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2025/10/18

ビワの種子を採る

2024年6月中旬 

ビワ(枇杷)の果実が旬なので、食後のデザートで熟果を食べました。 
薄甘い果肉を食べながら、種子を吐き出します。 
1個の果実に複数の種子(平均21/4=5.25個)が含まれていました。
集めた種子を水洗いしながら、こびりついた果肉を古い歯ブラシで擦ってみたら、種子の皮が少し剥がれてしまいました。 
よく乾燥させた種子を方眼紙上で写真に撮りました。 

種子散布や糞分析の資料として保存します。
例えば、タヌキの溜め糞にビワの種子が未消化のまま含まれているかもしれません。


以下の写真は水増しではなくて、同じ物を逆側からも撮影したものです。
ストロボ光の当たる角度で見え方が少し変わるので。

フィールドベスト図鑑『日本の有毒植物』によると、ビワの種子には青酸配糖体のアミグダリンが含まれているので要注意とのことでした。
知らなかったのですが、ビワはバラ科に属する帰化植物です。

私が食べるビワの果実は庭木から採れるもので、甘みが弱くて、あまり美味しいと思ったことがありません。 
しかし果肉の甘みが増すような品種改良もされているそうです。 


【追記】 
ビワの果実はてっきり核果だと思っていたのですが、Perplexity AIに確認してみたら、仁果に分類されるのだそうです。 
植物学は難しいですね。 
ビワ(枇杷)の果実は核果ではありません。分類上、ビワは「仁果(にんか)」に属しています。仁果はリンゴやナシと同じく、花床(花托)が発達して可食部になる果実のことであり、ビワもこのグループに含まれます。一方、モモやウメのように固い核(種)を果皮が包むタイプのものが「核果」と呼ばれます。この違いは、可食部がどの花の構造から発達するか、種子のまわりにどのような組織ができるかで決定されます。


【考察】
ビワの種子は被食型の動物散布で分布を広げます。 
果実を丸呑みにした動物が移動した先で種子を未消化のまま排泄し、運が良ければ新天地で実生が発芽します。
果実の形態分類は異なっても、仁果、液果、核果はいずれも被食型動物散布なのです。

NHKの動物番組「ダーウィンが来た!」でビワの種子散布を扱った回が2023年に放送されました。 
果実が実るビワの木に監視カメラを設置したり、市民科学の手法で視聴者から提供された情報も含めると、ビワの種子散布者として、鳥類ではカラスとワカケホンセイインコ、哺乳類ではハクビシン、タイワンリス、イノシシなどが判明したそうです。 

私もこれから自分なりに調べてみるつもりです。
たとえ二番煎じでも、自分の住む地域(フィールド)で自分で実際に調べてみることが大切です。
ささやかながらも新しい発見がきっとあるはずです。


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2025/10/12

ウメの種子をせっせと運んで貯食する野ネズミ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

前回の記事:▶ ウメの落果から種子を採る 

2024年7月下旬

シーン0:7/23・午前11:57・晴れ(@0:12〜) 
明るい日中にたまたま撮れた現場の状況です。 
集めておいたウメ(白梅)の種子を餌箱に39個入れて、朽ちたスギ倒木の端に設置しました。 
果肉をきれいに取り除き、種子をしっかり乾燥させてあります。 

無人センサーカメラで餌箱を監視すると、昼行性のリスが来るかと期待したのに、来るのは夜行性の野ネズミ(ノネズミ)ばかりでした。

シーン1:7/24・午後21:45(@0:16〜) 
晩に野ネズミ(ノネズミ)が餌箱に来てくれました。 
給餌箱の中に入ってウメの種子を口に咥えると、右へ運んで行きます。 
これまで給餌したオニグルミの堅果よりも軽そうです。 
(実際の重さを測るべきでしたね。) 
倒木の右下で立ち止まり、種子をクルクルと回して持ち直しました。 

この日はもう餌箱に戻ってこなかったということは、ウメの種子を割って中身を味見したものの、気に入らなかったのかな? 
ここで気になるのは、毒の問題です。 
バラ科サクラ属植物の種子 (種皮の内部にある胚と胚乳からなる仁)には、種を守るために青酸配糖体であるアミグダリンが多く含まれています。 
梅干しを食べた後に種子を割って中に含まれる仁を食べるのが好きな人もいますが、食べ過ぎないように注意されたはずです。
野ネズミはウメの種子に含まれる青酸の毒性に気づいて忌避するのでしょうか? 


