人の観察記録ではどれも、ムクドリの離塒は一斉に飛び立つと書いてあり、私の観察結果とは違います。
おそらく私が見ている集団塒は、規模が小さい(個体数が少ない)のでしょう。



野鳥が群れで塒を取る理由の一つとして、塒内で互いに餌場の情報交換をするために集まるのだという説があります。

翌朝に採餌場へ飛んで行く際に、餌の豊富な採餌場を知っている個体について行くというのです。
しかし今回、五月雨式の離塒を眺めていると、そんな「情報センター仮説」がムクドリに成り立つとはとても思えませんでした。
仮説を否定するにしろ、科学的にきっちり実証するのが困難だというのも実感できました。
ムクドリの大群を一網打尽にして多数の個体にGPSや電波発信機を装着して行動を逐一追跡すれば、はっきりするでしょう。


【参考図書】
上田恵介『鳥はなぜ集まる? 群れの行動生態学』 第2章:ねぐらはエサの情報センター


遂にムクドリが一斉に飛び立ちました。(@15:12)
その直前に響いた空気銃のような乾いた発砲音が引き金になったようです。
誰か近所のヒトが喧しいムクドリを追い払おうとしたのか?と思ったりもしたのですが(被害妄想?)、たまたま近くを走る車のマフラーから破裂音がしただけかもしれません。
今までで最大規模の集団離塒が数回に分けて波状に行われました。
飛び立った群れの一部は上空で旋回しただけで、すぐに鉄塔へ戻って来ました。
依然として数多くの個体が集団塒に居残って鳴き騒いでいます。
空腹の個体から先に飛び立ったのか、それとも餌場が遠い個体群から順に塒から飛び去るのでしょうか?


午前5:09頃、東の山から太陽が昇り、高圧線鉄塔#30も朝日を浴び始めました。(盆地のため、地平線から朝日が昇る公式な日の出時刻から少し遅れます)

愚直に長撮りを繰り返したのですが、途中で私のうっかり操作ミスで空白の時間帯があります。(午前5:11に1分10秒間の痛恨のタイムロス。動画では@20:57)
肝心の離塒シーンを一部撮り損ねてしまいました。


下の電線に鈴なりになっていたムクドリの群れが、今までとは逆に上の高圧線鉄塔に移動を始めました。
群れ全体の数が減ると心細くなって、再集合するのでしょうか?
集団塒に残っている数が減ると、ムクドリの鳴き声がかなり静かになりました。

最後は鉄塔や電柱、電線にズームインしてみて、ムクドリが集団塒に一羽も残っていないことを確認しました。(@34:19-)
鉄骨には、白い鳥糞が付着して若干汚れていました。
しかし、集団就塒していたムクドリの数に対して意外に糞の汚れは少ないのではないか、と私は思います。

ちなみに撮影地点でときどき測定した気温データは、以下の通りです。
午前4:53 気温20.1℃、湿度89%
午前5:03 気温20.0℃、湿度90%
午前5:16 気温20.1℃、湿度100%
午前5:26 気温20.0℃、湿度90%


ムクドリの群れが完全に飛び去った後で、すっかり静まり返った鉄塔#30の真下に立ち寄ってみました。(@35:13-)
もちろん立入禁止の区画なのですが、柵の隙間から覗いてみると、意外にも真下のコンクリート地面は鳥の糞であまり汚れてはいませんでした。
糞の色があまり目立たないだけかもしれません。
その一方で、鉄塔の近辺で群れの一部が塒にしていた電柱や電線の真下には白い鳥糞が大量に散乱していました。
雨が降れば路上の鳥糞は洗い流されるのでしょうけど、近隣住民は深刻な糞害に悩まされているのかもしれません。
ただし不思議なことに、この場所(高圧線鉄塔#30周辺)にムクドリが毎日塒入りするとは限りません。
集団塒の場所を頻繁に(気紛れに?)変えているのは、ムクドリもヒトとのトラブルを学習してあまり長居しないようにしていたりして…?


