2011/02/12

林床で日光浴するハグロハバチの一種♀




2010年11月下旬 気温12℃

林道横の落ち葉に黒い蜂が止まっていました。
日溜まりで体を温めているようです。
腰がくびれていない(寸胴)のでハバチの仲間だと思います(広腰亜目)。
最後は少し歩いてから飛び立ちました。



同定してもらうため撮影後も同一個体を追いかけて採集しました。
フィルムケースで持ち帰ったらゴミが付着して蜂の体が汚れてしまいました。
体長9mm。
腹端に産卵管は見られないので♂なのかな?



蜂類情報交換BBSに投稿したところ、次のコメントを頂きました。

「写真のハバチは種名まではわかりませんが、ハグロハバチ亜科のメスのようです。ハバチのメスの産卵管はのこぎり状になっていて、腹端にはそれを挟むように鋸鞘があります。写真のハチには鋸鞘がみられるので、メスと判断できます。」
見分け方(同定、検索)についてネットで調べてみたら次のブログが非常に良くまとめられていて今後の参考になりそうです。
多摩の生き物たち: サクラセグロハバチ 同定編 

セイヨウタンポポの蜜を吸うベニシジミ



2009年5月中旬

ベニシジミLycaena phlaeas)が長時間夢中になって道端のタンポポから吸蜜していました。
よく見ると二頭並んでいます。
撮影後に総苞片が反り返っているセイヨウタンポポと確認。

アカヘリサシガメ幼虫の脱糞



2009年5月中旬

捕獲してきたアカヘリサシガメRhynocoris ornatus)幼虫を観察していたら脱糞しました。
特に悪臭はなし。



キジ♂(野鳥)の縄張り宣言



2009年5月中旬

代掻き直前の田んぼで夜明け前から♂のキジPhasianus versicolor)が頻りに鳴いていました。
ケーンケーン♪と鋭く鳴き終わるとその場で激しく羽ばたき(母衣打ち、ドラミング)、縄張り宣言しています。
遠くから別の♂の声も聞こえてきます。

繁殖期直後のネコハエトリ♀(蜘蛛)



2009年5月上旬

5月の連休にネコハエトリ♂の激しい喧嘩と求愛行動を観察した同じ場所に数日後、再び訪れてみました。
するともはや♂の姿は無く、ネコハエトリ♀(Carrhotus xanthogramma)が2匹パイプの上でじっとしているだけでした(雌伏のとき?)。
最終脱皮および交接(交尾)を済ませた♀成体と思われます。
♀を巡って♂同士があれだけ激しく戦っていたのがまるで嘘のようで、「兵どもが夢の跡」といった趣。
どうやら♀は♂と異なりあまり活発ではないようで、互いに姿を認めているはずなのに喧嘩にはなりませんでした(没交渉)。

手ぶれ補正のデジタル処理3:風対策として



手ぶれのひどい動画をデジタル修正するのに動画編集ソフトVirtualDub(無料)の専用フィルターDeshakerを愛用しています。
手ぶれだけでなく、例えば虫のマクロ撮影で被写体が風で激しく揺れている映像に対してもかなり有効なことが分かりました。
このサンプルはカメラを一脚で軽く固定して撮りましたが、風に悩まされオリジナル映像を見ると酔いそうになります。
デジタル処理による安定化効果は一目瞭然、本当に凄いです。
Deshaker処理の都合により、シーンの変わり目で1秒間暗転しますが、後でこの部分を編集でカットすれば完成です。


日本語で使い方を解説しているブログはこちら


ツツハナバチの捕獲・麻酔(竹筒トラップ)



2009年5月上旬

今季初めて仕掛けてみた竹筒トラップに営巣している蜂の種類を調べるために、一匹を一時的に捕獲して同定用の写真を撮ることにしました。
おとなしい蜂のようですがそれでも身を守る毒針を持っているらしいので、炭酸ガス(CO2)で一時的に蜂を眠らせました。


麻酔にかかると蜂は舌がだらしなく伸びてしまうようです。実地で試すのは初めてなので作業にもたつき、蜂はすぐに麻酔から醒めて飛んで行ってしまいました。
しばらくすると無事に自分の巣に戻ったようです。


「ヒゲおやじの投稿掲示板」にて写真を見てもらったところ、ツツハナバチOsmia taurus)であると正体を教えて頂きました。
筒の中で作業している蜂の花粉まみれになった顔をアップで見ると、名前(別名ツノツツハナバチ)の由来通り、角が二本生えていました。
本種はシリアゲコバチに寄生されるらしい。

解散したキアシナガバチの巣と寄生蛾



2009年11月上旬

軒下に営巣したキアシナガバチPolistes rothneyi)巣の定点観察(23日ぶり)。
久し振りに見た巣に新女王の姿は一匹もありませんでした。
解散してそれぞれが越冬地を探す旅に出たのでしょう。
最終的な育房数は46室※。 

※ 本種は育房を二段構造にして再使用するので、育房数以上の子孫を育てたことになります。しかしヒメスズメバチに蛹を捕食されたりしたので羽化した成虫の数はどのくらいだったのだろう? 