シーン2:7/25・午後22:01(@0:50〜) 
翌日の晩遅くになってようやく野ネズミが餌箱に戻ってきました。
(ただし、前夜と同一個体とは限りません。) 
前回よりも手際よくウメの種子を運び去りました。 
途中で立ち止まって種子をクルクルと回して持ち直す行動は前夜と同じです。 


シーン3:7/25・午後22:26(@1:19〜) 
餌箱からウメの種子を搬出。 


シーン4:7/25・午後22:28(@1:30〜) 
餌箱からウメの種子を搬出。 
監視カメラの起動が遅れ、ウメの種子を咥えた野ネズミが倒木を右へ渡り終えるところでした。 
しばらくすると、左下の林床を野ネズミがうろついています。(@1:29〜) 
おそらく別個体ではなく、さっきの野ネズミがウメの種子を埋める場所を探索しているのでしょう。 


シーン5:7/25・午後22:29(@2:21〜) 
餌箱からウメの種子を搬出。 
またもや監視カメラの起動が遅れ、野ネズミは倒木を右へ渡り終えるところでした。 
小雨がぱらついています。 


シーン6:7/25・午後22:32(@2:28〜) 
餌箱からウメの種子を搬出。 


シーン7:7/25・午後22:35(@2:39〜) 
餌箱からウメの種子を搬出。 
野ネズミが倒木上でちょっと立ち止まって、種子を持ち直しました。 


シーン8:7/25・午後22:36(@2:46〜) 
餌箱からウメの種子を搬出。 
林床に降りた野ネズミは、倒木の右奥のシダ群落の根元をウロチョロしているようです。 


シーン9:7/25・午後22:38(@2:59〜) 
餌箱からウメの種子を搬出。 


シーン10:7/25・午後22:40(@3:04〜) 
餌箱からウメの種子を搬出。 


シーン11:7/25・午後22:41(@3:12〜) 
餌箱からウメの種子を搬出。 
林床を歩いて倒木の下まで来て、貯食する場所を探索しています。
地面を試掘したものの、残念ながら手前の茂みに隠れてしまい、実際の貯食シーンを見届けられませんでした。 


シーン12:7/25・午後22:46(@3:50〜) 
餌箱からウメの種子を搬出し、どこか林床に埋めたようです。 


シーン13:7/25・午後22:48(@4:05〜) 
餌箱からウメの種子を搬出。 


シーン14:7/25・午後22:49(@4:12〜) ◎
餌箱からウメの種子を搬出。 
埋める場所を変えたようで、右奥のシダ群落の奥をうろつく野ネズミの目が白く光っています。 


シーン15:7/25・午後22:50(@4:21〜) ◎
ようやく野ネズミが餌箱の中に入っている様子が撮れていました。
ウメの種子を咥えて右へ運んで行きます。 


シーン16:7/25・午後22:52(@4:28〜) ◎
餌箱からウメの種子を搬出。 
種子を咥えたまま倒木の下の林床を左へ向かい、草むらに姿を消しました。 


シーン17:7/25・午後22:54(@4:47〜)◎ 
今回初めて、野ネズミが倒木上の餌箱に入る瞬間が撮れていました。 
すぐにウメの種子を1個咥えて右へ運びます。 
しばらくすると、倒木を伝って右から走って戻り、巣箱に入りました。 
次の種子を選んで右へ搬出。 
倒木上で立ち止まり、種子を持ち直してから右へ向かいます。 
倒木の奥のシダ群落の根元をうろちょろしている野ネズミの白い目が光っています。 


シーン18:7/25・午後22:55(@5:28〜) ◎ 
餌箱からウメの種子を搬出。 
近くの地面に埋めて隠す作業の効率が上がったらしく、すぐにまた右から倒木を駆け戻りました。 
餌箱に飛び込んだところで1分間の録画が終了。 
雨が降っても野ネズミは平気で貯食作業を続けています。 


シーン19:7/25・午後22:57(@5:46〜) 
餌箱からウメの種子を搬出。 


シーン20:7/25・午後23:00(@5:52〜) 
餌箱からウメの種子を搬出。 


シーン21:7/25・午後23:01(@5:57〜) 
餌箱からウメの種子を搬出。 


シーン22:7/25・午後23:04(@6:03〜)◎ 
餌箱の中に入って次に運ぶウメの種子を選ぶと、倒木を右へ駆け下りました。 
そのまま倒木の下の林床を左へ向かい、草むらに消えました。 


シーン23:7/25・午後23:06(@6:23〜)◎ 
餌箱からウメの種子を搬出。 
しばらくすると、倒木を右から走って戻り、餌箱の中に入りました。 
次の種子を選んで右へ。 


シーン24:7/25・午後23:08(@6:41〜)◎ 
餌箱からウメの種子を搬出。 
しばらくすると、奥の草むらから戻ってきた野ネズミが倒木を右から駆け上がり、餌箱の中に入りました。 
休むことなく次の種子を選んで右へ。 


シーン25:7/25・午後23:11(@7:08〜)◎ 
梅の種子を運んだまま倒木の下の林床を左へ向かい、草むらに消えました。 
左下から林床を右へ戻ってくる様子も撮れていました。 
右下隅から倒木に登り、左の餌箱に駆け戻ります。 
餌箱に飛び込んで次の種子を選び、右へ搬出。 