※ 終盤だけ、動画編集時に自動色調補正を施しています。(@34:19-)

つづく→後編:10倍速映像


鳥糞で汚れた鉄骨
高圧線鉄塔の直下
電柱の直下に大量の鳥糞
電線の直下に大量の鳥糞

シロオビノメイガ(蛾)の日光浴と飛翔



2016年9月下旬・午後12:14

湿地帯の遊歩道で昼下がりにシロオビノメイガSpoladea recurvalis)が日光浴していました。
死んでいるのかと思いつつ、私が近づくと蛾は飛んで逃げました。

路面を舐めていた可能性もありますかね?(ミネラル摂取)
横から見ても口吻は動いていませんでしたし、路面は乾いていたので、その可能性は低いと思います。



2017/12/07

朝ムクドリの大群が高圧線鉄塔の集団塒から飛び去るまで【前編:野鳥】



2017年8月上旬・午前4:12〜4:50(日の出時刻は午前4:49)

街中にそびえ立つ高圧線鉄塔#30にねぐらとしてムクドリSturnus cineraceus)の大群が賑やかに鳴いているのを前夜に確認しています。(映像公開予定)
この鉄塔に
昨年の夏から秋にかけてムクドリの大群が塒入りするのを観察していますが、気紛れなのか、毎日塒として使われるとは限りません。

早朝にムクドリが集団塒から飛び去る(離塒りじ)までの一部始終を撮影するために、夜明け前の深夜から再訪しました。
晴れた夜空にほぼ満月が出ていました。(月齢17.7)

現場で撮影アングルや画角を決めるのが難しく、苦労しました。
前夜にロケハンしたものの、どうしても高圧線や電線が邪魔になってしまいがちです。
個人的には国策として電柱の地中化を早く進めて欲しいのですけど、電柱や高圧線鉄塔を利用している野鳥を観察している身としては、ジレンマもあります。
道端に三脚を立て、鉄塔の東から狙うことにしました。
朝日が昇ると順光になるはずです。
広角レンズが欲しくなりました。

映像の冒頭はほとんど真っ暗で、遠くからムクドリの鳴き声だけが聞こえます。
住宅地でこんなに喧しく一晩中鳴き続けるのでは、確かに近所迷惑ですね。(騒音公害)
白々と夜が明けて次第に明るくなると、高圧線の鉄塔だけでなく、その直下の電柱および電線にもムクドリが鈴なりに群がっていることが分かります。
日の出を待ちかねた個体が、この集団塒内を飛んであちこち移動し始めました。
群れ全体として見ると、鉄塔に居た個体が木の葉落としのように下へ下へ(低い電線に)移動しているようです。

ハシボソガラスCorvus corone)はムクドリよりも早い時刻に離塒するようで、どこか近くのねぐらから三々五々と飛来したカラスが高圧線に止まりました。
カラス同士で鳴き交わしていますが、ムクドリの大群に遠慮しているような印象を受けました。(多勢に無勢)
一方ムクドリは、カラスの存在をあまり気にしていないようです。


後半になると、画面右下のケヤキ並木の樹冠に飛び込む個体が続々と増えてきました。
この動きは昨年の夕方にムクドリが塒入りするときに見た群れの運動と似ています。(今回ムクドリはなぜかこのケヤキ並木に塒入りしませんでした。)
しかしケヤキ並木に集まっていた群れが何かに驚いて飛び立ち、近くの電線や鉄塔に避難しました。(@34:43)
(もしかすると、通行人や走行車に対する驚きや警戒ではなくて自発的な衝動に駆られた飛翔行動かもしれません。)

ちなみに撮影地点でときどき測定した気温データは、以下の通りです。
午前4:07 気温22.5℃、湿度70%
午前4:19 気温21.2℃、湿度77%
午前4:44 気温20.2℃、湿度87%


つづく→中編


鎮守の森を散歩するヤマトゴキブリ♀



2017年8月上旬

小高い山になった鎮守の森の薄暗い林床で、真っ昼間にヤマトゴキブリ♀(Periplaneta japonica)を発見。
短翅の♀成虫です。
腹端に卵鞘はぶら下げてはいませんでした。
せかせかと歩いて逃げ、地面に空いた穴に潜り込みました。
アリの巣穴だとしたら好蟻性昆虫ということになって面白いのですが、中からアリが出てきたり、ゴキブリを撃退したりしませんでした。
空巣なのか、それとも穴を掘った主はまた別の生き物なのかもしれません。(セミの幼虫?)
まさかヤマトゴキブリが自分で掘った穴とは思いません。(だとしたら大発見!)

