サルなどは、用量依存性の障害が生ずることはあっても(過剰に摂食し過ぎると障害が起こる。ヒトも同様)、いわゆる低用量で障害を起こすようなタマネギ中毒にはならない。(wikidpediaより引用)
ニホンザルの採食行動に関する観察記録
ニホンザル(Macaca fuscata)は、日本の森林地帯に広く生息する雑食性の霊長類であり、その採食行動は生息環境や季節、個体群によって多様に変化することが知られています。
本レポートでは、山麓の民家周辺で観察されたニホンザルのタマネギ球根採食行動を中心に、その生態と適応能力について記録する。採食行動の観察
食性の基本:ニホンザルは本来、果実や種子、葉、新芽、花、樹皮、昆虫など多様な食物を採食するが、特に果実や種子を好む傾向が強い。しかし、果実の利用可能性が低い季節や環境では、繊維質の多い葉や草本類を多く食べることもある。ecology.kyoto-u+1
季節による変化:春には若葉や花を、秋には果実や種子を多く採食し、食物構成は植物のフェノロジー(季節的な成長・結実の変化)と強く連動している。jstage.jst
環境適応:生息地の標高や植生、年ごとの結実量の変動に応じて、採食物が柔軟に変化する。たとえば、堅果類が豊富な年はそれを主要食物とし、少ない年は液果類など代替食物に切り替える。jstage.jst
学習と社会的伝播:新しい食物を発見した個体が食べ始めると、他の個体も模倣して採食を開始する。この社会的学習は、群れ内での食性の拡大や新たな食物資源の利用に寄与している。
人間生活圏への進出:本来の生息域外である民家の裏庭などにも進出し、生ゴミや未収穫野菜を採食する事例が増加している。今回の観察では、タマネギの球根(新タマネギ)が地上にまとめて放置されていたため、ニホンザルが緑の葉や茶色い薄皮を剥いて白い部分(鱗茎)を採食していた。成獣だけでなく若い個体も抵抗なく食べており、腐敗していない新鮮な球根を選好する傾向がうかがえた。
味覚選好:タマネギの外側(苦みが強い部分)は避け、内側の甘く水分の多い部分を選んで食べる行動が観察された。これは、ニホンザルが味覚に対して敏感であり、摂取する部位を選別していることを示唆する。
野生植物との比較:野生下では、タマネギ球根のような地中貯蔵器官を積極的に採食する習性はほとんど確認されていない。タマネギの採食は、人間の生活圏に近づいたことで新たに獲得した食習慣と考えられる。
考察
ニホンザルの採食行動は、環境の変化や食物資源の availability(利用可能性)に応じて柔軟に変化する。また、学習能力が高く、新しい食物資源を速やかに取り込むことができる。今回のタマネギ球根の採食は、従来の野生下での食性の範囲を超える「新たな適応」の一例であり、人間活動がサルの行動圏と食性に与える影響の大きさを物語っている。jstage.jst
猿害対策への提言
ニホンザルによる農作物や生ゴミの食害は、地域住民にとって深刻な問題となっている。
今回の観察から得られた知見を踏まえ、効果的な猿害対策を以下に提言する。物理的対策の徹底
生ゴミ・収穫物の管理:タマネギをはじめとする生ゴミや未収穫野菜は、サルがアクセスできない場所(屋内や厳重に管理されたコンポスト容器など)で保管する。腐敗したタマネギはサルも忌避するが、新鮮なものは積極的に採食するため、地上への放置は絶対に避ける。
電気柵の適正管理:電気柵は隙間なく設置し、定期的に点検・補修を行う。サルは器用で学習能力が高いため、わずかな隙間からでも侵入を試みる。柵の外側から手を伸ばして作物を取られないよう、柵と作物の間に十分な距離を確保する。
容器の選択:コンポスト容器は、サルが開けられない頑丈な構造(鍵付きや特殊なロック機構)のものを選ぶ。プラスチック製でも蓋が簡単に開くものは効果が不十分である。
地域ぐるみの対応
情報共有と連携:一軒だけ対策しても隣家の生ゴミや未収穫野菜が放置されていれば、サルはその地域に居着いてしまう。地域全体で生ゴミや作物の管理を徹底し、情報を共有する。
追い払いの徹底:サルが民家周辺に近づいた際は、威嚇や追い払いを徹底して「ここは危険な場所」「エサは得られない」と学習させる。
餌付けの防止:サルに食べ物を覚えさせないことが最も重要。意図的・非意図的な餌付けは、猿害を深刻化させる最大の要因である。
教育的・啓発活動
住民への啓発:サルの生態や猿害のメカニズム、対策の重要性を地域住民に周知する。特に、生ゴミの適切な管理と餌付けの危険性について理解を深める。
持続的なモニタリング:サルの行動や食性の変化を継続的に観察し、対策の効果を検証しながら適宜見直す。
総括
ニホンザルの採食行動は環境変化に柔軟に対応し、人間の生活圏への進出と新たな食物資源の利用が進行している。
猿害を防ぐには、物理的対策の徹底と地域ぐるみの連携が不可欠である。生ゴミや作物の適切な管理、餌付けの防止、持続的なモニタリングを通じて、人間と野生動物の共存を目指すことが求められる。
- https://www.ecology.kyoto-u.ac.jp/~hanya/study2.htm
- https://www.jstage.jst.go.jp/article/psj/28/2/28_28.015/_pdf
- https://sites.google.com/view/yosukekurihara/%E7%A0%94%E7%A9%B6%E5%86%85%E5%AE%B9
- https://www.jstage.jst.go.jp/article/psj/38/1/38_38.004/_pdf
- https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/164104/1/apk02000_072_3.pdf
- https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02640509/
- https://core.ac.uk/download/pdf/39291841.pdf
- https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010552225.pdf
- https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H00449
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