前回の記事:▶ 越冬できずに死んだニホンアナグマの亡骸に群がるクロバエ
2024年3月下旬・午後16:43〜17:16・晴れのち曇り
早春に平地の二次林でニホンアナグマ(Meles anakuma)の死骸を食べに来るスカベンジャーを記録するために、急遽トレイルカメラを新たに設置することにしました。
野生動物の死骸が様々な生きものに食べられ微生物に分解され、土に戻るまで見届けられるでしょうか?
もしかすると、野鳥が巣材としてアナグマ死骸の体毛を集めに来るかもしれません。
死骸を営巣地から遠ざけて置き直すべきか迷いましたが、そのまま放置することにしました。
臨機応変にぶっつけ本番でやるしかありません。
私が立ち去ると、アナグマの死骸の近くに真っ先に現れたのは、カラスでした。
上から見下ろす撮影アングルではハシボソガラスとの区別が微妙なのですが、ハシブトガラス(Corvus macrorhynchos)のようです。
しかし監視カメラの存在に目ざとく気づいたようで、警戒したカラスはホッピングで逃げていきました。
その後はアナグマの営巣地(セット)をあちこち探索して安全を確かめています。
死骸は、巣穴を見張る監視カメラの画角の外で、セットの端に横たわっています。
ようやく警戒を解くと、ハシブトガラスは死骸の左腿の損傷部(傷口)から死肉を啄み始めました。
死骸の同じ箇所から繰り返し食べています。
太くて強力な嘴をもつハシブトガラスは、アナグマ死骸の下半身の毛皮を引きちぎるように剥ぎながら、死肉を食べています。
カラスはその場で屍肉を食べて飲み込むのではなく、喉袋いっぱいに肉片を詰め込んでいました。
そのまま左に飛び去りました。
しばらくするとまた戻ってきたので、喉袋に詰めた肉片をどこかに貯食してきたのでしょう。
食事中に遠くの仲間に呼びかけられて、カーカー♪鳴いて応じました。
ただの挨拶だったようで、この個体は死骸をこっそり独り占めしています。
死んだアナグマの肉片を喉袋いっぱいに詰めて運び、どこかに隠してくる貯食行動を繰り返しています。
後半になるとハシブトガラスは死骸の腹膜を破り、白い内臓(脂肪? 腸?)を食べ始めました。
最後にカラスが飛び去ったのは午後17:16で、この日はもう戻ってきませんでした。
おそらく日没前に塒 入りしたのでしょう。
【考察】
代表的なスカベンジャーであるハシブトガラスが真っ先に通って来たのは予想通りですが、いつも単独で現れました。
仲間を呼び寄せることもなく、大量の餌を独り占めしています。
群れ(同種またはハシボソガラスとの混群)で一緒に死骸を食べ漁らないのは意外でした。
ハシブトガラスの♀♂ペアがすでに自分たちの営巣地周辺に縄張りを確立していて、他のカラスが入ってこれないのかもしれません。
北国でこの時期のカラスはまだ営巣・繁殖を始めていないと思うのですが、今季は暖冬の後で春の到来が早いです。
もしもカラスの繁殖開始が早まっているとすると、巣内で抱卵するハシブトガラス♀に♂がアナグマの肉をせっせと給餌しているのかもしれません。
日向に放置されて腐りかけたアナグマ死骸の肉は、凍っていませんでした。
もしも厳冬期で死骸の肉がカチカチに凍っていると、カラスは死骸をいち早く見つけても食べることが出来ません。
北米での観察記録によると、そのようなときワタリガラスはオオカミの群れを呼び寄せるのだそうです。
鋭い強力な牙を持つオオカミに死骸を先に引き裂いたり食べたりしてもらい、ワタリガラスはその後で残り物を食べるらしい。
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・ワタリガラスの謎 すごい面白い本なのに、和訳した題名が地味すぎますね。原書は
・Bernd Heinrich - Mind of the Raven: Investigations and Adventures with Wolf-Birds (その続編。和訳本『カラスの賢さ、カラスの知恵』は絶版)
今回のハシブトガラスが死骸を食べる様子を観察しても、いったん死骸の皮膚にどこか穴が開いてしまえば、そこから穴を広げて毛皮を引きちぎったり内臓を引き出したりするのはお手の物でした。
無傷の新鮮な状態の死骸から日本のカラスが最初にどのように穴を開けて引き裂くのか、機会があれば観察してみたいものです。
目玉や肛門、鼠径部など、皮膚が薄い部分を狙うはずです。
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