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。



2017/12/06

セイタカアワダチソウの花蜜を吸うキタキチョウ



2016年10月中旬

湿地帯の遊歩道沿いに咲いたセイタカアワダチソウの群落でキタキチョウEurema mandarina)が訪花していました。
風で揺れる花穂で翅を閉じたまま吸蜜しています。
セイヨウミツバチ♀とニアミスすると、少し飛んで移動します。



ヤナギハナガサを訪花するクマバチ♀の羽ばたき【HD動画&ハイスピード動画】



2017年8月上旬

大通り沿いの民家の庭に咲いたヤナギハナガサ(別名サンジャクバーベナ)にキムネクマバチ♀(Xylocopa appendiculata circumvolans)が訪花していました。
この組み合わせは初見です。
大きな図体なのに小さな花に丹念に口吻を差し込んで吸蜜しています。
後脚の花粉籠は空荷でした。

後半は花から飛び立つ瞬間を狙って、240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@2:43〜)
重量級のクマバチが花に止まると、その重みで三尺バーベナの茎が大きくしなります。
ときどき個々の花が落下するのは、スローモーションで見直さないと気づきませんでした。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。



2017/12/05

イラガ(蛾)終齢幼虫bが作り直した繭の色斑は不鮮明型に【100倍速映像】



イラガ(蛾)の飼育記録#2016-15


2016年10月上旬・午後13:49〜午前00:12

▼前回の記事
プラスチックの壁面で繭を作り損じたイラガ(蛾)終齢幼虫b【100倍速映像】

プラスチック容器の壁面で作りかけた繭が破れてしまったイラガMonema flavescens)の終齢幼虫bをメタセコイアの小枝に移してやりました。
営繭に適した場所を探してゆっくりワンダリング(徘徊)する幼虫をよく見ると、腹面が黄緑からオレンジ色に変色していました。
やはり、この変色は営繭の前兆と考えても良さそうです。
『イモムシハンドブック』や『繭ハンドブック』に掲載されたイラガ終齢幼虫の体長は24〜25mmですが、この個体は体長が著しく萎縮しているのが気がかりです。(と言いつつも、微速度撮影を優先して体長を実測するチャンスを逃してしまいました…。)
営繭に一度失敗したので、絹糸腺が枯渇してしまったのではないかと心配です。
食餌を再開して栄養をつけてから営繭し直すのかと思いきや、繭作りのプログラムが一旦始動してしまうと生理的に後戻りは出来ないようです。

斜めに立てた小枝(メタセコイア)の上面で足場糸を紡ぎ始めました。
イラガの繭がよく作られる小枝の二又部分をわざわざ選んで与えてやったのに、イラガ幼虫は私の親心を知らず、またもやY字状になった部分を営繭場所に選ばなかったのが不思議でなりません。

白い絹糸を吐いて小型な繭を順調に紡いでいます。
粗い網状の繭を作り終えると、次は繭内で回転しながらマルピーギ管に蓄えられていたシュウ酸カルシウムを含んだ白い液体を排泄しました。(@2:41)

次は褐色の液体(硬化剤タンパク質)を口から分泌するも、なぜかイラガ繭に特有の縞模様が形成されません。
コーヒー豆と似た状態のままで、繭の硬化・黒化が進みます。
繭が小さ過ぎて、幼虫が繭内で自在に動き回れなかったのでしょうか?
あるいは、シュウ酸カルシウムまたは硬化剤タンパク質の分泌量が少なかったのかもしれません。
営繭に一度失敗した直後なので、素材の消耗が激しかったのでしょう。

作り直したせいか、完成した繭はとても小さな物でした。
表面の縞模様も全体的に不明瞭です。
密閉容器に移した繭を外気に晒して越冬させました(冬の低温をしっかり経験)。

おそろしく矮小化した成虫が羽化するかと期待していたのですけど、翌年になっても残念ながら成虫は羽化してきませんでした。
原因は不明です。

私が晩秋に野外からイラガ幼虫を何匹も採集してきても、飼育下ではなかなか繭を正常に作ってくれない、ということがここ何年も続いています。
営繭する前に萎んだように死んでしまう幼虫が多いのです。
その原因として、素人は素人なりに仮説を考えてみました。
秋も深まると食樹植物の葉に含まれる毒物(シュウ酸など)の量が増えて栄養価が下がるのではないでしょうか?
つまりイラガ幼虫は、食べても食べても栄養失調の状態なのかもしれません。
イラガ幼虫は体内のマルピーギ管に溜め込んだシュウ酸カルシウム(毒物)の量が限界(臨界点)に達すると自家中毒になり、栄養状態や絹糸腺の発達があまり良くなくても営繭のスイッチが入り毒物を排泄するのではないでしょうか?
この仮説が正しければ、もっと季節の早い夏に第一化の幼虫を飼育すれば、繭の歩留まりが向上するでしょう。
(夏のフィールドではイラガ幼虫の個体数が少ないようで、私にはなかなか見つけられないのです。)
イラガの繭作りや縞模様のパターン形成のタイムラプス映像はダイナミックで美しく、見ていて飽きません。
いつかまた再挑戦するつもりです。


