2009年7月下旬
軒下に営巣したキアシナガバチ(Polistes rothneyi)のコロニーの定点観察。
女王(Q水色)はほぼ常に巣の下面に居ます。
W1(桃色)、W2(黄色)、W3(無印)、W4(無印)の他にもう一匹W5が新たに羽化したようです(W3-5は未標識)。
成虫間で優位行動(攻撃)がしばしば見られました。
アシナガバチの女王は他の♀に産卵されないよう常に力で支配しなければなりません(ミツバチの女王のように洗練された化学的支配〔女王物質〕を行なわない)。
アシナガバチのワーカー間では一般に羽化した順で上位になるらしい。
ワーカー♀も産卵可能で、未受精卵からは♂が生まれます。
女王も油断すると娘に反乱を起こされる可能性があるのです。
この日の映像記録ではW1、W2は全く働いていません。
巣内の権力闘争に明け暮れているのだろうか。
外役に出るのは未標識のワーカー(W3-5)のいずれか。
コロニー全体が穏やかで落ち着いているかと思うと、何かのきっかけで急にコロニー全体が活気付き、カオス状態に陥ることも。
後半、Q(水色)が巣上で執拗にW2(黄色)を激しく追い回しました。
居たたまれなくなったW2(黄色)は巣から飛び立ったりすぐ戻ったりを3回も繰り返しました。
アシナガバチのコロニーは人間が美化して思い描くような分業制の平和な社会とは程遠いことがよく分かりました。
【追記】
『働かないアリに意義がある』p21より引用
アシナガバチの女王は働きバチが巣の上で休んでいると、まるで「さっさと仕事しろ!」と言わんばかりに激しく攻撃し、エサを取りに行かせます。しかし働きバチもさるもので、巣を出ていった後、少し離れた葉っぱの裏で何もせずぼんやりと過ごしていたりします。喫茶店でさぼっている営業マンみたいですね。つづく→シリーズ#17
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