おかげさまで、2シーズン目の定点観察も実りの多いものでした。
コロニーの創設初期から解散までを見届けられたのが一番の収穫です。
自分なりに色々と工夫しながら在巣アシナガバチの安全な捕獲・麻酔・標識作業をようやく確立し、念願であった蜂の個体識別調査に目処が立ちました。
ごく一部の♀をマーキングしただけも、創設女王の乗っ取りや女王/ワーカー間の優位行動・順位制など興味深い行動の一端が垣間見れました。
新女王が羽化してきた秋には不幸にも天敵ヒメスズメバチに見つかってしまい、多数の蛹が犠牲になりました。
迫力の襲撃シーンは強烈な印象に残っています。
翌年も出会えることを祈ります。 




≪追記≫ 
採集した巣を容器に密閉して保管していたら、冬の間に小蛾が36匹も羽化して死んでいました。


おそらくキアシナガバチの巣に寄生していたのだろう。
虫我像掲示板にて問い合せたところ、マダラトガリホソガに近縁な未同定種だろうと教えていただきました。

キアシナガバチ標識個体の再捕獲



2009年10月中旬

17日ぶりの定点観察。
営巣末期のキアシナガバチPolistes rothneyi)は集団で巣の上部で身を寄せ合っているだけで何の活動もありません。
そのままでは互いに折り重なって個体識別できないので、今回も簡易ガス室で一斉捕獲しました。
炭酸ガス麻酔下で確認すると、この日の在巣個体は♀ばかり計8匹(桃黄、赤紫、緑水、水白、桃銀、銀、白茶、金青)。
前回マーキングした♀で3匹(桃水、緑黄、金銀)が居なくなっていました。
ワーカーが寿命を迎えたのか、それとも既に越冬に備え新女王の分散が始まっているのだろうか。
気になる点として、どうやら油性ペンの金や銀は塗料が剥げ落ちやすいようです。
今後は使わない方が良いかもしれない。
麻酔から醒めつつある蜂の翅をピンセットで摘むと反射的に腹部を曲げ毒針を出しました。
点検が済んだ蜂は一匹ずつ巣に戻してやります。
最後の一匹は自力で飛んで帰巣しました。
いよいよアシナガバチのシーズンも終わりに近付いています。 


※ ちなみに♀銀は8月下旬にマーキングした個体で、当時はワーカーだと思っていたのでこの時期まで生き残っているのは意外です。
実は新女王なのだろうか。
私には外見では見分けられません。
標識作業の際にうっかり指先を刺された蜂なので、印象深い個体です。

つづく→シリーズ#33

在巣のキアシナガバチを一斉捕獲(炭酸ガス麻酔)



2009年9月下旬

キアシナガバチPolistes rothneyi)の定点観察を続けていますが、個体識別のため成虫をマーキングしたくても巣から安全に一匹ずつ捕獲する方法が分からず試行錯誤していました。





そんなときYouTubeでこの動画↑(by BRIGHTDOOR1氏)を見て閃きました。
在巣の蜂を一網打尽にするため、ガス室を自作してみました。
1.5Lペットボトルの透明容器をカットし、蓋に穴を開け炭酸ガスのボンベからチューブを通しました。


容器の直径が巣の大きさにピッタリでした。
これを下からそっと近づけると在巣の蜂は警戒したものの、飛んで逃げたり攻撃してくることはありませんでした。
軒下の天井板に押し付けると適度に密閉されて炭酸ガスを注入すれば即効性のCO2ガスで麻酔されます。
全ての蜂がガス室の底に転がり落ちたところで蓋を被せて捕獲完了。
既に標識済みの個体(W桃水、W銀)は早目に取り出して逃がしてやりました。
あとはいつものように12色セットの油性ペンで背中に標識しました(二色の組み合わせ)。


この日は計9匹の♀を新たに標識しました。
在巣の個体は♀のみ計11匹でした。
♂はもう全て巣立ったようです。
処置の済んだ蜂は麻酔から醒めるのを待って一匹ずつ巣に戻してやりました(数匹は自力で帰巣)。
成功したので来年はこの方法で試してみます。
しかし成虫が新たに羽化する度にこの作業を繰り返すことになるので、古株(早生まれ)の蜂に麻酔の副作用(?)が蓄積されるのではないかと少し心配です。

【追記】
この年は軒下に一つしか巣を作りませんでしたが、創設女王が二巣並行営巣する場合があります。
この場合、上述の方法で蜂を一網打尽にしようとすると危険です。
ガス室に閉じ込められ炭酸ガスを吹きかけられると、蜂は麻酔状態になる寸前に反撃体勢となり揮発性の警戒フェロモンを発するようです。
蜂が大人しくなったのを待ってガス室を天板からそっと外すと、ガス室に充満した警戒フェロモンが辺りに拡散します。
その結果、隣のサテライト巣にいる蜂が刺激され一斉に飛び立って攻撃してきます。(一斉蜂起!)
実際に刺されそうになりました。
二巣並行営巣のメリット(防衛力向上)を実感したときでもありました。
誰かに手助けを頼んで二つの巣を同時に麻酔処理すれば安全だと思います。

つづく→シリーズ#32



ヤスマツアメンボの交尾



2009年5月上旬

低山の林道上に出来た水たまりで交尾中のアメンボを撮りました。
写真鑑定でヤスマツアメンボGerris inslaris)と教えて頂きました。
♂は交尾が済んでもマウントを続け、他の♂と交尾するのを防ぐようです(交尾後ガード)。
上陸するとぴょんぴょん跳びはねます。




【追記】
上村佳孝『昆虫の交尾は、味わい深い…。 (岩波科学ライブラリー)』によれば、
アメンボは水面という二次元の世界で暮らしている昆虫だ(たまに飛ぶが)。♂はしきりに♀に挑むが、♂を背に乗せた状態では、♀の採餌や外敵から逃れる能力が低下してしまう。そこで、アメンボの♀は交尾を挑む♂に必死で抵抗する。 (p87より引用)