つづく→#16



【追記】
CiNiiで文献検索してみると興味深い論文を見つけました。
野外におけるイラガ繭の色斑二型の出現要因. 古川 真莉子 , 中西 康介 , 西田 隆義.  環動昆 27(4), 133-139, 2016.   Jpn. J. Environ. Entomol. Zool. 27(4):133-139(2017)
日本語要旨を引用すると、
イラガは固い繭を樹木の幹や枝に形成する.この繭の色斑には大きな変異があり,縞模様型(全面が鮮明な白黒模様)と不鮮明型(不鮮明な縞模様,または全体的に不鮮明な茶褐色)に大別される.しかし,繭の色班型の違いに関わる環境条件について知見は乏しかった.そこで本研究では,イラガ繭の色班型の出現頻度と環境条件との関係を,野外調査により明らかにすることを目的とした.調査対象とした 47 種の樹種のうち,17 種でイラガの繭が見つかり,94 個の繭を採集した.縞模様型の繭は,そのうち 9 種の樹種から 33 個採集した.縞模様の有無に対する,繭形成樹種,繭を形成した場所の地面からの高さおよび枝・幹の太さとの関係を解析したところ,繭が形成された部分の枝の太さと負の関係があり,細い枝ほど縞模様型の割合が高いことがわかった.また,同じ樹種で行なわれた先行研究の結果と比較すると,縞模様型の割合は地域によって異なることが示された.

この研究によれば、私が今回飼育した繭が全体的に不鮮明型の色班になったのは、与えた小枝が太かったからということになります。
しかし繭を新たに作り直した影響の有無は検討の余地があると思います。
私としては今のところ自分で観察した例数が少な過ぎて、未だ何とも言えません。


13:49 pm
17:02 pm
20:33 pm
翌日 00:12 am

【おまけの動画】
同じ素材で再生速度を落とした60倍速映像とオリジナルの10倍速映像をブログ限定で公開します。
じっくり見たい方はこちらをご覧ください。








ノスリを追い回すハシボソガラスのモビング飛翔(野鳥)



2017年6月中旬

郊外の交差点で信号待ちしている間に撮影。
必死に飛んで逃げ回るノスリButeo japonicus)をハシボソガラスCorvus corone)が単独で追い回しています。
なかなか迫力のある空中戦が続きますが、見上げたときの電線が邪魔で、どうしても前ピンになりがちです。
後半は攻守が逆転して、ノスリがカラスを追い回す形になりました。
映像では高度の遠近感が分からないのですが、おそらくカラスが失速した結果、高度を保ったノスリが有利になったのでしょう。
カラスが堪らず空域を離脱し、ノスリは青空で弧を描く帆翔を続けています。

実はこの辺りは高圧線鉄塔#21に営巣していたつがいの縄張りです。
ちょうどこの日は最後の雛が巣立った日でしたが、親鳥は天敵の猛禽類が縄張りに侵入するのを許さず、単独モビング(擬攻撃)で追い払っているのでしょう。


▼関連記事
巣立ち後のハシボソガラス親鳥の行動(野鳥)



2017/12/04

プラスチックの壁面で繭を作り損じたイラガ(蛾)終齢幼虫b【100倍速映像】



イラガ(蛾)の飼育記録#2016-14


2016年10月上旬・午前5:33〜9:49

朝に様子を見ると、イラガMonema flavescens)の終齢幼虫bが夜の間に食樹植物から自発的に離れて飼育容器のプラスチック壁面に静止していました。
てっきり脱皮前の眠かと思い、微速度撮影で監視を始めました。
100倍速の早回し映像をご覧ください。

