2023/03/25

久しぶりの溜め糞場で少し迷いスクワットマーキングだけして帰るニホンアナグマ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2022年9月下旬・午後21:14・気温16℃ 

里山のスギ林道にある溜め糞場sにニホンアナグマMeles anakuma)が久しぶり(9日ぶり)に登場しました。 

※ しっかり個体識別できていないので、この個体が9日ぶりに来たという訳ではなく、アナグマという種の登場が9日ぶりだったという意味です。

タヌキとアナグマの間で同じ溜め糞場sを共有していたのですが、最近ではタヌキの方が使用頻度が優勢でアナグマは押され気味でした。 

林道を右から歩いてきたアナグマが溜め糞場を素通りしかけたものの、戻って来て匂いを嗅ぎました。 
今回は排便せずに左へ一旦立ち去りました。 
すっかりご無沙汰になった溜め糞場では、自分たちの糞の匂いが薄れて場所が分からなくなってしまうのかな? 
この日の晩は月が出ていないので、月明かりも無い闇夜のはずです。 

すぐにまたアナグマが左から戻ってきました。 
対面にあるスギ大木の根元で立ち止まると、幹の匂いを嗅ぎながらスギの落ち葉にスクワットマーキング(臭腺や肛門腺による匂い付け)しました。。
スギの落ち葉なんかに尻を擦り付けたら、たとえ枯葉でもチクチクして痛そうなのに、アナグマは平気です。
左に立ち去る間際にも下草にスクワットマーキングしています。 

※ トレイルカメラの発する赤外線の光量が強過ぎて白飛びしていたので、動画編集時に明るさを下げてみました。 
顔にあるはずの黒い過眼線が薄い個体のようです。


巣穴から離陸直後に空中でオシッコするモンスズメバチ♀【ハイスピード動画】警報フェロモン?

 



2022年8月上旬・午後14:35頃・晴れ 

前回の撮影から2日しか経っていませんが、頑張って(少し無理して)また定点観察に来ました。 
河川敷の遊歩道と芝生エリアの境界を示す縁石の横にモンスズメバチVespa crabro)の巣穴bがあるのですが、ここもいつ駆除されるか分からないからです。 
今回は三脚を持参してきたので、巣穴に出入りする蜂の活動をじっくり長撮りすることが出来ます。 
大きさの比較対象として、巣口の横に1円玉(直径2cm)を並べて置きました。 
巣口の周囲に生えた草で撮影の邪魔になりそうなものを最小限に取り除きました。 
(除草し過ぎると、モンスズメバチの巣穴が誰かに見つかってしまうリスクが高まるので、塩梅が難しいところです。)

240-fpsのハイスピード動画で繰り返し撮っていたら、非常に興味深いシーンが記録されていました。 
巣穴から2匹のワーカー♀が連続で外に這い出て来ました。 
1匹目はすぐに羽ばたいて離陸し、外役に出かけました。 
ところが2匹目の個体は、羽ばたきながら巣口を歩き回るだけで、なかなか飛び立ちません。 
結局、巣内に戻ってしまいました。 
巣口を守る門衛なのかな? 

やがて1匹のワーカー♀が空荷で帰巣しました。 
個体標識していないので、さっき出巣したばかりの個体かどうか不明です。 

しばらくすると、また2匹連続で巣穴の外に出て来ました。 
面白いのはここからです。 
先に飛び立った個体が巣口の上空を通り過ぎる際に、液体を撒き散らしたのです。(@2:20〜)
この日の天気はよく晴れていたので、雨粒が急に降ってきた訳ではありません。 
炎天下の撮影は過酷で、日傘が欲しいぐらいでした。 
鳥がよくやるように、離陸直後のモンスズメバチ♀が飛びながら空中で排尿し、体重を少しでも軽くしたのでしょうか?
樹液を吸汁しながらオシッコするスズメバチ類は何度も動画撮影していますが、飛びながらの排泄シーンを撮れたのは初めてかもしれません。

オシッコとか排尿などと書きましたが、排便と呼ぶのが正しいのかもしれません。 
スズメバチは成虫になると固形物を食べられず液体の餌しか摂取できません。 
したがって、便も液状になるのでしょう。 
巣内で排泄すると不潔になるので、成虫は必ず外で排泄するのかもしれません。
あるいは、巣口を跨ぐように立てた黒い三脚とカメラの存在に気づいた蜂が警戒し、警報フェロモンが含まれる毒液を放出したのかもしれません。 
巣穴から飛び立ったワーカー♀は、上昇しながら周囲をキョロキョロと見回していました。
警戒フェロモンなら、巣を守るために仲間が緊急召集されるはずです。
飛翔個体にピントが合ってないのが残念でしたが、こんなシーンは狙って撮れるものではありません。 
続けて2匹目の個体も巣口から飛び立ちました。 