あまりに言い寄る♂が多くなると、いちいち♂と格闘していたら逆に餌を食べる暇もなくなるし、かえって外敵に目立ってしまうだろう。二次元生活では逃げ場がないのだ。交尾そのもの以外の形でコストを被ることを「セクシャル・ハラスメント」と呼んでいる。「セクハラ」という用語は、人間専用ではないのだ! 実際、アメンボの♀は♂の密度が高くなると交尾を受け入れ、♂に交尾後ガードされて過ごす時間が長くなるという。より大きなコストを避けるために、より小さな交尾のコストを受け入れる、「背に腹は代えられぬがゆえの交尾」というわけである。これもコストを抑え、産卵数を増加させる♀の戦略として捉えることができるので、直接的利益に数えられている。 (p88より引用)



ニワハンミョウ♀dの徘徊・飛翔



2009年5月上旬

虫我像掲示板にて写真鑑定してもらったところ、ニワハンミョウ♀(Cicindela japana)と教えて頂きました。
地味な色の個体です。




川岸のヤマアカガエル



2009年5月上旬

渓流の岸辺に居たヤマアカガエルRana ornativentris)。
動きが無いので痺れを切らし、最後はスーパーマクロモードに切り替えて迫ったらさすがに跳んで逃げました。

2011/02/11

キアシナガバチの営巣した軒下にクマバチが飛来



2010年8月上旬

前回の定点観察から5日後。
今季のキアシナガバチPolistes rothneyi)コロニーは創設期から軒下に二巣並行営巣しています。
この日の調査では巣S9(育房数59室+繭12個)、S10(育房数37室+繭11個)でした。

監視中に珍客が登場しました。
一匹のキムネクマバチXylocopa appendiculata circumvolans)が軒下をホバリングしながら飛んで来たのです。
しかし在巣のキアシナガバチは無反応です。
クマバチは巣S9横の梁に止まりました。
新たな営巣地(穿坑可能な材)を探しているのでしょうか。
近くに営巣してくれないかと期待したものの、そのまま飛び去ってしまいました。
もう少し年季の入った材木がクマバチの好みなのかもしれません。


※ レンズに付着した埃がお見苦しい映像で恐縮です。


ニワハンミョウ♂c



2009年5月上旬

虫我像掲示板にてニワハンミョウ♂(Cicindela japana)と教えて頂きました。
緑がかった金属光沢に見えます。
地味な保護色だし、予測不能の動きをするし、日向でカメラの液晶モニタは見難いし、なかなか難しい撮影でした。


アカヘリサシガメ幼虫の捕食吸汁



2009年5月上旬

林道沿いの笹の葉の上で食事中のサシガメを発見。
葉裏に隠れようとしたので指を葉裏から近づけてなんとか表側に来させました。
風で葉が激しく揺れても平気なようです。
随分と派手な装いをしたこの必殺仕事人は、写真鑑定でアカヘリサシガメRhynocoris rubromarginatus)の幼虫だとカメムシBBSにて教えて頂きました。
餌食となった小さなカメムシ(カメムシ科)の方は正体不明とのことです。
昨年撮った本種成虫に続き、幼虫の食事を観察できました。
狩りの瞬間を是非見てみたいのですけど、飼育しないと無理かな?


続続々・ヒメスズメバチvsキアシナガバチ



2009年9月中旬

一週間ぶりの定点観察。
在巣のキアシナガバチPolistes rothneyi)成虫は減っているようですが、カウントしていません。
またしてもヒメスズメバチVespa ducalis pulchraが飛来し、近くの軒下に止まってキアシナガバチの巣の様子を窺っています。
個体識別のマーキング(白)が背中に無いので、このヒメスズメバチは別個体と判明。
巣に着陸したヒメスズメバチは在巣のキアシナガバチを追い散らしながら早足で巣を一回り点検しただけですぐに離巣しました。
再度巣にタッチダウンするも、すぐに飛び去りました。
獲物となる蛹の発育状況を確認しに来たようですが、育房は空き部屋ばかりでもう蛹は残っていませんでした。
ヒメスズメバチはアシナガバチの成虫を狩りの対象にすることはありません。
収穫の時期を見計らって農村を襲う野武士よりもたちが悪いですけど、キアシナガバチは巣を守ろうともせず諦め切っている様子。
無事に育った生殖虫(新女王と雄蜂)の歩留まりはどの位なのだろう?

つづく→シリーズ#31

キアシナガバチの巣を襲うヒメスズメバチの個体標識



2009年9月上旬

キアシナガバチPolistes rothneyi)の巣を繰り返し襲うヒメスズメバチVespa ducalis pulchra)は同時に二匹以上は来ませんが、実際は何匹来ているのか気になりました。
アシナガバチの巣に餌場マークフェロモンを塗りつけて、同じヒメスズメバチの巣の仲間を呼び寄せているかもしれません。
4回目の襲撃中にヒメスズメバチの背中に個体識別のマーキングを施すことにしました。
初めは生け捕りにして麻酔下で作業しようかと思いました。
しかし捕獲する方がむしろ危険な気がしたので、思い切って夢中で獲物を咀嚼しているヒメスズメバチに直接油性ペン(白)で標識しました。


ヒメスズメバチはスズメバチの中でも攻撃性がそれ程高くないと言われています。
胸部の標識には成功したものの、腹部に少しでも触れると露骨に嫌がったので止めました。
このヒメスズメバチ(白)が飛び去ってからも監視を続けると、蛹が無くなるまでの襲撃(5~7回目)は全て同一個体によるものでした。
入れ替わり立ち代り別個体が襲撃するのではないようです。
巣の仲間に狩場の在り処を知らせて協力するミツバチのような伝達能力は無いのでしょう。
単独攻撃でもアシナガバチを制圧できるので、コミュニケーションの必要が無いのかもしれません。