シーン26:7/25・午後23:14(@7:54〜)◎ 
餌箱からウメの種子を搬出。 
しばらくすると、倒木を右から戻ってきて餌箱に入りました。 


シーン27:7/25・午後23:17(@8:07〜)◎ 
餌箱からウメの種子を搬出。 
しばらくすると、右下隅から倒木を登ると、左へ走って餌箱に飛び込みました。 
すぐにまた次の種子を咥えて右へ運び出します。 


シーン28:7/25・午後23:24(@8:26〜) 
餌箱からウメの種子を搬出。 
奥の草むらで貯食場所を探しているようです。 


シーン29:7/25・午後23:26(@9:26〜) 
餌箱からウメの種子を搬出。 


シーン30:7/25・午後23:34(@9:34〜)◎ 
餌箱からウメの種子を搬出。 
そのまま倒木の下の林床を左へ向かい、草むらに消えました。 


【考察】 
野ネズミはウメの種子を見つけると、その場では食べずに、1個ずつせっせと運んであちこちに隠し、貯蔵するようです。(貯食行動)

ウメの種子に含まれるアミグダリンという青酸配糖体の毒に対して、野ネズミは耐性があるのでしょうか?
逆に植物側(ウメ)の立場になって考えると、種子散布を助けてくれる共生関係の野ネズミに対して毒を盛ることはしないはずです。
充分に熟した果実の種子であれば、毒性は失われているのかな?

 野ネズミが地中に埋めてくれた後に食べ忘れたウメの種子は、運が良ければ発芽するはずです。 
つまり、ウメの種子散布は貯食型の動物散布(※ 追記参照)であり、野ネズミと共生関係にあることが分かります。 
何年後かには、春になるとこの近くで梅の花が咲くでしょうか? 
たった39個の種子を給餌しただけでは、種子散布に成功する確率は限りなくゼロに近いでしょう。 
現場はスギ植林地の林床で、オニグルミの大木が隣にそびえ立ち、実生の光合成に必要な日照があまり多くありません。 
冬になると積雪量が多い豪雪地帯の山林ですから、ヒトが過保護な雪囲いもしないでウメの幼木が無事に育つのは至難の業です。 
そもそも実験に使ったウメの種子は、果肉を洗い落とした後にドライヤーで強制乾燥したので、熱で発芽能力が失われてしまったかもしれません。 


野ネズミはウメの種子をどのように食べるのでしょうか?
アカネズミの代表的なフィールドサインといえば、オニグルミの「2つ穴食痕」だ。両側の合わせ目上に2つの穴を空け、穴から中身をかき出して食べる。内部にはかき出した際についた門歯(切歯)のひっかき傷が残る。固い殻のある食べ物は共通してこの食べ方をするらしく、オニグルミだけではなく、サワグルミやウメの種子も同じような2つ穴食痕になる。(p132より引用)


謎の夜蛾は、ウメの種子には誘引されませんでした。 


※【追記】
ウメの種子散布は、被食型の動物散布がメインと考えられます。
熟した甘い果肉を目当てに動物がウメの果実(核果)を丸ごと飲み込み、消化されなかった種子が遠くに運ばれてから糞と一緒に排泄されるのです。
だとすれば、野ネズミはウメにとって種子捕食者でもあります。

現実の自然界はもっと複雑です。
たとえば、ウメの落果を食べたタヌキが溜め糞場で排泄した種子を野ネズミが持ち去って貯食するかもしれません。
この場合、野ネズミはウメの種子の二次散布者になります。
(重力散布が一次だとすると、タヌキが二次散布者、野ネズミは三次散布者になります。)


本当はウメの種子ではなく熟果をそのまま給餌するつもりでした。
ところが、その前にやった実験で、同じバラ科サクラ属のアンズではアミグダリンを嫌ってか落果を食べる野生動物がほとんどいなかったので、種子に切り替えたのです。




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2025/10/09

マスクメロンの種子を採る

2024年7月中旬 

食後のデザートで食べたマスクメロンから種子を採ってみました。
甘く熟した果肉を食べながら種子を吐き出し、きれいに水洗いしてから乾燥させます。 
種子散布の資料とするために、写真に撮りました。 

メロンの果実はてっきり液果だと思い込んでいたのですが、ウリ科植物の果実は瓢果ひょうかに分類されるのだそうです。 
自然界でメロン瓢果の種子は、被食型の動物散布で分布を広げると考えられています。 
もしも今後、タヌキやニホンザルの糞からメロンの種子が見つかったら、比較・同定するための資料となります。

2025/10/08

ウメの落果から種子を採る

2024年7月上旬〜中旬 

ウメの果実は核果で、ちょうど梅雨の時期に熟します。 
庭で白梅の木の下に散らばっている落果を拾い集め、果肉を取り除いて水でよく洗い、種子を取り出しました。 
アンズの種子と違って、両端が尖っています。

現代ではヒトが管理する園芸植物または果樹となっていますが、自然界でウメの種子は被食型の動物散布で分布を広げるそうです。 
たとえば、タヌキが排泄した溜め糞の中にウメの種子は含まれているでしょうか?
ウメの種子を見つけた野ネズミは、持ち去って貯食するでしょうか?
採集した種子を、これから種子散布の実験に使います。