小野正人『スズメバチの科学』によると、
 スズメバチのコロニーが哺乳類などの大型の外敵に攻撃されたときに示される統制のとれた激しい防衛行動は、敵の襲来を仲間に知らせる化学的コミュニケーションが発達しているためである。(中略)モンスズメバチの「警報フェロモン」の主成分として2-メチル-3-ブテン-2-オールを同定した。激しい刺針行動を誘起させるこの物質は毒腺で生産されて毒嚢に貯蔵されている。放出と同時に仲間に伝わり、放出が止まればすぐに平静状態に戻れるという点で、揮発性の高い物質が警報物質としての機能をもつというのは適応的といえよう。(p110より引用)

日本のモンスズメバチは欧州産(European hornet)と同種なので、研究が進んでいる海外の研究成果をそのまま適用できて好都合です。
Veith, H. J., N. Koeniger, and U. Maschwitz. "2-Methyl-3-butene-2-ol, a major component of the alarm pheromone of the hornet Vespa crabro." Naturwissenschaften 71.6 (1984): 328-329.
今回、私はモンスズメバチの巣穴を掘り返したり殺虫剤を噴霧したりするなどの直接的な脅威を与えていません。
巣口周囲の草をプチプチと少しむしったり、黒い三脚を巣穴の真上にそっと立てただけです。※
それだけでもモンスズメバチを怒らせてしまったのでしょうか?
※ もしオオスズメバチの巣穴なら、防護服無しではこんなに近づけませんし、下線のような自殺行為は絶対にしてはいけません。

(予め言っておくと、この日も私は蜂に刺されていません。)








2023/03/24

夜に雑木林の斜面をうろつくホンドタヌキ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2022年9月下旬・午後19:38 

里山の雑木林で泥汚れのついたカラマツを見張っているトレイルカメラに夜行性のホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が写りました。 
地面(林床)の匂いを嗅ぎながら斜面をうろつき、食べる物を探しているようです。 
シシガシラに覆われた斜面を登って行きました。 
この斜面を直登する獣道は、人工の林道をショートカットしているようです。(近道)
溜め糞場以外のフィールドでタヌキの行動を観察するのは新鮮です。 
フサフサした尾を垂らして歩いていました。 


下痢の獣糞(タヌキ?ツキノワグマ?)に集まるキバネクロバエ?とツヤホソバエSepsis?【名前を教えて】

 

2022年9月下旬・午後13:55頃・晴れ 

里山の急斜面を直登する細い山道が廃れて、藪に覆われた獣道になっています。 
その廃道に新旧の下痢便が点々と2箇所にまとめて残されていました。(溜め糞場w) 

今回は糞塊の一つ(新鮮な方)に注目します。 
焦げ茶色をした軟便の糞塊で、未消化の植物種子が混じっています。 
形状が崩れている下痢便では私には何者の糞か見分けられないのですが、タヌキの溜め糞ではなく、よく下痢をするアナグマの仕業かもしれません。 
もし1回分の獣糞だとすると、量がかなり多いので、ツキノワグマUrsus thibetanus)の糞のような気もします。 
現場で糞をほぐしてみて、内容物をしっかり調べてみれば何かヒントが得られていたかもしれませんね。(糞内容物調査) 
トレイルカメラを設置して排便シーンの証拠映像を撮りたくなります。 
しかし、後日ちょくちょく見に通っても安定した溜め糞場ではないようなので、トレイルカメラの設置は後回しになったまま実現できていません。 

金属光沢に輝く(メタリックな構造色)微小のハエが4匹も集まっていました。 
続々と飛来して獣糞の表面を歩き回っています。 
今回はマクロレンズで接写しませんでしたが、ツヤホソバエ科Sepsis属の一種(Sepsis sp.)ですかね?
関連記事(別地点の溜め糞場で撮影)▶ タヌキの溜め糞に集まり産卵するツヤホソバエ科の一種【名前を教えて】
なんとなく、♂が翅を広げて同種♀に求愛誇示しているようです。 

Sepsisよりも今回は、単独で来ていた大きなハエに注目しました。 
糞塊の表面を歩き回り、口吻を伸ばして舐めています。(吸汁) 
胸背は地味な黒色ですが、複眼は赤色です。 
翅の根元がオレンジ色で、脚も中脚と後脚のみオレンジ色でした。 
平均棍を覆う鱗弁もオレンジ色でした。 
あちこちの溜め糞場でよく見かける(常連客)種類のハエなのですが、名前をしっかり調べたことがありませんでした。 
ネット上で調べ物をしていると、キバネクロバエ(イエバエ科)というハエの存在を知りました。 
クマの糞から発生するのだそうです。 
素人目には似ているような気がしたのですが、細部を見比べると、違うかもしれません。 
ネット上の写真でキバネクロバエの体表がもっと黒光りしているのはストロボの影響?


