2021/05/18

雪国の山林に響くルリビタキの警戒声♪(冬の野鳥)

 

2021年1月下旬・午前10:30頃・晴れ

新雪が積もった里山で雪面に残るキツネの足跡を追跡していると、斜面の上の雑木林の方から今まで聞いたことのない奇妙な鳴き声が繰り返し聞こえました。(標高320m地点) 
甲高い「コンコンコン…」または「ヒンヒンヒン…」というような鳴き声です。 
単調な口笛を繰り返し吹いているようにも聞こえます。 
スノーシューを履いて雪山を歩きながら、鳴き声が聞こえる度に立ち止まって耳を傾けました。 

※ 動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 

この時期は地元の選挙期間中で、山麓を走る選挙カーの喧しい連呼が迷惑でした。 
選挙カーが通り過ぎて辺りの静けさが戻ると、謎の鳴き声はしなくなりました。 
飼い犬が選挙カーのアナウンスに反応して遠吠えする現象を連想しました。

残念ながら鳴き声の主の姿は見つかりませんでした。 
私は野生のホンドギツネが実際に鳴くシーンを未だ見たことがないのですが、てっきり追跡中のキツネが近くでコンコン♪鳴いているのかと早合点しました。 
帰ってから調べてみると、キツネやタヌキの鳴き声は全く違うと知りました。 

それなら野鳥の鳴き声だろうと思い直し、調べてみるとルリビタキTarsiger cyanurus)とジョウビタキPhoenicurus auroreus)が候補に残りました。 
スノーシューを履いた私が縄張りの山林にズカズカと踏み込んだので、警戒声を発していたのでしょう。 

シンフォレスト『野鳥生活記Wing』には次のように書いてありました。
(ルリビタキは)冬は暖地に移動する。育雛時は「ヒッ、ヒッ、ヒッ」と盛んに警戒声で鳴く。
フィールドのための野鳥図鑑:野山の鳥』p78には、ルリビタキの警戒声は「ヒッヒッヒッヒッ…グック、グググッ、ヒッヒッ…(高い声で連続的に)」と聞きなしてありました。 

『日本の野鳥さえずり・地鳴き図鑑』でルリビタキを調べると、
・地鳴きは、ヒッ、ヒッ、クククとかググと聞こえる。 
・秋冬には市街地周辺の平地林などにも越冬のために飛来する。  郊外に近い植栽木の多い公園で越冬することもあるが、ジョウビタキのように開けた環境へはあまり出てこない。 
冬でも1羽ずつなわばりを構えて活動する。 
鳴き声が似ている鳥はジョウビタキ。地鳴きはジョウビタキのほうがやや高音でゆっくりしたテンポに感じるが、識別は困難。 (p100より引用)

『やまがた野鳥図鑑』 によると、ルリビタキが山地で越冬するのは極めて少数なのだそうです。(p98より)
ジョウビタキは平地から低山の開けた場所で越冬する。しかし虫を主食としているため、積雪の多い地域ではあまり多く見られない。(同書p159より引用)
現場の標高は低いものの雪深い里山なので、ジョウビタキの可能性は低いだろうと判断し、消去法でルリビタキの警戒声としました。 

▼関連記事(9年前に同じ里山で撮影)


ルリビタキ?の警戒声を声紋解析してみる? 


【参考動画】 
「冬の ルリビタキ "Tarsiger cyanurus" の鳴き声」と題した見事な生態動画をFuruse CSさんがYouTubeに公開していました。 
今回私が聞いた鳴き声とよく似ています。  



【追記】
長野県軽井沢をフィールドとする自然観察をまとめたピッキオ『森のいろいろ事情がありまして』という本を読み返すと、「冬のルリビタキ」と題した章がありました。
雪国での観察記録はとても参考になります。
 ときには海を越えなければならないような危険な旅が一段落ついた初冬、ルリビタキは1羽ずつ、沢沿いの林のふちなどになわばりを構えます。夏の繁殖期以外はなわばりを持たない小鳥が多い中で、珍しい習性です。このときは「ヒッ、ヒッ」という高い声で、おそらく他のルリビタキに自分の領地を主張しているのでしょう。そして近づいたライバルやあやしげな私たち人間に対しては、「ガッガッ」という低い声で、「出て行け」と言っているのでしょう。(p140−141より引用)

鳴き声の解釈(さえずりと警戒声の違い)については、見解が異なるようです。 


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