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2025/09/21

給餌場からオニグルミ堅果を持ち去って貯食する野ネズミ:7月上旬【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年7月上旬 

シーン1:7/1・午後20:47〜午後23:54(@0:00〜) 
前年に拾い集めておいたオニグルミ の堅果を餌箱に30個入れて、朽ちたスギ倒木の端に設置しました。 
果皮はすでに取り除いてあります。 
無人センサーカメラで餌箱を監視すると、昼行性のリスが来て欲しかったのに、来るのは夜行性の野ネズミ(ノネズミ)ばかりでした。 

晩になって倒木を探索する野ネズミが早速餌箱を見つけたのに、野ネズミは初めかなり警戒していました。 
監視カメラが起動する度に驚いて逃げています。 
しばらくして慣れてくると、野ネズミは倒木からおそるおそる餌箱に入りました。 
オニグルミ堅果の匂いを嗅ぎ回るだけで、なぜか倒木に戻って右往左往しています。 
空荷のまま倒木から右へ降りてしまいました。 

何度か餌箱に試しに入って安全を確認してから、野ネズミはようやく適当なクルミを選ぶと、口に咥えて運び出しました。 
その後は、巣穴と餌箱を頻繁に往復して、オニグルミ堅果を1個ずつ持ち去るようになりました。 
クルミ堅果は優れた保存食になりますから、巣穴に餌を貯食しているのでしょう。 

しばらくすると戻ってきて、クルミの搬出作業に戻りました。 


シーン2:7/2・午前後・気温(@4:17〜) 
日付が変わった深夜にも、野ネズミはせっせとオニグルミを搬出しています。 
餌箱は初めオニグルミ堅果で一杯だったのですが、数が減ってくると、深い容器に入った野ネズミの姿が姿が見えなくなりました。

後半になると、野ネズミが餌箱に入っても、空荷で出てくることが増えました。 
もう咥えにくい(大きな)クルミしか残っていないのかもしれません。 
ようやく選んだクルミを餌箱から搬出しましたが、いかにも重そうです。 
倒木の途中で何度も立ち止まって、クルミを咥え直したり休んだりしています。 

深夜2時を過ぎると、小雨がぱらつき始めたようです。 
それでも野ネズミは餌箱に通ってきます。 
最後に餌箱に来たのは午前2:23で、空荷で帰りました。 

野ネズミは夜行性なので、昼間は巣穴で寝ているようです。 
晩遅くの22:32に、野ネズミがようやく現れました。 
餌箱に入って中を調べてから空荷で飛び出し、倒木を右に走り去りました。 

餌箱にクルミはまだ残っているのに、これを最後に野ネズミは餌箱に来なくなりました。 
残っているのは栄養価の低い「しいな」あるいは虫食いクルミなのでしょうか? 
この山森にはフクロウやテンが暮らしているので、野ネズミは捕食者に狩られてしまったのかもしれません。 




【考察】 
これまで野ネズミの貯食行動を秋に観察してきましたが、夏にも給餌すれば(余剰の餌を見つければ)貯食することが分かりました。 

餌箱に通ってきた野ネズミがアカネズミなのかヒメネズミなのか、私には見分けられません。 
ヒメネズミは木登りが得意らしいのですが、今回餌箱を設置した倒木(朽木)は地面から斜めに緩やかなスロープを作っているだけなので、高度な木登り能力は必要ありません。
(アカネズミでも登ってくれるはず) 


【おまけの記事】 

2025/05/19

初夏の風に吹かれて飛散するポプラ(セイヨウハコヤナギ)の綿毛【風散布型種子:FHD動画&ハイスピード動画】

 

2024年5月中旬・午後14:25頃・晴れ 

街路樹として植栽されたポプラ(=セイヨウハコヤナギ)の大木から白い綿毛が風に乗って大量に舞っていました。 
ポプラが属するヤナギ科の種子は、典型的な風散布型です。 
ヤナギの白い綿毛は「柳絮りゅうじょ」、ポプラの場合は「楊絮ようじょ」と呼ばれるのだそうです。 

関連記事(5年前の撮影)▶  


ヤナギ科の果実は蒴果で熟すと裂開し、中から綿毛に包まれた小さな種子が多数現れます。 
この綿毛は種子そのものから直接生えている訳ではなく、種子を包む果実(蒴果)の内側の壁や種皮の表面から発生した付属物(種毛、種子毛)です。
綿毛の主成分はセルロースで中空構造を持ち、風による種子散布への適応形態です。 

ポプラ大木の下から見上げてズームインすると、枝先に白い綿毛が大量に付いていました。 
白い花が咲いているように見えますが、花ではなく蒴果の綿毛です。 
(私はポプラの花を実際に見たことがないかもしれません。)
ポプラは雌雄異株なので、白い綿毛の付いた木は雌株です。
初夏(晩春)の風が強く吹くと、その綿毛が風に乗って飛散します。 
ポプラの若葉も風でザワザワ音を立てながら揺れています。 