【追記】
安田守『集めて楽しむ昆虫コレクション』という本(写真集)のフン虫を特集した見開きページ(p50〜51)にそっくりのハエの写真を見つけました。
ハナゲバエの仲間
ハエ目イエバエ科/イエバエ科のハエはおもに食植性で、動物のフンや腐敗した植物質に集まるものが多い。(p50キャプションより引用)
ハナゲバエなんていう名前は初耳です。
写真のキャプションを読んでもイエバエ科の解説に終始していて、ハナゲバエ属の生態についてあまりよく分かってないようです。
そもそも私は恥ずかしながらイエバエ科の識別点すら知りません…。
少し深堀りしてみると、ハナゲバエ属とはDichaetomyia属のことらしいです。


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2023/03/23

林道脇から突き出たスギ落枝に眼下腺マーキングし合うニホンカモシカたち【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2022年9月下旬 

里山のスギ植林地を通る林道をトレイルカメラで見張っていると、縄張りを日夜パトロールするニホンカモシカCapricornis crispus)が頻繁に写ります。 
この時期は毎日欠かさず往来していました。 
夜行性であるだけではなく、明るい昼間でも活動しています。 
個体識別も性別判定もできていないので、計何頭のカモシカが写っているのか、私には分かりません。 

最近(9/20)、対面に見える杉の大木から横枝が折れて落ち、画面奥の斜面の途中で引っかかったままになっています。 
落枝と呼ぶにはかなり太くて長いのですが、杭の先端のように鋭い折口が林道の脇から突き出していることになります。 
このスギ落枝に眼下腺マーキングするのがカモシカたちの間で流行り始めました。


シーン1:9/21・午後21:37・気温13℃ 
林道を右から歩いてきたカモシカが、斜めに突き刺さった落枝に気づくと立ち止まりました。 
匂いを嗅いでから、顔をゴシゴシと擦り付けました。 
眼下腺で匂い付けのマーキングをした直後は、いつものように舌をペロペロと出し入れしています。 
この行動はカモシカのフレーメン反応なのでしょうか?
そのまま左に立ち去りました。 


シーン2:9/22・午後16:45・気温17℃ (@0:25〜) 
翌日の夕方に林道脇の法面(斜面)を降りてきたようです。 
林道を渡ってスギの太い落枝にまっしぐらに向かうと、匂いを嗅いでから眼下腺マーキングしました。 

薄暗い林道を右へ立ち去ろうと向きを変えた際に、右の肩に黒いスポットのような目立つ模様があることに気づきました。 
生まれつきの母斑だとしたら、個体識別に使えるかもしれません。 
実は、同じ山系の別の地点(尾根を越えて反対側の斜面)に設置したトレイルカメラでも右背に黒点のあるカモシカが同時期に撮れています。(映像公開予定) 


シーン3:9/23・午前4:32・気温16℃ (@0:54〜) 
夜明け前の真っ暗な林道を右から歩いて登場しました。 
ちなみに、この日の日の出時刻は午前5:24。 
この個体もスギ落枝に眼下腺マーキングして行きました。 
右肩に黒いスポットの有無を確かめたいのですが、体の左側しか見せてくれません。 
林道の逆側にも監視カメラを設置する必要がありそうです。 


シーン4:9/23・午後16:46・気温20℃ (@1:22〜) 
夕方で薄暗いだけでなく、雨上がりの霧が発生しているようです。 
ちなみに、日の入り時刻は午後17:38。 
林道を左から登場したカモシカが、いつものスギ落枝に顔をゴシゴシ擦り付けてから、右に立ち去りました。 
この個体には右肩に黒いスポットがありませんでした。 
これで少なくとも2頭のニホンカモシカが互いに対抗するようにスギ落枝に眼下腺マーキングして、縄張りを主張していたことになります。 
カモシカは基本的に単独で暮らしているのですが、縄張りが重なり合う場合は、匂い付けでコミュニケーションを取り合っているのでしょう。


