2011/10/16

仲間の成虫を咥えて引越しするムネアカオオアリ



2011年9月下旬・気温18℃

神社の本殿からムネアカオオアリCamponotus obscuripes)が途切れ途切れの行列を作って石段を下りていました。
その中に口で何かを咥えて運んでいるワーカーが一匹。

初めは大きなクロアリの死骸を巣に運んでいるのかと思いました。
ところが獲物をよく見ると胸部が赤く、同種のアリと判明(adult transport)。
顔を向き合い互いに大顎で噛み合って運んでいます。
運ばれる方は小柄なムネアカオオアリで、ときどき動く触角から生きていると分かります。
強い前屈姿勢のせいか腹部の節間膜が広がっています。
(満腹状態のミツツボアリを連想しました。)

力持ちのアリにとってさほど重労働とは思えないのですが、なかなか運搬が捗りません。
動きが非常に緩慢で休んだり迷ったりしながら運ぶので、接写するには好都合でした。
巣の引越しだとしたら、なぜこんなにダラダラのんびりしているのだろう?
夕方ですが気温は18℃でそれほど低くはありません。
巣の引越しも終盤になり行列に参加するワーカーの数が減った結果、道標のフェロモンが分かり難くなっているのかもしれない、と想像しました。

実はこの5日前にも同じ場所で同じ行動を観察しています。
このときは仲間を運搬中の個体数がもう少し多かったです。



石段端のコンクリート・スロープを下りて地面に達すると落ち葉に紛れて見失ってしまいました。
行き先の巣の位置を突き止められず残念。
ムネアカオオアリが他の巣を乗っ取る(略奪)という話は聞いたことがないので引越しだと思います。
日本産アリ類画像データベースによると、ムネアカオオアリは森林性で木の腐朽部に営巣するそうです。
神社の木造本殿のどこかに営巣していたのなら分かるのですが、どうしてこの時期に仲間を連れて地中の巣に引越ししようとしているのか理解に苦しみます。
越冬の準備なのだろうか。
元の巣の場所も本殿の閉ざされた扉の後ろなので見れず。



帰ってからアリの本で調べてみると、詳しい解説が載っていました。

『蟻の結婚』第9章アリの引越し p182から引用。
アリは仲間の働き蟻を口に咥えて運ぶことがある。これは社会生活をするハチ類等に絶対見られないことである。(中略)運んでもらう方のアリは親虫に成り立ての若いものが多いようである。運ぶ方のアリが仲間を咥えようとすると、運ばれる方のアリは脚を縮めたりして相手が運びやすいように気を配るのである。 仲間の体をもつ持ち上げ方は種類によって多少形式が違っている。ヤマアリ類やオオアリ類では、運ぶものは自分の大腮で運ばれるものの大腮を咥え、運ばれる方は髭と足を縮めて腹側と腹側が向き合うような姿勢で運ばれて行くのである。

ネコ科の動物で母親が子猫の首筋を咥えて引越しする行動を連想し、微笑ましく思いました。
咥えられた方が暴れたりしないで協力的な姿勢で大人しく運ばれて行くのも似ています。


関連記事(11年後の撮影)▶ 仲間を運んで引っ越すムネアカオオアリ♀の行列

アリさんマークの引越社!



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