2020/11/17

涸れた小川の土手に通い巣材の泥を集める2匹のオオハキリバチ♀【HD動画&ハイスピード動画】

 

2020年8月上旬・午後15:30〜15:55・晴れ 

用水路が川の本流に合流する前に干上がっていて、その土手にオオハキリバチ♀(Megachile sculpturalis)が繰り返し訪れて採土していました。 
少なくとも2匹の♀が代わる代わる飛来して、毎回ほぼ同じ地点から巣材の泥を集めていましす。 
借坑性のオオハキリバチ♀は、ハキリバチ科なのに植物の葉ではなく樹脂を巣材に用います。 
既存坑に可塑性のある樹脂を運び込んで育房を整形し、花粉団子を貯食します。 
産卵が済むと再び樹脂で仕切りを作り、次の育房に貯食を始めます。 
最後に巣穴の入り口をベトベトした樹脂で塞いでから、泥や木屑を塗って強化(偽装)します。 
この最終過程で土塊が必要となるのです。
▼関連記事(8、10、11年前の撮影) 
オオハキリバチ♀の採土行動 
オオハキリバチ♀の泥集め 
オオハキリバチによる巣穴の閉鎖:4砂粒
オオハキリバチ♀は土手に沿って何度も往復飛行したり、あちこちで試掘を繰り返したりして、土質を慎重に吟味しています。 
どうやら粘土質の土手が好みのようです。 
気に入った場所を見つけると土手の湿った土を大顎でかじって掘り、土塊を大顎で咥えたまま飛び立ちました。 
蜂が飛び去った後の土手に歯型が微かに残っています。 
オオハキリバチ♀は「砂を噛むような生活」も全く苦にしません。  

2匹の♀が同時に飛来すると、どちらの個体を撮るか目移りしてしまいます。 
採土に通って来るオオハキリバチ♀は、胸背の色で個体識別が可能でした(明るい茶色/くすんだ茶色)。 
おそらく羽化後の日齢の差を反映しているのでしょう。 
同じ採土場で競うように働いた2匹のオオハキリバチ♀は涸れ水路の土手からそれぞれ少し違う飛行ルートで帰び去りました。
どうやら川を渡って対岸の河畔林に営巣地があるようです。 
オオハキリバチの営巣行動は単独性とされていますが、もし2匹(以上)の♀(母娘?)が同じ巣穴で協力して営巣しているのだとしたら、それはそれで大発見です。(社会性の萌芽) 

採土後に土手から飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@7:05〜) 
現場は昼なお薄暗い河畔林の林床です。 
ハイスピード動画には光量不足で画質も粗くなってしまうのですが、動画編集時に自動色調補正を施して無理やり明るく加工しています。  
採土後のオオハキリバチ♀は土手から羽ばたいて離陸直後、定位飛行のように扇状にホバリング(停空飛行)してから巣を目指して帰ることがありました。 
定位飛行だとすれば、気に入った採土地点の周辺の風景を記憶しているのでしょう。 
しかし次に戻って来た蜂は全く同じ場所で採土するとは限らず、再び採土場の探索・吟味をやり直すことが多いので、見ている私にはよく分からなくなってしまいました。  
採土後の蜂が定位飛行せずに、まっしぐらに帰巣することもありました。 
若い個体(胸背が明るい茶色)よりも経験豊富な老いた個体(くすんだ茶色)の方が採土地点の決定に迷いが少ない傾向がある?…かどうか調べてみたら面白いかもしれません。 

今回、同じ2匹の♀が延々と30分以上も採土を繰り返すので、呆れてしまいました。 
いつまで採土作業を続けるのか、最後まで見届けるべきでしたが、私の方が飽きてしまいました。 
築坑性のドロバチ科でもないのに、借坑性のオオハキリバチ♀がこれほど大量の土を造巣に必要とするとは思えません。 
ひとつ考えられる可能性は、川を飛び越えて帰巣する際にせっかく掘り集めた土塊をほとんど落としてしまうのかもしれません。 
築坑性で泥巣作りのスペシャリストであるドロバチ科やヒメクモバチ♀(クモバチ科)と異なり、オオハキリバチ♀は採土の際に水を吐き戻しながら滑らかな泥玉(泥団子)に整形しません。 
抱えた土塊や木屑を空輸中にポロポロと無駄にこぼしてしまうオオハキリバチ♀を私は以前、営巣地で観察しています。 
それならもっと巣の近くに採土場を変更するべきだと思うのですが、蜂の本能行動はそれほど融通が効かないのでしょう。 
あるいは、巣材に適した土質をシビアに吟味・選択する結果として、複数個体が自然に集まる集団採土場ができるのかもしれません。


2週間後に現場を再訪したときも巣材集めをしていました。

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