シーン5:9/24・午後19:16・気温17℃ (@1:46〜) 
林道を右から左にパトロールする個体が通りすがりに、スギ落枝の匂いを嗅いでいました。 
眼下腺を軽く擦り付けたかもしれません。 
雨が降っていて、カモシカの毛皮が少し濡れています。 
残念ながら体の左半身しか見えず、右肩に黒いスポットの有無を確認できませんでした。 


シーン6:9/24・午後20:14・気温16℃ (@2:01〜) 
1時間後にカモシカがまた林道を右からやって来ました。 
どうも別個体のようです。 
前回の個体は体つきが少し華奢なので若いカモシカではないかという気がします。 
今回の個体は体格がしっかりしています。(成獣?) 

スギ落枝の先端の匂いを嗅いだだけで、眼下腺マーキングせずに左へ立ち去りました。 
霧雨がまだ降っています。 


シーン7:9/25・午前9:01・気温16℃ (@2:16〜) 
翌朝の晴れた林道を右から歩いて来たカモシカが、カメラ目線で立ち止まっていました。 
警戒を解くと、スギ落枝の匂いを嗅いだだけで左へ立ち去りました。 
右から左へ通過する場合は、右肩に黒いスポットがあるかどうか見えません。 


このスギ落枝は斜面に引っかかっているだけで突き刺さっている訳ではない(固定されていない)ので、カモシカが顔を擦り付けるたびにグラグラと動いて不安定です。 
それでも、この林道を行き交うカモシカ達にとってお気に入りの眼下腺マーキング・ポイントになったようです。 
一頭がやり始めると、別個体はそれに対抗して匂い付けするようになります。 
眼下腺マーキングに適したスギ落枝という新しい対象物が林道上に急に出現すると、それまで時折マーキングしていたコシアブラ幼木(スギ大木の右隣)には全く匂い付けしなくなりました。 



モクゲンジの花蜜を吸うルリシジミ♂

 

2022年7月中旬・午後15:55頃・くもり 

民家の庭に咲いたモクゲンジに見慣れないシジミチョウが訪花していました。 
翅をしっかり閉じたまま吸蜜しています。 
残念ながら、動画を撮り始めたらすぐに飛び去り、見失ってしまいました。 
飛び立つ瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 (@0:14〜)
羽ばたきが速過ぎて、ハイスピード動画で撮らないと翅表が全く見えませんね。 

翅裏に散りばめられた黒点以外に思わせぶりなシミ(黒い滲み)のような斑紋があるせいで、私の知らないゼフィルスなのか?(それとも新種のシジミチョウか?)と一人で色めき立ちました。 
落ち着いて調べてみると、おそらくルリシジミ♂(Celastrina argiolus)のようです。
翅裏が何かと擦れて鱗粉が剥がれ落ちたのでしょう。
もし反対側の翅にも左右対称の黒班があれば、新種(あるいは個体変異)説の信憑性が少し上がるかもしれませんが、確認する前に逃げられてしまいました。
誰かに一時捕獲されて翅を指でつままれたら、左右対称でこんな斑紋が残りそうです。

2023/03/22

泥カラマツの木の下でアカネズミがオニグルミ堅果を食べた痕跡

 

2022年9月下旬・午後12:50頃・晴れ 

関連記事(4ヶ月前の撮影)▶ オニグルミ堅果に残るアカネズミの食痕@河畔林 

根元の幹に泥汚れのついたカラマツの木の下を調べていると、林床に古いオニグルミ堅果が転がっていました。 
両側に丸くくり抜かれた穴が開いていることから、アカネズミApodemus speciosus)の食痕と分かります。 
かなり古い食べ残しのようです。 
この雑木林にアカネズミが生息することの証明になります。 


不思議なのは、近くにオニグルミの木は生えてないという点です。 
現場は里山の斜面なので、オニグルミの落果が山側から転がってきたと考えれば、斜面の山側を重点的に探すべきかもしれません。 
昔は生えていたのにオニグルミの木が最近になって伐採されてしまったのでしょうか? 
それとも野ネズミが遠くからクルミの落果を運んできたのかな? 

