2025/08/16

他のアシナガバチが作った初期巣を襲って幼虫を捕食するフタモンアシナガバチ創設女王

 

2024年5月中旬・午後12:15頃・くもり 

堤防路の道端で、水平に倒伏したヨモギの枯れた茎から下向きにアシナガバチの初期巣が作られていました。 
フタモンアシナガバチ♀(Polistes chinensis antennalis)が巣盤の下側にぶら下がり、何か作業しています。 
この時期はまだワーカー♀が羽化しておらず、単独営巣期の創設女王と思われます。 

やがて女王が体を反らせてくれたので口元が見え、獲物を噛みほぐして肉団子を作っていたことが分かりました。 
帰巣直後の女王が、これから巣内の幼虫に給餌するのでしょうか。 
翅を半開きにしたのは私に対する警戒姿勢かと思いきや、肉団子を咥えたまま、意外にもフタモンアシナガバチの創設女王はどこかに飛び去りました。 
幼虫を育房から引き出して殺したり捕食しただけなら、死んだり病気になったり寄生された幼虫個体を自分の巣から取り除いたのだと説明できます。 
しかし、肉団子に加工して持ち去ったとなると、他のアシナガバチの巣を襲って、幼虫を捕食したことになります。 
肉団子を自分の巣に持ち帰って、幼虫に給餌するのでしょう。 

ヒメスズメバチ♀(Vespa ducalis pulchra)はアシナガバチ類の巣を襲って幼虫や蛹を捕食します。 
しかし、アシナガバチ同士で巣内の幼虫や蛹を捕食するシーンを見たのはこれが初めてです。 
もし同種間なら共食いしたことになりますが、巣の主が不在のときに襲撃したので獲物の種類が分からず、共食いとは言い切れません。 

フタモンアシナガバチ創設女王が襲った巣の種類を検討してみましょう。
巣が大きくなれば、アシナガバチの種類によって形が違ってくるのですが、小さな初期巣の段階では見分けることが困難です。 
幼虫が紡いだ繭の色でアシナガバチの種類を絞り込めることがあるのですけど(黄色い繭ならヤマトアシナガバチまたはキボシアシナガバチ)、この巣では繭はまだ作られていませんでした。 
営巣地の環境から、フタモンアシナガバチの巣であってもおかしくないのですが、別種の可能性も残ります。

フタモンアシナガバチの創設女王が飛び去った直後に、巣盤の育房を苦労して接写してみました。 
動画を一時停止して育房を数えると26室で、5月中旬の女王単独営巣期にしてはかなり多い部類になります。 
育房内に卵や幼虫は全く残っていませんでした。 
繭もまだ作られていません。 
もしヒメスズメバチ♀(Vespa ducalis pulchra)に襲われた直後なら、巣の育房壁が汚らしく乱暴に食い千切られているはずです。 
しかし、今回の初期巣の構造は無傷でした。 

気になるのは、アシナガバチの巣盤の天井部や巣柄にアリ除けとしてタール状の物質が塗布されて黒光りしているはずなのに、この巣は白っぽいことです。
もしも今年に作られた初期巣ではなく、前の年に作られた古巣が冬を越して残っていただけとなると、解釈を大幅に検討し直す必要があります。 
例えば前年に羽化できなかった幼虫の死骸が干からびたまま育房内に残っていて、それを女王が捕食したのでしょうか。
そんな餌が残っていれば、堤防をうろついているアリが見過ごすはずがありません。
当地は雪国(多雪地帯)なので、冬を越した古巣だとしたら、深い雪の下に埋もれた圧力で変形しているはずです。
 (異常な暖冬だったから雪に埋もれて潰されなかった?) 
ちなみに、アシナガバチは前年の古巣を再利用することはありません。 

育房数が26室というのは5月中旬の初期巣にしてはかなり多いのですが、暖冬で春の訪れが早く、越冬明けの女王が巣を作り始めたのも早かったと考えれば、なんとか説明できそうです。 
巣の主である創設女王が不在(または死んだ)の間に、この巣を見つけたフタモンアシナガバチ創設女王が襲撃して巣内の幼虫を次々に捕食して全滅させたのでしょう。 
女王の単独営巣期は巣を防衛するワーカー♀が不在なので、女王の留守中に幼虫が捕食されるリスクがどうしても高くなります。 
なるべく目立たない場所に営巣した女王が、食うか食われるかの仁義なき生存競争に勝ち残るのでしょう。 
たとえ初期巣が襲われて幼虫が全滅しても、創設女王が存命なら別の場所で新たに初期巣を作り直し、遅れてまた産卵します。 


いつものように、動画の解釈についてPerplexity AIと相談しながら記事を書きました。

アシナガバチ同士であっても、自分たちの巣や生活圏を守るために他個体や他の女王が作った巣を襲撃し、幼虫を捕食することが報告されています。これは縄張り争いの一環として、相手の資源や将来の個体数を減らす競争戦略の一つと考えられます。

具体的には、餌資源が不足するときや巣の数が密集してしまう場合に、女王や働きバチが他のアシナガバチの巣を襲い、その中の幼虫を捕食する行動が観察されています。 (Perplexityの回答より一部引用)

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