この日は興奮して動画を撮りまくったので、最後はメモリーカードの容量が足りなくなりました。

つづく→シリーズ#30

続々・ヒメスズメバチvsキアシナガバチ



2009年9月上旬

キアシナガバチPolistes rothneyi)の巣を襲撃するヒメスズメバチVespa ducalis pulchraの続きです。
度重なる襲撃でキアシナガバチも馴れたようで、ヒメスズメバチが居座って蛹の肉汁を啜っている間におそるおそる帰巣する個体もいます。
しかし抵抗は無駄だと知っているのか、反撃したり巣を守ろうとする様子は一切示しませんでした。
もしかしたら、本コロニーの成虫構成は既にワーカー♀から攻撃性に乏しい繁殖虫(新女王と♂)メインに切り替わっているのかもしれません。
だとすれば命を賭してまで巣を守る(利他行動)メリットはないでしょう。

つづく→シリーズ#29

キアシナガバチ蛹の死骸に群がるヨツボシオオアリ



2009年9月上旬

ヒメスズメバチVespa ducalis pulchra)に襲われたキアシナガバチPolistes rothneyi)の巣の真下では、捨てられた蛹の残骸に早速ヨツボシオオアリCamponotus quadrinotatusが群がって死体を処理していました。
細切れに解体して巣に運ぶようです。
戦場で美味しい思いをするのは掃除屋さんです(漁夫の利)。
ハチ目(膜翅目)の中で壮絶な食物連鎖が続きます。 


クロバエも長時間、蛹の死骸を舐めていました(映像なし)。

つづく→シリーズ#28

ヒメスズメバチ襲撃後のキアシナガバチ巣



2009年9月上旬

ヒメスズメバチVespa ducalis pulchra)が去ると、巣の近くに避難していたキアシナガバチPolistes rothneyi)数匹がぞろぞろと歩いて戻って来ました。
散り散りになって逃げた蜂も三々五々と集まりました。
育房から途中まで引きずり出された蛹の死骸(ヒメスズメバチの食べ残し)を齧り始めました。
これも広い意味での共食いと呼べるのでしょうか。
全部は食べず、巣の外に捨てました。
どのキアシナガバチもすっかり神経質になり、仲間の帰巣する羽音が聞こえるだけで怯えています。
しかし束の間の平和を味わう間もなく、ヒメスズメバチは何度も襲ってくるのです。 


襲撃後、巣に戻って来る順番がもしかしたらコロニー内の順位を反映しているかもしれません。
産卵権のある上位の♀ほど巣への執着・未練が強くて余り遠くまで逃げないのではないだろうか。
♂は巣を守るメリットが無いためか帰巣が遅い気がします。

つづく→シリーズ#27



【追記】
松浦誠『社会性ハチの不思議な社会』によれば、
 ヒメスズメバチに発見されたアシナガバチの巣では、数日間にわたって、毎日のようにこの招かれざる客がやってくる。アシナガバチは、巣の中に卵や幼虫が残っているあいだはそこにとどまっているが、やがて、巣が空っぽになると、他へ移って新しい巣をつくり、育児をやり直す。 (p165より引用)

続・ヒメスズメバチvsキアシナガバチ



2009年9月上旬

ヒメスズメバチVespa ducalis pulchra)の襲撃は容赦なく続きます。
キアシナガバチPolistes rothneyi)繭のキャップを破り育房から蛹を引っ張り出す際は大顎でかじっているようで、ガリガリ凄い音が響き渡ります。
ヒメスズメバチのお陰で、キアシナガバチ蛹の発達段階を観察することが出来ました。
真っ白な蛹から、羽化直前でクチクラが色付いた蛹など、色々あります。
毎回ヒメスズメバチは在巣のキアシナガバチを追い散らすだけで、決して成虫を捕食することはありません。
餌食となるのは蛹だけで、それも他のスズメバチのように肉団子にして持ち帰ることは殆どなく、その場で咀嚼して肉汁を啜るだけです。


松浦誠『社会性ハチの不思議な社会』によれば、
ヒメスズメバチの女王は遠慮もなくあがりこんで、あわてふためくアシナガバチの働きバチには目もくれずに、老熟幼虫や若い蛹を選んで育房から引き抜く。それを前脚で抱きかかえると、その場で大腮をつきたて、あふれでる体液を胃袋の中へおさめていく。一回に一頭文をたいらげると自分の巣へもどるが、他のスズメバチと違って、肉団子の状態にしてもち帰ることはない。 (p164-165より引用)
この記述は単独営巣期のヒメスズメバチ創設女王による襲撃シーンですが、ワーカー♀による襲撃も同様です。


つづく→シリーズ#26

ヒメスズメバチ vs キアシナガバチ



2009年9月上旬

定点観察中のキアシナガバチPolistes rothneyi)の巣の下に最近、蛹の死骸が落ちているのが気になっていました。
病気になったり寄生されたりした蛹を成虫が始末したのかと思っていたら、恐るべき真相が遂に明らかになりました。
アシナガバチを専門に狩るヒメスズメバチVespa ducalis pulchra)に襲撃されていたのです。
育房から蛹を引きずり出すとその場で咀嚼し肉汁を摂取します。
巣に帰るとこれを吐き戻して自分達の幼虫の餌にするのだそうです。
在巣のキアシナガバチ成虫は全くの無抵抗で、ヒメスズメバチが来襲する度に一斉に逃げ出しました。
巣のすぐ近くで観察していてもヒメスズメバチや興奮して飛び回るキアシナガバチに刺されることはありませんでした。
満腹したヒメスズメバチは飛び去る前によく脱糞しました。
自分の巣に飛んで帰る前に少しでも身を軽くするのだろう。
食べ残しの蛹を惜し気もなく下に捨ててしまうこともあります。