さて、この泥カラマツをトレイルカメラで見張っているのは、イノシシが泥浴び(ヌタ打ち)した直後に泥だらけの体をカラマツに擦り付けるのではないか?と予想したからです。 
しかし、当地ではイノシシの生息密度が未だ低いようで、待てど暮せどなかなか現れてくれません。 
諦めて、この地点に設置したトレイルカメラを撤去すべきか悩みます。 
もう少し粘ってみるついでに、泥カラマツの根元にクルミやドングリの堅果を置いて給餌して、野生動物が持ち去る様子を撮影する計画を立てました。 
もしイノシシが来てドングリを食べてくれたら結果オーライですし、あるいはカケス(野鳥)がドングリを持ち去って貯食するかもしれません。 
アカネズミのオニグルミ食痕があったということは、ここにクルミの堅果を給餌しても不自然ではありません。 
周囲にミズナラやコナラの木が生えていることは確認できたので、ドングリの堅果をここに給餌しても不自然ではありません。 
この点を確認しておかないと、山林に勝手に外来植物を植えるのと同じになってしまいます。
リスや野ネズミが持ち去って冬越しのために貯食し、春までに食べ残した一部の堅果からは実生が育つはずです。 
つまりオニグルミを大量に給餌すれば、この森にいずれオニグルミの木が育つことでしょう。(種子散布の手助け) 


カラマツの下の林床を夜な夜な歩き回るザトウムシ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2022年9月下旬 

里山の雑木林の斜面で泥汚れのついたカラマツを監視カメラで見張っていると、ときどきザトウムシの一種が写ります。 
ザトウムシは変温動物ですから、本来はトレイルカメラが反応しないはずです。 
おそらく、野ネズミなどの恒温動物が横切ったついでに記録されたのでしょう。 
フィールドのあちこちにトレイルカメラを設置してみて気づくのは、ザトウムシはどこにでも出没するということです。 


シーン0:9/19・午後14:18 
明るい昼間に撮った現場の状況です。(参考映像) 
強く湾曲した根元の幹に泥汚れが付いています。(イノシシの仕業?) 


シーン1:9/22・午後21:26・小雨?  (@0:04〜)
画面の赤丸に注目してください。 
カラマツの木を回り込むように、雑木林の斜面をザトウムシが降りてきました。 
極細の長い歩脚でヒョコヒョコと歩行します。 


シーン2:9/24・午後19:36・晴れ (@0:35〜) 
2日後の晩には、逆に画面下から斜面を登りかけたものの、カラマツの根元まで来るとなぜか再び下りました。 

※ 動画編集時に自動色調補正を施して明るく加工しています。 


日本は出版される図鑑の種類が非常に豊富でありがたいのですが、なぜか「ザトウムシの図鑑」がいつまで経っても出ないのが困ります。 
ザトウムシは種分化の問題がややこしいので、初めから専門家が満足するような「完璧な図鑑」を出すのは難しそうです。 
それでも誰か元気な(無謀な)アマチュアが思い切ってエイヤッと「暫定的な図鑑」にまとめてくれれば良いのに…といつも思います。
市場調査で「ザトウムシの図鑑」は需要が無いと予想されてるのかな?(出版社のシビアな経営判断)
写真集の被写体としてもザトウムシは非常に魅力的だと思います。



2023/03/21

砂防堰堤に生えたススキを採食する若いニホンザル♂

 

2022年9月中旬・午前11:10頃・くもり 

里山の谷にある砂防堰堤に集まってくつろぐ野生ニホンザルMacaca fuscata fuscata)の群れを撮影した映像に、興味深い採食シーンが撮れていました。 
相互毛繕いをする仲間から独り離れた左の若い♂個体に注目してください。 

コンクリートの巨大な堰堤の隙間にわずかな土埃が溜まり、そこにススキが自生しています。 
若いニホンザル♂はススキ群落の横で座り込むと、穂のついたススキの茎を手で手繰り寄せて、茎の中央に噛み付きました。 
ススキの葉を食べる猿は珍しくありませんが、もしススキの穂を食べたのなら初見です。 
せっかく面白くなりそうなのに、撮影中の私は全く気づかず、他の個体に目移りしてしまいました。 
数分後にも画面の左奥では同一個体がススキの採食を続けています。
関連記事(0、6、7年前の撮影)▶  
ススキの葉を採食するニホンザル♀ 
ススキの葉を食す野生ニホンザル 
ススキ?の葉先を採食するニホンザル♀(道草を食う猿)
「ニホンザル採食植物リスト」PDFを参照すると、ススキは採食メニューにちゃんと含まれていました。
三戸幸久. ニホンザル採食植物リスト. Asian paleoprimatology, 2002, 2: 89-113.

