2010/12/11

他巣を荒らすフタスジスズバチ♀




2010年9月中旬

神社の本堂回廊で木の手摺りの下面に丸い穴が幾つも並んでいます。
昔クマバチが穿坑した坑道を借坑性のドロバチが毎年再利用しています。
入口から泥製の煙突が覗いているので、現在はエントツドロバチOrancistrocerus drewseni)が営巣しているようです。
そこへ同じく借坑性のフタスジスズバチ♀(ヤマトフタスジスズバチ;Discoelius japonicus)が飛来しました。
自分の営巣地を探索しているようです。
主のエントツドロバチが留守の間に巣穴にこそこそ潜り込んでは中の様子を物色していました。
 材の一部分で側面が朽ちており、水平方向に延びた中の坑道が剥き出しになっています。
ここも右奥にエントツドロバチの泥巣の入り口があります。
侵入したフタスジスズバチは巣穴の掃除を始めたようで、中から一匹の芋虫を咥えると数回に分けて引きずり出して外に捨てました。
この芋虫はエントツドロバチに狩られ麻痺状態で運ばれたものと思われます。
結局フタスジスズバチはここがあまり気に入らなかった様子。
身繕いしてから飛び去りました。


芋虫を巣穴から捨てるという謎の行動にかなり戸惑いましたが、前後の行動や周囲の状況から総合してこのように解釈しました。
ここがフタスジスズバチ自身の巣である可能性も初めはあったので混乱しました。
貯食作業中にカビ感染した芋虫を見つけて捨てたのだろうか。
あるいは、この木の手摺りに外から産卵管を盛んに突き立てて回っているシリアゲコバチに寄生産卵された芋虫を見抜いて捨てたのだろうか、などと色々と考えました。
その後、どれもエントツドロバチの巣であることに気づきました。
資料で調べてみると、二種の体長はフタスジスズバチ<エントツドロバチですが、狩猟対象はメイガ、ハマキガ、キバガ、ヤガなどの幼虫とされていて共通でした。
エントツドロバチの巣から貯食物を横取りするつもりなのか(労働寄生)と思いきや、惜しげもなく芋虫を外に捨てました。(※追記2参照)
どうも巣の乗っ取り(再利用)が目的だったようで、巣坑を少し掃除していたのでしょう。
競合種への嫌がらせかもしれません。
留守中に侵入され貯食物を勝手に捨てられたエントツドロバチは全く災難です。


【追記】
岩田久二雄『自然観察者の手記2』という古典的な名著でフカイドロバチとオオフタオビドロバチの習性を記した章を読んでいたら、他の可能性もあることに気づかされました。
(労働寄生者のハエに対抗する手段として)蜂は掃き出しを行うのであろう。この方法は空き巣狙いだけではなく、自分の産んだ卵も、せっかく狩り集めた獲物も、すべてを犠牲にして、独房内に存在する一切合財を巣外にとり捨ててしまうのである。(中略)このような習性は、多くの鳥類が、敵にのぞきこまれたり手を触れられたりした巣から、卵を掃き捨てる行動によく似ている。 (p197-198より引用)



【追記2】
岩田久二雄『自然観察者の手記(3)』第五部の「葉巻き虫を狩るフタスジスズバチ」と題した章を読んでみたら、盗み寄生(労働寄生)の事例が報告されていました。
竹すだれに15cm離れて2匹のフタスジスズバチ♀が営巣しており、一方の♀が他方の巣に侵入して貯食していたアオムシをまんまと盗み出して自分の巣に搬入したのだそうです(p47より)。




どなたか、この芋虫の名前が分かりましたら是非教えて下さい。
科を絞り込めるだけでも助かります。
同定のためにこの芋虫を採集したかったのですが、落ちた際にうまく受け止められず、残念ながら下の落ち葉に紛れてしまいました。




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