2023年5月上旬
アナグマの巣材集め行動を観察するために、ちょっとした実験をしてみました。
巣穴の近くに巣材を置いてみたのです。
子育て中のアナグマ♀がどれぐらい神経質か分かりません。
露骨に警戒して巣穴を引っ越してしまうリスクを恐れたのですけど、熊谷さとし『タヌキを調べよう (身近に体験!日本の野生動物)』という本を参考にしました。
巣の中にしきつめる材料は、草を根っこから引きぬいて使っているようで、出入り口のそばに落ちていることがある。(中略)ぼくが、わらたばを巣穴の近くに置いておいたら、ちゃんと穴の中に運びこまれていた。(p23より引用)
熊谷さとし、安田守『哺乳類のフィールドサイン観察ガイド』 によると、
アナグマの巣穴は(中略)草をむしりとって巣穴に運び入れて布団にする。著者が試しに入口近くに藁束を置くと、ちゃんと中へ引き込んでいた。(p69より引用)
シーン1:5/1・午後17:44・(@0:00〜)
日没前の夕方から2頭のニホンアナグマ♀♂(Meles anakuma)が巣穴の外に出てきていました。(日の入り時刻は午後18:32)
右の個体が♀で、左の個体はヘルパー♂(若い息子)のようです。
アナグマ家族の体色を自然光下で初めて拝むことができました。
二次林にある営巣地で、マルバゴマキ(別名マルバゴマギ、ヒロハゴマキ、オオバゴマキ)など)の若葉の緑がきれいに撮れています。
左の個体(ヘルパー♂?)が手前の巣穴Rに入りました。
広場に残った♀個体も続けて入巣しかけたものの、立ちどまりました。
アクセストレンチと呼ばれる巣口R手前のスロープに私がこっそり広げて置いた藁に気づいたようです。
営巣地に謎の異物が突然現れたので、警戒しながら慎重に近づいて藁の匂いを嗅ぎます。
私が手で触れた匂いが気に入らなかったのか、巣材を搬入しませんでした。
広場に戻ると、座り込んでしまいました。
仰向けになって毛繕いしてから入巣R。
シーン2:5/2・午後18:04・(@1:31〜)日の入り時刻は午後18:33。
翌日も日没前の夕方にアナグマ♀が巣穴の外に現れました。
アクセストレンチに置かれた干し草(藁)の匂いを不審そうに嗅いでいます。
前脚で枯草を掻き寄せると、そのまま後ろ向きで藁を巣に搬入しました。
♀はすぐにまた出巣Rすると、巣口Rで身震いしてから、体を掻いています。
シーン3:5/2・午後18:06・(@2:25〜)
ニホンアナグマ♀は数分後に巣材集めを再開しました。
干し草(藁)の匂いを嗅いでから前脚で掻き集めると、後ろ向きにピョンピョン跳んで巣穴Rに入ります。
巣穴Rの入り口に落としてしまった大量の藁も、しばらくしてから巣内に引き込みました。
シーン4:5/2・午後18:40・(@3:19〜)
約30分後、巣穴Rの外に出てきた♀が巣口の地面に座ってまったり休んでいます。
痒かったのか、尻尾を甘噛みしたり、後脚で痒い体を掻いたりしています。
立ち上がると、干し草の山へ向かってノソノソと向かい始めました。
その動きに反応して、もう1台のトレイルカメラが起動し、赤外線LEDが点灯しました。
トレイルカメラのかすかな物音に気づいて♀はそちらを向いたものの、すぐに警戒を解きました。
巣材を集めて巣穴Rに搬入。
出巣Rしても続けて巣材集めをすることはなく、いつも休憩を挟みます。
シーン5:5/2・午後18:42・気温12℃(@4:40〜)
別アングルで撮れた映像を見てみましょう。
巣口Rの手前のスロープ(アクセストレンチ)に置かれた干し草(藁)の匂いを嗅ぐと、前脚で掻き寄せました。
後ろにピョンピョン跳びずさるようにして、一抱えの藁束を巣内に運び入れます。
一仕事を終えた♀が広場に出てくると身震いし、痒い体をボリボリ掻いています。
その間、ずっと監視カメラの方を見ているため、左右の目の大きさが違う♀個体であることがよく分かります(右目<左目)。
実験は大成功です!!
ニホンアナグマの巣材集め行動を遂に撮影できました。
せっかく与えた藁が雨で濡れないように、天気予報で晴れの日が続く時期を選んで決行しました。
巣穴の奥では赤ちゃんを育てているはずですから、新しい寝床として受け入れてくれたのです。
「あ〜、ありがとうございますー、ね。今、誰かお客さんからフッカフカの新しい敷き藁を頂きました。 こんなん、なんぼあっても、良いですからね〜。(動画で一言©ミルクボーイ)」巣材集めは♀の仕事なのか、ヘルパー♂は一度も手伝いませんでした。
この実験は見ていて楽しいので、皆さんにもお勧めです。
野生動物に給餌するより害がないと言いたいところですが、くれぐれも清潔な干し草(藁)を与えるようにしましょう。
屋根裏で埃を被っている古い稲藁とか家畜小屋(厩舎)から干し草を持ってきたりすると、ダニやノミが付着しているかもしれません。
巣材集め作業の合間にアナグマが体をボリボリ掻いているのが気になりました。
いつもやる行動なので大丈夫だと思うのですけど、もしも与えた干し草がダニやノミで汚染されていると大変です。
運び込まれた体外寄生虫が巣内に蔓延して(赤ちゃんにも感染して)大惨事となります。
「獅子身中の虫、獅子を喰らう」
まるで「トロイの木馬」作戦のようではないか! 専守防衛の穴熊戦術もこれで陥落!などと感心している場合ではありません。
アナグマは使い古した巣材を巣外に出して干す(日光消毒)ことがあるそうです。
そこまで知恵があるのであれば、もしも与えた巣材が原因で全身が異常に痒くなるようなことがあれば、原因となった巣材を巣外に捨てるような気がします。
※ 動画の一部には編集時に自動色調補正を施しています。
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