カクトラノオの花畑で激しく喧嘩するキイロスズメバチ♀【占有行動?】

 

2022年9月下旬・午後15:40頃・くもり 

川沿いの庭先の花壇に咲いたハナトラノオ(別名カクトラノオ)の群落でキイロスズメバチVespa simillima xanthoptera)のワーカー♀が何匹も忙しなく飛び回っていました。 
獲物を探索しているのでしょう。
探餌飛翔で空腹になった個体はカクトラノオの花序に着陸すると、唇形花に正当訪花を繰り返して花蜜を吸っています。 
吸蜜後に唇形花の狭い花筒から出てくると、胸背が白い花粉まみれになっています。 
次の花に潜り込んだら、その花粉が雌しべに付き、キイロスズメバチはカクトラノオの授粉を手助けしていることになります。 (送粉者)

関連記事(11日前の撮影)▶ カクトラノオの花蜜を吸うキイロスズメバチ♀ 

しばらく観察していると、キイロスズメバチ♀は互いに攻撃し合っていることが分かりました。 
訪花後の個体が次の花序へ飛び去ろうとすると、近くを飛んでいた別個体が急いで追撃し、軽い空中戦になります。 
花畑で動く虫なら何でも獲物と誤認して(たとえ同種でも)反射的に飛びついてしまうのでしょうか? 

また別のワーカー♀aの吸蜜シーンを撮影していると、背後から飛来した別個体♀bが急に襲いかかりました。 
そのまま先客♀の背中にマウントしたので、♂が♀に交尾を挑んでいるのかと思いきや、雄蜂♂ではありませんでした。 
獲物と誤認して飛びかかったのなら、すぐに誤りに気づいて相手を離すはずです。
しかし♀bは大顎で♀aの体や脚に何度も執拗に噛みつこうとしています。 
しかしキイロスズメバチの体表のクチクラは固くて、歯が立ちません。 
ちなみに、スズメバチは狩りや喧嘩の際に毒針は使いません。 
不意打ちを食らった♀aは花に伏せているだけで、全く反撃しないのが不思議でした。 
アシナガバチの巣内で行われる優劣行動を彷彿とさせます。 
最後は2匹もろとも、花から地面にボトッと落ちました。 
1匹はすぐに立ち直って、また花壇を飛び回ります。 

キイロスズメバチ♀の探餌飛翔と同種間抗争を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@1:31〜)
 おそらく、別々のコロニーから来たキイロスズメバチ♀同士が蜜源・狩場を独り占めしようとハナトラノオの花畑を巡って戦っているのでしょう。(占有行動) 
秋はスズメバチの個体数が増えるのに餌が少なくなりますから、飢えて殺気立っています。
私はこの日たまたま黒色のポロシャツを着用していたので、キイロスズメバチの気を逆撫でするのではないかと心配だったのですが、撮影中に私を攻撃(八つ当たり)してくることはありませんでした。

2023/03/20

スギ林道の溜め糞場にホンドタヌキのペアが初めて一緒に現れ排便【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2022年9月下旬・午後1:46・気温17℃ 

トレイルカメラで監視している里山スギ林道の溜め糞場sに、初めてホンドタヌキNyctereutes viverrinus)がペアで登場しました。 
いつもは一頭ずつ別々に登場するので、珍しい出来事です。 
♀♂ペアだとしたら、子育てがようやく一段落したのでしょうか?

まず林道を右から歩いて来たのは「垂れ尾」です。 
後続の個体は「フサ尾」でした。 
フサ尾はスギ大木の根本の匂いを嗅いだ後に、排尿マーキングしたような気がするのですけど、どうでしょうか? 
片足(右後脚)を持ち上げてオシッコしたように見えたのですが、アングルがいまいちで定かではありません。 
たまにヒトが立ち小便する木なので、タヌキも対抗して小便で縄張りをマーキングするのでは?という推測(願望)です。 

その直後にフサ尾は地面に積もったスギの落葉に鼻を突っ込んで匂いを嗅ぎました。 
何か虫を見つけたのでしょうか? 
その辺りはアナグマが糞を撒き散らす場所なので、その匂いに反応しているのかもしれません。 

その間、垂れ尾は画面の手前をウロウロしています。 
フサ尾と出会うと暗闇で鼻を突き合わせて挨拶しました。 
(鳴き声は聞き取れませんでした。) 
垂れ尾がようやく自分たちの溜め糞場に跨ると、左を向いて(北向き)軟便を排泄しました。 
フサ尾は便意を催さなかったようで、垂れ尾を追い越して先に左へ立ち去りました。 
用を足した垂れ尾もパートナーの後を追います。 

私が予想した通り、垂れ尾とフサ尾は♀♂つがいと判明しました。
関連記事(2ヶ月前の撮影)▶  
スギ林道の溜め糞場で夜な夜な排便するホンドタヌキのペアは尻尾で見分けられる?【トレイルカメラ:暗視映像】 
スギ林道の溜め糞場で夜な夜な排便するホンドタヌキのペアは尻尾で見分けられる?#2【トレイルカメラ:暗視映像】
タヌキに詳しい人なら体格で性別が分かるのでしょうか? 
私には見分けられませんが、垂れ尾の方が下半身が肥えている気がします。(なんとなく♀?) 