セイヨウハコヤナギの綿毛が飛散する様子を240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:37〜) 
明るい空を背景にすると飛散する白い綿毛がよく見えないので、背景が暗くなるようにアングルを決めないといけません。 
ハイスピード動画は固定焦点ですから、撮り始めにポプラの大木に焦点を合わせてしまうと、手前の空中を飛ぶ綿毛にピントが合いません。 
シャッターボタンを半押しにして、適当な距離の物体に合焦してから撮り始めました。 
カメラの仕様で、ハイスピード動画は無音になってしまうのですが、無音のシーンが続くと味気ないので今回は風の吹く音をアフレコしてみました(別撮りの動画から音声だけ流用)。 

動画を撮影した後に、風に舞う綿毛を手掴みで採集できたので、種子の写真を掲載しておきます。







【考察】
中国の乾燥した地域では、ポプラ並木から大量に飛散した白い綿毛(楊絮)が地面に溜まり、誰かの不注意(火の不始末)で発火すると一気に燃え広がって火事になってしまうのだそうです。
ポプラの白い綿毛(楊絮)は主にセルロースと植物油脂から成り、可燃性が非常に高くなっています。
綿毛状の形態で空気を多く含むため、密集して堆積すると、着火した際に一気に爆発的に燃え広がる性質があるのです。

楊絮が燃えやすいという性質は、ポプラがそのように進化した結果なのでしょうか? 
火災を積極的に利用して分布を広げるパイロファイト(火災適応植物)と呼ばれる植物が知られています。
(多雨多湿で山火事の発生頻度が少ない日本にはほとんど居ないとされています。)
ポプラはパイオニア植物(先駆植物)なので、山火事を起こしてライバルの植物を焼き払い、その後に発芽する戦略かもしれない、と私は素人考えで思いつきました。

しかし、地上に堆積した楊絮に着火したら、種子も焼け死んでしまいます(高温で発芽能力を失う)。
つまり、ポプラの種子に耐火性はありません。
セルロースからできた綿毛の表面には油脂成分(ワックス)が含まれていて、可燃性が高くなっています。
これもポプラに火災を誘発したいという進化的意図がある訳ではありません。
この油脂分のおかげで撥水性が高まり、フワフワの綿毛が雨や湿気から守られるのだそうです。
これも風散布の効率を高めるための適応と考えられます。

まとめると、ポプラの綿毛が燃えやすいのは、風散布のために軽く繊維状になった結果の副産物であり、「火災を誘発して生存競争を有利にする」ために進化したものではありません。

※ Perplexity AIの回答を参考にまとめました。
植物生態学も調べてみると面白いですね。

昨今では、ポプラの大木が次々に伐採されています。
台風や大雪などによる倒木で事故が起きることを行政当局や土地管理者が恐れているようです。
ポプラを観察したいと思いたった時に身近にあまり残ってないことに気づき、焦りました。
ポプラに限らず、あちこちで樹木の伐採がどんどん進んでいるので、思いついた時にすぐ撮っておかないと、後悔することになります。


 
 ↑【おまけの動画】 
公園覆う“白いもの”これは何?今だけの絶景に…意外な危険【スーパーJチャンネル】(2025年6月20日) by ANNnewsCH

2024/12/18

雪面に風散布されたオオウバユリの種子

2023年12月下旬・午後・晴れ 

平地の落葉した二次林を歩き回ると、雪に覆われた林床でオオウバユリが枯れていました。
その株の真下の雪面に種子が散乱していました。 
開裂した蒴果から翼の付いた種子が風散布された好例です。
地面よりも雪面に落ちたオオウバユリ種子の方がよく目立ちます。 
親株の根元から各種子への距離を測定してグラフに描けば、風散布の立派なデータになりそうです。

関連記事(3年前の撮影)▶ オオウバユリ種子の風散布を実演してみる


植物学の用語で理解が曖昧なまま使っているものを、この機会に復習してみました。 
百科事典や植物図鑑の解説で用語の定義を読むだけではなかなか頭に入らないので、AIのGeminiに質問してみました。 
たちどころに専門的な回答が自動生成されて、とても勉強になりました。
ただし、回答をダブルチェックする必要があります。
さらに疑問があれば、AIと質疑応答を重ねて自学自習を深めることが出来ます。
なかなかすごい性能です。
調べ物をする際に誰もインターネットを検索しなくなる(誰もググらなくなる)時代がすぐそこまで来ていることを実感します。
私はベンチャー起業のGoogleが興隆して検索の覇者へと登り詰める過程をつぶさに目撃してきました。
そのGoogleが危機感を覚えて、Geminiの開発・改良に死物狂いで全力を注いでいるのも納得です。



Q: オオウバユリの実が翼果ではなく蒴果とされているのはなぜか? 
翼果のように見えるのは収斂進化なのか? 