つづく→シリーズ#25


【参考文献】
渡邉正子, and 小野正人. "J305 被食者アシナガバチは何をもってその専食者ヒメスズメチを識別しているのか?." 日本応用動物昆虫学会大会講演要旨 51 (2007): 174.(PDFへのリンク

アシナガバチは、視覚や聴覚よりも嗅覚を用いて専食者を識別していると示唆された。また、専食者の体臭成分の1つに対して、被食者の忌避反応が認められた。(要旨より引用)

サカハチチョウ春型の日光浴



2009年5月上旬

木の葉に止まった春型のサカハチチョウAraschnia burejana)が気持ち良さそうに日光浴していました。

キアシナガバチ♂の帰巣



2009年9月上旬

キアシナガバチPolistes rothneyi)の巣を定点観察していたら、♂が帰巣しました。
ホバリングしながら移動し、軒下の端から巣を探しているようです。 


来季は♂にも個体識別のマーキングを施し調べてみたいことがあります。

  •  他の巣由来の♂が紛れ込むことはあるのか?(在巣の♀は受け入れるのか?) 
  • 羽化後しばらくすると成熟した♂は巣から追い出されてしまうようだが、許容期間は?
つづく→シリーズ#24

巣上で交尾を試みるキアシナガバチ




2009年9月上旬

軒下にあるキアシナガバチPolistes rothneyi)の巣上で♂が♀(桃水)の背にマウントしていました。
交尾器の結合には至らず、♂は諦めて離れました。
2回目の偽交尾は接写できたもののアングルが悪くて♀の個体識別はできませんでした。
手鏡を使えばよかったですね。
近親交配を避けるためか、巣上では完全な交尾に至らないらしい。
また、♂は羽化後しばらくすると巣から放逐されます。

つづく→シリーズ#23

ソーセージを齧るキアシナガバチ



2009年8月下旬

定点観察中のキアシナガバチPolistes rothneyi)の巣から蜂を安全に生け捕りにする方法を模索しています。
成虫を釣り上げる餌として、この日は魚肉ソーセージの肉片を試してみました。


一匹のワーカー(W桃水)が食い付いてくれ、無事に釣り出すことが出来ました。
その場で肉団子を作り始めるかと見守っていたら、どうもソーセージの肉質が固くて歯が立たないようです。
あちこち噛み付いていたものの、やがて諦めて飛び去りました。
他の個体はこの餌には見向きもしませんでした。


菓子パンのチョコレートと、綿に含ませたスポーツドリンクも試したものの、共に釣り餌として誘引効果はありませんでした(映像なし)。

つづく→シリーズ#22

在巣のキアシナガバチ♂と交尾




2009年8月下旬

11日振りのキアシナガバチPolistes rothneyi)巣の定点観察。
既に♂が羽化していました。
頭楯が白っぽく、触角の先がカールしているのが雄蜂です。
羽化直後の複眼は黒くて成熟すると黄色くなるようです。
前年観察したキボシアシナガバチと比べて、体格の性差が小さい気がします。


巣の上で一匹の♂が♀の背中に跨り交尾を試みていました。
交尾器の結合には至らなかったので偽交尾だろう。
交尾相手の♀がワーカーなのか新女王なのか、残念ながら個体識別できていないため不明です。


ワーカーが狩りから戻ると肉団子を分配します。
羽化直後の♂も肉団子を分けて貰いますが、幼虫への給餌は行なわず咀嚼して肉汁を飲むだけです。


前回マーキングを施した♀のうちW金、W茶だけが残っていました。
この日新たに3匹の♀を捕獲・標識(W銀、W桃水、W黄紫)。
W茶がよく働き、せっせと肉団子を運んで来ます。

つづく→シリーズ#21

蜂蜜でキアシナガバチを釣る



2009年8月中旬

コロニーのキアシナガバチPolistes rothneyi)成虫を全て個体識別するのが理想ですが、マーキングしたくても蜂が増えるにつれて巣の上から直接捕獲するのは危険になってきました(エピソード14参照)。
巣の近くで網を振り回して蜂を捕まえるのは効率が悪そうです。
そもそも羽化直後の成虫はしばらく巣を離れません。
在巣の蜂を一匹ずつ安全に(巣に振動を与えず)生け捕りにするために、蜂蜜で釣る方法を思いつきました。
蜂蜜よりも安かったハニーメープルを購入。
原材料の記載は「メープルシロップ、蜂蜜、水飴、香料など」。


棒の先に蜜を塗り、在巣の蜂の口元にそっと差し出してみました。
蜂はなかなか気づいてくれませんが、舐め始めると夢中になり枝によじ登って来ました。
そっと釣り上げた蜂を筒状の容器に捕獲成功。
あとは従来通り、スプレー缶の炭酸ガスで麻酔して油性ペンで胸部と腹部の背中に二箇所マーキングを施します。
標識済みの個体が味をしめたのか懲りずに蜜棒に寄って来ます。
作業の邪魔になるものの、捕獲・麻酔処理による負の学習効果が無い(トラウマになっていない)と分かり一安心。
この日はワーカー5匹(W緑、W金、W青、W紫、W茶)を捕獲・標識できました。
巣に戻してやる前に麻酔が醒めて飛び去ってしまった蜂も自力で帰巣しました。