フサ尾が小便を木にひっかけたかどうかに私が拘ったのは、タヌキの排尿姿勢で性別が分かるからです。




【追記】 
2頭のタヌキが行動を共にしているからと言って、♀♂ペアとは限らないかもしれません。 
若い兄弟姉妹の可能性は? 



ハルジオンの花蜜を吸うサカハチチョウ春型

 

2022年6月中旬・午後14:00頃・くもり 

車が通れるように砂利が敷かれた山道の横にハルジオンが疎らに咲いています。
そこに春型のサカハチチョウAraschnia burejana)が訪花していました。 
半開きの翅を緩やかに開閉しながら吸蜜していました。 
意外にもこの組み合わせは初見です。 
花から飛び立つまで待ちきれなくて、撮影を打ち切りました。 

隣のハルジオン頭花ではホソヒラタアブの仲間も訪花していました。 
ホバリングしたり、2匹が軽い空中戦を繰り広げたり(もしや求愛と交尾拒否?)と何やら面白そうな行動なのに、サカハチチョウに集中していた私は撮影中ホソヒラタアブには気づきませんでした。 

このときハルジオンの隣にはヒメジョオンも咲いていました。 
その後も現場を通りかかるたびに見ていたところ、季節が進むとハルジオンからヒメジョオンへと群落が交代していたのが興味深く思いました。

2023/03/19

ノスリがハシブトガラスのモビングで杉防風林から追い立てられ携帯電話基地局の鉄塔へ逃げ込むまで(野鳥)

 

2022年9月下旬・午後16:00頃・晴れ 

黄金色の稲穂が実る田んぼの端で1羽の猛禽がスギの防風林に飛び込んで枝に止まりました。 
遅れて飛来したハシブトガラスCorvus macrorhynchos)が猛禽に対して軽くモビング(擬攻撃)を加えました。 
それに対して猛禽が威嚇・牽制するために大きく広げた翼の下面の斑紋からノスリButeo japonicus)と判明しました。 
ハシブトガラスは同じスギ防風林でノスリよりも上の横枝に止まりました。 (戦いに有利なポジション)
ノスリは隣の横枝にピョンと跳んで移動しました。 
そのままカラスの真下に居ると、糞をかけられたり嫌がらせを受けるのでしょうか? 
この後はしばらくカラスはノスリに対して何もちょっかいをかけませんでした。 
それでも地味に神経戦が続いているようです。 

スギ樹上で西日を浴びながらノスリは眼下の田園地帯を見渡しています。 
 やがてノスリが足元の横枝に絡みついた蔓植物(イワガラミ?)の葉を嘴で啄みました。(@0:49〜) 
戯れに何か虫を捕食したのかな? 
次にノスリは右足を上げて顔を掻き、身震いしました。(@1:02〜) 
その後、嘴が半開きのままなのは、西日を浴びて暑いのでしょう。(@1:20〜) 
ノスリに動きがないので私がカメラをズームアウトすると、ハシブトガラスはいつの間にか居なくなっていました。 

ノスリを正面から狙えるように、私は農道を移動して防風林に少し近づきました。 
再びカメラを向けても、ノスリはなかなか逃げ出そうとしません。 
遂にノスリが防風林から飛び立ちました。(@2:25〜) 
右へ急旋回すると、羽ばたきと滑空を交互に繰り返しながら右へ飛び去りました。 
ノスリの背後から、カラスが追いかけてきます。 
このカラスがそれまでどこに居たのか不明ですし、先程のハシブトガラスと同一個体かどうかも定かではありません。 
カラスが背後から急襲するも、ノスリはひらりと身をかわしました。 
カラスがノスリを追い越してしまっても、ノスリが逆襲することはありませんでした。 
軽い空中戦の間も、鳴き声は聞き取れませんでした。 
カラスのモビング(擬攻撃)はそこまでで、それ以上しつこくノスリを深追いすることはありませんでした。 
カラスの縄張りから追い払われたノスリは、遠くに立つ携帯電話基地局まで逃げてくると、鉄塔の中段にようやく着地しました。 
この鉄塔もノスリがよく止まる、お気に入りの場所のひとつです。 
カラスの繁殖期はとっくに終わっているはずなのに、天敵のノスリに対して容赦なく嫌がらせ(モビング)して追い払っていました。