A: Gemini1.5の回答
オオウバユリの実が翼果ではなく蒴果と分類される理由、そして翼果のように見える理由について、詳しく解説していきます。 
オオウバユリの実が蒴果である理由 
蒴果とは、複数の種子を含む果実が成熟すると裂開し、種子を散布するタイプの果実です。オオウバユリの実は、この蒴果に分類されます。 
  • 構造: オオウバユリの実は、複数の室に分かれており、各室に多数の種子が詰まっています。成熟すると、これらの室が裂開し、種子が外に飛び出す構造をしています。 
  • 種子の特徴: オオウバユリの種子は、比較的大きく、扁平な形をしています。種子の周囲には、薄い翼状の構造が見られます。この翼状の構造は、風によって種子を遠くに運ぶための適応と考えられています。 
翼果との違い 
翼果とは、果皮の一部が薄く広がって翼状になり、風によって種子を遠くに運ぶための適応が見られる果実です。カエデの種などが代表的な例です。 
オオウバユリの種子も翼状の構造を持っていますが、果実全体が裂開するという点が、翼果とは大きく異なります。翼果は、果実全体が一つのもので、種子が翼と一緒に風に乗って飛んでいきます。 
翼果のように見える理由:収斂進化の可能性 
オオウバユリの種子が翼状の構造を持つにも関わらず、蒴果に分類されるのは、収斂進化が考えられるためです。 
  • 収斂進化: 異なる系統の生物が、同じような環境に適応する過程で、似たような形質を獲得することを収斂進化といいます。 
  • 風散布への適応: オオウバユリとカエデのように、異なる種類の植物が、どちらも種子を風によって遠くに運ぶという同じ環境への適応として、翼状の構造を獲得したと考えられます。 つまり、オオウバユリの種子の翼状の構造は、カエデの翼果と似た機能を果たしていますが、その構造が進化してきた過程は異なる、というわけです。 
まとめ 
オオウバユリの実は、その構造から蒴果に分類されます。種子の翼状の構造は、風散布のための適応であり、カエデの翼果との類似性は収斂進化の結果と考えられます。 
ポイント: 
  • 蒴果:複数の種子を含む果実が裂開する 
  • 翼果:果実全体が翼状になり、種子が翼と一緒に飛ぶ 
  • 収斂進化:異なる系統の生物が、同じような環境に適応して似た形質を獲得する
オオウバユリの実は、植物の多様な進化の過程を垣間見せてくれる興味深い例と言えるでしょう。



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2024/12/15

ユキツバキの熟した蒴果から種子を取る(雪椿)

 



2023年9月下旬・午後12:40頃・くもり 

里山で細い山道に沿って自生するユキツバキの群落を定点観察しています。 
秋も深まり果実の表面が赤く色づき始めましたが、未熟な果実は硬いままです。 
茶色に完熟した蒴果を1個だけ見つけました。 
既に開裂しかけた蒴果の中には種子が2個含まれていて、今にも零れ落ちそうです。 
ヤブツバキの種子は、主に重力散布で分布を広げると考えられているそうです。 
2個の種子が互いに密着した状態で、果皮から一緒に外れました。 
動画を撮りながら片手で種子の癒着を剥がそうとしたら、手元が狂って大事な種子をうっかり1個落としてしまい、林床で見失いました。 
(種子散布に私も少し貢献したことになります。) 
手元に残った1個のユキツバキ種子の歪な形状をお見せします。 
そのまま種子を採集して資料用に持ち帰りました。 

ヤブツバキなどツバキ属の実に産卵・寄生するツバキシギゾウムシを長年探しているのですが、私は未だ見つけたことがありません。 
そもそもツバキシギゾウムシは寒冷な雪国には分布しないのでしょうか。 
山形県はツバキシギゾウムシの分布域の北限に近いのだそうです。 
ツバキシギゾウムシ♀が産卵した痕跡を調べたかったのですが、ユキツバキの群落を見渡しても、そもそも果実がほとんど見つかりません。 
春にはあれほど多数の花が咲いていたのに、ユキツバキの結実率はとても低いようです。 
ユキツバキの花は鳥媒花でもあり虫媒花でもあると考えられるので、雪国の春でも送粉者の数が少ないとは考えにくいです。