こうしてある程度は目論見通りだったものの、なぜか糖蜜に全く反応してくれない個体が残ります。
その後も繰り返し試してみたところ、♂は決してこの糖蜜に誘引されないことが判明。
♀で誘引されるのは外役経験のあるワーカーだけと思われます。
釣れない♀は羽化直後で食欲が無いのか未だ花蜜の味を知らないのか、それともワーカーと比べて攻撃性の低い臆病な新女王なのか(差し出した枝から逃げ回る)不明です。
羽化してくる全成虫を片端から標識しないことにはワーカー/新女王の区別も出来ないので、「卵が先か鶏が先か」の問題と同じで悩ましいところ。
餌となる糖蜜の種類を変えてみるなど今後の課題です。
今回のメープルシロップは独特の香りが気に入らなかったのかもしれません。
スズメバチ幼虫が成虫のために吐き戻す栄養液と成分の似たスポーツドリンクVAAM(= Vespa Amino Acid Mixture)も試してみる? 
肉片を使ってみる?

つづく→シリーズ#20


【追記】
『雄太昆虫記 ぼくのアシナガバチ研究所日記』p25でコアシナガバチの好き嫌いを調べていました。
意外な結果になり、好みの順に「醤油>ストロベリーシロップ>メロンシロップ>>オリーブオイル、蜂蜜」とのこと。
セグロアシナガバチではまた違う結果になったらしい。p54
私も醤油で試してみたくなりました。


2011/02/10

追い越し禁止の一車線でシャクトリムシは渋滞をどう回避するか?




2010年11月下旬 気温10℃

山道のガードレールで大小二匹の尺取虫が刃渡りのように細い縁を歩いていました。
後ろから追いかける尺取虫の方が歩幅が大きく、先頭の小に追いついて立ち往生しています。
ガードレールの側面は滑り易いので横道に逸れる訳にもいきません。
追い越し禁止の一車線、というか一虫線になっています。
大は急かす(煽る)ように小に触れるも、気の強い?小は頭部を振って対等に応戦します。
諦めたのか大は向きを変えて逆方向へ戻って行きました。
この細い道で方向転換できること自体も驚異的です。
ときどき上半身を高々と持ち上げ、左右に振って辺りを探索します。
そのままマイペースで我が道を行く小。
いつの間にか大も再び向きを変え、小を追いかけ始めました。

細い絹糸が棚引いて見えますが、尺取虫が歩きながら吐いたものか不明です。
クモが遊糸飛行(バルーニング)に使った残りかもしれません。
最後はなんとか大きな歩幅を活かして強引な追い越しに成功しました。
学習の成果でしょうか。
渋滞でイライラしている運転者(ヒト)の行動を思わせるような(擬人化したくなるような)微笑ましい一幕でした。




この二匹は齢数の異なる同種の幼虫なのだろうか。
胸脚3対、腹脚2対あります。
大を一時捕獲して接写してみました。

『集めて楽しむ昆虫コレクション』p17より
シャクガの幼虫は第1〜5脚の腹脚が退化していて、前後に離れた脚で「尺をとる」ように移動する。



どなたか名前が分かるようでしたら教えてください。
いつもお世話になっている「不明幼虫の問い合わせのための画像掲示板」に投稿してみたものの、回答を得られませんでした。
シャクガ科は種数が多いので、食草の情報などが無いと絞り込むのは難しいのかもしれません。

キアシナガバチの分配給餌



2009年8月中旬

前回の定点観察から丸二週間も様子を見に行けませんでした。
個体識別のマーキングを施したキアシナガバチPolistes rothneyi)成虫(女王Q水色、ワーカーW1桃色、ワーカーW2黄色)が3匹とも居なくなっていました。
前年に生まれた女王は寿命でも不思議はないですけど、長女W1と次女W2も死んだのだろうか。 


軒下に営巣しているキアシナガバチのコロニーにカメラをそっと近付けると、在巣の成虫が一斉に警戒姿勢を取ります(翅を広げて小刻みに震わせる)。
こちらが巣に振動を与えたり急な動きをしなければすぐに平時の活動に戻ります。
青虫を狩って来たのか緑色の肉団子を咀嚼しているワーカーがいます。
別の一匹が近寄ってねだると肉団子を分配しました。
獲物を手分けして噛みほぐしてから育房内の幼虫に与えて回ります。
成虫は肉塊を飲み込めず肉汁を飲むだけで、それも若齢幼虫に吐き戻して与えるそうです。

つづく→シリーズ#19

キアシナガバチの優位行動



2009年7月下旬

前回のエピソード16と同じ日に撮影。
キアシナガバチPolistes rothneyi)のコロニー全体がようやく落ち着きを取り戻しました。
と思いきや、再びQ(水色)が神経質に各娘に優位行動を繰り返します。
巣材を集めに出たW2(黄色)は帰巣すると左端で一心不乱に育房を作っています。
W1(桃色)はひたすら育房の点検を続けています(幼虫との栄養交換かもしれない)。
この日は成虫間の関係が何か緊張状態にあることが見て取れました。 
現女王Q(水色)はワーカーが羽化する前に創設女王Q(銀色)からこの巣を乗っ取りました。
少なくともW1(桃色)、W2(黄色)は創設女王Q(銀色)の娘なのでQ(水色)とは血縁関係が無いと考えられます。
ワーカーに血縁認識能力があるとすれば継母のために働くのは割に合わないので、反乱を企てようとしているのかもしれません。
継母Q(水色)を追い出して自ら産卵するようになれば適応度が上がるからです。
ワーカー間では羽化順に上位となるらしいので、後から羽化するQ(水色)の娘W(無印)は問題にならないのでしょう。
個体識別することで複雑な社会関係が見えてきます。