ノスリが防風林から飛び立ち、追いすがるカラスとの空中戦をかわしながら電波塔に辿り着くまでのドラマチックな飛翔シーンを、1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@3:21〜)
ノスリの右上の枝にハシブトガラスが止まった。

山道の溜め糞場を横切るオオキノコムシ

 

2022年9月下旬・午後15:10頃・くもり 

里山の山腹をトラバースする細い林道(作業道?)に残されたタヌキの溜め糞場dを久しぶりに見に来ました。 
この山道は斜面の谷側にあるスギ植林地と山側にある雑木林との境界線になっていて、林床には広葉樹の枯れた落葉や落枝が散乱しています。 

黒光りする大型の甲虫が1匹、林道を歩いて横切りました。 
右の触角が途中から欠損した個体です。
溜め糞の糞便臭に誘引されて来たのかと思いきや、糞虫とは違って獣糞そのものには興味がないようです。 
林道上に転がっている落枝を挟んでタヌキが新旧2つの糞塊を残していて、オオキノコムシはその間を通り抜けました。 

甲虫に疎い私はキノコムシの一種だろうとしか現場では分からなかったので、逃げられないうちに採集しました。 
見たこともない巨大さに感動しました。(体長Xmm)
帰宅してから図鑑で調べてみると、オオキノコムシEncaustes cruenta praenobilis)と判明。
オオキノコムシのなかまでは飛び抜けて大きい。触ると甘い香りを出す。16〜36mm。北海道〜九州。5〜9月。サルノコシカケに集まる。( 『くらべてわかる甲虫1062種』p77より引用)
捕獲した際に甘い匂いを放ったかどうか、私は気づきませんでした。
現場の周囲を見渡すと、林道上に放置された倒木の多くが秋の雨で水気を含んで朽ちていて、キノコも発生していました。 
しかし、サルノコシカケは見当たりませんでした。 

もし私が採集しなければ、オオキノコムシはそのまま斜面の谷側に向かっていて、雑木林のエリアから杉林のエリアへと移動したことになります。 
好物のサルノコシカケを探しているのなら明らかに逆方向に行くべきだと素人考えでは思うのですが、ある程度はランダムウォークするのですかね? 
キノコ狩りをしない私はキノコに関して全く疎いのですが、調べてみると「サルノコシカケ」という和名のキノコは存在しなくて、サルノコシカケ科を含めていくつかの科を含む総称名なのだそうです。
しかもサルノコシカケが生える木は針葉樹と広葉樹の両方あると知って驚きました。
なんじゃそりゃ!(唖然)
スギの木に生えるサルノコシカケなんて見たこと無いのですけど、私が知らないだけで、あるのですかね?
DNA解析が登場する前の古い時代のキノコ分類学の名残らしく、混乱を招く総称(俗称?)は今後廃れていきそうです。
キノコムシ類の生態も面白そうですし、まずはキノコについてこれから少しずつ勉強していかないといけません。
「通い慣れた裏山にも未踏のフロンティア(自然観察のネタ)は幾らでも広がっているなぁ」と嬉しいやら気が遠くなるやら…。


採集したオオキノコムシの標本写真を後で載せます。
体長を測ること。


【追記1】 
この溜め糞場dの存在は数年前から気づいていたのですが、小規模のまま消失することもあり、季節消長が不安定でした。 
後日トレイルカメラを設置して、確かにホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が夜に来て排便したことを確認しました。(映像公開予定) 


【追記2】
YouTubeのコメント欄にて、kiokuima氏より「オオキノコムシは溜め糞場に生えた菌類を食べに来たのでは」との示唆をいただきました。
しかし、あちこちの溜め糞場を通年観察しても、キノコムシ類を見かけたのはこのときだけでした。
(獣糞の中に潜り込んでいるのだとしたら、見落としていそうです)
私は糞生菌やアンモニア菌にも興味があるので、溜め糞場に生えるキノコを今後も探し続けます。


【追記2
サルノコシカケの仲間の写真を探したのですが、キノコ類の写真をあまり撮っておらず、古い写真しかありませんでした。
2018年7月中旬、同じ山域の林道脇で立ち枯れしかけたクリの幹に生えているのを見つけました。
上面よりも下面に多くの黒い甲虫(おそらくキノコムシの仲間)が群がっています。






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