2022年9月下旬・午後15:10頃・くもり
里山の山腹をトラバースする細い林道(作業道?)に残されたタヌキの溜め糞場dを久しぶりに見に来ました。
この山道は斜面の谷側にあるスギ植林地と山側にある雑木林との境界線になっていて、林床には広葉樹の枯れた落葉や落枝が散乱しています。
黒光りする大型の甲虫が1匹、林道を歩いて横切りました。
右の触角が途中から欠損した個体です。
溜め糞の糞便臭に誘引されて来たのかと思いきや、糞虫とは違って獣糞そのものには興味がないようです。
林道上に転がっている落枝を挟んでタヌキが新旧2つの糞塊を残していて、オオキノコムシはその間を通り抜けました。
甲虫に疎い私はキノコムシの一種だろうとしか現場では分からなかったので、逃げられないうちに採集しました。
見たこともない巨大さに感動しました。(体長Xmm)
帰宅してから図鑑で調べてみると、オオキノコムシ(Encaustes cruenta praenobilis)と判明。
オオキノコムシのなかまでは飛び抜けて大きい。触ると甘い香りを出す。16〜36mm。北海道〜九州。5〜9月。サルノコシカケに集まる。( 『くらべてわかる甲虫1062種』p77より引用)捕獲した際に甘い匂いを放ったかどうか、私は気づきませんでした。
現場の周囲を見渡すと、林道上に放置された倒木の多くが秋の雨で水気を含んで朽ちていて、キノコも発生していました。
しかし、サルノコシカケは見当たりませんでした。
もし私が採集しなければ、オオキノコムシはそのまま斜面の谷側に向かっていて、雑木林のエリアから杉林のエリアへと移動したことになります。
好物のサルノコシカケを探しているのなら明らかに逆方向に行くべきだと素人考えでは思うのですが、ある程度はランダムウォークするのですかね?
キノコ狩りをしない私はキノコに関して全く疎いのですが、調べてみると「サルノコシカケ」という和名のキノコは存在しなくて、サルノコシカケ科を含めていくつかの科を含む総称名なのだそうです。
しかもサルノコシカケが生える木は針葉樹と広葉樹の両方あると知って驚きました。
なんじゃそりゃ!(唖然)
スギの木に生えるサルノコシカケなんて見たこと無いのですけど、私が知らないだけで、あるのですかね?
DNA解析が登場する前の古い時代のキノコ分類学の名残らしく、混乱を招く総称(俗称?)は今後廃れていきそうです。
キノコムシ類の生態も面白そうですし、まずはキノコについてこれから少しずつ勉強していかないといけません。
「通い慣れた裏山にも未踏のフロンティア(自然観察のネタ)は幾らでも広がっているなぁ」と嬉しいやら気が遠くなるやら…。
採集したオオキノコムシの標本写真を後で載せます。
体長を測ること。
【追記1】
この溜め糞場dの存在は数年前から気づいていたのですが、小規模のまま消失することもあり、季節消長が不安定でした。
後日トレイルカメラを設置して、確かにホンドタヌキ(Nyctereutes viverrinus)が夜に来て排便したことを確認しました。(映像公開予定)
【追記2】
YouTubeのコメント欄にて、kiokuima氏より「オオキノコムシは溜め糞場に生えた菌類を食べに来たのでは」との示唆をいただきました。
しかし、あちこちの溜め糞場を通年観察しても、キノコムシ類を見かけたのはこのときだけでした。
(獣糞の中に潜り込んでいるのだとしたら、見落としていそうです)
私は糞生菌やアンモニア菌にも興味があるので、溜め糞場に生えるキノコを今後も探し続けます。
【追記2】
サルノコシカケの仲間の写真を探したのですが、キノコ類の写真をあまり撮っておらず、古い写真しかありませんでした。
2018年7月中旬、同じ山域の林道脇で立ち枯れしかけたクリの幹に生えているのを見つけました。
上面よりも下面に多くの黒い甲虫(おそらくキノコムシの仲間)が群がっています。
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