壁に静止していても背脈管(昆虫の心臓)の激しい拍動が見られます。
脱皮前の眠かと思い込んでいたら、しばらくすると、その場で足場糸を張り巡らせて営繭開始。

イラガ幼虫はプラスチック容器の中でも表面がザラザラに加工してある部分を営繭場所に選びました。
背景が白いと、白い絹糸が見え難いですね。

この個体は営繭前に体色変化も見られませんでした。
採集時には一番小さな個体だったのに、飼育下では食欲旺盛で仲間をごぼう抜きして営繭を始めたのです。


イラガの終齢幼虫bは白い絹糸で自分の体の周りに粗い網目状の繭を順調に紡いでいたのに、途中でなぜか薄い繭が破けてしまいました。
幼虫の肉角が作りかけの繭を突き破ってしまったのかな?
絹糸と接着するプラスチック素材の相性が悪かったのかもしれません。(営繭場所の選択ミス)
もはや繭は修復不能らしく、体が外に出てしまった幼虫は困っているようです。
これ以上放置すると大量の絹糸を無駄に使うだけなので、小枝に移すことを決意しました。
今思うと、失敗作の繭を食べて絹糸のタンパク質を再利用していたのかもしれませんが、確認していません。


本を読むと、イラガは平面にも繭を作ることが出来るらしいのですが、失敗の原因は不明です。
(細い枝に作る時と比べて平面上の繭は縞模様が変わるらしい。)
もしプラスチック容器を横に寝かせて水平にしておけば、失敗事故は避けられたでしょうか?

この間、ときどき記録した室温は以下の通り。
午前6:26 室温22.3℃、湿度62%
午前7:22 室温21.0℃、湿度72%
午前8:54 室温21.5℃、湿度72%


つづく→#15:小枝に繭を作り直したイラガ(蛾)終齢幼虫b【100倍速映像】


【おまけの動画】
同じ素材で再生速度を落とした60倍速映像とオリジナルの10倍速映像をブログ限定で公開します。
じっくり見たい方はこちらをご覧ください。









ハスの葉に乗り虫を捕食するスズメ(野鳥)



2017年7月下旬・午前6:50

朝の蓮池に飛来したスズメPasser montanus)が水面を覆うハス(蓮)の葉に着陸しました。
体重が軽いので、沈まずに水面に浮いていられます。
葉から葉へときどき走り回って、何か虫を捕食しているようです。

もう1羽は初め、大きな蓮葉の下で休んでいました。
まるで大きな日傘をさしているようです。
スズメは長い茎にも器用に止まることが可能です。

蓮の葉は高い撥水性を持つため、スズメが動くことで葉に付いていた大きな水滴が玉のように動きます。

▼関連記事
水を弾き泥汚れも付かないハスの葉の秘密:ロータス効果の実演

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。
ハンディカムで撮ったので、画質や望遠性能がいまいちです。



2017/12/03

ラ・フランス熟果を吸汁するキタテハ秋型



2016年10月上旬

山麓の果樹園で洋梨(ラ・フランス)の枝になったまま熟した(腐りかけた)果実に秋型のキタテハPolygonia c-aureum)が何頭も集まっていました。
翅を閉じたまま果汁を吸っています。
後半は秋の陽射しを浴びつつ翅を開閉したり方向転換してくれるようになりました。
複数個体を撮影。

発酵した芳香に誘われて、他にはハエ(種名不詳)も集まっていました。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。


▼関連記事
ラ・フランスの果実で吸汁するアカタテハ、ヒメスズメバチ、キタテハ秋型




スイレン池の水を飲むモンスズメバチ♀



2017年8月上旬・午後15:43

池の水面を覆うスイレンの葉の乾いた中央部にモンスズメバチVespa crabro)のワーカー♀が乗って、水を飲んでいました。
飲み終えると、すぐにどこかへ飛び去りました。


関連記事(6年後の撮影)▶ 飲水後に桜の樹上で身繕いするモンスズメバチ♀



ちなみに、池のスイレンは白い花が咲きかけの蕾ばかりでした。
ヒツジグサ(未の刻=午後2時頃に開花)なのですかね?
睡蓮には開花時刻の異なる多様な品種があるそうです。
来季は開花するスイレンの微速度撮影にチャレンジしてみたいものです。



ランダムに記事を読む

  • 営繭中に排便するイラガ(蛾)終齢幼虫29/11/2017 - 0 Comments
  • リンゴをついばむツグミ#2:ムクドリの闖入27/03/2011 - 0 Comments
  • コオニヤンマ♀06/03/2011 - 0 Comments
  • 交尾中のヨモギハムシのペアに割り込む♂19/02/2011 - 0 Comments
  • セグロアシナガバチ♀が柳で木登り19/10/2021 - 0 Comments