Newton special issue 植物の世界 第1号 ナチュラルヒストリーへの招待』という本でユキツバキの生活史を特集した章を読むと、
林内の群落では、ユキツバキの着実率(花が果実になる割合)はきわめて低く、成熟した果実はまれにしかみられない。しかし、林のへりや伐採跡地など日のよくあたる条件下では花が多く咲くため、果実も比較的多くつく。(中略)  種子が成熟するころには、種子の中身を食べる甲虫であるツバキシギゾウムシ(Curculio camelliae)や落下した果実の果皮を破って中の種子を食べる動物などがおり、被害を受ける。 (p40より引用)
ユキツバキの種子散布には重力散布だけでなく貯食型の動物散布も関与するのではないか?と個人的に推測しています。 
ユキツバキの分布は、重力散布だけでは説明できないからです。
重力散布や水散布だけでは、ユキツバキの分布は標高が下がる一方です。
ところが、ユキツバキの群落は山中の谷だけでなく尾根にも見られます。(人為的な植栽の結果かもしれません)
動物散布を証明するために、ユキツバキの種子を拾い集めて野外の地表にまとめて放置して齧歯類や野鳥が捕食したり貯食のために持ち去るかどうか、トレイルカメラで監視する計画を立てています。 
ところがユキツバキの種子を給餌実験に充分な数だけ集めるのがとても大変なことが分かりました。 
これほど結実率が低いユキツバキは、絶滅に向かっているのでしょうか? 
挿し木でも増やせるそうですが、遺伝子多様性の低いクローンになってしまいます。
野ネズミの巣穴を発掘調査したり野生動物の糞分析をした際に、ユキツバキの種子が含まれているかどうか、注意して見ていくのも面白そうです。

新潟雪椿研究会による『ユキツバキの果実・種子』と題したPDF資料がインターネット上に公開されていました。
こうした平均値などの統計処理をできるぐらい多数の種子をフィールドで集めるのは、かなり大変そうです。
ユキツバキの種子から椿油を採油したら、希少価値から高級品になりそうです。

2024/12/14

サンシュユの赤い熟果と種子



2024年1月上旬・午後 

民家の庭に植栽されたサンシュユ(別名ハルコガネバナ、アキサンゴ、ヤマグミ)が完全に落葉した後も雪が降った後も、赤く熟した果実が枝先に残っていました。 
長楕円形の熟果を少しだけ採集させてもらい、柔らかい果肉を洗い流して乾かし、細長い種子を得ました。 

熟した果肉は柔らかくて潰れやすい。
図鑑に書いてあった通り、「核は長さ8〜12mm、中央に縦の稜がある」という特徴がありました。(山渓ハンディ図鑑4『樹に咲く花:離弁花2』p655より)
冬の間に野鳥がサンシュユの赤い実を少しずつ食べに来るはずですが、まだ実際に観察できていません。
鳥はあまり好物ではないようです。
サンシュユの果実(液果ではなく核果)を丸呑みにした鳥は遠くに飛び去りますから、未消化の種子が鳥の糞と一緒に排泄されます。

『野鳥と木の実ハンドブック』p32によれば「(サンシュユの赤い実を)口に入れるとほのかに甘く、おいしい」とのことですが、私はまだ味見したことがありません。

これから種子散布の調査をする上で、比較対象として実物の種子の標本が必要になるので、身近な植物の様々な種子を少しずつ集めています。 
これでもし、野生動物や野鳥の胃内容物調査や糞分析をしたときにサンシュユの種子が出てきたら、見分けられるようになるはずです。

2024/12/12

落葉したウルシの樹上で熟した果実を食べるエナガ(冬の野鳥)

 

2023年12月下旬・午後13:20頃・晴れ 

雪が積もった平地の二次林でエナガAegithalos caudatus)の群れと遭遇しました。 
完全に落葉したウルシの樹上で熟した果実(核果)を次々に食べています。 

高木の下から見上げる撮影アングルなので、エナガのお尻しか見えませんが、逆にエナガは私に気づいておらず、無警戒で採食を続けています。 
ジュリリ、ジュリリ…♪というエナガの鳴き声が聞こえますが、食事しながら鳴いてるのか、群れの別個体が鳴いているのか不明です。 

ウルシの木に巻き付いて育ったツルウメモドキの赤い実も手前にあるのに、エナガは全く食べようとしません。 
ウルシの実の方が美味しい(好み)のでしょう。 
エナガを始めとする鳥がウルシの実を丸ごと食べて遠くに糞をすることで、ウルシの種子散布に貢献していることになります。 
鳥がウルシの実を食べてもかぶれないのは何故なのか、何か対策(適応進化)しているのか、不思議です。


さて、このウルシ属の樹種を正確に見分けられるでしょうか? 
山形県にハゼノキやヤマハゼは自生していないはずなので、除外します。 
夏に葉や花を見ればたちどころに判明するのですが、落葉した冬だと一気に難しくなります。 
樹高は目測で約10m近くありました。 
実の表面が無毛で白い粉を吹いていないことから、ヤマウルシ ではなくウルシだろうと暫定的に判断しました。 
ウルシだとすれば、昔に誰かが漆の樹液を採取するために植栽したのかもしれません。
次にヌルデの可能性を排除するのが、また難題です。 
果柄が比較的長いので、やはりウルシでしょうか?
冬芽や葉痕で樹種を見分ける方法は全くの勉強不足で、写真に撮っていません。
ウルシ候補の木に登って、樹上にわずかに残った枯れ葉を調べに行こうか迷ったのですが、落葉後の冬でも不用意に木登りしたらかぶれる可能性が高いらしく、諦めました。 
葉が出る季節まで待って定点観察し、もしヌルデだったら訂正することにします。 