つづく→シリーズ#18

キアシナガバチ:巣内の権力闘争



2009年7月下旬

軒下に営巣したキアシナガバチPolistes rothneyi)のコロニーの定点観察。
女王(Q水色)はほぼ常に巣の下面に居ます。
W1(桃色)、W2(黄色)、W3(無印)、W4(無印)の他にもう一匹W5が新たに羽化したようです(W3-5は未標識)。 


成虫間で優位行動(攻撃)がしばしば見られました。
アシナガバチの女王は他の♀に産卵されないよう常に力で支配しなければなりません(ミツバチの女王のように洗練された化学的支配〔女王物質〕を行なわない)。
アシナガバチのワーカー間では一般に羽化した順で上位になるらしい。
ワーカー♀も産卵可能で、未受精卵からは♂が生まれます。
女王も油断すると娘に反乱を起こされる可能性があるのです。
この日の映像記録ではW1、W2は全く働いていません。
巣内の権力闘争に明け暮れているのだろうか。
外役に出るのは未標識のワーカー(W3-5)のいずれか。
コロニー全体が穏やかで落ち着いているかと思うと、何かのきっかけで急にコロニー全体が活気付き、カオス状態に陥ることも。
後半、Q(水色)が巣上で執拗にW2(黄色)を激しく追い回しました。
居たたまれなくなったW2(黄色)は巣から飛び立ったりすぐ戻ったりを3回も繰り返しました。
アシナガバチのコロニーは人間が美化して思い描くような分業制の平和な社会とは程遠いことがよく分かりました。


【追記】
『働かないアリに意義がある』p21より引用
アシナガバチの女王は働きバチが巣の上で休んでいると、まるで「さっさと仕事しろ!」と言わんばかりに激しく攻撃し、エサを取りに行かせます。しかし働きバチもさるもので、巣を出ていった後、少し離れた葉っぱの裏で何もせずぼんやりと過ごしていたりします。喫茶店でさぼっている営業マンみたいですね。
つづく→シリーズ#17

キアシナガバチの被寄生繭?



2009年7月下旬

6日ぶりのキアシナガバチPolistes rothneyi)巣の定点観察。
これまでにマーキングした女王(水色)、ワーカーW1(桃色)、W2(黄色)を巣で確認した他、W3、W4が羽化していました。
女王(水色)は常に巣盤の下面に居座り、産卵権を譲りません。
劣位のWは天井部で休んでいます。
女王(水色)は巣上を神経質に歩き回り、ワーカーに軽く突っかかって行きます(優位行動)。
W1(桃色)が外役に出ました。




外側の育房に一つある変な色の繭が気になります。
通常の繭は白だが、黄味がかっています(ストロボを焚いて写真に撮ると違いが明瞭に)。
キボシアシナガバチの繭の鮮やかなレモン色とも異なります。
突然変異のキアシナガバチ個体だったら面白いのですが、寄生蛾やヒメバチなどの被寄生蛹だろうか。

つづく→シリーズ#16

キアシナガバチ働き蜂(次女)の捕獲・標識



2009年7月中旬

キアシナガバチPolistes rothneyi)巣の定点観察
前回の観察から8日も経ってしまった。
その間に二番目のワーカーW2が羽化したようです。
個体識別のマーキングを施すために、巣に止まって休んでいるW2の捕獲に挑みます。
少しでも巣に振動を与えると在巣の女王Q(水色)が激しく威嚇してくるので焦ります。
創設初期と違い、巣盤の下面がもはや平面状ではないので、蜂の上から麻酔管を被せようとしても隙間が出来てしまいます。


それでもなんとか無事に捕まえた蜂を炭酸ガスで麻酔し、背中に個体識別のマーキングを施しました(黄色)。


覚醒するのを待って台に乗せ、自分から巣に登るよう促します。
麻酔直後の蜂を巣の天井部に乗せただけでは滑り落ちてしまうのです。
ちなみに既に外役をこなしているワーカーの場合は定位飛行によって巣の位置を記憶しているので、自力で飛んで巣に戻れます。
この間、外役に出ていた長女W1(桃色)が肉団子を咥えて帰巣し、幼虫に給餌を開始。
W2(黄色)を巣に戻す作業中、在巣の二匹はやや警戒するものの、同じ巣の仲間と認識したようで攻撃を加えることはありませんでした。
女王と比べると新ワーカーはは明らかに体格が小さいです。


コロニーが順調に育って嬉しいのですが、この方法での捕獲に限界(危険)を感じました。
計3匹(Q、W1、W2)を個体標識しただけで諦めることにしました。


《追記》
くれぐれも安易に真似しないようお願い致します。
次々に羽化する新ワーカーを一匹ずつ安全に捕獲する方法を模索した結果、蜂蜜を使う方法を後日編み出しました。

つづく→シリーズ#15

キアシナガバチ初ワーカーの羽化



2009年7月上旬

定点観察中のキアシナガバチPolistes rothneyi)の巣でようやく初ワーカーが羽化しました。
最も発育の進んでいた中央の育房が空繭になっています。
羽化直後のワーカーは複眼の色が黒っぽい(成熟すると褐色に)。
留守番をワーカーに任せて女王が外出しました。
ワーカーは羽化後も数日間は巣で休んでから外役に出ます。
巣の防衛力が上がったのは喜ばしいのですけど、常に在巣の蜂が居るので育房のカウントが困難になってしまいました。
個体識別のため、女王が不在の間に早速捕獲して桃色にマーキングを施しました。
女王と異なる色を塗ると化学成分(臭い)の微妙な違いにより、巣に戻したときに女王に攻撃されないかと内心は心配でした。
しかし特に問題ありませんでした。
標識には同じ油性ペン(オパックカラー)の色違いを使用しています。


