2013/10/21

寄主ヨシカレハ(蛾)の繭から脱出するヤドリバエ幼虫



2013年8月中旬・室温24℃

ヨシカレハの飼育記録2

繭を紡いでから3日後の早朝、ヨシカレハEuthrix potatoria bergmani)の繭から蛆虫が脱出しかけていることに気づき、仰天しました。
ヤドリバエの仲間が寄主を捕食寄生して十分に育った後に寄主の体外へ脱出し、これから蛹化するものと思われます。

繭の先端部が濡れており、そこからヤドリバエの幼虫が脱出しています。
繭の狭い脱出口に体が閊えている蛆虫もいます。
脱出した蛆虫が這い回った跡は大量の液体で濡れています。
この液体は蛆虫の分泌した潤滑液なのでしょうか?
それとも蛆虫の唾液に繭の絹糸を溶かすタンパク質分解酵素(コクナーゼ※)が含まれているのでしょうか?
寄主のヨシカレハの体液である可能性は?

※ コクナーゼとは

[英cocoonase]
鱗翅目の一部の昆虫の蛹が分泌する蛋白質分解酵素で,孵化酵素の一種.繭(cocoon)のセリシンを分解しフィブロインだけにすることによって,繭からの成虫の脱出を容易にする.
(『岩波生物学辞典第4版』より)

白くて丸々と太った蛆虫の体表に付着している黒い毛は、寄主ヨシカレハの毛虫が繭に植えた毛です。

野外で採集したヨシカレハ終齢幼虫が異常なほど巨大化していた謎がこれで解けました。
体内寄生者が自らの発生に都合の良いように寄主の内分泌系(脱皮ホルモン・幼若ホルモン)を撹乱制御していたのかもしれません。
安全な隠れ家となる繭を作らせてから寄主を体内から食い尽くして殺したのでしょう。

計4匹の蛆虫が続々と脱出する様子をジオラマ・モードで撮影した10倍速の早回し映像をご覧ください。
(私が気付く前に脱走した個体もいるかもしれないので、4匹以上ですね。)
ある蛆虫は繭の左端から脱出を試みてから一旦諦めて繭の中を右往左往し、ようやく繭の右端から脱出に成功しました。

元気な蛆虫はプラスチック容器の垂直な壁面も登れます。
容器内を徘徊する蛆虫が繭の付いたボール紙(ティッシュの紙箱)の裏側に潜りこもうとするため、ボール紙が一緒に動いてしまい、微速度撮影の邪魔になります。

次は蛆虫の蛹化が始まります。→つづく(蛹化の微速度撮影

ヤドリバエに捕食寄生を受けたのでヨシカレハは殺され、成虫が羽化することは無くなりました。
毒毛に刺されないようゴム手袋を着用してから繭を切り裂いてみると、ヨシカレハ前蛹の干からびた死骸が見つかりました。
繭を紡いだ後で蛹化(脱皮)する前にヤドリバエ幼虫が食い殺したようです。



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