参考:「葉と果実によるウルシの仲間の見分け方」@山渓ハンディ図鑑『樹に咲く花:離弁花2』P288




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2024/11/25

ニホンイタチの越冬用巣穴の横で餌を探し、拾ったドングリを持ち去るカケス【冬の野鳥:トレイルカメラ】

 



2023年12月下旬〜2024年1月上旬

シーン0:12/27・午後14:20・晴れ(@0:00〜) 
明るい日中にたまたまフルカラーで撮れた現場の状況です。 
平地のスギ防風林で、画面の奥に向かって根こそぎ倒れたスギの根元に掘られたニホンイタチMustela itatsi)の越冬用巣穴bを自動センサーカメラで見張っています。 
画面のほぼ中央にぽっかり開いているのが、問題の巣穴bです。 
丸木橋のような細い水平のスギ倒木で遮られて見えませんが、その下をくぐったすぐ左奥にも、イタチが越冬する「根曲がり巣穴a」があります。 
2つの巣穴a,bは内部でつながっていそうですが、限られた数の撮影機材でやりくりしているために、2つの巣穴を同時に監視することが出来ません。 
カケスGarrulus glandarius)の登場シーンをまとめました。


シーン1:12/29・午前8:29・晴れ(@0:03〜) 
2羽のカケスが交互にやって来て、水平倒木に止まったり、スギ風倒木の土が付いたままの根を啄んだりして、餌を探しています。 
画面右端の手前に生えている細いスギ幼木のせいで、肝心の探餌行動が隠れてよく見えません。 


シーン2:1/3・午前8:03(@0:29〜) 
年が明けた朝にも計3羽のカケスが写っていました。 
小さな群れで一緒に行動しているようです。 
手前の林床で餌を探していた個体が、水平倒木から剥がれ落ちたスギ樹皮の下からドングリを見つけると嘴で拾い上げました。 
この辺りでドングリがなる木は見当たりませんから、もしかすると剥がれかけた樹皮の隙間にカケスが予め隠しておいたドングリが樹皮と一緒に落ちたのかもしれません。
そのままカケスはドングリを咥えて手前に飛び去りました。 
後で食べるために、どこか安全な場所にドングリを隠しに行ったのでしょう(貯食行動)。 
奥で採食していた2羽のカケスも相次いで飛び去りました。 
カケスがドングリを拾う様子を、1.5倍に拡大した上で1/3倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:45〜) 


シーン3:1/5・午前6:57・くもり(@1:17〜)日の出時刻は午前6:52。 
2日後も日の出直後に2羽のカケスが登場しました。 
これ以降はカメラの電池が消耗していて、たった1〜2秒間しか探餌行動が録画されていません。 


シーン4:1/6・午前10:41(@1:23〜) 
翌日もカケスが止まり木に来ていました。 


イタチは鳥を狩る天敵(捕食者)のはずなのに、その巣穴の周囲でカケスを含む様々な野鳥が採食に通ってくるのが不思議です。
襲われないことを知っているのか、それとも逃げ切れるという自信があるのでしょうか?


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 




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2024/10/14

ワタ(綿花)の種子散布を考える

2023年10月上旬・午後 

民家の庭に置かれた植木鉢にフワフワの白い綿が実っていました。 
ワタの綿花を実際に見るのは初めてです。 
綿花と言っても花ではなく、熟して裂けた果実(蒴果)から出てきた綿毛です。 
天然コットンの手触りや中に含まれる種子を調べてみたかったのですが、他人様の庭に勝手に入れないので、公道から写真に撮るだけにしました。 
夏に咲くワタの花(アオイ科)を見逃したのが残念です。 

綿花で思い出すのは、幼少期に図書室で読んだ『アンクル・トムの小屋』というストウ夫人の小説です。
米国南部の大規模なプランテーションで黒人奴隷に綿摘み(綿花の収穫)をさせたという知識をこの本から得たので、てっきりワタは南国の植物だと思い込んでました。
日本のこんな北国(雪国)でもワタが育つとは知りませんでした。
現状では日本で使われる綿(コットン)の国内自給率はほぼ0%で、全て輸入に頼っているのだそうです。
国産のワタを栽培しようという試みが少しずつ広がっているらしい。

さて、ワタの種子散布について考えてみましょう。 
植物の白い綿毛と言えば、てっきり風散布されるための適応進化なのかと初めは思いました。 
しかし念のためにネット検索で調べてみると、綿花の種子は比較的重く、風に乗って遠くまで飛ぶことができないのだそうです。 
むしろヤナギの綿毛(柳絮りゅうじょ)のように、水に浮いて水流散布されるためのものと考えられているそうです。 
もしかすると、「ひっつき虫」のように、通りかかった動物の毛皮に綿毛ごと絡みついて種子が遠くに運ばれる可能性もありそうです。(動物付着散布)
誰か実験してみて下さい。

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