現女王(水色で標識)は創設女王(銀色)から巣を乗っ取ったので、この初ワーカーとの血縁関係は無い(薄い)と予想されます。
アシナガバチの女王にとって最も危険な単独創設期を乗り越えたので、これで一安心。
前年はワーカーが羽化する前に創設女王が死んでしまいました。

つづく→シリーズ#14


キアシナガバチ乗っ取り女王の個体標識



2009年6月下旬

キアシナガバチ初期巣の定点観察。

育房数は36室に増えました。
最近、キアシナガバチPolistes rothneyi)創設女王(銀色に標識)と入れ替わりで無印の女王が巣に居座るようになりました。
中央の育房で繭の上に創設女王が産み付けた卵が一度無くなってから(無印の女王が食卵?)、再び産み付けられていました。
やはり巣の乗っ取りが行なわれたのだろう。
無印の乗っ取り女王を一時捕獲して個体識別のマーキングを行ないました。
炭酸ガス麻酔下の蜂にオパックカラー(水色)で胸部と腹部の背側に2箇所標識します。


麻酔から醒めた女王を板に乗せて巣に近づけ、自ら巣に戻るよう促します。
麻酔の後遺症か、激しく身繕いを繰り返していました。

つづく→シリーズ#13


アワフキムシの泡巣を舐めるキアシナガバチ女王



2009年6月下旬

キアシナガバチPolistes rothneyi)の創設女王が初期巣の近くにある茂みに止まったので何をしているのかと思ったら、アワフキムシ幼虫が作った泡を舐めているようでした。
甘露みたいなものでしょうか。
実はアワフキムシの泡の主成分は尿(排泄物)なのですけど、我が愛しの女王様にそっちの趣味もあったとは・・・。


≪追記≫
「アワフキムシ幼虫は植物の道管(糖分を含まない)から吸汁するため、排泄液の泡はアブラムシのような甘露にはならない」と蜂類情報交換BBSにて教えて頂きました。
泡には界面活性剤の他、繊維状のタンパク質も含まれることから、アシナガバチが巣材として集めた可能性も考えられるそうです。
あるいは水分補給なのかもしれません。

『日本動物大百科8昆虫Ⅰ』p136によれば、
(アワフキムシ類の)幼虫がつくる泡の素材は排泄液(尿)由来のアンモニアと腹部第7節、第8節にあるバテリ(Batelli)腺から分泌されるロウ脂質由来の脂肪酸とのアンモニア塩の鹸化物で、腹部を伸縮させて空気を送り込み排泄液中の水分とともに泡立て、繊維状タンパク質を混ぜて強度を高めている。
つづく→シリーズ#12


▼関連記事(7年後に撮影)

キアシナガバチ創設女王同士の喧嘩



2009年6月下旬

前年とは異なり、今季のキアシナガバチPolistes rothneyi)創設女王は軒下に一つしか巣を作っていません。
珍しくもう一匹のアシナガバチが軒下に飛来しました。
在巣の女王(無印)が即座に迎撃。
空中戦の様子は激しい動きと逆光でうまく撮れず。
すぐ帰巣した女王は無印のままなので、無事に追い払ったのだろう。
巣を乗っ取られた創設女王(銀色に標識)が奪還しに来て返り討ちに合ったのだろうか。
この問題に決着をつけるにはDNA鑑定で女王と初ワーカーの血縁関係を調べる他無いでしょう。
一時捕獲した蜂から足先を切って生体試料(biopsy)とすれば良さそうですけど…。

つづく→シリーズ#11

キアシナガバチ女王の巣柄補強



2009年6月下旬

この日は強風が吹き荒れ、軒下の巣が揺れていました(残念ながら映像無し)。
巣に乗っていたキアシナガバチPolistes rothneyi)創設女王も異変に気づき、耐震構造に不安を感じたようです。
直ちに巣柄の補強を始めました。
根元の付着点を中心に頻りに舐めて唾液を塗り付けています。
続いて腹部下面を巣柄に繰り返し擦り付け、アリ避け物質を念入りに塗布しています。


一週間ぶりに観察したのだが、創設女王に施した個体識別のマーキング(銀色)がまたもや無くなっていてショック。
考えられる可能性は二つ。

  1. 単純に塗料が剥げ落ちた。プロのアシナガバチ研究者がフィールドで使っているのと同じ銘柄の油性ペンに切り替えたばかりなので考え難いのだが・・・。 
  2. 創設女王(銀色)とは別の個体(無印)による巣の乗っ取り。この日、軒下に飛来した別のアシナガバチ(標識不明)を在巣の女王(無印)が迎撃し追い払うシーンを目撃しています(次のエピソード10参照)。最も発達の進んだ中央部の育房で繭の上に産みつけられていた卵が見当たらない点も気がかり。乗っ取り後に食卵されたのだろうか。乗っ取りが起こると、卵や若齢幼虫は全て食べられてしまうが、蛹や老熟幼虫は残され血縁関係の無い新女王の奴隷として仕えることになります(労働寄生)。



定点観察の空白期間が悔やまれます。
早急に女王を再標識しなければなりません。
予想外の事態でこの日はマーキングの準備をしていませんでした。

つづく→シリーズ#10

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